借地権の譲渡に承諾が要るのはどの場面?承諾料と断られた後の3つの出口

借地上の建物を第三者に売る話がまとまっても、地主の承諾を得ないまま譲渡すると、民法は地主に契約の解除を認めています。承諾を断られた場合でも、裁判所に申し立てて承諾に代わる許可を得られれば、譲渡を進める道は残されています。承諾が要る場面と要らない場面、承諾料の決まり方、断られた後に選べる出口を順に整理します。借地権を体系的に知りたい方は借地権の基礎からの解説が便利です

借地権の譲渡とは?転貸・建物の賃貸・相続とどう違うのか

譲渡・転貸・建物の賃貸・相続の4類型を「誰の意思で動いたか」と「土地の使用者が変わるか」の2軸に配置し承諾の要否を分けた図
使用者が変わる上半分(譲渡・転貸)だけが承諾の対象になるという判定原理を2軸で示しています(出典: e-Gov法令検索「民法」を基に当社作成)

借地権の譲渡とは、土地を借り続けられる契約上の地位を、そのまま第三者へ移すことです。民法612条1項は、賃借人が賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲り渡すことも、賃借物を転貸することもできないと定めています(e-Gov法令検索「民法」、2026年8月時点)。

譲渡・転貸・建物の賃貸は何が違うのか

条文が承諾の対象としているのは、賃借権の譲渡と、賃借物である土地の転貸の2つです。譲渡は借りる立場そのものを入れ替える行為、転貸は借りる立場を自分に残したまま土地を又貸しする行為で、地主から見れば「相手が替わる」か「知らない人が土地を使い始める」かの違いになります。

一方で、借地上に建てた自分の建物を人に貸すことは、土地そのものを又貸しする行為とは区別されます。建物の所有者も借地人も変わらないためです。

借地権は建物を所有するための権利であるため、借地権だけを単独で売買することはほとんどなく、建物とセットで譲るのが通常です。そのため契約書や登記の場面では「借地上の建物の譲渡」という言い方をします。建物側の扱いについては借地権付き建物とは・購入と売却の基礎で詳しく扱っています。なお、旧法借地権・普通借地権・定期借地権といった種類ごとの定義は借地権の基礎(普通借地権・定期借地権の違い)にまとめています。

自分の行為はどの類型に当たるのか

譲渡・転貸・建物の賃貸・相続による承継の4つに分けると、承諾が要るかどうかを条文の側から判定できます。当社が訳あり物件のご相談を受けたとき、価格の話より先に確認している切り分けです。

類型 何が起きるか 根拠条文 地主の承諾 承諾料の慣行
譲渡 借地人が第三者に入れ替わる 民法612条1項 必要 あり(譲渡承諾料・名義書換料)
転貸 借地人はそのままで、第三者が土地を使う 民法612条1項 必要 あり
建物の賃貸 借地人が自分の建物を貸すだけで、土地の使用者は変わらない 不要 なし
相続による承継 借地人の地位が相続人へ法律上当然に移る 民法896条 不要 なし

4類型の切り分けは当社の判断軸に基づく整理です。根拠条文は前掲の民法612条1項・896条(2026年8月時点)です。

承諾が要るかどうかは、権利が「誰の意思で動いたか」で決まります。

借地権の譲渡に地主の承諾が要るのはどの場面か?

売却・生前贈与・遺贈・財産分与・共有持分の移転・法人への名義変更の6場面が承諾必要、相続のみ不要と分かれる判定フロー図
見落とされやすいのは共有持分の一部移転と法人化に伴う名義変更で、いずれも承諾側に分岐します(出典: e-Gov法令検索「民法」を基に当社作成)

地主の承諾が必要なのは、売買・贈与・遺贈・財産分与など、当事者の意思で借地権を移す場面です。民法612条1項が承諾を求めているのは「賃借権を譲り渡す」行為であり、対価の有無や相手が親族かどうかは条件になっていません(e-Gov法令検索「民法」、2026年8月時点)。

承諾が要るのはどんな行為か

判定の軸は1つで、その行為が「賃借権を譲り渡す」ことに当たるかどうかです。無償だから軽い、身内だから不要、という区別は条文にありません。

場面 承諾 補足
第三者への売却 必要 最も典型的な譲渡
生前贈与(家族・知人へ無償で渡す) 必要 対価がなくても譲り渡しに当たる
遺贈・死因贈与 必要 遺言による特定の相手への譲渡
離婚に伴う財産分与 必要 名義が配偶者へ移る
賃借権の共有持分の移転 必要 持分だけでも借地人の顔ぶれが変わる
個人から自分の法人への名義変更 必要 実質が同じでも法律上は別人格

場面の分類は当社の判断軸に基づく整理で、判定基準は前掲の民法612条1項です。

見落とされやすいのが最後の2つです。共有持分の一部移転や、個人事業を法人化したときの名義変更は、本人の感覚では「中身は変わっていない」のに、法律上は別人が借地人になる譲渡として扱われます

対価の有無や相手が身内かどうかは、承諾の要否を左右しません。

相続で引き継いだ場合はなぜ承諾が要らないのか

相続による承継は、当事者が権利を動かしたわけではありません。民法896条は、相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めており、借地人の地位も法律上当然に相続人へ移ります(前掲の民法896条、2026年8月時点)。譲り渡す意思表示がない以上、612条1項の承諾の対象になりません

ただし承諾が不要であることと、地主に黙っていてよいことは別です。名義と地代の振込元が黙って変わると、地主に無断譲渡を疑われかねません。承諾料の支払い義務がないからこそ、相続の事実は早めに書面で伝えておくほうが後の交渉が進みます。相続で引き継いだ後の手続き全体は、借地権の基礎からの解説にまとめています。

無断で譲渡するとどうなるのか

民法612条2項は、賃借人が承諾を得ずに第三者へ賃借物を使用・収益させたとき、賃貸人は契約の解除をすることができると定めています(前掲の民法)。解除されれば借地権そのものを失い、土地を明け渡す立場になります。実際に解除が認められるかどうかは個別の事情も踏まえて判断されるため、見通しの確認は弁護士にご相談ください。

困るのは売主だけではありません。承諾がないまま建物を買った側も、地主に対して土地を使う権利を主張できず、代金を払ったのに土地を使えない状態に置かれます

立場 無断譲渡で起きること
譲渡した借地人 契約を解除され、借地権を失うおそれがある
建物を取得した第三者 賃借権を地主に主張できず、土地の利用が確保できない
地主 望まない相手が土地を使い始める

要点: 承諾は売買条件の一部ではなく、譲渡が成立するかどうかを決める前提条件です。買い手を探す前に、承諾を得られる見込みを先に確かめておくと、契約後のやり直しを避けられます。

借地権の譲渡承諾料はいくらになるのか?

借地権価格の算出から鑑定委員会の意見聴取までの金額決定プロセスと、交渉前に分解する3要素を左右に並べた図
法定の料率がないため、金額そのものより内訳の分解が交渉の起点になります(出典: 裁判所「借地非訟事件手続の流れ」、国税庁「借地権の評価」を基に当社作成)

譲渡承諾料に法律で決められた料率はなく、裁判所も事案ごとに財産上の給付として金額を定めます。承諾料は、譲渡を認める見返りとして地主へ支払う金銭で、名義書換料や名義変更料とも呼ばれます(e-Gov法令検索「借地借家法」、2026年8月時点)。

なぜ「相場」がはっきりしないのか

借地借家法19条1項は、裁判所が承諾に代わる許可を与える場面について、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは「その許可を財産上の給付に係らしめることができる」と定めるにとどまります(前掲の借地借家法)。金額も割合も条文には書かれていません。

裁判所が金額を判断する場面でも、弁護士・不動産鑑定士・有識者から指定された鑑定委員会の意見を聴いたうえで決められ、その金銭は実務上「名義変更料」などと呼ばれています(裁判所「借地非訟事件手続の流れ」、2026年8月時点)。裁判所ですら専門家の意見を経て事案ごとに決めている以上、一律の正解となる数字は存在しません。提示された金額を所与の条件として受け取らず、何を根拠に算出したのかを尋ねてよい場面です。

なお金額の基礎になる借地権価格は、路線価図や評価倍率表に表示された借地権割合から求めます(国税庁「借地権の評価」、2026年8月時点)。借地権割合の読み方は、同じく借地権の基礎からの解説で扱っています。

承諾料を交渉する前に何を分解すべきか

当社は、提示された金額そのものを値切る前に、何に対する対価なのかを分解することをおすすめしています。承諾は1種類ではなく、譲渡の承諾と抵当権設定の承諾では、地主が引き受けるリスクの中身が違うためです。

分解する要素 確認すること 交渉での意味
何の承諾に対する対価か 譲渡だけか、抵当権設定や条件変更を含むか 一括提示なら内訳を分けて協議できる
借地権の残存期間と建物の状態 残期間が短い・建物が古い 買い手が限られる事情は金額に反映される
承諾と同時に決める条件 地代・契約期間・建替えの可否 金額だけ下げても条件が悪化しては意味がない

分解の3要素は当社が訳あり物件のご相談で用いている判断軸に基づきます。

承諾料の交渉は、金額の勝負ではなく内訳の合意です。なお、支払った承諾料を税金の計算でどう扱うかは借地権売却にかかる税金の種類と計算で整理しています。個別の税額は事情によって変わるため、判断は税理士にご相談ください。

地主に承諾を断られた後、選べる出口は?

裁判所の許可・地主への売却・業者買取の3つの出口を、かかる時間と承諾という関門の2軸に配置した比較図
右上ほど時間をかけて権利を通す道、左下ほど承諾の関門を回避して早く見極める道になります(出典: e-Gov法令検索「借地借家法」を基に当社作成)

承諾を断られた後の出口は、裁判所の許可・地主への売却・現況での業者買取の3つです。借地借家法19条1項は、第三者が賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないにもかかわらず承諾しないとき、裁判所が承諾に代わる許可を与えられると定めています(e-Gov法令検索「借地借家法」、2026年8月時点)。

出口 かかる時間 費用の性質 確実性 向いている状況
裁判所の許可(借地非訟) 長い 弁護士費用と申立費用が中心 要件を満たせば承諾なしで進められる 地代の支払いなど契約上の義務を守ってきた
地主に買い取ってもらう 中程度 交渉コストのみ 地主の資金次第 地主が土地を完全な所有権に戻したい
現況のまま業者に買い取ってもらう 短い 価格に反映される 買主が確定するため承諾の可否を早く見極められる 期限があり、建物が古い・残置物がある

3つの出口の評価軸は当社の判断軸に基づく整理です。

出口1|裁判所に承諾に代わる許可を求めるには

借地借家法19条1項の許可は、地主が困らないのに反対している状況を前提にしています。裁判所は判断にあたり、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、譲渡を必要とする事情、その他一切の事情を考慮しなければならないと定められています(前掲の借地借家法19条2項)。

ここで効いてくるのが「従前の経過」です。地代の滞納や無断の増改築が続いていると、この項目で不利に働きます。申立てを検討する前に、契約上の義務を整えておくことが実務上の準備になります。手続きの進み方や費用の詳細は借地権を売却する4つの方法と流れで扱っています。実際に申し立てるかどうかは経緯によって結論が変わるため、個別の判断は弁護士にご相談ください。

出口2|地主に買い取ってもらうという選択は

地主に買ってもらう場合、譲渡の承諾という関門がそもそも発生しません。土地が完全な所有権に戻ることは地主にとっても利点があり、交渉相手が1人で完結します。

裁判所への申立てをした後でも、地主が自ら建物と賃借権を譲り受けると申し立てれば、裁判所は相当の対価を定めてこれを命じることができます(前掲の借地借家法19条3項)。第三者へ売るつもりで始めた手続きが、地主への売却に着地することもあるということです。交渉の進め方は借地権を地主・業者に買い取ってもらう方法、価格の水準は借地権の売却相場にまとめています。

出口3|現況のまま買取業者に引き取ってもらうには

買取業者に売る場合、買主が最初から確定しているという構造上の違いがあります。当社が承諾の交渉に立ち会う場面で地主から確認されるのは、地代を払い続ける相手かどうかと、土地の使い方が変わらないかどうかの2点です。買主が未定のまま打診すると地主は答えようがありませんが、買主と条件が固まっていれば、承諾を得られるかどうかを早い段階で見極められます。

当社の買取くん(株式会社リアテクス)は、借地権や再建築不可などの訳あり物件を現況のまま直接買い取っており、提携する弁護士・司法書士・土地家屋調査士と組んで承諾の交渉や登記まで対応しています。買い手が個人の場合は住宅ローンのために抵当権設定の承諾が別途必要になり、そこで話が止まることがありますが、自己資金で購入する買取であればこの問題は起きません。その代わり、承諾が取れないリスクや引き取り後の負担を当社が引き受けるぶん、価格は仲介で買い手を探す場合より低くなります。

承諾を断られた時点が終わりではなく、そこから選び方が始まります。

要点: 3つの出口は「時間をかけて権利を通す」か「相手を替えて話を単純にする」かの選択です。地代の支払い実績が整っているなら裁判所の許可、期限が迫っているなら買主が確定する方法が現実的な選び方になります。

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地主の承諾がまだ取れていない借地権でも、買い取れるかを先に確かめられます。

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借地権の譲渡についてよくある質問

競売や公売で借地上の建物を取得した場合も、地主の承諾は必要ですか?

必要ですが、申立てができる人が通常の売買とは異なります。借地借家法20条1項は、競売または公売で借地上の建物を取得した第三者が、賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないのに承諾を得られないとき、その第三者自身の申立てにより裁判所が承諾に代わる許可を与えられると定めています。この申立ては、建物の代金を支払った後2か月以内に限られます(前掲の借地借家法20条3項、2026年8月時点)。期限を過ぎると裁判所の許可という道が閉じるため、落札後は速やかに動く必要があります。

借地非訟の途中で地主が「自分が買い取る」と言い出したら、申立てを取り下げられますか?

その裁判が出た後は、当事者の合意がなければ取り下げられません。借地借家法19条3項により、裁判所が定めた期間内に地主が自ら建物と賃借権を譲り受ける旨を申し立てると、裁判所は相当の対価を定めてこれを命じることができます。そして同条5項は、この裁判があった後は当事者の合意がある場合でなければ申立てを取り下げることができないと定めています(前掲の借地借家法)。第三者に売るつもりで申し立てた以上、地主への売却に着地する可能性も織り込んだうえで手続きを選ぶことになります。

借地権を転貸する場合の承諾料も、譲渡と同じ考え方でよいのですか?

承諾が必要な点も、金額に法定の基準がない点も同じです。民法612条1項は賃借権の譲渡と賃借物の転貸を並べて承諾の対象としており、借地借家法19条1項の裁判所の許可も譲渡と転貸の両方を対象にしています。許可を財産上の給付に係らしめることができるという枠組みも共通です(前掲の民法・借地借家法)。ただし転貸では借地人が契約の当事者として残るため、地代の支払い義務や契約違反の責任は借地人に残る点が譲渡とは異なります。

承諾が得られないまま建物を買ってしまった買主は、地主に何を請求できますか?

建物を時価で買い取るよう請求できます。借地借家法14条は、第三者が借地上の建物などを取得した場合において、地主が賃借権の譲渡または転貸を承諾しないとき、その第三者は地主に対して建物などを時価で買い取るべきことを請求できると定めています(前掲の借地借家法)。土地を使えないまま建物だけを抱え込む事態を避けるための規定ですが、望んだ土地を手に入れる手段ではありません。買主の立場でも、決済の前に承諾の見込みを確認しておくほうが安全です。関連する論点を横断して確認したい方は、借地権の全体像を見直すところから始めると迷いにくくなります。

まとめ

借地権の譲渡で承諾が要るかどうかは、権利が当事者の意思で動いたのか、相続で法律上当然に移ったのかで決まります。承諾料には法律の定めがなく、裁判所も鑑定委員会の意見を聴いて事案ごとに金額を判断しているため、提示額は内訳を分けて協議できる余地があります。断られた後も、裁判所の許可・地主への売却・現況での買取という3つの出口が残っており、契約上の義務を守ってきたか、期限がどれだけ迫っているかで選び方が変わります。

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