事故物件の告知義務とは?対象の線引きと手放すまでの全体像

訳あり物件・再建築不可

新築のマイホームを建てた夫婦・家族(事故物件に関する記事のイメージ)

「実家で親が亡くなったのですが、売るときに言わないといけないんでしょうか」
「言ったら売れなくなる気がして、手が止まっています」

事故物件の告知義務は、国のガイドラインが示す死因・場所・期間の線引きで要否が決まります。そして告知が必要な場合でも、手放す方法は選べます。見分け方から告知書の書き方、手放すまでの進め方まで順にご案内します。

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事故物件の告知義務とは?全体像と判断の順番

売買か賃貸か・死因・場所・時期の4段階で告知の要否を判断する順番と、本ガイドが扱う8テーマの位置を示した図
売る取引では4段階目の年数が外れ、死因と場所だけが残ります(国土交通省ガイドラインをもとに当社作成)

告知が要るかどうかは、売る取引か貸す取引かを先に決めたうえで、死因・場所・時期を順に当てはめて判断します。線引きを示すのは、国土交通省が令和3年10月に策定した人の死の告知に関するガイドラインで、不動産会社が買主・借主へ告げるべき範囲を整理した基準です。

順番を飛ばすと、関係のない決まりを当てはめてしまいます。上から順にどうぞ。

  1. 売る取引か、貸す取引か:年数で告げなくてよくなるのは貸す取引だけです
  2. どんな死だったか:老衰や病死などの自然死か、それ以外か
  3. どこで起きたか:取引の対象の住まいの中か、隣の住戸や共用部か
  4. (貸す取引の場合)いつのことか:起点の日から概ね3年が過ぎているか

たとえば、相続した実家で親が亡くなっていた場合。売りに出すなら1番で「売る取引」に決まり、4番の年数は外れます。残るのは死因と場所だけ。老衰や病死で室内の清掃も通常の範囲なら、原則として告げなくてよい側です。

もうひとつ。告知が必要かどうかと、価格が下がるか・売れるかは別の問題なんです。告知が不要な物件でも価格が下がることはありますし、告知が必要な物件でも手放す方法は残ります。このガイドは前半で要否を、後半で出口を扱います。

知りたいこと 読む見出し 詳しく扱う記事
どこからが事故物件なのか 事故物件とは?告知ガイドラインが示す線引き 事故物件とはどこまで
告知が要る死・要らない死 告知の対象になる死因と心理的瑕疵の範囲 孤独死と事故物件/心理的瑕疵
「告知事項あり」の意味 「告知事項あり」と表示された物件の扱い 告知事項ありとは
いつまで告知が必要か 告知義務はいつまで続くのか 告知義務は何年で終わるか
誰が義務を負うのか 告知義務は誰が負う? 本ガイドで解説
何をどう伝えるのか 売主が踏む告知の手順 本ガイドで解説
いくらで売れるのか 事故物件の価格は何で決まる? 事故物件の査定/相場
どうやって手放すか 事故物件を手放す判断と進め方 売れない原因/相続した場合

事故物件とは?告知ガイドラインが示す線引き

「事故物件」は法律が定めた言葉ではなく、告げる範囲は国のガイドラインが整理した「人の死」の扱いで決まります。条文に定義がないため、広告で使われる呼び名と告知が必要な範囲は完全には重なりません。

線を引いているのは、死因と場所の2つです。老衰や病死などの自然死、入浴中の事故のような日常生活の中での不慮の死は原則として告げなくてよい側です。自殺・他殺・火災や、長期間放置されて特殊な清掃が入ったケースは告げる側に移ります。

所有者の側でまず変わるのは立場です。売りに出すと、売主は自分が知っている事実を書類に書き入れる側になります。そして買い手の母数が減る分だけ、売却までの期間が延びやすくなります。値段より先に効いてくるのは、実はこちらなんです。

死因ごと・場所ごとの当てはめは、どこからが事故物件になるのかの線引きで1件ずつ整理しています。自分のケースがどちら側かを先に確かめたい方は、そちらからどうぞ。

告知の対象になる死因と心理的瑕疵の範囲

自然死と日常生活の中での不慮の死は、売買・賃貸とも原則として告げなくてよい側に入ります。ただし長期間人知れず放置されたこと等に伴い特殊清掃などが行われた場合は、同じ自然死でも告げる対象へ移ります(国土交通省 人の死の告知に関するガイドライン 4.(1))。

特殊清掃とは、亡くなった方が長く発見されなかった住居で、原状回復のために行う消臭・消毒や清掃のことです。死因そのものより、そのあと室内に何が行われたかが分かれ目です。

ガイドラインが「告げなくてよい」とするのは次の3つです。

  • 自然死と日常生活の中での不慮の死(売買・賃貸とも)
  • 貸す取引で、起点になる日から概ね3年が過ぎた事案
  • 隣接住戸や、日常生活で通常使わない共用部分の事案(売買・賃貸とも)

発見までの日数で扱いが分かれる孤独死は、孤独死が事故物件になる判断基準をご覧ください。隣の部屋・敷地・自殺未遂などの線引きは心理的瑕疵にあたる事象の範囲にまとめました。

要点: 告げなくてよいとされる3類型にあてはまる事案でも、買主・借主から問われたら、分かっている事実をそのまま伝えます(ガイドライン4.(3))。

「告知事項あり」と表示された物件の扱い

物件情報の「告知事項あり」は、人の死に限らず、契約前に説明が必要な事情があることを示す表示です。不動産の条文に「告知事項」という言葉はなく、広告や備考欄で使われている実務上の表記なんです。

中身は大きく4種類に分かれ、人が亡くなった物件はそのうちの1つにすぎません。建物の不具合が理由のこともあれば、周辺環境や法令上の制限が理由のこともあります。表示だけでは、どれに当たるかまでは判別できません。

いちばん広いのが「告知事項あり」で、その内側に心理的瑕疵、さらに内側に事故物件がある入れ子の関係です。同じ物件でも呼び名が入れ替わりますので、どの言葉で話されているかを確かめてみてください。

4種類の内訳と、契約前に中身を確かめる手順は物件情報の「告知事項あり」の読み解き方で扱っています。

告知義務はいつまで続くのか(賃貸3年と売買の違い)

賃貸は発生日または発覚日から概ね3年、売買は経過年数によらず死因と場所で判断する違いを並べた図
起算点は自然死等以外なら発生した日、特殊清掃等が行われた場合は発覚した日です(出典: 国土交通省「人の死の告知に関するガイドライン」4.(1)②)

告知が必要な期間は取引の種類で変わり、年数の区切りが置かれているのは賃貸だけです。売買には、何年たてば告げなくてよいという定めがそもそもありません。

賃貸の「概ね3年」は起点が2つに分かれます。自然死等以外の死は発生した日から、自然死等で特殊清掃等が行われた場合は発覚した日から、それぞれ概ね3年です(ガイドライン4.(1)②)。清掃を実施した日ではありません。

年数の根拠に挙げられているのは、賃貸借取引についての過去の裁判例です。売買取引には同じ整理が置かれておらず、年数を数えても答えが出ません。⇒ 売る予定の方は、年数の話をいったん脇に置いて構いません

なお、年数が過ぎても告げる場面は残ります。買主・借主から問われた場合と、社会的影響が特に大きい事案がこれにあたります。3年の数え方や入居者が入れ替わった場合の扱いは、告知義務が続く期間の考え方が受け持っています。

告知義務は誰が負う?宅建業法と国のガイドラインの関係

売主は自分が知っている事実を買主へ伝える立場、不動産会社は伝え漏れを禁じられている立場で、根拠になる決まりが別々です。国のガイドラインは、このうち不動産会社側の義務の解釈を整理した基準にあたります。

仲介を頼むと、不動産会社から告知書を渡されます。誰が何を負うのかを分けておくと、担当者の説明が制度の話として聞こえてきます。

売主と不動産会社で根拠が違う

立場 根拠になる決まり 求められていること
売主・貸主 民事上の信義則 把握している事実を買主・借主に告げる。取引目的、事案の内容、時間の経過、周知の程度等から義務の有無が判断
不動産会社 宅地建物取引業法47条1号 相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項を、故意に告げない行為・事実と違うことを告げる行為が禁じられている
国のガイドライン 業法上の義務の解釈 告げなくてよい場合と告げる内容を、裁判例と実務から整理した基準

データ出典: 国土交通省「人の死の告知に関するガイドライン」1.(1)(2)、e-Gov 宅地建物取引業法 第47条をもとに当社作成

信義則とは、取引の相手に誠実に振る舞うべきという民法上の考え方です。意外に思われるかもしれませんが、契約前に宅地建物取引士が書面で説明する重要事項説明の列挙事項に「人の死」は入っていません。告知の根拠は47条1号と信義則の側にあります。

ガイドラインどおりでなかったことだけで、直ちに業法違反になるわけではありません。ただしトラブルになれば行政庁の監督で参考にされます。反対に、不動産会社がガイドラインに沿って対応しても、民事上の責任を回避できるわけではありません(1.(2)②)。告げずに売った場合の責任は告知が必要な範囲と期間の詳しい解説へ。

ガイドラインが答えを出していない場面もある

対象は住宅として使われる居住用不動産で、オフィス等は対象外です(2.(2))。さらにガイドライン自身が「現時点では対象としていない」と明記する場面が3つあります。

  • 建物が取り壊された場合の、土地取引の取扱い
  • 搬送先の病院で死亡した場合の取扱い
  • 転落で死亡した場合の、落下開始地点の取扱い

一般的に妥当と整理できるだけの裁判例や実務の蓄積がないためです。基準がないという意味で、告げなくてよいという意味ではありません。当てはまるかどうかは個別の事実関係で変わりますので、媒介を頼む会社や司法書士へご確認ください。

押さえておきたいこと: ガイドラインは不動産会社に向けた基準で、売主が自分の判断で事実を省いてよいわけではありません。

売主が踏む告知の手順|告知書に何を書いて誰に渡すか

告知書に書く発生時期・場所・死因・特殊清掃の有無の4欄と、媒介契約から引渡しまでの伝え方を示した図
分からない項目は「不明」と書けば足ります(出典: 国土交通省「人の死の告知に関するガイドライン」4.(2)(4))

売主がすることは、媒介を頼んだ不動産会社から渡される告知書に、分かっている事実を書いて返すことです。伝える中身は、発生時期・場所・死因・特殊清掃の有無の4点に限られます(国土交通省 ガイドライン本文 4.(2))。

告知書(物件状況等報告書)は、売主が知っている物件の状態や過去の出来事を書いて渡す書類です。媒介は、不動産会社に買主探しと契約の調整を頼む契約です。

告知書に書く4つのこと、書かなくてよいこと

区分 内容
書く4点 発生時期(特殊清掃等が行われた場合は発覚時期)/場所/死因(自然死・他殺・自死・事故死の別)/特殊清掃等が行われた旨
書かなくてよいこと 氏名・年齢・住所・家族構成、具体的な死の態様や発見状況
分からないとき 「不明」と書けば足りる

データ出典: 国土交通省「人の死の告知に関するガイドライン」4.(2)(4)をもとに当社作成

相続した実家のように経緯を確かめようがなくても、分かる範囲を書いて不明を明示すれば足ります。

いつまでに伝えるのか(告知書から引渡しまで)

売却は、媒介契約 ⇒ 告知書の記載 ⇒ 重要事項説明 ⇒ 売買契約 ⇒ 引渡し、と進みます。売主が書いて渡すのは1回で、以降は不動産会社が伝えます。

媒介を行う会社は、売主・貸主に告知書等への記載を求めれば調査義務を果たしたものとされ、聞き込みやネット調査までは原則として義務ではありません(3.(1))。⇒ 売主が書かなければ、買主へは伝わりません

ガイドラインは、契約後、引渡しまでに知った場合も告知義務があるとする裁判例に留意すべき、としています(3.(2))。伝える期間は契約の日で終わりではないんです。告げる際は書面の交付等が望ましい、ともされます(4.(4))。

当社は、迷う事実こそ自分で決めずに書いて渡すほうが負担は軽いと考えています。売主が故意に告げなかった場合は民事上の責任を問われる可能性があるとされているためです(3.(2))。迷った事実は、伝えるかどうかを自分で決めず、事実として告知書に書いて渡します

要点: 売主の手は「告知書に事実を書いて渡す」の一手です。

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事故物件の価格は何で決まる?下がり幅を左右する5つの要因

事故物件の価格は、何が起きたかや建物の状態など5つの要因で下がり幅が変わり、告知の要否だけでは決まりません。同じ「告知が必要な物件」でも金額の出方は違います。

  • 事案の内容(何が起きたか)
  • 発生からどれくらい経ったか
  • 近隣やインターネットでどこまで知られているか
  • 建物の状態(築年数・劣化・傾き)
  • 残置物(家具や家電など、室内に残されたままの物)と清掃の状況

このうち売主の側で動かせるのは後ろの2つだけです。前の3つは、時間が経つのを待つか、伝え方を整えるかしか手がありません。

各要因が査定額にどう効くのかは事故物件の査定額の決まり方、死因別の目安は事故物件の価格相場と下落幅の目安で扱っています。

冒頭の切り分けに戻ります。価格を動かしているのは「告げるかどうか」ではなく、その物件を買える人の母数がどれだけ残るかなんです。告知が不要な物件でも、建物の傷みや立地で価格は下がります。

事故物件を手放す判断と進め方(売れない・相続のケース別)

反応がない・相続直後・遠方の3状況ごとに、先に確かめる項目と出口の候補へ分かれる流れを示した判断フロー図
状況を選ぶと先に確かめる場所が1か所に絞れます(当社作成)

告知が必要な物件でも、売れない状態が続いているのか相続したばかりなのかで、次に動かす手は変わります。同じ「手放したい」でも、先に見る場所が違います。

いまの状況 先に確かめること 出口の候補
反応がない 問い合わせ・内見・申込のどこで止まったか 価格と伝え方を直す/買主を替える
相続したばかりで経緯が不明 受けるか放棄するかの期限と名義 名義を移してから売る/分け方を決める
遠方で管理に通えない 毎年の固定資産税と管理の費用 現況のまま買取に出す/仲介で待つ

反応がないなら、原因は価格・伝え方・立地・建物の状態の4つに切り分けられます。値下げの前に試す順番は事故物件が売れない原因の切り分け方が詳しいです。

相続したばかりなら、受けるか放棄するかの期限、分け方、名義の3つが片づかないと売却に進めません。期限の並びは相続した事故物件の進め方へ。

出口を比べたいなら、仲介・買取・更地を並べた事故物件の売却方法3つの比較が向いています。現況買取とは、片付けや修繕をせず、家財が残ったまま買い取ってもらう方法のこと。室内を整える前に金額を出せます。

事故物件の告知義務についてよくある質問

事故物件の告知義務は法律で決められているのですか

不動産会社については、宅地建物取引業法47条1号が、相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項を故意に告げない行為を禁じています。国のガイドラインは、この条文の当てはめ方を整理した基準です。売主自身の義務は、民事上の信義則で判断されます。

不動産会社は過去に人が亡くなったかどうかを自分で調べてくれるのですか

媒介を行う不動産会社は、売主・貸主へ告知書等への記載を求めることで調査義務を果たしたものとされます。聞き込みやネット調査は原則として義務ではなく、売主が書かなければ買主へ伝わりません。

建物を取り壊して更地にした土地は、ガイドラインではどう扱われるのですか

ガイドラインは、人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引を、現時点では対象としていないと明記しています。基準がないという意味で、告げなくてよいわけではありません。取り壊す前に、媒介を頼む会社へ事実を伝えて相談してください。

告知に関するルールは今後変わる可能性がありますか

ガイドライン自身が「現時点で妥当と考えられる一般的な基準」と位置づけ、新たな裁判例や取引実務、人々の意識の変化に応じて適時に見直すとしています。いま告げなくてよいとされる扱いが、将来も同じとは限りません。売却が数年先なら、その時点で確かめてください。

買取くんでは、告知が必要な事故物件でも買取を依頼できますか

依頼できます。当社の買取くんは、告知が必要な事情がある物件も買取の対象にしています。全体で年間500件以上のご相談をお受けし、金額にご納得いただけた場合は最短3日で現金化まで進みます。いつ・どこで・何があったのかを、分かる範囲でお知らせください。

まとめ

事故物件の告知義務は死因・場所・時期の線引きで要否が決まり、必要なら告知書に事実を書いて渡せば果たせます。ガイドラインで判断がつく範囲と、更地にした土地のように基準がない範囲もあるんです。迷う事実は自分で省かず、書き出して媒介を頼む会社へ渡します。

当社の買取くんは告知が必要な物件も全国で買い取り、所有権移転登記は提携の司法書士が担当します。遠方で通えない方、相続したばかりの方に向いています。

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相続した実家でも、いま手放した場合の金額を先に確かめられます。

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この記事の監修者

株式会社リアテクス 執行役員 鶴野博之

鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)

宅地建物取引士/賃貸経営管理士/FP2級

一棟投資物件専門の仲介会社で不動産業界に参入後、前職では「訳あり・瑕疵物件」に特化したコンサルティングプログラム責任者として600名以上の投資家の購入から売却までに携わる。自身も再建築不可物件を中心に訳あり物件へ投資し、転売売買から保有物件まで数々の実績を持つ。

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