借地人として地主から底地を買い取るとき、価格はいくらが妥当なのでしょうか。結論から言えば、借地人が買う場合は「限定価格」という考え方で評価され、第三者が買う価格より高くなります。一方で「更地価格の何割」という一律の相場は存在せず、下限と上限に挟まれた幅の中で、地主との交渉によって金額が決まります。その幅の作り方と、提示された金額を検算する方法をまとめました。
底地の全体像は底地の基礎知識ガイドで整理しています。
なぜ借地人が買うときだけ「限定価格」になるのか?

限定価格とは、国が定める不動産鑑定評価基準に位置づけられた、市場が限定される場合の価格の種類です。同基準は限定価格を求める場面の例示として、借地権者が底地を併合する売買を筆頭に挙げています(国土交通省「不動産鑑定評価基準」、2026年8月時点)。つまり借地人向けの価格が高くなること自体は、売り手側の言い分ではなく評価上の前提です。
限定価格は国の評価基準に例示された価格の種類
不動産鑑定評価基準は、鑑定評価で求める価格を正常価格・限定価格・特定価格・特殊価格の4種類に分けています。このうち限定価格について、基準は次のように定めています。
限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。
限定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりである。
(1)借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合
(2)隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合
(3)経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合出典: 国土交通省「不動産鑑定評価基準」総論第5章第3節(前掲)
注目したいのは、3つの例示のうち(1)が「借地権者が底地の併合」そのものだという点です。当社は、この一文があることを借地人にとっての強い交渉材料だと考えています。価格が第三者向けより上がるのは業者の営業トークではなく、国の評価基準が想定している当然の帰結だからです。地主と価格の話をするときに「限定価格の考え方で」と切り出せば、双方が同じ土俵で数字を検討しやすくなります。
第三者が買う「正常価格」と何が違うのか
同じ基準は正常価格について、市場参加者の参入・退出が自由で、対象不動産が相当の期間市場に公開されていることなどを条件に挙げています。底地は買っても自分で建物を建てられず、地代を受け取る立場になるだけの土地です。買い手が投資家や専門業者にほぼ限られるため、この「自由な市場」の条件から外れやすくなります。
一方、借地人だけは事情が違います。底地を手に入れれば借地権と合わさって完全な所有権になり、土地としての使い道が一気に戻ってくるからです。基準の言葉では、これが「市場が相対的に限定される場合」にあたります。限定価格は特殊な取引の価格ではなく、買い手が限られた状態を正しく評価するための価格の種類です。
借地人が買い取る底地の価格は更地価格の何割になるのか?

借地人が買い取る底地の価格には、更地価格の何割という一律の相場が存在せず、物件ごとに幅が変わります。下限は底地の正常価格(地主が第三者に売れる金額)、上限は更地価格から借地権の価格を差し引いた額で、その間のどこで折り合うかが交渉の中身になります。割合を暗記するより、自分の物件でこの2本の線を引くほうが確実です。
価格の下限と上限はどう決まるのか
調べるサイトごとに示される割合が食い違うのは、そもそも一律の相場が存在しないためです。当社が上位の解説記事を確認した範囲でも、示される割合は記事ごとに異なっていました。公的に定められた割合はどこにもありません。そこで当社は、割合を探すのではなく上下の線で挟む方法をおすすめしています。
| 線 | 金額の意味 | 考え方 |
| 下限 | 底地の正常価格。地主が第三者へ売った場合に手にする金額 | 地主にはこれを下回る金額で売る理由がない |
| 基準線 | 相続税評価上の底地価額(自用地価額−自用地価額×借地権割合) | 双方が最初に持ち出しやすい客観数値。ただし税務上の評価額 |
| 上限 | 更地価格−借地権の価格。一体化で生まれた価値をすべて地主に渡した額 | これを超えると、借地人は買うより借り続けたほうが得になる |
表の考え方は前掲の国土交通省「不動産鑑定評価基準」における正常価格・限定価格・借地権・底地の各定義に基づき当社作成(2026年8月時点)
上限の考え方は少し補足が必要です。借地人はすでに借地権という価値を持っています。底地を買って手に入るのは「更地の価値から、いま自分が持っている借地権の価値を引いた分」です。下限と上限の差が、地主と借地人で分け合う「増分価値」の正体です。この分け方に決まった比率はなく、地代の水準や契約条件、双方の事情で動きます。
借地権割合から見た「税務評価上の底地割合」
交渉の出発点として最も使いやすい客観数値が、路線価図の借地権割合です。路線価図では路線価の右隣にA〜Gの記号が付いており、国税庁「路線価図の説明」によれば A:90%、B:80%、C:70%、D:60%、E:50%、F:40%、G:30% が対応します。貸宅地(底地)の評価額は「自用地としての価額−自用地としての価額×借地権割合」で求めるため(国税庁 No.4613 貸宅地の評価、2026年8月時点)、記号が分かれば底地の税務評価割合もそのまま決まります。
| 路線価図の記号 | 借地権割合 | 底地の評価割合 | 自用地3,000万円の場合の底地評価額 |
| A | 90% | 10% | 300万円 |
| B | 80% | 20% | 600万円 |
| C | 70% | 30% | 900万円 |
| D | 60% | 40% | 1,200万円 |
| E | 50% | 50% | 1,500万円 |
| F | 40% | 60% | 1,800万円 |
| G | 30% | 70% | 2,100万円 |
| 記号なし(借地権の取引慣行がない地域) | 20% | 80% | 2,400万円 |
国税庁「路線価図の説明」と同 No.4613の算式をもとに当社作成(2026年8月時点)。自用地3,000万円は計算例としての仮定値です
記号が1つ違うだけで底地の評価割合は10ポイント動き、A地区とG地区では7倍の開きが出ます。「底地はだいたい更地の何割」という会話がかみ合わないのは、地域によって前提が根本から違うためです。まず自分の土地の路線価図を開き、記号を1文字確認するところから始めるのが最短です。
相続税評価額をそのまま売買価格にしない
前項の表は相続税・贈与税の財産評価のための数字であり、売買価格そのものではありません。この評価方法は地代がいくら払われているか、契約が旧法か新法か、更新料の取り決めがあるかといった条件を織り込まないためです。地主から「路線価で計算するとこの金額だから」と提示された場合も、そのまま受け入れる必要はありません。
路線価と底地割合を使った計算の手順そのものは、底地価格の計算方法(路線価・底地割合)で詳しく扱っています。価格を判断するうえでは、税務評価は交渉のたたき台であって着地点ではないという位置づけを押さえておけば十分です。
要点: 底地の買取価格は、下限(地主が第三者に売れる額)・基準線(相続税評価額)・上限(更地価格−借地権価格)の3本で挟んで考えます。路線価図の記号1文字で基準線が決まるため、交渉前に確認しておきます。
地主に提示された価格が妥当かどうか、どう確かめるのか?
提示された金額の妥当性は、割合ではなく現在支払っている地代の年額を基準に検算できます。不動産鑑定評価基準は、底地の鑑定評価額を実際に支払われている賃料に基づく収益価格と比準価格から決めると定めており、地代の実額が価格の土台になるためです(国土交通省「不動産鑑定評価基準」、2026年8月時点)。
底地の価格の土台は「実際に払っている地代」
底地について、基準は次のように定めています。
底地の価格は、借地権の付着している宅地について、借地権の価格との相互関連において借地権設定者に帰属する経済的利益を貨幣額で表示したものである。
(中略)
底地の鑑定評価額は、実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格及び比準価格を関連づけて決定するものとする。
また、底地を当該借地権者が買い取る場合における底地の鑑定評価に当たっては、当該宅地又は建物及びその敷地が同一所有者に帰属することによる市場性の回復等に即応する経済価値の増分が生ずる場合があることに留意すべきである。出典: 国土交通省「不動産鑑定評価基準」各論第1章第1節(前掲)
当社がこの規定で最も重要だと見ているのは、底地の価格が「更地価格に底地割合を掛けた額」ではなく、地主が受け取る地代から諸経費を引いた利益の積み上げとして定義されている点です。底地の価格の土台は、いま実際に払っている地代です。交渉に入る前に自分の地代年額と固定資産税額を並べて確認しておくと、提示額の性格を判断しやすくなります。なお地代そのものの相場や値上げ交渉については借地権の基礎からの解説で扱っています。
提示額を「地代の何年分か」で検算する
当社は、提示額の妥当性は割合ではなく地代年額に対する倍率で検算すべきだと考えています。理由は単純で、割合を確かめるには更地価格と借地権価格という2つの推定値が必要になるのに対し、地代年額は借地人が確実に把握している実数だからです。
検算の手順は3つです。第1に、年間の地代総額を出します。第2に、地主が負担している固定資産税・都市計画税の額を差し引き、地主の手取りに近い金額を求めます。第3に、提示された買取価格をこの手取り額で割り、何年分にあたるかを見ます。倍率が極端に大きい場合、地主は増分価値の大半を自分側に配分した金額を提示している可能性があります。
もちろん倍率だけで適正額が決まるわけではありません。契約の残存期間、建物の状況、将来の更新料の取り決めによって妥当な水準は変わります。それでも、自分で用意できる数字だけで組み立てられる検算をひとつ持っておくと、提示額に対して「なぜその金額なのか」と具体的に聞き返せるようになります。金額の根拠を詰める段階では、不動産鑑定士による評価や、税務の取扱いについては税理士への相談を検討してください。
地主への価格交渉はどう切り出せばよいのか?

地主への価格交渉は、相手に売る理由が生まれたタイミングで、客観的な価格根拠を先に用意してから切り出します。長年の借地関係では金額の話が感情的な対立に発展しやすいため、最初に持ち出すのは希望額ではなく、何を根拠に価格を考えるかという枠組みにすると話が進みやすくなります。
地主に売る理由が生まれるタイミング
底地を持つ地主にとって、売却を前向きに検討する動機は主に2つの場面で生まれます。
ひとつは相続の発生時です。底地は相続財産として評価される一方、地代収入から固定資産税を差し引くと手元に残る額は小さくなりやすく、納税資金の確保や遺産分割の都合から現金化の必要が出てくることがあります。相続人が複数いて土地を分けにくい場合は特にそうです。
もうひとつは借地契約の更新時です。更新のタイミングでは更新料や地代の条件をあらためて話し合うため、双方が権利関係を見直す自然な機会になります。底地の買取は、地主側に売る理由が生まれた時期に持ちかけるほど成立しやすくなります。
借地人が用意しておく交渉材料
地主の売却動機によって、こちらが用意すべき材料は変わります。当社が訳あり不動産の買取実務で使っている判断軸を整理すると、次のようになります。
| 地主側の主な動機 | 地主が優先すること | 借地人が用意すると効く材料 |
| 相続税の納税資金 | 期限までに現金化できるか | 決済時期を明示した資金計画 |
| 遺産分割 | 相続人全員が納得する金額根拠 | 路線価図と評価額の計算資料 |
| 管理の負担 | 手間と費用から解放されること | 測量・登記費用をこちらが負担する提案 |
| 収益性への不満 | 地代が固定資産税に見合わないこと | 地代年額と税額を並べた収支資料 |
当社の訳あり不動産買取実務における判断軸をもとに作成
表のとおり、金額を上げること以外にも交渉の余地はあります。決済時期を相手の都合に合わせる、測量や登記の費用を引き受ける、引渡しまでの期間に余裕を持たせるといった条件は、地主にとって現金の額と同じくらい価値を持つことがあります。価格の一点勝負にせず、条件を組み合わせた提案を準備しておくと合意に近づきます。
地主が売らないと答えた場合
一度断られたとしても、それで交渉が終わったわけではありません。地主の事情は相続や代替わり、契約更新のたびに変わります。断られた時点で関係を悪化させず、こちらの意向だけ伝えて引き下がっておけば、次の機会に話を戻しやすくなります。
もうひとつの方法が、底地と借地権をまとめて第三者へ売る同時売却です。完全な所有権の状態にすれば買い手の幅が広がり、地主・借地人の双方が別々に売るより手取りが増える可能性があります。地主が「手放したいが借地人には売りたくない」という立場のときに検討しやすい選択肢です。
\ 他社で断られた物件も買取可能 /
借地権のまま売る場合の金額を、交渉に入る前に把握しておけます。
受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)
底地を買い取ったあと、何が変わるのか?
底地を買い取ると土地と建物が完全な所有権にまとまり、地代と更新料の支払いがなくなります。建替えや売却のたびに地主の承諾を得る必要もなくなるため、毎年の支出が減ることと、将来の選択肢が広がることの両面で効果があります。買取費用を出すかどうかは、この2つを分けて考えると判断しやすくなります。
地代・更新料・承諾料の支払いがなくなる
借地では、毎月の地代に加えて、契約更新時の更新料と建替えや譲渡の際の承諾料が発生します。底地を買い取れば、これらの支出はすべてなくなります。
支出面の効果は、買取価格を年間の地代総額で割った年数で見るのがわかりやすい方法です。たとえば年間の地代が36万円で買取価格が900万円なら、地代だけで25年分にあたります。ここに更新時の更新料や将来の承諾料を加えると、実質の回収年数はもう少し短くなります。逆に、買取後は固定資産税・都市計画税を自分で負担することになるため、その分は差し引いて考える必要があります。何年住み続ける見込みかによって、この年数の意味は大きく変わります。
売却と資金調達の選択肢が広がる
完全な所有権になると、買い手が投資家や専門業者だけでなく、自分で住むために土地と建物を買う一般の購入者まで広がります。借地権付きのままでは地主の譲渡承諾が必要で、金融機関の担保評価も低くなりがちですが、所有権になればその制約が外れます。
底地や借地権を保有したまま売る場合にどの程度の金額になるかは、底地の買取相場で扱っています。買い取る場合と、買わずに手放す場合の両方の金額感を並べてから決めると、判断を誤りにくくなります。
買い取るとき、価格以外にどんな費用がかかるのか?

買取価格のほかに、不動産取得税・登録免許税・印紙税という3種類の税金がかかります。いずれも税率が法令で決まっていて交渉の余地がないため、価格交渉に入る前に総額の見込みを立てておけます。土地の売買では建物の取得と違い、住宅用家屋向けの軽減措置が使えない点にも注意してください。
| 費目 | 税率・金額 | 軽減措置と期限 |
| 不動産取得税 | 課税標準(固定資産評価額)× 3% | 宅地は課税標準が価格の1/2になる特例あり |
| 登録免許税(所有権移転) | 不動産の価額 × 1,000分の20 | 令和11年3月31日までに登記を受ける場合1,000分の15(令和8年度税制改正で3年延長) |
| 印紙税(売買契約書) | 契約金額1,000万円超5,000万円以下で1万円 | 令和9年3月31日までに作成される契約書に適用 |
データ出典: 国税庁 No.7191 登録免許税の税額表、国税庁「登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」(令和8年4月)、同 No.7108 印紙税の軽減措置、東京都主税局 不動産取得税Q&A(いずれも2026年8月時点)
このほかに、司法書士へ支払う登記手続きの報酬、境界を確定する場合の測量費用、仲介や専門家に依頼した場合の報酬がかかります。実際の税額は評価額や軽減措置の適用有無、自治体の取扱いによって変わりますので、金額を固める段階では税理士または管轄の都道府県税事務所へご確認ください。当社では提携の司法書士・土地家屋調査士と連携して権利関係の整理に対応しています。
借地人の底地買取でよくある質問
Q1. 底地の買取に住宅ローンは使えますか?
自分や家族が住む建物の敷地であれば、住宅ローンの対象として扱われる場合があります。ただし建物が既に建っている状態での土地のみの購入となるため、審査の考え方は新築や中古住宅の購入と異なります。取扱いは金融機関ごとに差が大きく、都市銀行より地元の信用金庫や地方銀行のほうが柔軟に相談に応じることもあります。融資を前提に交渉するなら、地主に話を持ちかける前に借入の目処を確認しておくと安心です。
Q2. 地主が「売らない」と答えた場合はどうすればよいですか?
その場で説得しようとせず、意向を伝えたことだけを記録に残して引き下がるのが現実的です。地主の事情は相続や代替わり、契約更新のタイミングで変わるため、断られた時点の返事が最終的な結論とは限りません。並行して、底地と借地権をまとめて第三者へ売る同時売却という方法もあります。地主が「手放したいが借地人には売りたくない」という立場の場合、この形なら合意できることがあります。
Q3. 地主のほうから買わないかと持ちかけられました。価格はどう見ればよいですか?
先に金額の話を進めず、判断材料を3つそろえてください。路線価図で借地権割合の記号を確認して相続税評価上の底地価額を出すこと、年間の地代総額から地主の手取りを試算すること、提示額が地代の何年分にあたるかを計算することの3点です。打診してきた側に売却の必要が生じていることもあり、こちらが根拠を示せば金額の再検討に応じる余地があります。
Q4. 境界が確定していない土地でも買い取れますか?
買取そのものは可能ですが、後で売却したり建て替えたりする際に確定測量を求められることがあります。測量には費用と時間がかかるため、誰が負担するかを売買条件に含めて話し合っておくことをおすすめします。地主にとっても境界の未確定は売却時の懸念材料になるため、こちらが費用を負担する提案は交渉材料としても機能します。
底地の全体解説に戻ると、底地と借地権の関係や地主側の事情もあわせて確認できます。
まとめ
借地人が底地を買い取る価格は、不動産鑑定評価基準が例示する限定価格の考え方で決まり、第三者が買う場合より高くなります。ただし更地価格に対する一律の割合はなく、下限(地主が第三者に売れる額)と上限(更地価格−借地権価格)の幅の中で、増分価値をどう分けるかの交渉になります。価格の土台は実際に支払っている地代なので、提示額が地代の何年分かを検算すれば、割合を調べるより確実に妥当性を判断できます。まずは路線価図で自分の土地の記号を確認し、地代年額と固定資産税額を並べるところから始めてください。
\ 査定最短6時間・仲介手数料0円 /
底地を買えなかった場合に借地権がいくらになるかを確かめられます。
受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)