0円物件の探し方とデメリット・実費試算・手放す出口まで解説

0円物件(ゼロ円物件)とは、売買価格を0円に設定して無償で引き渡される空き家や土地のことです。ただし取得の総額が0円になることはなく、登記の税金や毎年の維持費が別にかかります。この記事では探し方から実費、手放す側の出口までを、公的機関の統計と税法令にもとづいて整理します。

この記事で分かること

  • 0円物件が0円で出回る仕組みと、「ゼロ円物件」表記との関係
  • マッチングサイト・空き家バンク・自治体窓口という3つの探し先の使い分け
  • 温泉付き・別荘や、関東・関西など条件とエリアごとの探し方の勘所
  • 固定資産税評価額から逆算した、取得側の実費の目安
  • 使わない実家・別荘を手放したい側の出口4つと、選び方の順番

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0円物件(ゼロ円物件)とは?無償で譲渡される仕組みと背景

空き家900万2千戸のうち0円物件の母集団に近い385万6千戸と、勧告で住宅用地特例が外れる流れを示した図解
900万戸をそのまま予備軍と読むと実態を過大に見積もる。持ち続けるほど増える負担が0円譲渡を後押しする(出典: 総務省「令和5年住宅・土地統計調査」、国土交通省 改正空家法の概要を基に当社作成)
0円物件(ゼロ円物件)とは、売買価格を0円に設定して無償で引き渡される空き家や土地のことです。所有しているだけで税金と管理費がかかる不動産を、所有者が負担ごと手放すために生まれます。取得する側から見れば購入代金はかかりませんが、名義変更にともなう税金は別に発生します。

無償での引き渡しは、法律上は個人間の贈与として扱われるのが一般的です。贈与を受けた不動産には所有権移転登記が必要になり、登録免許税と贈与税、さらに不動産取得税が課税対象になります。「0円」はあくまで売買価格であって、取得の総額を指す言葉ではありません

扱う範囲が広いテーマなので、自分の関心がどの章に対応するかを先に確認しておくと迷わずに読み進められます。

知りたいこと 対応する章 詳しく読む記事
そもそもなぜ0円で出るのか 「0円物件とは?」の後半 本記事
どこで探せばいいか 「0円物件はどこで探せる?」 サービス・空き家バンク別の個別記事
温泉付き・別荘を探したい 「条件・エリア別に探すコツ」 温泉付き0円物件の個別記事
地域を絞って探したい 「条件・エリア別に探すコツ」 都県・市別の個別記事
もらった後に損しないか 「0円物件の落とし穴は?」 後悔・費用の個別記事
取得後の税金・登記の負担を知りたい 「0円物件の落とし穴は?」 本記事+後悔・費用の個別記事
逆に自分の家を手放したい 「手放したい側の出口は?」 本記事+買取の解説
判断に迷ったときの相談先 「よくある質問」 本記事

もらいたい側の方は探し方と落とし穴の章を、手放したい側の方は後半の出口比較の章を起点にすると、必要な情報に最短でたどり着けます。

0円物件と格安物件・事故物件はどう違うのか

3つはいずれも「相場より安い物件」に見えますが、区別の基準がまったく違います。0円物件は価格そのものが0円、格安物件は有償で相場より安いだけ、事故物件は価格の多寡ではなく告知事項の有無で区別されます。

0円物件のなかに再建築不可の土地や過去にトラブルのあった建物が含まれることはありますが、0円だから訳あり、と決めつける必要はありません。判断すべきは価格の数字ではなく、取得後にかかる費用と使い道です。同じ0円でも、上下水道の引き込み状況、温泉権利、別荘地の管理組合費といった継続コストの有無で、実質的な負担は大きく変わります。

「ゼロ円物件」と表記が分かれる理由と読み替え方

「0円物件」と「ゼロ円物件」は同じものを指します。表記が分かれているのは、掲載サイトや自治体が使う表記が統一されていないためで、意味の違いはありません。

マッチングサイトでは半角数字の「0円物件」、読み物やメディア記事では読みやすさを優先した「ゼロ円物件」が使われる傾向があります。似た言葉に「無償譲渡物件」「0円不動産」もありますが、これらも無償で引き渡される不動産という点では同義です。検索するときは表記を変えて試すと、片方だけでは出てこない掲載や自治体の告知が拾えます。

なぜ0円で手放す所有者がいるのか

背景にあるのは、使わない家を持ち続けるほど税金と管理の負担が積み上がる構造です。全国の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%といずれも過去最高を更新しました(総務省「令和5年住宅・土地統計調査 基本集計」、2024年9月公表・2023年10月1日現在)。

ただし900万戸には賃貸用・売却用の空き家や別荘などの二次的住宅も含まれます。賃貸にも売却にも回っていない「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は385万6千戸で、総住宅数の5.9%にあたります(同調査)。0円物件の母集団に近いのはこちらの385万6千戸で、900万戸をそのまま予備軍と読むと実態を過大に見積もることになります。

0円譲渡に踏み切る所有者の事情は、いくつかの型に分かれます。相続した実家が遠方にあり、管理に通う交通費と固定資産税だけが続いている場合。バブル期に買った別荘やリゾートマンションを使わなくなり、管理費と修繕積立金が毎年発生している場合。兄弟や親族との共有名義で意見がまとまらず、売るに売れないまま時間が過ぎている場合。そして自治体や近隣から管理について連絡を受け、対応が難しくなった場合です。いずれも、持ち続けるほど支出と責任が増えるという点が共通しています

「解体すればいい」で済まない固定資産税の仕組み

使わないなら壊せばいい、という発想が通りにくいのは、住宅が建つ土地に適用されている固定資産税の軽減が外れるからです。国は、市区町村長から勧告を受けた管理不全空家について固定資産税の住宅用地特例(1/6等に減額)を解除すると定めています(国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律について」改正概要、令和5年12月13日施行)。小規模住宅用地の1/6の軽減が完全に外れれば、税額は理論上6倍まで上がる計算になります。ただしこの6倍は軽減率から逆算した上限値であり、評価額や土地・建物の内訳、課税標準の負担調整の仕組みによって、実際の納税額がそのまま6倍になるとは限りません。

管理不全空家は2023年の法改正で新設された区分で、特定空家に至る前の段階でも指導・勧告の対象になります。放置しても勧告で税負担が増え、解体しても更地化で軽減が外れるという板挟みが、0円でも手放したいという判断を後押ししています。なお国土交通省は、使用目的のない空家が1998年の182万戸から2018年に349万戸へ増え、2030年には470万戸に達すると見込んでいます(同概要資料)。

0円物件が向く人・慎重に考えたい人

初期費用を抑えて拠点を持ちたい人や、改修そのものを楽しみたい人には選択肢になります。取得後の改修期間と費用をあらかじめ織り込め、複数の物件を総額で比べられる人ほど、判断を誤りにくくなります。

一方、購入後すぐに住み始めたい人や、新築同様の住み心地を求める人には条件が合いにくいのが実情です。賃貸や民泊での収益化を考える場合は、用途によって建築基準法や旅館業法の規制が関わるため、取得前に自治体の窓口へ確認しておくと安全です。

0円物件はどこで探せる?マッチングサイトと空き家バンクの使い方

全国版空き家・空き地バンクの参加1,146自治体に対し掲載中は742自治体という掲載ギャップを示した図解
参加していても物件未掲載の自治体が3分の1以上あるため、横断検索と自治体窓口への直接照会を二段構えで使う(出典: 国土交通省「全国版空き家・空き地バンク」について・2026年6月末時点)
0円物件の主な探し先は、無償譲渡のマッチングサイトと自治体の空き家バンクの2系統です。仲介手数料が生じない0円物件は不動産会社の収益になりにくく、一般の物件情報サイトにはほとんど掲載されません。この2系統に自治体窓口への直接照会を加えた3つが、実際に動くときの入口になります。

空き家バンクは実際にどこまで機能しているのか

自治体ごとの空き家バンクは横断検索が難しかったため、国土交通省が自治体をまたいで検索できる「全国版空き家・空き地バンク」を構築し、2018年4月から本格運営しています。同省が空き家・空き地バンク総合情報ページで公開している資料によると、2026年6月末時点の運用状況は次のとおりです。

指標 実績
参加自治体数 1,146自治体
うち物件情報を掲載中 742自治体
成約実績(自治体アンケート等による) 約26,000件

データ出典: 国土交通省「『全国版空き家・空き地バンク』について」(2026年6月末時点)

約26,000件という成約実績は、仕組みが実際に機能していることを示しています。注目したいのは参加と掲載の差で、参加1,146自治体に対して掲載中は742自治体にとどまります。参加していても物件を載せていない自治体が3分の1以上あるということです。横断検索だけを眺めていると、その自治体に空き家があっても情報にたどり着けません。狙うエリアが決まったら、横断検索で当たりを付けたうえで、自治体の空き家バンク窓口や移住相談窓口に直接照会する二段構えが有効です。掲載・応募の具体的な手順は0円空き家バンクの使い方と掲載物件の傾向にまとめています。

マッチングサイトと自治体窓口の使い分け

2系統には、それぞれ得意な場面があります。マッチングサイトは全国の物件を横断して見られる代わりに掲載の質にばらつきがあり、空き家バンクは自治体が間に入るぶん一定の信頼性がある代わりに窓口や運用が地域ごとに違います。

どちらを使う場合も、物件情報の更新日、現地確認の可否、問い合わせへの返答スピードを横並びで比べると、掲載されたまま動きが止まっている物件を見分けやすくなります。代表的なマッチングサイトの掲載料や手数料の有無、成約までの流れは、みんなの0円物件の評判・利用者の評価で整理しています。

SNS・地域掲示板は裏取り前提の補助に

SNSや地域の掲示板で個人間の譲り手を探す方法もありますが、仲介者が入らないため、相手の身元と物件情報の裏取りをすべて自分で行うことになります。登記事項証明書で所有者と権利関係を確認せずに話を進めるのは避けてください。まずはマッチングサイトと空き家バンクを軸に据え、SNS等は補助として使う順序が安全です。

条件・エリア別に0円物件を探すコツ

条件やエリアで0円物件の出やすさは大きく変わり、温泉付き・別荘と地方ほど選択肢が増えます。人口が集中する都市部では空き家でも需要があり、0円まで価格が下がらないためです。ここでは条件別とエリア別の当たり方を整理します。

温泉付き・別荘は維持費から逆算して選ぶ

温泉付きや別荘系の0円物件は数が限られ、マッチングサイトと空き家バンクを条件で絞って探すのが基本です。バブル期に建てられたリゾート別荘が、使われないまま維持費だけがかかる状態になり、無償譲渡に回ってくるケースがあります。

ただしこの分野には、一般の空き家にはない固有の継続コストがあります。温泉を引く権利にまつわる費用と、別荘地の管理費・組合費が毎年発生する場合があるため、取得前に年間いくらかかるかを確認しないと、0円で手に入れたのに支出が続くことになります。探し方のコツと温泉権利の確認ポイントは、温泉付き0円物件の探し方と注意点で経路別に解説しています。

関東は都県差が大きく、都心ほど出回らない

関東の0円物件は都県による差が大きく、郊外や北関東では見つかりやすい一方、都心部ではほとんど出回りません。1都6県の探しやすさの違いを俯瞰したうえで狙うエリアを決めると、無駄な検索を減らせます。広域の比較は関東の0円物件事情と都県別の傾向比較で整理しています。

各県の窓口や物件傾向は個別記事が詳しく扱っています。空き家が多く0円物件が出やすい県としては茨城県で0円物件を探す方法栃木県の0円物件の探し方、都市部を含む県では埼玉県の0円物件の探し方神奈川県の0円空き家の探し方が参考になります。東京で0円物件を探すなら、多摩・島しょ部を軸にした探し方で、23区に出回らない理由と現実的な絞り込み方を確認してください。

関西・地方は自治体窓口が入口になる

関西・地方では、府県ごとの空き家事情と自治体窓口を押さえると効率が上がります。過疎化が進む地域ほど無償譲渡に回る家が多く、地元の空き家バンクが有力な入口になるためです。関西全体の傾向は関西エリアの0円物件の探し方にまとめています。

地方の各エリアには固有の事情と窓口があります。東北は岩手県の0円物件の探し方と地域事情、北陸は石川県の0円物件の探し方と注意点、新潟県中越は新潟県長岡市の0円物件の探し方が、移住支援や補助金まで含めて解説しています。このほか福島県西郷村の0円物件の探し方、四国は愛媛県宇和島市の0円物件の探し方、九州は福岡県の0円物件の探し方と傾向が個別に対応しています。地方物件は取得の安さだけでなく、移住後の生活動線と改修費まで見据えて選ぶことが失敗の回避につながります

エリアを絞るときの3つの確認項目

候補地を絞り込む段階では、次の3点を先に確認すると効率が上がります。

  • 自治体の空き家バンクが実際に運用されているか(掲載件数と更新日を見る)
  • マッチングサイトに継続的に新着物件が出ているか
  • 移住支援金や改修補助と併用できる自治体か

1か所に絞りすぎず、複数の候補地を並行して当たっておくと、条件に合う物件に出会える可能性が高まります。

0円物件の落とし穴は?取得側の実費を評価額別に試算

固定資産税評価額100万〜1,000万円別に取得時の税金合計が約5万円から約281万円へ急増することを示した試算グラフ
評価額500万円で概算78万円。増え方が急なのは贈与税が累進課税だから(出典: 国税庁「登録免許税の税額表」「贈与税の計算と税率」、総務省「不動産取得税」を基に当社試算)
0円物件でも登録免許税・贈与税・不動産取得税がかかり、取得の総額は0円になりません。しかも税額は物件の固定資産税評価額から決まるため、評価額の高い物件ほど負担が重くなります。ここでは実際にいくらかかるのかを、評価額別に試算します。

取得時にかかる3つの税金を評価額別に試算する

まず税率を確認します。贈与による所有権移転登記の登録免許税は不動産の価額の2%(1,000分の20)で、相続の場合の0.4%(1,000分の4)より高くなります(国税庁「登録免許税の税額表」、令和7年4月1日現在法令等)。贈与税は基礎控除110万円を超える部分に速算表の税率がかかります(国税庁「贈与税の計算と税率」国税庁「贈与税がかかる場合」)。不動産取得税は標準税率4%、土地と住宅は軽減税率3%が適用され、有償か無償かを問わず所有権を得た事実に対して課税されます総務省「地方税制度 不動産取得税」)。相続による取得は原則非課税です。

これらを同じ前提で合算すると、次のようになります。

固定資産税評価額 登録免許税(2%) 贈与税(一般税率) 不動産取得税(3%) 合計の目安
100万円 2万円 0円 3万円 約5万円
300万円 6万円 19万円 9万円 約34万円
500万円 10万円 53万円 15万円 約78万円
800万円 16万円 151万円 24万円 約191万円
1,000万円 20万円 231万円 30万円 約281万円

試算の方法と前提: 対象は固定資産税評価額(土地+建物の合計)5区分、期間は2026年7月時点の法令です。登録免許税は評価額×2%、贈与税はその年に他の贈与がない前提で(評価額−110万円)に一般税率の速算表を適用、不動産取得税は評価額×3%として算出しました。住宅用地の軽減特例と新築住宅控除は適用前の金額です。データ出典は国税庁 登録免許税の税額表国税庁 贈与税の計算と税率総務省 不動産取得税です。

要点

  • 評価額500万円の0円物件でも、取得時の税金だけで概算78万円かかる
  • 評価額が1,000万円になると概算281万円まで増える。増え方が急なのは贈与税が累進課税だから
  • 住宅用地の軽減特例の要件を満たせば不動産取得税は下がり、実質非課税になる場合もある
  • 親や祖父母から18歳以上の子・孫への贈与は特例税率が使え、評価額500万円なら贈与税は48.5万円と一般税率より低い
  • 司法書士に登記を依頼する場合の報酬は別途かかる

比較軸を「取得の総額」に置き直すと、0円物件は価格0円でも評価額しだいで数十万円から数百万円の初期費用が発生する取引だと分かります。物件を探し始める前に、候補物件の固定資産税評価額を所有者または市区町村に確認し、自分がどの負担帯に入るかを把握しておくと、価格ではなく総額で候補を比べられます。個別の税額計算や申告の要否は、税理士・司法書士に確認しながら進めてください。

取得後に毎年かかる維持費と管理責任

初期費用を乗り越えても、所有した翌年から固定資産税と都市計画税が毎年かかります。これに加えて、建物の修繕、庭や敷地の草刈り、遠方であれば通うための交通費が積み上がります。別荘地であれば管理費・組合費も毎年発生します。

見落とされやすいのが管理責任です。適切な管理が行われない状態が続くと、市区町村長から管理不全空家として指導・勧告を受け、住宅用地特例が解除される可能性があります。0円でもらった側が、数年後には0円でも手放せない側に回るという逆転は、この維持費と管理責任の積み上がりから起こります。

なお、相続で取得した不動産の名義変更は、取得を知った日から3年以内に申請することが義務化され、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(法務省「相続登記の申請義務化」、令和6年4月1日施行)。施行前に相続した不動産も対象で、期限は令和9年3月31日までです。

再建築不可・接道・共有持分という権利の落とし穴

費用と並んで見落とされやすいのが、権利と法規制の制約です。接道義務を満たさない土地は建て替えができず、傾斜地は造成や擁壁の費用がかさみます。共有持分の物件は、他の共有者の同意がなければ自由に処分できません。

取得前に確認すべきなのは、登記事項証明書と公図で接道・境界・共有名義の有無を押さえ、上下水道と電気を引き込めるかを確かめることです。この確認を省くと、0円で手に入れても活用も再売却もできない状態になります。具体的な費用の内訳と失敗の型は、0円物件で後悔しやすい失敗パターンと回避策で取得側の視点から整理しています。

タダより高くつくのはどんなケース?失敗パターン別に検証

タダより高くつくのは、修繕・解体費や毎年の維持費が浮いた購入代金を上回るときです。ここまで見てきた税金と維持費は、どの0円物件にも共通してかかる費用でした。ここからは、物件の条件によって負担が跳ね上がる3つのパターンを検証します。

修繕・解体の費用が「浮いた購入代金」を上回るケース

0円物件の多くは築年数が古く、そのままでは住めない状態にあります。屋根や外壁、水回り、シロアリ被害の有無によって、住める状態にするまでの費用は大きく変わります。解体を選ぶ場合も、費用は建物の規模・構造・重機が入れる立地かどうかで幅があり、事前の見積もりなしに判断できる金額ではありません。

ここで比べるべきは「修繕費・解体費」対「同等の物件を買った場合の購入代金」です。修繕費が周辺の中古物件の価格を上回るなら、0円で取得する経済的な意味は薄くなります。取得を決める前に複数社から見積もりを取り、総額で採算が合うかを確かめてください。

温泉権利や別荘地の管理費が毎年かかり続けるケース

温泉付き物件や別荘地の物件では、取得後に毎年出ていく費用が問題になります。温泉を引く権利にまつわる費用、別荘地の管理費、組合費は、使っていなくても発生します。

このパターンが厄介なのは、費用が一度きりではなく所有している限り続く点です。年間の負担額に想定保有年数を掛けた総額で見ると、購入代金を節約した分をあっさり超えることがあります。契約前に管理組合へ年額を確認し、値上げの履歴や今後の予定も聞いておくと、判断材料がそろいます。

使えず売れず、今度は自分が手放せなくなるケース

3つのなかで影響が長引くのがこのパターンです。再建築不可の土地や接道のない土地は、建て替えができないため活用の幅が狭く、売却時にも買い手が限られます。共有持分の物件も、他の共有者の同意がなければ動かせません。

この状態になると、活用もできず売却もできないまま、固定資産税と管理責任だけが毎年続きます。取得の段階で「将来手放すときにどうするか」まで想定しておくことが、このパターンを避ける近道です。次の章で扱う出口の4択を、取得前に一度読んでおくと判断の精度が上がります。

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手放したい側の出口は?無償譲渡・買取・解体・国庫帰属を比較

無償譲渡・買取・解体・国庫帰属の4つをお金の向きと期間の読めなさの2軸に配置した位置関係マップ
国庫帰属は申請5,698件に対し帰属2,885件。後戻りできない出口を選ぶ前に位置関係を確認する(出典: 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」2026年6月30日現在、買取の期間は当社実績)
手放す側の出口は無償譲渡・買取・解体・相続土地国庫帰属の4つで、費用と確実性が異なります。どれを選ぶかで手元に残る金額も所要期間も変わるため、同じ評価軸で並べて比べるのが出発点になります。ここでは初期費用、手元に残る費用、所要期間の目安、建物付きでの可否、確実性の5軸で整理します。

4つの出口を同じ5軸で比べる

出口 初期費用 手元に残る費用 所要期間の目安 建物付きでの可否 確実性
無償譲渡 登記費用・契約の手間 収入なし 引き取り手が現れるまで(期限なし) 掲載しても反応がない場合があり、その間も固定資産税と管理責任が続く
買取 なし(仲介手数料0円) 売却代金が入る 当社の買取くんは査定回答まで最短6時間・現金化まで最短3日 査定額は物件の状態とエリアで変動し、必ず価格が付くとは限らない
解体(更地化) 解体費用(規模・構造・立地で変動) 支出のみ。更地化で住宅用地特例が外れる可能性 業者選定・見積もりから工事完了まで数週間〜数か月 建物を取り除く方法 工事自体は確実だが、更地の使い道は別途決める必要がある
相続土地国庫帰属 審査手数料14,000円/筆+負担金(宅地等は20万円) 支出のみ 審査に相応の期間 不可(建物がある土地は却下事由) 申請5,698件に対し帰属2,885件(2026年6月30日現在)

データ出典: 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(2026年6月30日現在)、国土交通省「改正空家法について」。買取の期間は当社実績。

無償譲渡は、0円のまま所有権を引き渡す方法です。登記費用と契約の手間以外に大きな出費は生じにくい一方、引き取り手を自分で見つけるか、マッチングサイトや空き家バンクに掲載して待つ必要があります。立地と建物の状態が一定以上なら成立しやすいものの、再建築不可・共有持分・残置物ありの物件は敬遠されがちです。

買取は、不動産会社が物件を直接買い取る方法です。仲介という役割が存在しないため仲介手数料が発生せず、査定から契約までの期間も相手を待つ方式より短くなります。一般の仲介取引で見かける「仲介手数料無料」キャンペーンとは仕組みが異なる点に注意してください。当社の買取くんのように訳あり物件を専門に扱う会社であれば、無償譲渡では敬遠されやすい物件も査定の対象になります。一方、買取は不動産会社が自ら買い主になる取引のため、時間をかけて個人の買い主を探す仲介と比べると売却価格が下がる場合があります。査定額の根拠と契約条件は書面で確認し、疑問点は契約前に解消しておくことをおすすめします。

国庫帰属は申請の何件が実際に帰属しているのか

相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈で取得した土地を国に引き取ってもらう制度です。名前だけを見ると確実な出口に見えますが、法務省が公表している運用統計を見ると実像が分かります(法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」、2026年6月30日現在・速報値)。

区分 件数
申請件数 5,698件(田・畑2,226/宅地1,973/山林868/その他631)
帰属件数 2,885件(宅地1,073/農用地925/森林193/その他694)
却下件数 83件
不承認件数 93件
取下げ件数 1,063件

申請5,698件に対して帰属は2,885件で、申請したうちのおよそ半数が国庫帰属に至っています。ここで注目したいのが取下げ1,063件の内訳です。法務省によると、そのうち562件は「有効活用の見込みが生じた」ことによる取下げで、自治体や国の機関による活用が決定した、隣接地所有者から引き受けの申出があった、農業委員会の調整で農地として活用される見込みになった、といった例が挙げられています(同統計)。

この数字が示しているのは、制度が確実な出口とは言い切れない一方で、申請に動いたこと自体が隣地所有者や自治体との接点を生み、別の出口につながった例が一定数あるということです。ただし審査手数料14,000円は取り下げても却下でも返還されません。また却下事由に「建物がある土地」が含まれるため、建物付きの空き家をそのまま国に引き取ってもらうことはできません。

住む・貸す・解体・売るを分ける判断フロー

4つの出口を並べても、自分の物件がどれに当てはまるかは判断しづらいものです。建物の状態、再建築の可否、どれだけ急ぐかの3点で分岐させると、候補が絞れます。

物件の状態 再建築の可否 急いで手放したいか 現実的な選択肢
修繕すれば住める建物あり 急がない 住む・貸す。使わないなら無償譲渡か買取
修繕すれば住める建物あり 不可 急がない 買取が中心。無償譲渡は反応が出にくい
老朽化が進み住めない建物あり 急がない 解体して更地で売却、または現状のまま買取
老朽化が進み住めない建物あり 不可 問わない 買取が中心。解体しても更地の使い道が限られる
建物なし(土地のみ・相続で取得) 急がない 国庫帰属も候補。ただし境界確定と負担金が前提
状態を問わず 急ぐ 買取。相手を待つ方式は期間が読めない

貸すという選択肢を選ぶ場合は、賃貸に出せる状態まで修繕する費用と、想定家賃で何年かけて回収できるかを先に計算してください。売るという選択肢では、相続した空き家を一定の要件で売却すると譲渡所得から最高3,000万円(相続人が3人以上のときは1人あたり2,000万円)を控除できる特例が、令和9年12月31日までの譲渡で使える可能性があります(国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。0円で譲るとこの控除を使う機会も失います。適用要件は細かいため、個別の事情は税理士に相談したうえで判断してください。

要点

  • 建物があるうちは国庫帰属を申請できない。まず建物の扱いを決めてから出口を比べる
  • 再建築不可の物件は無償譲渡でも反応が出にくく、買取が現実的な候補になる
  • 急ぐかどうかで結論が変わる。相手を待つ方式は期間が読めない
  • 売却を選ぶなら、空き家の3,000万円特別控除が使えるかを先に確認する

出口を決める前に整理しておきたい4項目

どの出口を選ぶ場合でも、契約前に次の4点を整理しておくと手続きが止まりにくくなります。

  • 所有者全員の同意が取れているか(共有名義の場合)
  • 境界の確定状況と、越境物の有無
  • 残置物をどちらが処分するか
  • 引き渡し時期の希望

これらが曖昧なままだと、無償譲渡でも買取でも手続きが途中で止まります。判断に迷う点があれば、司法書士や宅地建物取引士など内容に応じた専門家に確認しながら進めてください。

「価格が付くか」を先に確かめるという順番

出口を選ぶときに効くのは、順番を意識することです。無償譲渡と解体はいったん踏み切ると後戻りができません。譲渡契約を結べば所有権は相手に移り、解体すれば建物という選択肢そのものが消えます。一方、査定を受けることは無料で、結果を見てから他の出口を選び直せます。

「査定から現金化までの日数」を評価軸にすると、当社の買取くんは査定回答まで最短6時間、現金化まで最短3日で対応しています。相手が現れるまで待つ無償譲渡と違い、期間が読める点が構造的な違いです。当社は300人超の投資家ネットワークを通じて買い手を探すため、再建築不可・共有持分・残置物ありといった物件も査定の対象になります。実際に、他社では希望額が出なかった大阪府堺市の相続物件を1,200万円で買い取った実績があります。一方で、査定額は物件の状態とエリアで変動し、必ず価格が付くとは限りません

以上をふまえると、手放す前にまず買取で価格が付くかを確かめ、付かなければ無償譲渡・解体・国庫帰属を検討するという順番が、選択肢を狭めずに済む進め方です。価格を知らないまま0円で譲ると、本当はいくらの価値があったのかを確認する機会そのものが失われます。なお当社は株式会社リアテクスが運営する宅地建物取引業者で、免許番号は東京都知事免許(1)第107888号です。国土交通省の宅地建物取引業者検索で照合できます。

0円物件(ゼロ円物件)に関するよくある質問

記事全体にまたがる疑問を、公的機関の統計と法令の規定にもとづいて整理します。

Q. ゼロ円物件と0円物件は違うものですか?
同じものを指します。掲載サイトやメディアによって表記が分かれているだけで、意味の違いはありません。「無償譲渡物件」「0円不動産」も、無償で引き渡される不動産という点では同義です。検索するときは表記を変えて試すと、片方だけでは出てこない掲載や自治体の告知にたどり着けます。

Q. 0円物件は本当に無料ですか?
物件の価格は0円でも、取得の総額は0円になりません。名義変更の登録免許税(贈与の場合は不動産の価額の2%)、贈与税、不動産取得税がかかります。固定資産税評価額500万円の物件なら、この3つだけで概算78万円です。取得後は毎年の固定資産税と維持費も加わります。

Q. 0円物件をもらうと贈与税はかかりますか?
個人から無償で不動産を受け取ると法律上は贈与として扱われ、その年に受け取った財産の合計が基礎控除110万円を超えると贈与税の申告・納税が必要になります(国税庁「贈与税がかかる場合」)。税額は評価額によって大きく変わるため、取得前に税理士へ相談しておくと安心です。

Q. 建物がある土地でも国に引き取ってもらえますか?
引き取ってもらえません。相続土地国庫帰属制度では「建物がある土地」が却下事由に定められており、申請そのものができないためです(法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)。建物を解体して更地にすれば申請の対象になりますが、境界が明らかでない土地も却下事由に含まれるため、境界確定も必要です。

Q. 0円で引き取り手がつかない空き家はどうすればいいですか?
無償譲渡や空き家バンクで反応がない場合は、専門業者の買取を検討する価値があります。再建築不可・共有持分・残置物ありの物件でも、訳あり物件を扱う会社なら現状のまま査定の対象になります。査定は無料で受けられるため、価格が付くかを確かめてから譲渡や解体と比べると判断しやすくなります。

Q. 0円物件は取得後すぐに住めますか?
物件の状態次第です。設備が生きていればすぐ住める場合もありますが、多くは修繕やリフォームが必要になります。水回り、屋根、シロアリの状態を事前に確認し、住み始められる時期と費用を見積もってから判断するのが安全です。

Q. 0円物件は今後も増えていきますか?
増える見込みです。空き家数は2018年の848万9千戸から2023年には900万2千戸に増加しており(総務省「令和5年住宅・土地統計調査」)、国土交通省は使用目的のない空家が2030年に470万戸へ達すると見込んでいます(改正空家法の概要)。人口減少と高齢化が続くため、0円で手放したい所有者も当面は増えると考えられます。

まとめ|0円物件は総額と出口を確かめてから動く

0円物件(ゼロ円物件)は、価格の0円だけを見ると魅力的に映りますが、判断に必要なのは総額と出口の2つです。

  • 0円物件は維持費や税負担を理由に無償譲渡される空き家や土地で、価格が0円でも総額は0円にならない
  • 探し先はマッチングサイトと空き家バンクが中心。全国版空き家・空き地バンクは参加1,146自治体に対し掲載中は742自治体のため、自治体窓口への直接照会も組み合わせる
  • 取得側には登録免許税・贈与税・不動産取得税がかかり、評価額500万円で概算78万円。毎年の維持費と管理責任も続く
  • タダより高くつくのは、修繕・解体費、毎年の温泉権利や管理費、使えず売れない状態に陥るケース
  • 手放す側の出口は無償譲渡・買取・解体・相続土地国庫帰属の4つ。建物があるうちは国庫帰属を申請できない

取得を考えている方は、関東の0円物件事情と都県別の傾向比較0円空き家バンクの使い方と掲載物件の傾向で狙うエリアと探し方を具体化し、0円物件で後悔しやすい失敗パターンと回避策で費用の見取り図を確認してください。手放したい方は、0円で譲ると決める前に価格が付くかを確かめておくと、選び直せる余地が残ります。

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この記事の監修者

株式会社リアテクス 執行役員 鶴野博之

鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)

宅地建物取引士/賃貸経営管理士/FP2級

一棟投資物件専門の仲介会社で不動産業界に参入後、前職では「訳あり・瑕疵物件」に特化したコンサルティングプログラム責任者として600名以上の投資家の購入から売却までに携わる。自身も再建築不可物件を中心に訳あり物件へ投資し、転売売買から保有物件まで数々の実績を持つ。

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