借地権割合とは?借地権の全体像と路線価図の記号A〜Gの読み方

借地権割合とは、土地の価額のうち借地権が占める割合で、国税庁の路線価図に記号A〜Gで示されています。路線価図を開くと道路沿いに「215D」のような表記が並び、これは1平方メートルあたり21万5,000円・借地権割合60%を意味します。ただし割合が返すのは相続税を計算するための評価額で、売れる価格とは別のものさしです。種類・費用・出口の各論は、この記事の各章から詳細記事へ進めます。

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借地権割合とは?土地の価額のうち借地権が占める割合です

更地価額を借地権70%と底地30%に分ける配分構造と、種類・費用・割合・出口の確認順を示した図解
1つの割合が借地人と地主の取り分を同時に決める構造(出典: 国税庁「借地権の評価」を基に当社作成)

借地権割合とは、土地の価額のうち借地権が占める割合で、借地事情が似ている地域ごとに国税庁が定めています。借地権の相続税評価額は、更地としての土地の価額にこの割合を掛けて求めます(国税庁「借地権の評価」、2026年8月時点)。割合はA〜Gの7区分で、路線価図と評価倍率表に表示されています。

この数字がやや特殊なのは、1つの割合が2人の取り分を同時に決めている点にあります。借地権の評価が「更地価額×借地権割合」であるのに対し、地主が持つ底地の評価は「更地価額−更地価額×借地権割合」です。借地権割合70%の地域なら、土地の価値の7割が借地人、残る3割が地主という配分になります。借地人の取り分を決めれば、同時に地主の取り分も決まる構造です。だから借地権割合は、借地人と地主が同じ土俵で話すための共通の目盛りとして働きます。

借地権にまつわる論点は、この割合のほかにも種類・権利関係・費用・出口と広がります。確認する順番を間違えると手戻りが起きるため、次の順で押さえると迷いません。

確認する順 確認するもの それで決まること この記事の該当章
1 契約書の締結日と書面の形式 借地権の種類・更新できるか・いつまで使えるか 種類と権利関係
2 建物の登記名義/地上権か賃借権か 第三者に権利を主張できるか・譲渡に承諾が要るか 種類と権利関係
3 地代・更新料・承諾料・固定資産税 持ち続けたときの年間負担 地代/持ち続ける費用
4 路線価図の借地権割合と残存期間 相続税評価額の目安・交渉の出発点 調べ方/評価額と売却価格
5 売る・買ってもらう・返す・持ち続ける 手取りと手離れの早さ 評価額と売却価格/手放す選択肢

借地借家法の条文構成と国税庁の評価通達をもとに当社が整理(2026年8月時点)

この順番には理由があります。出口から考え始めると、種類によって使える制度が違うことに後から気づいて振り出しに戻るためです。たとえば契約が更新されずに終わるとき、通常の借地権なら建物を時価で買い取らせる請求ができますが、存続期間が10年以上30年未満の事業用定期借地権にはこの規定が適用されません。種類の確認は、選べる出口の一覧を確定させる作業でもあります。

自分の土地の借地権割合はどう調べる?

路線価215Dの読み方と、国税庁の計算例で自用地2億370万円が借地権1億4,259万円と底地6,111万円に分かれる構成図
記号の読み方と、割合を掛けた後の借地権・底地の金額配分(出典: 国税庁「路線価図の説明」の計算例)

借地権割合はA:90%〜G:30%の7区分で、路線価「215D」なら1平方メートルあたり21万5,000円・借地権割合60%を指します。国税庁の路線価図・評価倍率表で年分と都道府県を選び、対象の土地が面している道路の表記を読めば、専門家に依頼しなくても確認できます(2026年8月時点)。

路線価図の記号A〜Gがそのまま割合を表します

路線価図では、道路に「215D」のように数字とアルファベットが並んでいます。数字は1平方メートルあたりの価額を千円単位で表したもので、右隣のアルファベットが借地権割合です(国税庁「路線価図の説明」、2026年8月時点)。

記号 借地権割合
A 90%
B 80%
C 70%
D 60%
E 50%
F 40%
G 30%

記号は割合そのものなので、換算表を覚える必要はありません。割合は借地事情が似ている地域ごとに定められており、商業地や駅前など土地の利用価値が高い地域ほど高く設定されます。ただし地域ごとの水準を傾向で推測すると誤差が出るため、自分の土地の数値は路線価図の記号で直接確認してください。

路線価が定められていない地域は倍率地域と呼ばれ、路線価図には「倍率地域」と表示されます。この場合は評価倍率表を使い、その土地の固定資産税評価額に地域ごとの評価倍率を掛けて自用地の価額を出します(国税庁「令和8年分の路線価等について」、2026年7月公開)。借地権割合は評価倍率表の側に記載されています。

なお路線価等は毎年公開され、令和8年分は2026年7月1日に公表されました。評価時点はその年の1月1日なので、いま見ている割合が何年分のものかを確認しておいてください。

割合を掛けて評価額を出す手順

借地権の相続税評価額は、更地としての土地の価額に借地権割合を掛けて求めます。国税庁は次の計算例を公表しています。

手順 計算 結果
前提 路線価表記「300C」・奥行35m・地積700㎡ 借地権割合70%
1㎡あたりの価額 300,000円 × 奥行価格補正率0.97 291,000円
自用地の価額 291,000円 × 700㎡ 203,700,000円
借地権の価額 203,700,000円 × 70% 142,590,000円

データ出典: 国税庁「路線価図の説明」の計算例(2026年8月時点)

同じ土地の底地(貸宅地)は、自用地の価額から借地権の価額を差し引いた6,111万円になります。1つの割合で両方が決まるという先ほどの構造が、数字で確認できます。

ここで注意が要るのが、定期借地権のケースです。定期借地権では路線価図の記号A〜Gをそのまま当てはめられません。定期借地権等の目的となっている宅地は、残存期間に応じた割合(5年以下5%/5年超10年以下10%/10年超15年以下15%/15年超20%)で評価する取扱いがあるためです(国税庁「貸宅地の評価」、2026年8月時点)。自分の借地権がどの種類にあたるかは、次章の「借地権の種類と権利関係」で確認できます。

要点: 路線価図の記号がそのまま借地権割合を表し、倍率地域なら評価倍率表を見ます。ただし定期借地権はこの割合を使わず、残存期間別の割合で評価します。

借地権の種類と権利関係はどう確認する?

借地権の種類は契約書の締結日と書面の形式で決まり、権利の強さは地上権か賃借権かで変わります。借地権とは建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権のことで(借地借家法2条1号)、この2つでは譲渡に地主の承諾が要るかどうかが分かれます。手元の契約書と登記事項証明書があれば、どちらも確認できます。

借地権の種類(旧法・普通・定期)

借地権は、契約書の締結日と書面の形式で種類が決まります。1992年8月1日より前に設定されたものは旧法借地権、それ以降で更新できる契約は普通借地権、更新のない契約は定期借地権です。普通借地権の存続期間は30年で、最初の更新で20年、以後は10年ずつ延びます(借地借家法3条・4条)。定期借地権は存続期間50年以上で、更新しない旨を書面で定めた契約です(同22条)。種類が決まれば、いつまで土地を使えるのか、期間満了で何が起きるのかも決まります。契約書が見当たらない場合の判別手順や、旧法借地権に残る保護の厚さは借地権の基礎(普通借地権・定期借地権の違い)で扱っています。

地上権と賃借権の違い

借地権は1つの権利名ではなく、地上権と土地の賃借権をまとめた総称です。地上権は物権で、地主の承諾がなくても譲渡や転貸ができます。賃借権は債権で、譲渡や転貸には地主の承諾が必要です。賃借権として設定されている場合は、建物を売る段階で地主の承諾と承諾料の交渉が発生します。自分の権利がどちらかは、登記事項証明書の権利の名称と契約書の文言で判別できます。見分ける手順と、地上権が使われる場面は地上権と借地権の違いにまとめています。

借地権の登記と対抗要件

借地権そのものの登記は義務ではありません。土地の上に借地権者名義で登記された建物があれば、それだけで第三者に権利を主張できるからです(借地借家法10条1項)。地主が土地を売って所有者が変わっても、建物の登記があれば新しい地主に借地権を対抗できます。逆に建物が未登記だったり、亡くなった親の名義のままだったりすると、この保護が働きません。火災などで建物が滅失した場合は、必要事項を土地上に掲示することで2年間だけ対抗力を維持できます。登記が必要になる場面と費用の見通しは借地権の登記は必要かの判断基準で解説しています。

事業用定期借地権

事業用定期借地権は、専ら事業用の建物を所有する目的に限って設定できる定期借地権です。存続期間は10年以上50年未満で、契約は公正証書によらなければ成立しません(借地借家法23条)。存続期間が10年以上30年未満の契約では、契約終了時に建物を時価で買い取らせる請求ができません。期間が満了すれば建物を取り壊して更地で返すのが原則になります。ロードサイド店舗や事業所の敷地で使われる形態で、居住用には設定できません。期間帯による違いと契約前の確認点は事業用定期借地権の仕組みと存続期間で扱っています。

借地権付き建物という形

借地権付き建物は、建物は自分の所有物で、その敷地だけを地主から借りている不動産です。土地の代金がかからない分だけ取得費用を抑えられますが、毎月の地代が続き、売却や建て替えに地主の承諾が要ります。所有権の物件と比べて住宅ローンの審査も通りにくく、買主の候補が絞られます。相続で引き継いだ場合は、契約書・建物の登記・地代の支払い状況の3点をまず確認します。買う・持ち続ける・手放すの判断材料は借地権付き建物とは・購入と売却の基礎に整理しています。

旧法借地権に付いて回る評価

1992年7月31日以前に設定された旧法借地権は、更新の拒絶に正当事由が必要で、借地人の保護が現行法より厚い権利です。それでも避けたほうがよいと言われるのは、地主の承諾・継続コスト・資金調達・出口という4つの制約が重なるためで、建物の古さが理由ではありません。承諾料や更新料の水準が読みにくく、金融機関の担保評価も低く出ます。一方で立地の良い土地を割安に使えるという性質は残ります。誤解が混じっている部分と、購入前に確認できることは旧借地権付き物件を買ってはいけないと言われる理由で扱っています。

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地代はいくらが妥当?値上げを求められたときの考え方

相当の地代は更地価額の年6%が上限側の目安であることと、値上げを打診されたときに確認する3点を示した図
更地価額の年6%を上限側の目安に置いて提示額を比べる(出典: 国税庁「相当の地代及び相当の地代の改訂」を基に当社作成)

地代に公的な相場統計はありませんが、税務上は「相当の地代=その土地の更地価額のおおむね年6%程度」という基準が置かれています(国税庁「相当の地代及び相当の地代の改訂」、令和7年4月1日現在法令等)。当社はこの6%を、提示された地代が高いのか安いのかを比べるときの上限側の目安として使っています。

この基準は、法人が権利金を受け取らずに土地を貸す場面で、権利金の認定課税を避けられる地代の水準として定められたものです。個人間の借地の適正賃料を直接定める規定ではありません。それでも、更地価額という誰でも確認できる数字を分母に置いている点で、比較の出発点として使えます。更地価額は時価が原則ですが、相続税評価額やその過去3年間の平均額を使うことも認められています。当社は、地代の妥当性を感覚で判断する前に、まず自分の土地の相続税評価額に6%を掛けた金額を出しておくことをおすすめしています。この1本の線があるだけで、地主からの提示額を数字で受け止められるようになります。

値上げを打診されたときに確認する3点

地代の増減は、貸す側からも借りる側からも請求できます。租税その他の公課の増減、土地の価格の上昇や低下、近傍類似の土地の地代と比べて不相当になったときに、当事者は将来に向かって地代等の額の増減を請求できると定められているためです(借地借家法11条1項)。値上げの打診は「請求」であって、そのまま確定する通知ではありません。

金額に納得できないときの扱いも条文に書かれています。増額について協議が調わない間は、請求を受けた側は相当と認める額を支払っていれば足ります(同11条2項)。ただし裁判で増額が正当と確定した場合、不足額には年1割の利息が付きます。支払いそのものを止めてしまうと、地代の不払いとして契約解除を主張される余地が生まれます。自分が妥当と考える額を払い続けたうえで協議に臨んでください。

確認する順序は、(1) 固定資産税など公租公課がいくら上がったか、(2) 近隣の借地の地代水準はどうか、(3) 更地価額に対して現行地代が何%にあたるか、の3点です。土地の固定資産税は地主の負担ですが、その税額は借地人でも確認できます。負担区分の詳細は借地権の固定資産税は誰が払うかで扱っています。更新の時期が近く更新料も同時に提示されている場合は、借地権の更新料の相場と拒否された場合もあわせて確認してください。

要点: 地代の妥当性は、更地価額の年6%を上限側の目安に置いて比べます。増額請求を受けても、協議が続いている間は自分が相当と認める額を払い続ければ足ります。

借地を持ち続けるとどんな費用がかかる?

借地の費用は毎月の地代だけではなく、更新・譲渡・契約開始といった節目にまとまった一時金が発生します。いずれも法律が金額を定めているわけではなく、契約書の定めと地域の慣行で決まるため、支払いの根拠を確認できるかどうかで交渉の余地が変わります。

更新料

借地権の更新料に、法律上当然の支払い義務はありません。契約書に更新料の定めがあるか、これまで支払ってきた慣行があるかで結論が変わります。金額にも公的な統計はなく、借地権価格を基準にした実務上の目安があるだけです。提示された額が妥当かは、路線価図から出した自分の土地の借地権価格を分母に置いて検証できます。支払わなかった場合に契約解除まで進むかどうかも、定めの有無で分かれます。相場の出し方と高額な提示への対応は借地権の更新料の相場と拒否された場合で解説しています。

権利金

権利金は、借地契約を結ぶときに地主へ支払う、返還されない一時金です。敷金や保証金と違い、契約が終わっても戻ってきません。金額の基準になるのは更地価格そのものではなく、その土地の借地権割合を掛けた借地権価格です。相当の地代を支払う契約では権利金を授受しない形もあり、地域の慣行によって支払わないケースもあります。更新料・承諾料との性質の違いを押さえておくと、請求の根拠を確認しやすくなります。目安の出し方と不要になる場面は借地権の権利金の相場と性質にまとめています。

固定資産税

土地の固定資産税は地主、借地上の建物の固定資産税は借地人が負担します。固定資産税は所有者に課される税金で、土地と建物は別々の固定資産として扱われるためです。ただし土地の税額は地代の算定根拠に織り込まれているのが通常で、地主の税負担が上がれば地代の増額を求められる場面が出てきます。土地がいくらの税額なのかは、借地人でも固定資産課税台帳の閲覧によって確認できます。負担が入れ替わる例外と確認方法は借地権の固定資産税は誰が払うかで扱っています。

譲渡承諾料

賃借権の借地権を第三者へ譲渡するには、地主の承諾が必要です。承諾を得ないまま譲渡すると、地主は契約を解除できます。承諾の対価として求められるのが承諾料で、金額は借地権価格を基準に個別に決まります。承諾が得られない場合でも、裁判所に申し立てて承諾に代わる許可を得る道が残されています。相続による承継は譲渡にあたらないため、承諾も承諾料も不要です。承諾が要る場面と要らない場面の切り分けは借地権譲渡の承諾と承諾料で整理しています。

借地権割合で出た金額と実際の売却価格はなぜ違う?

路線価が公示価格等の80%程度に置かれ、そこへ借地権割合を掛ける二段の減衰で評価額が成約価格とズレる仕組みの図
ズレは路線価の80%水準と出口ごとの前提という2段階で生まれる(出典: 国税庁「令和8年分の路線価等について」を基に当社作成)

借地権割合で出るのは相続税・贈与税の評価額で、実際の成約価格とは前提が二重に違います。路線価そのものが地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定められているうえ、成約価格は地主の承諾の見通しと残存期間で動くためです(国税庁「令和8年分の路線価等について」、2026年7月公開)。

ズレの発生源を分解すると理解が早まります。1段目は路線価の水準です。路線価等は1月1日を評価時点として、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定められています。2段目がそこに借地権割合を掛ける操作です。つまり評価額は「8割水準の土地価格にさらに割合を掛けた数字」です。当社はこの二段構えを、相続の場面では納税者に有利に働き、売却の場面では判断を誤らせる材料になると見ています。だから相続税の申告書に載った借地権の評価額を、そのまま売却の期待値として親族間の分割協議に持ち込むのは避けてください。

割合が同じでも出口によって手取りが変わります

同じ借地権割合の土地でも、どの出口を選ぶかで手取りは変わります。出口ごとに効いてくる法制度と、価格の前提が違うためです。

出口 価格の前提になるもの 効いてくる法制度 割合どおりになりにくい理由
第三者へ売却 買主が住宅ローンを組めるか 借地借家法19条(承諾に代わる許可) 承諾料と承諾が下りる時期が価格から差し引かれる
地主に買い取ってもらう 地主の資金余力と底地の活用計画 任意交渉(地主に応じる義務なし) 地主にとっては底地に借地権を戻す取引で、相場観が第三者と違う
契約終了時に建物を買い取らせる 建物の時価 借地借家法13条(建物買取請求権) 対象は建物であって借地権ではない
そのまま持ち続ける 地代・更新料の年間負担 借地借家法3条・4条(存続期間) 現金化されず、負担だけが続く

借地借家法の各条文と国税庁の評価基準をもとに当社が整理(2026年8月時点)。売却・買取の価格水準は借地権の売却相場で扱っています

評価額を売却の期待値と取り違えたまま出口を決めると、あとから条件を戻せなくなります。とくに解体費を負担して無償で返すという選択は、いったん更地にしてしまうと引き返せません。

借地権割合は価格の予想ではなく交渉の共通言語です

当社は、借地権割合を売却価格の目安ではなく、地主との交渉の共通言語として使うべきだと考えています。理由は評価の構造にあります。借地権の評価が「更地価額×借地権割合」、底地の評価が「更地価額−更地価額×借地権割合」である以上、この割合は借地人と地主の取り分を同時に定義する唯一の公的な基準です(前掲・国税庁の貸宅地の評価基準、2026年8月時点)。価格の予想に使えば「割合どおりに買い取れない」と押し戻されますが、配分の出発点として使えば、双方が同じ数字を見ながら条件を詰められます。

もう1点、借地権の取引慣行がないと認められる地域では、貸宅地の評価上、借地権割合を20%として計算する取扱いがあります。路線価図に記号が見当たらない土地でも、借地権の価値がゼロとして扱われるわけではありません。なお税額や登記の個別判断は事情によって結論が変わるため、実際の申告・手続きは税理士や司法書士にご相談ください。

要点: 評価額と成約価格のズレは、路線価の80%水準と出口ごとの前提という2段階で生まれます。割合は価格の予想ではなく、地主と配分を話し合うための目盛りとして使ってください。

借地権を手放すときどんな選択肢がある?

借地権を手放す方向は、第三者へ売る・地主に買ってもらう・地主に返すの3つです。いずれも地主の承諾か、承諾に代わる裁判所の許可が前提になります。どの方向でも権利関係の確認が先に来るため、契約書と登記事項証明書を手元に揃えてから動くと話が早く進みます。

借地権を売却する方法と流れ

借地権は売却できますが、賃借権として設定されている場合は譲渡に地主の承諾が必要です。売却先は地主、第三者、借地権を扱う買取業者、地主と共同で売る同時売却の4方向があり、どこに売るかで承諾の取りやすさと手取りが変わります。承諾を断られたときは、裁判所に申し立てて承諾に代わる許可を得る借地非訟という手続きが残されています。打診から承諾書の取り付けまでの進め方と、手続きが止まりやすい場面は借地権を売却する4つの方法と流れで解説しています。

地主・業者に買い取ってもらう

地主に買い取ってもらう方法は、承諾料が不要になり、権利関係が地主に一本化されるため話が早く進む場合があります。ただし地主に応じる義務はなく、資金余力や底地の活用方針次第で断られます。借地権を扱う買取業者へ売る場合は、業者が地主との交渉と承諾取得を引き受ける形が一般的です。契約が更新されずに終わる場面では、建物を時価で買い取らせる請求もできます。交渉の進め方と断られた後に残る選択肢は借地権を地主・業者に買い取ってもらう方法にまとめています。

売却価格の計算

借地権の売却価格を概算する式は、更地としての土地の価額に借地権割合を掛けたものです。路線価図に「300C」とあれば1平方メートルあたり30万円・借地権割合70%なので、地積を掛けて7割を取れば評価額の目安が出ます。ただし式が返すのは相続税を計算するための金額で、成約価格はそこから承諾料や残存期間の影響を受けて動きます。定期借地権では計算方法自体が変わります。式の使い分けと実勢価格とのズレの詰め方は借地権売却価格の計算方法で扱っています。

査定で見られる項目

借地権の査定額は、更地価格に借地権割合を掛けた金額を出発点に、契約条件と地主の承諾の見通しで上下します。見られるのは、借地権の種類、残存期間、地代と更新料の水準、地主の承諾の得やすさ、建物の状態といった項目です。承諾が得られる見込みの立たない物件や残存期間の短い物件は、買主の資金調達が難しくなるぶん査定額が下がります。評価項目の中身と査定額が下がる要因は借地権の査定で見られるポイントで整理しています。

借地権付き建物を売る手順

借地権付きの建物は、借地権と建物をまとめて売却できます。手順は、契約書と登記の確認、査定、地主への打診、売却先の決定、譲渡承諾の取り付け、売買契約、引渡しという流れです。承諾の打診は買主が決まる前後どちらでも進められますが、条件が固まらないうちに切り出すと地主が判断できず止まりやすくなります。建物の名義が亡くなった方のままであれば、先に相続登記が必要です。着手から引渡しまでの順序は借地権付き建物を売却する手順で解説しています。

売れないときの切り分け

借地権付き建物が売れないときは、地主の承諾、買主の資金調達、買える人の少なさという3つの層のどこで止まっているかを切り分けます。承諾で止まっているなら裁判所の許可を求める道があり、資金調達で止まっているなら現金で買える相手を探す方向に切り替えます。買主の候補が少ないこと自体は、価格を下げるだけでは解決しません。原因の切り分け方と層ごとの打ち手は借地権付き建物が売れない理由と対処法にまとめています。

定期借地権マンションの場合

定期借地権マンションが売れにくいのは、建物の状態ではなく契約の設計によるものです。住める期間が契約の残存期間で区切られ、買主の住宅ローン年数もそれに縛られ、管理費と修繕積立金に加えて地代の負担が毎月続きます。残存期間が短くなるほど条件は厳しくなるため、いつ動くかで打ち手が変わります。残存期間ごとの現実的な売り方は定期借地権マンションが売れないときの選択肢で扱っています。

地主に返すという選択

借地を返すときは、建物を取り壊して更地にしてから返すのが原則です。ただし借地権は相続税や贈与税の対象になる財産で、無償で手放す義務まで負うわけではありません。契約が更新されずに終わる場面なら、建物を時価で買い取らせる請求ができます。解体費を負担して無償で返す場合と、売却して現金を得る場合とでは手取りが大きく変わります。返すべき場面と売るべき場面の分かれ方は借地権を地主に返す前に知るべき損得で解説しています。

売却にかかる税金

借地権を売って利益が出た場合は、譲渡所得に対して所得税・住民税・復興特別所得税がかかり、売買契約書には印紙税がかかります。税率は売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで2段階に分かれます。税額を大きく動かすのは取得費と譲渡費用の出し方で、地主へ支払った承諾料や解体費の扱いも結論に影響します。計算の順序と確定申告までの流れは借地権売却にかかる税金の種類と計算で扱っています。

当社は、地主の承諾がまだ取れていない借地権や、残存期間が短く仲介では買主がつかない借地権も、権利の内容を確認したうえで直接買い取っています。承諾の交渉を売主側で完了させてから動く必要はありません。

借地権割合についてよくある質問

Q. 借地権割合は毎年変わりますか?

路線価等は毎年公開され、その年の1月1日が評価時点になります。令和8年分は2026年7月1日に公表されました。ただし借地権割合の区分(A〜G)は地域の借地事情に基づいて定められるため、路線価そのものほど頻繁には動きません。相続や売却の手続きで使うときは、対象になる年分の路線価図を開いて確認してください。

Q. 路線価図に借地権割合の記号がない土地はどう評価しますか?

路線価図に「倍率地域」と表示されている地域では、評価倍率表を使い、固定資産税評価額に評価倍率を掛けて自用地の価額を出します。借地権割合は評価倍率表の側に記載されています。また借地権の取引慣行がないと認められる地域では、貸宅地の評価上、借地権割合を20%として計算する取扱いがあります(国税庁「貸宅地の評価」、2026年8月時点)。

Q. 借地権は誰に売れますか?

売却先は、地主、第三者の個人・法人、借地権を扱う買取業者の3方向です。賃借権であれば譲渡に地主の承諾が必要で、承諾を断られた場合は裁判所に承諾に代わる許可を申し立てられます(借地借家法19条1項)。売却先ごとの手取りと手続きの違いは、前章「借地権を手放すときどんな選択肢がある?」で扱っています。

まとめ

借地権割合は、国税庁の路線価図に記号A〜Gで示され、そのまま割合を表します。この数字で出るのは相続税・贈与税の評価額で、路線価が地価公示価格等の80%程度を目途に定められている以上、成約価格とは前提が違います。判断は種類・権利関係・費用・出口の順に進めると手戻りが起きません。

最初の一歩は、借地権の基礎(普通借地権・定期借地権の違い)で種類を確定させ、路線価図で記号を確認することです。手放す方向に進むなら借地権を売却する4つの方法と流れへ進んでください。

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