登記簿に並んだ「持分3分の1」という記載は、土地のどこかを3分の1だけもらったという意味なのでしょうか。共有持分は面積ではなく権利の割合です。全体を動かすには同意が要りますが、自分の持分は単独で動かせます。民法は同意の要否を3段階に分けており、その線引きを知ると打てる手が変わります。権利の範囲、放置したときに起きること、共有をやめる方法の順に見ていきましょう。
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共有者と連絡が取れず止まっている持分でも、状況を伺えば取れる手をお伝えします。
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共有持分とは?1つの不動産に対する権利の割合のことです

共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有するときに、各人が持つ権利の割合を指します。面積の取り分ではありません。
持分3分の1を持つ人は、土地の3分の1の区画だけを使えるのではなく、不動産の全部について3分の1の割合で権利を持っています。民法249条1項が「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる」と定めているためです(e-Gov法令検索の民法、2026年8月時点)。庭の東半分が自分のもの、という分け方にはなっていません。
割合を確認する場所は、法務局で取得する登記事項証明書の権利部(甲区)です。共有の場合は「持分2分の1 ○○」のように、名前の前へ分数が付いて複数人が並びます。分数の記載が見当たらないときは、民法250条により各共有者の持分は相等しいものと推定されます。
共有持分の話は範囲が広く、どこから読めばよいか迷いやすいところです。今の状況から読む場所を選べるよう、全体を1枚に整理しました。
| 今の状況 | 読む章 | さらに詳しい記事 |
| 持分の意味と自分の権利の中身を知りたい | この章 | — |
| 修繕や賃貸を自分の判断で進められるか知りたい | 権利の範囲 | — |
| 相続してから何年も放置している | 放置したときに起きること | — |
| 話し合いが決裂し、次の一手が分からない | 共有物分割請求 | — |
| 共有そのものをやめたい・持分を手放したい | 解消する方法 | 共有名義/持分の売却・買取・放棄/私道/準共有 |
当社の共有持分の相談で最初に伺う内容を、読む順に並べ替えたものです(2026年8月時点)
この先は、自分だけで何ができるのか(権利の範囲)、放っておくと何が起きるのか(トラブル)、どうやって抜けるのか(解消方法)の順に進みます。個別の手続きは、それぞれの章から詳しい記事へ進んでください。
共有持分で自分だけでできることは?同意のラインは3段階です

共有物への行為は保存・管理・変更の3段階に分かれ、必要な同意は単独・過半数・全員と変わります。
段階を分けているのは民法です。傷んだ箇所を直すような保存行為は、民法252条5項により各共有者が単独でできます。賃貸や舗装といった管理行為を決めるのは、人数ではなく持分の価格に従った過半数です(民法252条1項)。建物の取り壊しのように形状や効用を著しく変える変更行為になると、民法251条1項が共有者全員の同意を求めます。持分5分の3を1人で持っていれば、管理行為はその1人の判断が2人の反対に優先します。
ここで押さえておきたいのが、相手が捕まらないときの代替ルートです。連絡の取れない共有者がいると手続きが完全に止まると思われるかもしれませんが、現行の民法には裁判所を通じて先へ進める規定が置かれています。行為の種類ごとに、通常の同意ラインと代替ルートを並べて整理しました。
| やりたいこと | 区分 | 必要な同意 | 相手が不明・賛否不明のとき | 民法の条文 |
| 壊れた雨樋を直す・不法占拠者を排除する | 保存 | 単独でできる | もともと単独のため影響なし | 252条5項 |
| 3年以内で建物を貸す・砂利道を舗装する | 管理 | 持分価格の過半数 | 裁判所の裁判を経て、残る共有者の持分価格の過半数で決められる | 252条1項・2項・4項 |
| 建物を取り壊す・大規模に造り替える | 変更 | 共有者全員 | 裁判所の裁判を経て、所在不明者以外の同意で変更できる | 251条1項・2項 |
| 不動産そのものを丸ごと売る | 処分 | 共有者全員 | 所在等が不明な共有者の持分を取得する、または譲渡権限を得る裁判の制度がある | 251条1項・262条の2・262条の3 |
| 自分の持分だけを手放す | 持分の処分 | 不要(単独でできる) | 共有物への行為ではないため3段階の外にある | — |
e-Gov法令検索の民法の各条文を基に当社作成(2026年8月時点)。管理として設定できる賃借権の期間上限は建物3年・土地5年・山林10年・動産6か月です(民法252条4項)
賛否不明の共有者への対応が民法252条2項二号に書かれている点も実務では効きます。相当の期間を定めて賛否を明らかにするよう催告し、その期間内に返事がなければ、裁判所の裁判を経てその人を除いた過半数で管理を決められます。返事をもらえない状態は、返事を待ち続ける理由にはなりません。
これらの規定は、令和3年4月に成立・公布された民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)による見直しで整えられました(法務省 新制度の概要・ポイント)。当社はこの改正の実務上の意味を、「共有者が全員そろわないと何も動かない」という前提が崩れた点にあると見ています。そこでまず確認していただきたいのが、相手が反対しているのか、それとも所在が分からないだけなのかという区別です。前者は交渉の問題ですが、後者には制度上の出口が用意されています。
共有持分を放置するとどうなる?時間が選べる手を削っていきます

共有は相続と共同購入から生まれます。放置すると共有者が枝分かれし、合意形成の相手が増え続けるのが厄介なところです。
相続で共有になった場合、遺産分割をしないまま次の相続が起きると、当事者は子・孫へと分かれていきます。相続が二度、三度と重なるたびに当事者は増え、2人で始まった共有が面識のない親族を含む6人・8人へ広がる場合もあるでしょう。人数が増えるほど全員の同意は遠のき、変更行為も全体売却もできない状態が固定します。
時間の経過が響くのは、感情のもつれだけではありません。使える手続きそのものが年数で変わります。
| 経過 | 起きること | 制度上の変化 |
| 相続直後 | 法定相続分どおりの共有になる | 遺産分割をすべき間は、その持分について共有物分割の裁判を使えない(民法258条の2第1項) |
| 管理費の不払いが1年続く | 負担の押し付け合いが固定する | 他の共有者は相当の償金を払ってその人の持分を取得できる(民法253条2項) |
| 共有者に次の相続が起きる | 当事者が枝分かれし交渉相手が増える | 制度上の変化はなく、合意形成だけが難しくなる |
| 相続開始から10年 | — | 相続財産に属する持分でも共有物分割の裁判ができるようになり、所在等が不明な共有者の持分を取得する裁判も使えるようになる(民法258条の2第2項・262条の2第3項) |
e-Gov法令検索の民法各条文を基に当社作成(2026年8月時点)
管理費や固定資産税の負担は、各共有者が持分に応じて負います(民法253条1項)。使用頻度ではなく持分割合で決まるため、「ほとんど使っていないから払わない」という主張は原則として通りません。1年の不履行が続けば、払わない側は持分そのものを失う可能性があります。
一方で、相続開始から10年という区切りは打開の側にも働きます。10年を過ぎると、遺産分割が済んでいない持分でも共有物分割の裁判の対象になり、所在等が不明な共有者の持分を取得する裁判も選べるようになります。つまり時間は合意形成を難しくしながら、裁判所を使う道を開いていきます。
持分を手放すのは家族への裏切りではないか——そう感じて動き出せないこともあるでしょう。当社は逆に見ています。放置し続けるほうが、結果として関係修復のコストは高くなります。共有者が枝分かれしてしまえば、残る側が採れる手も同じだけ減るからです。人数がまだ少なく、全員の顔と連絡先が分かるうちに決着させたほうが、選べる方法は多く、費用も時間も軽く済みます。
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共有物分割請求とはどんな制度?裁判所が選ぶ3つの分け方

共有物分割請求は、共有をやめるよう求める権利です。話し合いがつかなければ裁判所に分割を請求できます。
民法256条1項は「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」と定めています。共有は永久に続くことを予定した状態ではないという建て付けです。ただし5年を超えない期間で分割しない旨の契約を結ぶことはでき、その契約は更新もできます(民法256条2項)。
協議が調わないとき、または協議そのものができないときは、裁判所への請求に進みます(民法258条1項)。裁判になれば競売で叩き売られると思われるかもしれませんが、条文の順序はそうなっていません。
- 現物分割 — 共有物の現物を分ける方法(民法258条2項一号)。土地であれば分筆して各人の単独名義にする形が典型です
- 賠償分割 — 共有者の1人に債務を負担させ、他の共有者の持分の全部または一部を取得させる方法(民法258条2項二号)。不動産を残したまま、代金を払う人が単独名義にできます
- 競売 — 上の2つの方法で分割できないとき、または分割によって価格を著しく減少させるおそれがあるときに、裁判所が命じることができます(民法258条3項)
つまり競売は3番目の受け皿であって、最初の選択肢ではありません。この順序を知らないまま「訴訟だけは避けたい」と交渉を先送りすると、賠償分割で決着できたはずの場面を逃すことになるでしょう。裁判所は分割の裁判において、金銭の支払いや登記義務の履行などの給付を命じることもできます(民法258条4項)。
注意点として、持分が相続財産に属し、共同相続人の間で遺産分割をすべき場合には、この共有物分割の裁判を使えません(民法258条の2第1項)。先に必要なのは遺産分割であり、相続開始から10年を過ぎて初めて共有物分割の裁判の対象になります。相続で共有になった不動産では、まず遺産分割協議の状況を確認してください。
共有状態を解消する方法は?合意の可否と相手の所在で決まります
共有の解消手段は、共有者の人数と所在、そして合意が取れるかどうかで機械的に絞られます。
最初にすることは話し合いではなく、登記事項証明書で共有者の人数と持分割合を確認することです。人数と所在の見当がつけば、選べる手段は自然に絞られます。全員と連絡が取れて話がまとまるなら共有そのものをたたむ方向へ、相手が反対している、または連絡がつかないなら自分の持分だけを動かす方向へ進んでください。所有権移転登記は司法書士が担当する領域のため、当社では提携する司法書士事務所と組んで手続きを進めています。
税金の入口も押さえておいてください。持分を売って利益が出れば譲渡所得として課税されます。また、他の共有者へ時価より著しく安い価格で譲ると、差額が贈与とみなされて贈与税の対象になることがあります。売る相手が身内であるほど価格の決め方が問われるため、金額を決める前に税理士へ確認しておくと安全です。持分がいくらで売れるのかという相場観は共有持分の売却相場でまとめています。
共有そのものをたたむ
共有名義という状態自体を見直す道です。共有名義は1つの不動産を2人以上が持分割合で共同所有している登記上の状態で、メリットが働く場面は限られます。住宅を買うときに住宅ローン控除を各自が受けられること、売るときにマイホームの3,000万円特別控除を各自が使えること——効くのはこの2場面で、保有している間に得をする要素はほとんどありません。
一方でデメリットは保有期間中ずっと効き続けます。中心にあるのは相続のたびに共有者が増える構造で、時間が経つだけで状況は悪くなる一方です。解消の手段は他の共有者への売却や贈与、買い取り、分筆、放棄、分割請求など複数あり、どれを選べるかは合意できる相手が何人いるかと、かけられる費用しだいです。単独名義に戻すときの登録免許税は、同じ持分を動かしても登記原因の選び方で税率が5倍変わるため、原因の選択がそのまま費用に響きます。詳しい比較は共有名義のメリット・デメリットと解消法で解説しています。
自分の持分だけを手放す
他の共有者が反対していても進められるのがこの道です。自分の共有持分だけであれば、他の共有者の同意なしに売却できます。全員の同意が必要なのは不動産そのものを丸ごと売るときだけです。
売り先は、他の共有者、全員での全体売却、持分だけを買う第三者の3系統に分かれます。反対する人がいる時点で全員での全体売却は選べなくなるため、現実に残るのは他の共有者に買い取ってもらうか、持分だけを第三者へ渡すかの2択です。持分だけの売却は不動産全体を売る場合より価格が下がりやすく、売却後は買主が新しい共有者になるため、残る家族に何が起きるかまで含めた判断が要ります。手順と売却後の影響は共有持分だけを売却する方法にまとめました。
第三者に売る場合の相手が買取業者です。業者が使いにくいはずの持分を買うのは、取得した後に他の共有者と交渉する、共有物分割の裁判へ進む、使用の対価を請求するという出口を見込んでいるからです。この構造を知っておくと、提示された金額の意味が読み取れます。逆に、取得後の想定を説明できない相手は避けたほうが安全でしょう。買取の仕組みと契約前に確認すべき点は共有持分の買取の仕組みと業者選びで扱っています。
売るのではなく手放したい場合の選択肢が放棄です。放棄の意思表示は他の共有者の同意なく単独でできて、放棄した持分は民法255条により他の共有者へ帰属します。ただし名義を書き換える持分移転登記は共同申請のため、受け取る側が申請に加わらなければ登記簿は変わらず、納税通知だけが自分に届き続けかねません。受け取る側には贈与税や不動産取得税が生じうる点も、切り出す前に押さえておくべきところです。手続きの流れと費用は共有持分の放棄の手続きと注意点で解説しています。
対象が私道や所有権以外のとき
共有の対象が私道である場合、争点は売却よりも日常の通行・掘削・補修へ移るのが特徴です。私道には登記簿上の形が2種類あり、複数名義に持分が付く共同所有型と、細長い各筆が単独名義に分かれる相互持合型では対処法が変わります。陥没の補修は単独で、砂利道の舗装は持分の過半数で進められるなど、全員の同意が要る場面は実際には限られます。無断駐車や承諾料の要求への対応も含め、私道の共有持分で起きるトラブルと対処で類型ごとに整理しました。
分け合っているものが所有権ではない場合は、準共有という別の呼び方になります。借地権を兄弟で相続した場合などがこれにあたり、民法264条により共有のルールがほぼそのまま準用されます。ただし準用の対象から外れている条文があり、所在の分からない相手の持分を裁判で取得・譲渡する手続きは準共有では使えません。借地権であれば地主の承諾という条件も上乗せされます。自分の権利がどちらなのかの見分け方を含め、準共有持分とは何かで説明しています。
共有持分についてよくある質問
共有者の同意がなくても自分の持分だけを売れますか
売れます。同意が必要なのは不動産そのものを丸ごと動かすときで、自分の持分の処分はその枠外にあるためです。ただし買主が新しい共有者として加わるため、残る共有者との関係には影響します。売り先の選び方と売却後の流れは、上の「自分の持分だけを手放す」からそれぞれの記事へ進んでください。
共有持分の固定資産税は誰がいくら払うのですか
各共有者が持分に応じて負担するのが民法上の原則です(民法253条1項)。使用頻度ではなく持分割合で決まるため、使っていないことは負担しない理由になりません。なお1年以内に負担の義務を果たさない共有者がいる場合、他の共有者は相当の償金を支払ってその人の持分を取得できます(民法253条2項)。
相続した共有持分をそのままにしておくと違反になりますか
相続で不動産を取得したことを知った日から一定期間内に相続登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると過料の対象になります。共有持分も対象です。申請期限や必要書類、費用の内訳は土地の名義変更(相続登記)の手続きで扱っています。
まとめ
共有持分は面積の取り分ではなく、不動産の全部に及ぶ権利の割合です。単独でできること、過半数で決められること、全員の同意が要ることは民法が3段階に線引きしており、相手の所在が分からない場合には裁判所を通じた代替ルートも用意されています。放置すれば共有者は枝分かれし、合意は遠のく一方です。それでも相続開始から10年という区切りを過ぎれば、裁判所を使う道が開きます。共有をやめる手段は複数ありますが、どれを選べるかは共有者の人数と所在で決まります。
最初の一歩は、法務局で登記事項証明書を取り、共有者が何人いて誰の所在が分かるのかを確かめることです。人数と所在がはっきりすれば、共有名義のメリット・デメリットと解消法で全体をたたむ道を検討するのか、共有持分だけを売却する方法で自分の分だけ動かすのかを選べるはずです。共有者の名前を見るたび気が重くなっていた登記簿が、次に開いたときには自分ひとりの名前になっている——そこまでの道筋は、今日確認できる1枚の書類から始まります。
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持分割合と共有者の人数が分かれば、その場で取れる選択肢をお伝えできます。
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