借地権の登記は必要?建物の登記で権利を守る条件と費用

当社の買取くん(株式会社リアテクス)が借地権付きの家を査定するとき、土地の登記簿を取り寄せても借地権の記載が見当たらないことがあります。借地権の登記は法律上の義務ではなく、借地上の建物を自分名義で登記していれば第三者に対抗できます。登記が要る場面と費用の見通しは、この記事で順に整理しました。

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借地権の登記とは?土地の登記簿に何が記録されるのか

登記簿の表題部・権利部(甲区と乙区)の構造と、乙区に地上権・賃借権・記載なしの3パターンが現れることを整理した図解
乙区の記載3パターンごとに権利の性質と登記請求の可否を整理(出典: e-Gov法令検索 借地借家法2条1号・民法177条を基に当社作成)

借地権の登記とは、建物を建てるために土地を借りる権利を、土地の登記簿へ記録する手続きです。借地権は建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権を指し(e-Gov法令検索 借地借家法2条1号、2026年8月時点)、この権利を土地の登記簿に載せるものが借地権設定登記です。

借地権設定登記は土地の登記簿の「権利部」に記録される

不動産の登記簿は、面積や構造を示す表題部と、権利関係を示す権利部に分かれています。所有権は権利部の甲区、所有権以外の権利は乙区に記録されるため、借地権設定登記が入っていれば土地の登記簿の乙区に地上権または賃借権として現れます。

登記が対抗要件として意味を持つのは、民法が不動産の権利変動について「登記をしなければ第三者に対抗することができない」と定めているからです(e-Gov法令検索 民法177条、2026年8月時点)。ただし借地権では、この原則をそのまま土地の登記簿に当てはめると判断を誤ります。土地側に何も記録がなくても、建物側の登記で権利が守られている場合があるためです。土地の登記簿に借地権の記載がないことだけを理由に、不安を大きくする必要はありません。

地上権と賃借権では、地主に登記を求められるかが違う

同じ借地権でも、地上権は土地を直接支配する物権賃借権は地主に土地を使わせてもらう債権です。この性質の差が、登記を地主に求められるかどうかに直結します。

項目 地上権 賃借権
権利の性質 物権(土地を直接支配する) 債権(地主に使用を請求する)
地主への登記請求 請求できる 請求できない
登記の実現しやすさ 地主の協力を得やすい 地主が応じない限り実現しない
譲渡・転貸 地主の承諾は不要 地主の承諾が必要

賃借権で借りている場合、契約書に登記への協力を定めていなければ、地主に借地権設定登記を求めることはできません。登記されていない借地権が残る背景には、この構造があります。なお、借地権の種類(普通借地権・定期借地権・旧法借地権)の基礎的な違いや、地上権と賃借権の権利内容そのものの比較は、それぞれ別記事の担当です。借地権割合や地代の考え方も含め、借地権の考え方全体は借地権の基礎からの解説で確認できます

借地権の登記は必要?義務ではないのに放置できない理由

契約・譲受・相続・解消の4場面で必要になる建物側の登記と、2024年4月に始まった相続登記の申請義務を示した時系列図
権利が動く4つの時点で必要になる登記を時系列に並べ、相続登記の義務化時期を明示(出典: 法務省を基に当社作成)

借地権設定登記は法律上の義務ではなく、していなくても借地契約そのものは有効です。ただし、借地権を取得したり譲り受けたり手放したりする場面では登記が関係し、権利を第三者に主張できるかどうかも登記の状態で変わります。問われるのは「借地権を登記したか」ではなく「借地上の建物が誰の名義で登記されているか」です。

借地権設定登記が実務で少ない理由

借地権設定登記が広まっていない理由は、地主と借地人の利害が正面からぶつかるためです。借地人にとって登記は権利の裏づけになりますが、地主にとっては土地に他人の権利が公示され、売却や担保設定のときに敬遠される材料になります。賃借権には登記請求権がないため、地主が首を縦に振らなければ手続きは進みません。

もう一つの理由は、後述するとおり借地借家法が建物の登記による代替手段を用意している点です。建物を自分名義で登記すれば土地側の登記がなくても権利を主張できるため、費用と交渉の手間をかけてまで借地権設定登記を行う動機が生まれにくくなります。借地権設定登記がないこと自体を異常事態と考える必要はなく、先に確認すべきなのは建物側の登記が整っているかどうかです。

登記が関係する4つの場面

登記が関係するのは、権利が動くタイミングです。契約を結んだとき、譲り受けたとき、相続したとき、契約を終わらせるときの4場面に整理できます。

場面 関係する登記 実務上の位置づけ
借地契約を結び建物を建てた 建物の表題登記・所有権保存登記 対抗力を得るために必須
借地権を買って譲り受けた 建物の所有権移転登記 買主名義にしないと対抗できない
借地権を相続した 建物の相続による所有権移転登記 相続登記の申請義務の対象
契約を解消し更地で返した 建物の滅失登記・借地権設定登記の抹消 登記が残ると次の取引の障害になる

相続で借地上の建物を引き継いだ場合は、2024年4月から始まった相続登記の申請義務の対象になります(法務省、2026年8月時点)。義務化の期限や過料の詳しい内容は土地の名義変更の解説記事で扱っています。

登記が効いてくるのは地主が代わったときと売買のとき

登記の有無がはっきり結果を分けるのは、地主が土地を第三者に売ったときです。土地の新しい所有者は借地権の存在を知らないまま買うこともあり、そのときに借地人が権利を主張できるかどうかは登記の状態だけで決まります。

もう一つは借地権付きの家を売るときです。買主は土地の登記簿と建物の登記簿の両方を確認するため、建物の名義が売主と違っていたり登記自体がなかったりすると、そこで話が止まります。古い時期に設定された借地権では、契約書も登記も整っていないことがあり、購入を検討する側の注意点は旧借地権付き物件を買ってはいけないと言われる理由にまとめています。なお、借地権の売却手順そのものは別記事で扱いました。

建物の登記があれば借地権を守れるのはなぜ?

建物の登記事項証明書が発行されるか・名義が自分かの2分岐で対抗力をA安全/B要注意/C危険/D期限付きに振り分ける判定フロー
証明書1通で自分の借地権がA〜Dのどの状態かを判定できる(借地借家法10条1項・2項、不動産登記法47条1項を基に当社が買取実務の確認手順として作成)

借地権そのものを登記しなくても、土地の上に借地権者名義で登記された建物があれば権利を主張できます。これは借地借家法10条1項が定める対抗要件で、建物の登記が借地権の登記の代わりに働く仕組みです。対抗とは、土地を買った第三者に対しても自分の権利を認めさせることを指します。

借地借家法10条1項が定める対抗要件

(借地権の対抗力)第十条 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

出典: e-Gov法令検索 借地借家法(2026年8月時点)

条文が求めているのは、①土地の上に②借地権者が③登記されている建物を④所有している、という4つの状態がそろうことです。これは借地人を救済する規定であると同時に、要件を1つでも欠くと保護が働かない厳格な規定でもあります。とくに③と④は別の要件で、建物が登記されていても名義が借地権者本人でなければ条文の文言を満たしません。当社が査定で最初に見るのも、建物の登記事項証明書に記載された名義人が現在の所有者と一致しているかどうかです。

建物が未登記だと対抗力がないうえ、過料の対象にもなる

建物を登記していない場合、借地借家法10条1項の要件を満たさないため、土地を買った第三者に借地権を主張できません。地主が土地を売却すると、建物の収去と土地の明け渡しを求められる可能性があります。

負担はそれだけではありません。新築した建物の所有権を取得した人は、取得の日から1か月以内に表題登記を申請しなければならず、正当な理由なくこれを怠ると10万円以下の過料の対象になります(e-Gov法令検索 不動産登記法47条1項・164条1項、2026年8月時点)。権利を守れないという民事上の不利益と、申請義務違反という行政上の負担が同時に生じる状態です。相続や購入で引き継いだ建物が未登記だとわかった時点で、放置せず土地家屋調査士に相談するのが安全です。

建物が滅失しても、掲示をすれば最長2年は対抗できる

火災や取り壊しで建物がなくなると、登記された建物が存在しなくなるため対抗力も消えるように見えます。借地借家法10条2項は、この空白を埋める規定を置きました。建物を特定するために必要な事項、滅失した日、新たに建物を建てる旨を土地の上の見やすい場所に掲示すれば、対抗力はそのまま維持されます。

ただし、この掲示に期限がある点は見落とせません。滅失の日から2年を経過した後は、その前に建物を新築し、かつその建物を登記していなければ対抗力は失われます。建て替えを検討している間に2年が過ぎると保護が切れるため、掲示と並行して再建の計画を進めることが欠かせません。

借地権が守られているかを4段階で確かめる

自分の借地権が今どの状態にあるかは、建物の登記の状態から判定できます。当社が借地権付き物件を査定するときに使っている整理の仕方を、4段階の表にしました。

状態 建物の登記 第三者への対抗力 取るべき対応
A 安全 自分名義で登記済み あり 登記事項証明書を保管する
B 要注意 他人名義で登記済み 認められない可能性がある 名義を実態に合わせる
C 危険 未登記 なし 表題登記と保存登記を急ぐ
D 期限付き 滅失し掲示中 掲示から最長2年 2年以内に新築と登記を終える

判定の根拠は借地借家法10条1項・2項および不動産登記法47条1項で、当社は買取実務での確認手順としてこの4分類を使っています(2026年8月時点)。Bに当てはまるのは、親名義のまま相続した建物を放置している場合です。建物の登記名義が本人でないケースの具体的な扱いは、借地権付き建物の売却を扱う記事にまとめました。仲介で買い手がつかない理由を含めた対処法は借地権付き建物が売れない理由と対処法で解説しています。

要点: 対抗力の有無を決めるのは借地権設定登記ではなく建物の登記であり、名義が本人かどうかでAとBが分かれます。未登記のCは対抗力がないうえに過料の対象にもなるため、対応の優先順位が最も高い状態です。

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借地権の登記にかかる費用はいくら?

評価額1,000万円でそろえた登録免許税の比較棒グラフ。借地権設定登記10万円に対し建物の所有権保存登記は4万円で2.5倍の差
評価額を1,000万円に統一した場合の登記種類別の負担額比較(出典: 国税庁・登録免許税法別表第一を基に当社試算)

登記費用の中心は登録免許税で、税率は登記の種類によって0.4%から2%まで変わります。地上権や賃借権の設定登記は不動産の価額の1,000分の10、建物の所有権保存登記は1,000分の4です(国税庁、2026年8月時点)。同じ評価額なら、負担額は2.5倍の差になります。

登録免許税は「何を登記するか」で税率が変わる

税率は登録免許税法の別表第一に定められています。借地権設定登記にあたる地上権・賃借権の設定登記は1,000分の10、建物の所有権保存登記は1,000分の4、売買による所有権移転登記は1,000分の20です(e-Gov法令検索 登録免許税法別表第一、2026年8月時点)。課税標準となる不動産の価額は、固定資産課税台帳に登録された価格が原則になります。

評価額別に置き換えると負担の差がはっきりする

税率のままでは負担の実感がつかみにくいため、同じ評価額を当てはめた実額に置き換えました。

登記の種類 評価額500万円 評価額1,000万円 評価額2,000万円
借地権設定登記(1.0%) 5万円 10万円 20万円
建物の所有権保存登記(0.4%) 2万円 4万円 8万円
建物の所有権移転・売買(2.0%) 10万円 20万円 40万円
建物の所有権移転・相続(0.4%) 2万円 4万円 8万円

国税庁と登録免許税法の公式税率を基に当社試算(2026年8月時点)。課税標準となる評価額が同額だった場合の比較で、軽減税率は考慮していません。

評価額1,000万円なら、借地権設定登記は10万円、建物の所有権保存登記は4万円です。権利を守る効果は建物の登記でも同じであることを踏まえると、費用対効果の面でも建物の登記を先に整えるほうが合理的だと考えています。地主との交渉に労力を割く前に、建物側の登記が済んでいるかを確認するのが先決です。なお自己居住用の住宅を新築・取得した場合は、床面積50平方メートル以上などの要件を満たすと所有権保存登記が1,000分の1.5に軽減されます(前掲の国税庁の税額表)。

手続きの流れと依頼先は登記の種類で分かれる

手続きは、必要書類をそろえる、申請書を作成する、管轄の法務局へ申請する、完了後に登記識別情報を受け取る、という流れで進みます。申請は法務局の窓口・郵送のほか、オンラインでも行えます。

登記の種類によって依頼先が変わる点にも注意が必要です。建物の形状や面積を登記簿に初めて記録する表題登記は土地家屋調査士、所有権保存登記や所有権移転登記といった権利に関する登記は司法書士が担当します。未登記の建物を登記する場合は、土地家屋調査士に表題登記を依頼し、その後に司法書士へ保存登記を依頼する二段構えです。報酬額は事務所ごとに異なるため、着手前に見積もりで確認してください。

場面別に必要になる書類

必要書類は登記の種類ごとに変わります。共通して求められるのは、権利の移動を証明する書類と本人確認の書類です。

登記の種類 主な必要書類 補足
建物の表題登記 建築確認済証・検査済証、建物図面、所有権証明書 土地家屋調査士が作成に関与
建物の所有権保存登記 住民票、表題登記済みの登記事項証明書 表題登記の完了後に申請
建物の所有権移転登記 登記原因証明情報、登記識別情報、印鑑証明書 売買・贈与・相続で内容が異なる
借地権設定登記 借地契約書、登記原因証明情報、地主の承諾関係書類 地主との共同申請が前提

借地権を手放す場面では、買主に引き継ぐ前に建物の登記名義を整える必要があります。売却の税金や、地主・買取業者との価格交渉は別記事で扱っており、価格の目安は借地権の売却相場の解説で確認できます。税額や登記の可否は個別の事情で変わるため、判断に迷う場合は司法書士・税理士にご相談ください。

当社が借地権付き物件で最初に確認していること

当社の買取くんは、提携する岩村司法書士事務所の司法書士が所有権移転登記を担当する体制で運営しています。この体制で借地権付き物件を扱ってきた経験からいえるのは、借地権設定登記の有無よりも、建物の登記名義が現在の所有者と一致しているかどうかが売却の可否を左右するということです。名義がずれたままの物件は仲介では敬遠されますが、直接買い取る立場であれば登記の整理を含めて引き受けられます。

要点: 費用面では建物の登記のほうが軽く、権利を守る効果は借地権設定登記と変わりません。未登記や名義ずれがある場合は、表題登記は土地家屋調査士、権利の登記は司法書士という順序で進めます。

借地権の登記についてよくある質問

借地権の登記は誰に依頼すればよいですか?

登記の種類で専門家が分かれます。建物の形状・面積を登記簿に初めて記録する表題登記は土地家屋調査士、所有権保存登記や所有権移転登記などの権利に関する登記は司法書士が担当です。法務局も、登記申請を代理して行う専門家として司法書士を案内しています(法務局、2026年8月時点)。未登記の建物では、両方の専門家に依頼することになります。

借地上の建物が登記されているかは、どこで確認できますか?

法務局で建物の登記事項証明書を請求すれば確認できます。請求は窓口と郵送のほか、インターネットを利用したオンライン請求にも対応しています(法務局、2026年8月時点)。証明書が発行されない場合、その建物は未登記です。名義人の氏名も同じ書類で確認できるため、対抗力の判定にはこの1通で足ります。

定期借地権や事業用定期借地権でも、建物の登記で対抗できますか?

対抗できます。前掲の借地借家法は、建物の所有を目的とする地上権と土地の賃借権をまとめて借地権と定義しており、定期借地権も事業用定期借地権もこの借地権に含まれるためです。更新がない、建物買取請求ができないといった違いは契約内容の話であり、建物の登記による対抗要件の仕組みは共通です。なお事業用定期借地権の設定契約は公正証書で行う必要があります。

借地権の全体像をあらためて確認したい場合は、借地権の全体マップへ戻ると各テーマの解説にたどり着けます。

まとめ

借地権の登記は義務ではなく、権利を守るかどうかを決めるのは借地上の建物の登記です。建物が自分名義で登記されていれば土地が第三者に渡っても住み続けられ、未登記のままだと対抗力を失ううえ過料の対象にもなります。費用面でも建物の所有権保存登記のほうが軽く済みます。まずは建物の登記事項証明書を取り、名義が自分になっているかを確かめるところから始めてください。

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