定期借地権マンションが売れない3つの理由と残存期間別の売り方

定期借地権マンションは、売り出しても内見が入らないまま価格だけを下げていく状態に陥りやすい物件です。売れない原因は建物ではなく契約の設計にあり、住める期間・買主のローン年数・毎月の負担の3つが同時に効いています。残り何年あるかで打つ手は変わります。借地権を基礎から確認したい方は借地権の基礎からの解説へ。

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定期借地権マンションは所有権マンションと何が違うのか?

存続期間50年以上・更新なしなど3つの特約・契約書で確認する4か所を時間軸に並べた定期借地権の契約構造図
契約開始から満了までの時間軸に、残存期間の考え方と契約書で確認する4か所を配置(出典: 借地借家法22条1項・国税庁 タックスアンサーNo.4611を基に当社作成)

定期借地権マンションは、期限付きで借りた土地の上に建つ区分所有建物です。土地の所有権は地主に残り、契約の更新がない点が所有権マンションとの決定的な違いになります。売却で問われるのは建物の状態よりも、この契約設計をどう説明できるかです。

借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいいます(国税庁 タックスアンサー No.4611、2026年8月時点)。このうち定期借地権は、存続期間を50年以上として設定する場合に、契約の更新も、建物の築造による期間の延長も、期間満了時に建物を買い取ってもらう請求もしないと特約で定めることができる仕組みです(借地借家法22条1項)。この特約は公正証書などの書面で行う必要があります。

比較項目 所有権マンション 定期借地権マンション
土地の権利 敷地利用権として持分を所有 地主から期限付きで借りる
契約の更新 概念がない 特約により更新なしと定められる
期間満了後 概念がない 土地を返還する前提
毎月の負担 管理費・修繕積立金 管理費・修繕積立金+地代・解体準備金
土地の固定資産税 区分所有者が負担 地主が負担
買主のローン年数 建物・敷地の条件で決まる 残存期間の影響を受ける

借地借家法22条および国税庁タックスアンサーNo.4611の定めをもとに当社が整理(2026年8月時点)

居住用マンションで使われるのは、この22条の一般定期借地権が中心です。国土交通省は一般定期借地権について「もっとも活用されており、戸建住宅やマンションの居住用等に活用されている」とし、専有面積の大きな住戸がリーズナブルな価格で供給される質的なメリットへの評価が高まったと整理しています(国土交通省 定期借地権の解説、2026年8月時点)。広さと立地の割に価格が抑えられているのは、この形式が選ばれてきた理由そのものです。売却時にはこの点が買主への訴求材料になります。なお借地権全体の種類の整理は借地権の基礎(普通借地権・定期借地権の違い)で扱っています。

契約書のどこを見れば自分の物件の条件が分かるのか?

確認するのは4か所です。存続期間の開始日と満了日、月額の地代、解体準備金(解体積立金)の月額、そして返還時の条件です。分譲時のパンフレットではなく、土地賃貸借契約書と管理規約の記載を見てください。

このうち売却の判断を左右するのが満了日です。満了日から今日を引いた年数が残存期間であり、これが買主の資金計画と価格の前提を決めます。残存期間は毎年1年ずつ確実に減るため、確認を先延ばしにするほど条件は悪くなります。

定期借地権マンションが売れない3つの理由

使用価値・資金・コストの3層のうち売主が動かせるのはコスト層だけと示し、修繕積立金月額平均13,054円に地代と解体準備金が上乗せされる毎月負担の比較図
3層のうち価格で動かせるのはコストの層だけ。修繕積立金の月額平均は国土交通省 令和5年度マンション総合調査による

定期借地権マンションが売れない理由は、住める期間の短さ、買主のローン年数の頭打ち、毎月の負担の上乗せという3つに整理できます。3つは別々の層で効いており、売主側で動かせるものと動かせないものが混ざっています。値下げに手を付ける前に、どの層で止まっているかを切り分ける必要があります。

何が止めているか 売主側で動かせるか 打ち手
使用価値の層 住める期間に期限がある 動かせない(契約で確定) 期限を前提に買う層へ相手を替える
資金の層 買主のローン年数が残存期間で頭打ちになる 動かせない(金融機関の要件) 現金決済できる相手に当たる
コストの層 地代と解体準備金が毎月に上乗せされる 一部動かせる(金額の明示と説明) 月額を確定させて価格の説明をつける

当社の買取相談における実務分類。法的根拠は借地借家法22条(2026年8月時点)

理由1:住める期間に期限がある(使用価値の層)

定期借地権では、契約の更新がなく、期間満了時に建物を時価で買い取るよう請求することもできないと定められます。買取請求そのものは借地借家法13条1項が認めている権利ですが、22条1項はその請求をしない旨を特約で定めることを認めています。つまり満了時に建物が資産として残らない前提で設計された住まいということです。

買主から見ると、終わりの日が決まっている住まいを買うことになります。永住を前提に探している実需層は、この一点で候補から外します。ここは契約で確定しているため売主側の努力では動きません。動かせるのは、期限があることを受け入れられる買主へ相手を替えるという判断のほうです。満了後の返還手続や解体の扱いは契約ごとに条件が異なるため、契約書の返還条項を個別に確認してください。

理由2:買主が組めるローン年数が残存期間で頭打ちになる(資金の層)

買主のローンで先に効くのは、審査に通るかどうかではなく借入期間の上限です。住宅金融支援機構の【フラット35】は、敷地が借地の場合の利用条件として、定期借地権または建物譲渡特約付借地権では通常の借入期間と借地権の残存期間を比較して短い年数が上限になると明示しています(2026年8月時点)。普通借地権では通常どおりの取扱いになるため、この制約は定期借地権に固有のものです。

年数の天井が下がると、同じ借入額でも月々の返済額が上がります。返済額が上がれば必要な年収の水準も上がり、購入できる人の母集団が縮みます。残存期間は物件の魅力ではなく、買主の資金計画の上限そのものです。売り出し価格を下げても、年数の天井は1年も伸びません。

なお同機構は、借入対象になる借地権取得費を権利金・保証金・敷金・前払賃料の4つとし、名義書換料や承諾料は借入対象にならないとしています。買主が承諾料を現金で用意する必要があるという意味であり、資金面の負担はここにも及びます。

理由3:毎月の負担が上乗せされる(コストの層)

買主が比較しているのは物件価格だけではありません。毎月いくら出ていくかです。国土交通省の令和5年度(2023年度)マンション総合調査では、修繕積立金の額の月額平均は13,054円でした(駐車場使用料等からの充当額を含まない額。同調査は5年に1回実施され、これが最新版です)。定期借地権マンションでは、この水準の修繕積立金と管理費に加えて、地代と解体準備金が毎月乗ります。

費目 所有権マンション 定期借地権マンション
管理費 かかる かかる
修繕積立金 かかる(月額平均13,054円) かかる
地代 なし かかる(契約で決まる)
解体準備金 なし かかることが多い
土地の固定資産税 かかる かからない(地主負担)

修繕積立金の平均は国土交通省 令和5年度マンション総合調査による。その他は借地契約・管理規約により異なる(2026年8月時点)

土地の固定資産税がかからない分は買主の負担を軽くしますが、地代と解体準備金の合計がそれを上回れば毎月の総額は増えます。負担者の考え方は借地権の固定資産税は誰が払うかで整理しています。地代の水準そのものや値上げの取り決めは契約と地域で条件が大きく異なるため、土地賃貸借契約書と管理規約の記載で個別に確認してください。

要点: 3つの層のうち、使用価値と資金の層は契約と金融機関の要件で決まっており、売主が価格で動かせるものではありません。売主が手を入れられるのはコストの層、つまり毎月いくらかかるのかを数字で確定させて買主に説明できる状態にすることだけです。反応がないまま値下げを重ねている場合、動かない層を価格で押そうとしている可能性があります。

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残存期間で資産価値と売りやすさはどう変わるのか?

残存期間50年の指数100.0から5年の17.8まで価値の目減りを折れ線で示し、後半10年の下落24.6ポイントが前半10年の10.2ポイントの約2.4倍になることを可視化した図
複利年金現価率を指数化すると目減りは後半ほど加速する(出典: 国税庁 複利表の年3%の複利年金現価率を基に当社試算)

残存期間が短くなるほど価値は下がりますが、下がり方は一定ではありません。前半はゆるやかで、後半になるほど加速します。何年でどのくらい目減りするのかを数字で押さえておくと、売り出す時期と価格の判断が早くなります。

残存期間別に価値はどのくらい目減りするのか?

国は、定期借地権の価値が時間の経過でどう目減りするかについて物差しを持っています。相続税や贈与税の評価で使われる定期借地権等の評価には、残存期間年数に応ずる複利年金現価率を、設定時の存続期間年数に応ずる複利年金現価率で割るという項が含まれます(国税庁 タックスアンサー No.4611、2026年8月時点)。この項だけを取り出して指数にすると、目減りの速さが見えます。

残存期間 複利年金現価率(年3%) 設定時50年を100とした指数
50年 25.730 100.0
45年 24.519 95.3
40年 23.115 89.8
35年 21.487 83.5
30年 19.600 76.2
25年 17.413 67.7
20年 14.877 57.8
15年 11.938 46.4
10年 8.530 33.2
5年 4.580 17.8

当社試算。国税庁 複利表の年3%の複利年金現価率を用い、各残存年数の値を50年の値(25.730)で割って指数化(2026年8月時点)。実際の基準年利率は月次で変動するため年3%は例示であり、定期借地権等の評価には経済的利益の比という別の項も掛かります。相続税評価上の考え方を可視化したもので、市場での売却価格そのものではありません

読み取れるのは目減りの速度差です。設定から10年が過ぎて残り40年になった時点での低下は10.2ポイントですが、残り20年から残り10年までの同じ10年間では24.6ポイント下がります。後半10年の目減りは前半10年のおよそ2.4倍の速さです。売却を先送りするコストは、年数が減るほど大きくなります。売却価格そのものの計算手順は借地権売却価格の計算方法で扱っています。

残存期間から買主層はどう絞られるのか?

理由2で見た借入期間のルールを、残存期間の側から読み替えると買主層が見えてきます。【フラット35】では定期借地権の場合に通常の借入期間と残存期間の短いほうが上限になるため、残存期間がそのまま買主の資金調達の設計図になります。

残存期間 買主が組めるローン年数 現実的な買主層 売り方の主軸
35年以上 通常の借入期間の上限が効く 一般の実需層 所有権物件と同じ売り方が概ね通用する
30年前後 残存期間が上限になり始める 実需層・住み替え前提層 期限を前向きに説明する資料を用意する
25〜20年 残存期間が上限(返済額が上がる) 自己資金比率の高い層・セカンドハウス層 買主層を絞り込んで訴求する
20年未満 ローン利用が現実的でなくなる 現金購入層・事業者 現金決済できる相手へ直接当たる

ローン年数の上限は住宅金融支援機構【フラット35】の公表要件に基づく。買主層と売り方は当社の買取相談における分類であり、金融機関ごとの審査基準を代表するものではありません(2026年8月時点)

同じ「売れない」でも、残り30年の物件と残り15年の物件では詰まっている場所が違います。前者は売り方と説明の問題であることが多く、後者は買主の母集団そのものが入れ替わっています。価格水準の目安は借地権売却の相場を参照してください。

待っているとなぜ不利になるのか?

残存期間は交渉している間も減り続けます。半年かけて価格交渉をまとめても、その間に前提は半年分悪化しています。所有権マンションであれば、相場が戻るまで待つという判断に意味がありますが、定期借地権では待つこと自体が価値を削る行為になります

しかも目減りは後半ほど速く進みます。残り25年で迷っている物件は、5年迷えば指数で約10ポイント分の前提が変わります。期間が満了すれば権利は終わり、土地を返す前提になるため、時間が味方になる場面はありません。

要点: 残り35年以上なら通常の売り方が通用します。残り30年前後は説明資料の整備で動きます。残り25年を切ったら買主層を絞る段階、残り20年を切ったら現金決済できる相手に直接当たる段階です。自分がどの帯にいるかを先に決めてください。

定期借地権マンションを売るときの進め方とコツ

値下げ前に確定させる3点と、残り35年以上・25〜20年・20年未満の帯ごとに買主層と売り方が分かれる売却手順のフロー図
3点の確定から残存期間別の相手選びまでの流れを整理(出典: 住宅金融支援機構【フラット35】の公表要件および当社の買取相談における初動確認項目)

値下げの前に契約条件を数字で確定させ、残存期間に合った買主層へ直接当たるのが最短の進め方です。踏む順番は、契約条件の確定、買主層の選定、定期借地権を扱える相手への接触の3段階になります。順番を逆にすると、条件が説明できないまま価格だけが下がっていきます。地主の承諾を含む売却手続の全体像は借地権を売却する方法と流れで、売却後の税金の扱いは借地権売却にかかる税金で整理しています。

コツ1:値下げの前に3点を確定させる

当社が定期借地権マンションの買取相談をお受けするとき、最初に確認するのは次の3点です。この3点が確認できていない状態で価格だけを下げても、買主が判断するための材料は増えません。

確認する項目 確認先 なぜ必要か
残存期間(満了日) 土地賃貸借契約書 買主のローン年数と価格の前提が決まる
地代・解体準備金の月額 管理規約・管理費等の明細 買主が見る毎月の総額を提示できる
返還時の条件 土地賃貸借契約書の返還条項 満了時の負担の見込みを説明できる

当社の買取相談における初動確認項目(2026年8月時点)

3点がそろうと、買主に対して「あと何年住めて、毎月いくらかかるのか」を1枚で説明できる状態になります。買主が敬遠しているのは定期借地権という言葉ではなく、条件が分からないまま判断を迫られることです。条件が明確な物件は、同じ残存期間でも反応が変わります。

コツ2:残存期間に合う買主層へ売り出す

残り35年以上なら、所有権物件と同じ売り方が概ね通用します。残り25年を切る帯では、買主層を絞ったほうが早く決まります。定期借地権マンションを積極的に選ぶ人がいるのは、価格が抑えられていること、立地が良い物件が多いこと、そして土地の固定資産税の負担がないことが理由です。

この3点は、売主にとってそのまま訴求材料になります。永住を前提にしない層にとって、期限があることは減点ではなく価格の理由です。住み替えを予定している人、資産として残す予定のない人、セカンドハウスを探している人へ届く出し方に変えるだけで、母集団は変わります。

コツ3:定期借地権を扱える相手に直接当たる

仲介で買主が見つからない場合、買取業者が買主になる形なら話が前に進みます。業者は現金で決済するため、理由2で挙げた借入期間の制約を受けません。残存期間が短い物件ほど、この差は大きくなります。

当社の買取くん(株式会社リアテクス)は、こうした条件の物件を減点要因ではなく専門領域として扱っています。無料査定は最短6時間、条件が合えば最短3日で現金化でき、仲介手数料はかかりません。購入意欲の高い不動産投資家が常時300名以上いることが、条件の難しい物件でも金額を提示できる理由です。実績としては、東京都北区の築50年超・傾きのある物件を4,400万円で買い取った事例があります。

一方で、買取は仲介より価格が下がりやすいという性質があります。時間をかけてでも高く売りたい場合は仲介、期限のある事情がある場合は買取という使い分けが現実的です。地主に買い取ってもらう交渉を選ぶ場合の進め方は借地権を買い取ってもらう交渉で扱っています。

定期借地権マンションを売るときによくある疑問

残存期間が20年を切ると売れなくなりますか?

売れなくなるのではなく、買主の種類が入れ替わります。【フラット35】では定期借地権の場合に通常の借入期間と残存期間の短いほうが借入期間の上限になるため、残り20年を切ると住宅ローンを前提にした購入が現実的でなくなります。その代わりに、現金で購入する層や事業者が中心になります。仲介で反応がないまま数か月が過ぎている場合は、募集の相手を替える段階に入っていると考えてください。

買主は住宅ローンを使えますか?

使える場合があります。【フラット35】は敷地が借地でも一定の要件を満たせば利用できるとしており、原則として敷地に第1順位の抵当権を設定しますが、抵当権設定について地主の承諾が得られない場合でも利用できることがあるとしています。取扱いは金融機関ごとに異なるため、買主が具体的にどの金融機関で検討しているかを早めに確認しておくと、商談が途中で止まりにくくなります。なお名義書換料や承諾料は借入対象にならないため、買主が現金で用意する費用として見込んでおく必要があります。

売れないので賃貸に出すのはどうですか?

残存期間に余裕がある場合の選択肢にはなります。ただし賃貸に出しても地代と解体準備金の支払いは続き、残存期間は減り続けます。家賃収入が毎月の支出を上回るかどうかを、残存期間の終わりまでの累計で見てください。残り20年を切った物件では、賃貸で保有し続けるほど出口が狭くなる点に注意が必要です。売却と賃貸のどちらが有利かは、残存期間と毎月の収支の両方を並べて判断するのが確実です。

相続した定期借地権マンションは持ち続けても問題ありませんか?

保有そのものに手続き上の問題はありませんが、時間の経過が一方向に効きます。相続税の評価でも残存期間に応じて価値が逓減する扱いになっており、目減りは後半ほど速く進みます。加えて、住んでいなくても管理費・修繕積立金・地代・解体準備金の支払いは続きます。相続人が複数いる場合は、期限が来る前に方針を決めておくほど選択肢が残ります。相続税評価の具体的な計算や遺産分割の進め方は個別の事情で結論が変わるため、税理士・司法書士などの有資格者にご相談ください。借地権全体の論点は借地権ガイドで全体像を再確認することができます。

まとめ

定期借地権マンションが売れないのは、住める期間に期限があること、買主のローン年数が残存期間で頭打ちになること、地代と解体準備金が毎月に上乗せされることの3つが同時に効いているためです。このうち価格で動かせるのはコストの層だけで、残りの2つは契約と金融機関の要件で決まっています。そして残存期間の目減りは後半ほど速く、待つほど前提は悪くなります。まず契約書で満了日・地代と解体準備金の月額・返還条件の3点を確定させてください。あと何年住めて毎月いくらかかるのかが1枚で説明できるようになったとき、期限を理解した買主が現れ、価格の話が前に進みます。

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