借地権の査定額は、国税庁が公表する借地権割合を掛けただけでは決まりません。実際の査定では、更地としての価格に借地権割合を掛けた金額を出発点に、契約条件と地主の承諾の見通しで金額が上下します。借地権割合はもともと相続税・贈与税の評価に使う数値で、売買の査定額とは目的が違います。査定で見られる評価項目と、査定額が下がる要因を整理します。借地権の仕組みの詳細は借地権の基礎からの解説を参照してください。
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借地権の査定額は何で決まる?

借地権の査定額は、更地としての価格に借地権割合を掛けた金額を出発点に、契約条件と地主の承諾の見通しで増減して決まります。借地権割合とは、その地域の更地価格のうち借地人の権利が占める割合として国税庁が地域ごとに定めた数値で、路線価図・評価倍率表に表示されています(2026年8月時点)。
査定額がどう積み上がるのかを、4つの層に分けて整理します。
| 層 | 何が決まるか | 決める主体 | 売主が動かせるか |
| 1. 更地としての価格 | その土地が更地だったらいくらか | 立地と市場 | ✕ |
| 2. 借地権割合による目安 | 更地価格のうち借地人側の取り分の目安 | 国税庁が地域ごとに設定 | ✕ |
| 3. 契約条件による増減 | 種類・残存期間・一時金・特約・登記の状態 | 借地契約の内容 | △(書類で確認はできる) |
| 4. 出口による増減 | 誰が買主になるか(地主/第三者/買取業者) | 依頼先と交渉 | ○ |
データ出典: 国税庁 No.4611 と国土交通省「不動産鑑定評価基準」の勘案事項に、当社の査定実務での確認順序を重ねて整理(2026年8月時点)
上の2層は自分では変えられません。査定額を動かせるのは、更地価格でも借地権割合でもなく、契約条件と出口の2つです。
出発点は「更地としての価格 × 借地権割合」
国税庁は、借地権の価額を「借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に借地権割合を乗じて求めます」と定めています(国税庁 No.4611 借地権の評価、2026年8月時点)。ここでいう自用地とは、他人の権利の目的になっていない土地、つまり更地の状態を指します。
この式は分かりやすい反面、地域ごとに決められた1つの割合を掛けるだけなので、同じ地域の借地権はすべて同じ比率で評価されることになります。実際の借地権は、契約書の中身も地主との関係も1件ずつ違います。借地権割合はあくまで出発点です。なお、割合を掛けた結果が市場でどのくらいの水準になるかは借地権の売却相場で扱っています。
同じ割合でも査定額が変わるのは、出口が変わるから
借地権は、誰でも自由に買える権利ではありません。買主になり得るのは、底地を持つ地主、地主の承諾を得て入る第三者、買取業者の3者に限られます。買える人が限られる以上、買主が誰かによって成立する価格が変わります。査定額の根拠を聞くときは、その業者がどの出口を想定して価格を出しているのかまで確認してください。計算式の組み立ては借地権売却価格の計算で扱っています。
相続税評価額と売却の査定額はなぜ一致しない?

国税庁の借地権割合は相続税・贈与税の評価に使う数値で、売買の査定額とは目的が違うため一致しません。前掲の借地権の評価の算式は、対象税目を相続税と贈与税に限って掲げられたものです(前掲の国税庁 No.4611、令和8年4月1日現在法令等)。
税務上の評価と売買の査定は、目的も決め方も違います。
| 比較軸 | 相続税・贈与税の評価額 | 売買の査定額 |
| 目的 | 課税価格を計算する | 実際に売れる金額を見込む |
| 決め方 | 全国共通のルールで機械的に算出 | 契約条件と買主の事情を反映 |
| 地域差 | 路線価図の借地権割合で反映 | 借地権取引の慣行の有無まで反映 |
| 個別事情 | 原則として反映しない | 承諾・残存期間・建物の状態を反映 |
データ出典: 国税庁 No.4611・No.4613 と国土交通省「不動産鑑定評価基準」の記載を基に当社が整理(2026年8月時点)
相続税の評価額をそのまま売却価格として使うことはできません。売却で実際にかかる税金の計算は借地権売却の税金で扱っています。なお、個別の相続税評価や申告の判断は税理士へ、登記に関わる判断は司法書士へご確認ください。
「借地権があること」と「借地権に価格があること」は別
国土交通省が定める不動産鑑定評価基準は、借地権の鑑定評価にあたって考慮すべき点として、次のように述べています。
借地権の存在は、必ずしも借地権の価格の存在を意味するものではなく、また、借地権取引の慣行について、借地権が単独で取引の対象となっている都市又は地域と、単独で取引の対象となることはないが建物の取引に随伴して取引の対象となっている都市又は地域とがあること。
当社はこの一文を、査定を依頼する前に読んでおくべき注意書きだと考えています。権利として借地権を持っていることと、その権利に値段が付くことは、公的な基準の上でも別扱いだからです。だから査定額の数字だけでなく、「なぜその金額になるのか」を説明できる相手を選ぶことが、無駄な期待も無用な諦めも避ける近道になります。
相続税の評価額と売買の査定額は、そもそも別の目的で作られた数字です。
借地権の査定でどこを見られる?評価項目5つ

査定で見られるのは、借地権の種類と残存期間、契約条件と一時金、地主の承諾の見通し、登記の状態、接道と建物の状態の5点です。これは国土交通省「不動産鑑定評価基準」が借地権の鑑定評価で総合的に勘案するとしている事項を、売主が自分で確認できる単位にまとめたものです(2026年8月時点)。
5項目は、手元のどの書類で確認できて査定額のどこに効くのかが、それぞれ決まっています。
| 評価項目 | 手元で確認する書類 | 査定額への効き方 |
| 借地権の種類と残存期間 | 借地契約書・登記事項証明書 | 定期借地で残りが短いほど下がる |
| 契約条件と一時金 | 借地契約書・権利金や更新料の領収書 | 一時金を払っていれば評価に反映されやすい |
| 地主の承諾の見通し | 過去の承諾書・地代の領収書 | 見込みが立たないと大きく下がる |
| 登記の状態 | 登記事項証明書 | 建物の登記があれば第三者に対抗できる |
| 接道と建物の状態 | 公図・測量図・建築確認済証 | 接道2m未満や老朽化で下がる |
データ出典: 前掲の不動産鑑定評価基準が挙げる借地権の態様・勘案事項を、当社が売主の手元書類に対応させて整理(2026年8月時点)
査定で見られる5項目は、すべて手元の書類で確認できます。
1. 借地権の種類と残存期間
まず確認するのは、その借地権が更新できる種類なのか、期間が来たら返す種類なのかです。借地借家法では借地権の存続期間を30年とし、更新後の期間は最初の更新が20年、その後は10年と定めています(e-Gov 借地借家法 第3条・第4条)。ただし更新請求が認められるのは建物がある場合に限られます(同法第5条)。更新できるかどうかは、建物が建っているかで変わります。
一方、定期借地権は期間の満了で終わる契約です。残りの期間が、そのまま権利の残量になります。国税庁は、定期借地権が付いた土地を地主側から評価する場面で、残存期間ごとの割合を次のように定めています。
| 残存期間 | 割合 |
| 5年以下 | 5% |
| 5年超10年以下 | 10% |
| 10年超15年以下 | 15% |
| 15年超 | 20% |
データ出典: 国税庁 No.4613 貸宅地の評価(令和8年4月1日現在法令等・2026年8月時点確認)
これは底地側の評価に使う割合ですが、残存期間が短くなるほど借地の重みが軽くなるという関係は公的な取扱いにも表れています。種類そのものの違いは借地権の種類の基礎で扱っています。
2. 契約条件と一時金の授受
次に見るのが契約書の中身です。不動産鑑定評価基準は、契約締結の経緯、経過した借地期間と残存期間、授受された一時金の額とその条件、将来見込まれる一時金の額を勘案事項に挙げています。契約が書面か口頭か、特約条項があるかも確認対象です。
差が出やすいのは、権利金を払って始まった借地なのか、地代だけで続いてきた借地なのかという点です。開始時にまとまった一時金を払っていれば、その事実は借地人側の経済的利益として評価に反映されやすい要素です。領収書や契約書は査定の材料になるため、手元にあるかどうかを先に探しておいてください。権利金の性質は借地権の権利金の相場と性質で扱っています。
3. 地主の承諾の見通し
借地権を第三者へ譲渡するには、原則として地主の承諾が要ります。承諾の種類は1つではなく、譲渡そのものを認める承諾のほか、買主が建て替えるための承諾、買主が住宅ローンを組むための承諾が問題になります。このうちどれが欠けても、買主側の資金計画が崩れます。
そのため当社の査定でも、承諾が取れているかだけでなく、過去に地主とどんなやり取りがあったかまで確認します。地代の支払いが滞りなく続いていること、過去に増改築の承諾を得た記録があることは、いずれも見通しを裏付ける材料です。承諾の見通しが立たないまま話を進めると、契約の直前で白紙に戻ります。
4. 登記の状態と第三者への対抗力
借地権そのものの登記がなくても、権利が守られないわけではありません。前掲の借地借家法第10条は、借地権の登記がなくても、その土地の上に借地人名義で登記された建物を所有していれば第三者に対抗できると定めています。
査定でここを確認するのは、買主が買った後に権利を主張できるかどうかが変わるからです。建物が未登記だったり、登記名義が亡くなった親のままだったりすると、買主にとっては権利の保全が不安材料です。相続で受け継いだ借地なら、建物の登記名義が現在の所有者になっているかを先に確認しておくと、査定から契約までが早く進みます。
5. 接道と建物の状態
土地そのものの条件も査定に効きます。建築基準法は「建築物の敷地は、道路に二メートル以上接しなければならない」と定めており(e-Gov 建築基準法 第43条)、この条件を満たさない土地は建て替えができません。借地でも、この制約は所有権の土地と同じようにかかります。
建物側では残存耐用年数が見られます。不動産鑑定評価基準も、借地権の態様と建物の残存耐用年数をセットで勘案するとしています。築年数が古いこと自体は減額の理由になりますが、査定を断る理由にはなりません。
要点: 5項目のうち、種類・残存期間・接道は売主が動かせません。動かせるのは、契約書や領収書をそろえて契約条件を明らかにすることと、登記名義を現況に合わせておくことの2つです。この2つを整えるだけで、査定の精度は上がります。
借地権の査定額が下がるのはどんなとき?

査定額が下がる主な要因は、承諾の見通し、地域の取引慣行、残存期間と建物・接道の条件の3つです。とくに地域差は見過ごされがちで、国土交通省の不動産鑑定評価基準は、借地権取引の慣行がどれだけ根づいているかによって評価の手法そのものが変わるとしています(2026年8月時点)。
承諾の見通しが立たない
最も大きく効くのが承諾です。ただし、地主が承諾しないと言った時点で終わりではありません。借地借家法は、譲渡や転貸をしても地主に不利となるおそれがないのに承諾が得られない場合、裁判所が地主の承諾に代わる許可を与えられると定めています(e-Gov 借地借家法 第19条)。
この手続きには時間と費用がかかるため、査定額には割引として反映されます。それでも、承諾が取れないこと自体は、査定額がゼロになる理由にはなりません。地主へ返すという選択と比べてどちらが得かは、借地権を地主に返す前に知るべき損得で整理しています。
借地権取引の慣行が薄い地域
見落とされやすいのが地域差です。国税庁は、借地権の取引慣行がないと認められる地域の土地を評価する場合、借地権割合を20パーセントとして計算するとしています(前掲の国税庁 No.4613)。同じ「借地権割合」でも、慣行のない地域では最初から低い水準が前提になっています。
前掲の不動産鑑定評価基準も、取引慣行の成熟度が高い地域では借地権割合による価格を関連づけ、低い地域では更地価格から底地価格を差し引く方法などを使うとしています。つまり、都心と地方では価格の求め方そのものが違います。地方の借地権なら、その地域で借地権を扱った実績があるかを依頼先に確認してください。
残存期間・建物・接道の条件
定期借地権で残存期間が短ければ、買主が使える期間もそのまま短くなるため査定額は下がります。建物の老朽化が進んでいれば解体や修繕の費用を見込んだ価格になり、接道が2メートル未満で再建築ができない土地なら、買主は建て替えを前提にできません。
ただし、これらは価格が下がる要因であって、買い手が付かない理由とは限りません。当社にも、こうした条件を抱えたままの借地権について買取のご相談が寄せられています。
要点: 下がる要因は「割引の理由」であり、「値が付かない理由」ではありません。下がる要因と、値が付かない理由は同じではありません。両者を分けて説明できる依頼先を選んでください。
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仲介では買い手が見つからない借地権でも、当社が直接買い取れる場合があります。
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借地権の査定はどこに頼めばいい?
借地権の査定は仲介会社・買取業者・借地権の専門会社のいずれかに依頼でき、価格の根拠と回答までの時間が変わります。仲介は買主を探す前提、買取は自社で買う前提で価格を出すため、同じ物件でも提示される金額の意味が違います。
| 依頼先 | 価格の出し方 | 向いている状況 |
| 仲介会社 | 買主を探して売る前提の見込み価格 | 承諾が得られ、時間をかけられる |
| 買取業者 | 自社で買い取る前提の提示価格 | 早く確定させたい・承諾に不安がある |
| 借地権の専門会社 | 地主交渉や底地との調整を含めた価格 | 権利関係が複雑で交渉が必要 |
価格の根拠を説明できる相手かどうかで、査定の意味が変わります。
仲介と買取のどちらに向くかは、承諾の見通しで決まる
承諾が得られる見込みが高く、売り急いでいないのであれば、仲介で買主を探すほうが金額は伸びやすくなります。反対に、承諾の交渉が難航している、建物が古く内見に耐えない、期限が決まっているといった事情があるなら、買主を探す期間そのものがリスクになります。
査定額だけを比べても、その根拠が示されなければ比較になりません。複数社に依頼するときは、金額と一緒に「どの出口を想定したか」「承諾をどう見込んだか」を聞いてください。売却全体の進め方は借地権売却の流れ、地主や業者との買取交渉は借地権の買取と地主交渉で扱っています。
地主との売買は、価格の考え方そのものが違う
地主に買ってもらう、あるいは地主から底地を買い取る場合は、一般の売買とは価格の概念が変わります。不動産鑑定評価基準は、限定価格を求める場面の例として「借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合」を挙げています。市場が当事者間に限られるため、通常の市場価格とは別の価格が成り立つという考え方です。
つまり、地主から提示された金額が市場の相場より高くても低くても、それだけでは判断できません。第三者に売った場合の査定額を並べて初めて、地主の提示額が妥当かを判断できます。
当社は査定と同時に、承諾の見通しをお伝えしています
借地権の売買では、価格が合っても承諾が下りなければ取引が成立しません。だから当社の買取くん(株式会社リアテクス)では、査定の段階で借地契約の内容と地主とのやり取りを先に確認し、承諾の見通しと価格を同じタイミングでお伝えする運用にしています。
相場に近い価格を直接提示できるのは、購入意欲の高い不動産投資家が常時300名以上いて、買い取った借地権の出口が確保できているからです。買主を探す期間が要らないため、無料査定は最短6時間以内、条件が合えば最短3日での現金化に対応しています。権利関係の整理には、提携する弁護士・司法書士・土地家屋調査士が加わる体制です。
借地権の査定でよくある質問
借地権の査定額は自分で計算して確かめられますか?
おおよその見当はつけられます。路線価図で更地としての価格と借地権割合を調べれば、出発点の金額は自分でも出せます。ただしその金額は税務上の評価に沿ったもので、承諾の見通しや残存期間といった個別事情は入っていません。
建物が古い空き家でも借地権に査定額はつきますか?
つく場合があります。査定で見るのは建物だけでなく、借地権という権利そのものの内容だからです。契約が生きていて承諾の見通しが立つなら、建物が古くても権利の評価は残ります。ただし建物が滅失すると借地権の対抗力に影響するため、解体を考えている場合は先に相談してください。
査定を依頼する前に、地主へ知らせておく必要はありますか?
査定を受けるだけなら、地主への通知は必要ありません。査定は売主と査定する会社との間の話で、この段階で契約が動くわけではないからです。ただし譲渡へ進む段階では承諾が必要になるため、関係が良好であれば早めに意向を伝えたほうが手続きは進みやすくなります。
定期借地権と普通借地権では査定の見られ方が違いますか?
違います。普通借地権は更新によって使い続けられる前提で見るのに対し、定期借地権は残存期間がそのまま価値の残量になります。前掲の不動産鑑定評価基準も、定期借地権の評価では期間満了時の建物に関する契約内容など、普通借地権にはない項目を追加で勘案する仕組みです。
借地権という権利の全体像から確認し直したい場合は、借地権の全体マップへ戻ると、査定を依頼する前に押さえるべき前提が一度に確認できます。
まとめ
借地権の査定額は、更地としての価格に借地権割合を掛けた金額を出発点に、契約条件と地主の承諾の見通しで増減します。国税庁の借地権割合は相続税・贈与税の評価に使う数値のため、その金額をそのまま売却価格として扱うことはできません。査定で見られるのは、種類と残存期間、契約条件と一時金、承諾の見通し、登記の状態、接道と建物の状態の5点で、いずれも手元の書類で確認できます。契約書と登記事項証明書、地代や権利金の領収書を集めて査定に出せば、値が付かないと思っていた借地権を、いくらでどう売れるのかまで根拠つきで把握した状態に変わります。
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地主との関係や残存期間を含めて、査定額の根拠までお伝えします。
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