「気になった物件の備考欄に、告知事項ありって一行だけ書いてある」
「これ、誰かが亡くなった部屋ってこと?」
告知事項ありとは、人の死に限らず雨漏りや周辺環境など、契約前に伝えるべき事情がある物件の表示です。表示は理由を教えてくれませんが、聞けば確かめられる範囲は決まっています。中身の4分類と確認の手順、売る側になったときの影響までご案内します。
告知事項ありとは?物件情報に書かれる表示の意味

告知事項ありは、その物件に契約前の説明が必要な事情があることを示す、物件情報上の表示です。実は不動産の法律の条文に「告知事項」という言葉は出てきません。広告や物件情報の備考欄で使われている実務上の表記で、裏側には不動産会社が説明しなければならない事柄がひかえています。
表示が意味するのは「契約前に伝えるべき事情がある」こと
備考欄に一行だけ「告知事項あり」。理由はどこにも書かれていない——これが皆様の最初にぶつかる場面ではないでしょうか。この表示は「伝えるべき事情がある」という結論だけを示すもので、何があったのかまでは表示から読み取れません。
裏を返せば、その物件について不動産会社が黙っていられない事情がある、というサインです。避けるか進むかを決める前に、中身を聞くのが順番になります。事故物件と告知義務の全体像は事故物件の告知義務の解説にまとめていますので、あわせてご覧ください。
根拠は宅建業法の35条と47条の2本立て
契約する前に、その物件について知っておくべきことを不動産会社から説明してもらう手続きがあります。重要事項説明とは、この説明を指す正式な呼び名です。宅地建物取引業法(不動産会社の営業ルールを定めた法律)の第35条は、契約が成立するまでの間に宅地建物取引士(不動産取引で重要事項の説明を担当する国家資格者)が書面を交付して説明するよう定めています。
ただし35条が列挙しているのは、登記された権利、法令に基づく制限、私道の負担、飲用水・電気・ガス・排水の整備状況、建物状況調査の結果といった項目です。人が亡くなった経緯や周辺環境の事情は、この列挙のなかにありません。
そこで効いてくるのがもう一本の条文です。同じ法律の第47条第1号は、物件の「所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便」その他の取引条件で、相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げないことを禁じています。⇒ 列挙された項目は35条で書面に、列挙されていない事情は47条を根拠に告知書や口頭で伝えられる、という二段構えなんです。
賃貸・売買・土地で変わる表示の出方
表示が出る場所は、賃貸でも売買でも土地でもほぼ共通で、物件情報の備考欄や特記事項欄です。マンションでも一戸建てでも扱いは変わりません。35条は売買・交換・貸借のすべてを対象にしているため、借りる場合も買う場合も説明を受ける立場は同じです。
違いが出るのは売買のほうで、売主が書く書類がセットになります。告知書(物件状況等報告書)とは、売主が知っている物件の不具合や事情を自分で書き出して買主へ渡す書類のことです。ここに何が書かれているかを見せてもらえるかどうかで、確認の深さが変わってきます。
人の死以外も含む「告知事項あり」4つの理由

告知事項ありの中身は大きく4種類に分かれ、人が亡くなった物件はそのうちの1つにすぎません。建物の不具合、周辺環境の事情、過去の出来事、法令上の制限——これが取引実務で使われている呼び分けです。表示を見ただけでは、このうちどれに当たるのかまでは判別できません。
4つを名前だけ並べても行動に移せませんので、物件情報での表れ方・そのまま聞ける質問文・答えが記録される場所まで並べました。
| 4つの理由 | 物件情報での表れ方の例 | そのまま聞ける質問文と、記録が残る場所 |
| ①建物・設備の不具合(物理的瑕疵) | 雨漏り、シロアリ、傾き、給排水の不具合 | 「建物状況調査は受けていますか。結果を見せてください」/調査結果の概要と売買の告知書に残る |
| ②周辺環境に関する事情(環境的瑕疵) | 近くの施設、線路や幹線道路の音、におい | 「近隣で気になる音やにおいはありますか」/告知書や重要事項説明書の備考欄。口頭の回答は自分で控える |
| ③過去の出来事による心理的な抵抗(心理的瑕疵) | 部屋・建物で過去に起きた出来事 | 「いつ、どの部屋で、何があったのか教えてください」/告知書や重要事項説明書の備考欄。口頭の回答は自分で控える |
| ④法令上の制限(法的瑕疵) | 建て替えができない、道路づけ、用途の制限 | 「建て替えはできますか。接道の状況を教えてください」/重要事項説明書の法令に基づく制限の欄 |
データ出典: 宅地建物取引業法 第35条・第47条
この表で押さえていただきたいのは、右の列が類型ごとにバラバラだという点です。①と④は書面に項目として載る一方、②と③は備考欄か口頭という形をとります。書面に書いていないから何もなかった、とは読み取れないということですね。
①建物・設備の不具合(物理的瑕疵)
雨漏り、シロアリの被害、床や柱の傾き、給排水設備の不具合など、建物そのものの状態にかかわるものです。物理的瑕疵とは、こうした建物・土地の物理的な欠陥を指す実務上の呼び方です。
この類型は、35条が挙げる項目と重なる部分があります。既存の建物なら建物状況調査を実施しているかどうかとその結果の概要が、給排水設備なら整備の状況が説明対象です。⇒ 図面や調査結果という形で、比較的たしかめやすい類型です。
②周辺環境に関する事情(環境的瑕疵)
騒音、におい、日当たり、近隣の施設など、物件の外側の事情です。環境的瑕疵とは、建物自体ではなく周辺環境が原因で住み心地に影響する事情を指します。なかでも心理的な抵抗を生みやすい施設を、実務では嫌悪施設(近くにあることを嫌う人が多い施設)と呼びます。
こちらは35条の列挙項目ではなく、47条第1号が「環境」を判断に重要な影響を及ぼす事項の例として挙げていることが根拠になります。ただし音やにおいの感じ方には個人差がありますので、聞き取りだけで完結させず、曜日や時間帯を変えて現地で確かめる時間をとってください。
③過去の出来事による心理的な抵抗(心理的瑕疵)
いわゆる事故物件として語られるのがこの類型です。心理的瑕疵とは、物件そのものに欠陥はなくても、過去の出来事によって住むことへの心理的な抵抗が生じる事情を指します。②と同じく35条の列挙項目ではなく、47条第1号が根拠になります。
どこまでが心理的瑕疵にあたるのか、境目にある事案をどう扱うのかは、それだけで一本の論点になります。分類と具体的な線引きは心理的瑕疵にあたる事象の範囲にまとめていますので、そちらをご覧ください。
④法令上の制限(法的瑕疵)
建て替えができない土地(再建築不可)、接道の状況、用途地域による制限などです。再建築不可とは、今建っている家を壊すと同じ場所に新しく建てられない土地のことで、道路への接し方が建築基準法の条件を満たしていない場合に生じます。法的瑕疵とは、こうした法令上の制限によって使い方が縛られる状態を指します。
35条の二号(法令に基づく制限)と三号(私道に関する負担)が対応しており、重要事項説明のなかで説明を受けられます。土地の条件そのものを詳しく知りたい方は建て替えができない土地の詳しい条件をご覧ください。
なお、この4つの呼び分けは取引実務で定着している整理であり、法律の条文に4つの言葉が並んでいるわけではありません。実際、宅地建物取引業法の全文には「心理的瑕疵」も「事故物件」も出てきません。分類名そのものにこだわるより、自分が見ている物件で何にあたるのかを聞き出すほうが実益があります。
告知事項あり・事故物件・心理的瑕疵、3つの言葉の関係

3つの言葉は広さが違い、告知事項ありが最も広く、事故物件と心理的瑕疵はその一部を指します。同じ物件の話をしているのに呼び名が入れ替わるので、混乱しやすいところです。どれが広い言葉なのかを先に押さえておけば、説明を受けたときに迷わずに済みます。
3つの言葉の広さの違い
3つの言葉は、次のような入れ子になっています。
- 告知事項あり:物件情報に載る表示。4つの理由すべてを含む、いちばん広い言い方
- 心理的瑕疵:4つのうち③にあたる実務用語。過去の出来事による抵抗感を指す
- 事故物件:心理的瑕疵のうち、人の死などを想像させる事案に向けられた俗称。法律上の定義はない
つまり、告知事項ありと書いてあっても、事故物件を指しているとはかぎりません。雨漏りや建て替え制限でも同じ表示が付きます。どこからが事故物件と呼ばれるのかについてはどこからが事故物件になるのかの線引きで扱っていますので、線引きが気になる方はそちらへ進んでください。
表示から読み取れるのはどこまでか
表示から分かるのは「何かある」ということだけで、理由・時期・場所の3つは分かりません。3年前の話なのか先月の話なのか、部屋のなかなのか共用部なのかも、表示だけでは区別できないんです。
告知が続く期間についても同じで、表示の有無からは判断できません。期間の数え方には別の考え方がありますので、告知義務が続く期間の考え方をご確認ください。ここで足りない情報は、次の3段階で埋めていくことになります。
契約前に確認できることと、確認の3ステップ

内容は問い合わせ・内見前・重要事項説明の3段階で確認でき、書面で受け取れる項目と口頭で聞いて控える項目に分かれます。「不動産会社に確認しましょう」だけでは、いつ聞けばよいのかが分かりませんよね。聞くタイミングによって、返ってくる情報の粒度が変わります。段階ごとに整理しました。
| 確認の段階 | そこで分かること | 記録の残り方 |
| 段階1:問い合わせ(電話・メール) | 告知事項があるかどうか、大まかな種類 | 口頭またはメール。メールなら文面がそのまま残る |
| 段階2:内見・申込の前 | 現地で見て分かること(建物の状態、周辺の音やにおい)、売買では告知書の有無 | 自分のメモと写真。告知書は写しをもらえるか確認する |
| 段階3:重要事項説明(契約が成立する前) | 35条が挙げる項目の説明、備考欄に書かれた事情 | 重要事項説明書として書面で交付される |
データ出典: 宅地建物取引業法 第35条
この3段階で大事なのは、段階3が契約の直前だという点です。35条が「契約が成立するまでの間に」と定めているため、書面で最終確認できるのは申込みを済ませたあとになることもあります。⇒ 申し込む前に判断材料をそろえたいなら、段階1と段階2で聞き切る必要があるということですね。
段階1: 問い合わせのときに聞けること
物件を問い合わせるとき、「この物件の告知事項の内容を教えてください」とそのまま聞いて構いません。聞きにくいと感じてしまう場面ですが、不動産会社は契約前に説明する義務を負う立場ですので、遠慮のいる質問ではありません。
この段階で返ってくるのは、大まかな種類までです。「建物の不具合です」「過去の出来事に関するものです」といった粒度ですね。メールで問い合わせておけば、回答が文面のまま残ります。
段階2: 内見・申込前に確かめること
内見では、現地で見て分かるものと分からないものを分けて見てください。建物の傾きや水まわりの状態、周辺の音やにおいは自分の目と耳で確かめられます。一方で、過去に何があったかは現地では分かりません。
売買の場合は、この段階で告知書が用意されているかを聞いておきます。写しをもらえるなら、記載されている項目に目を通しておくと、段階3での説明が理解しやすくなります。口頭で聞いた内容は、その場で日付とともにメモに残すのがおすすめです。
段階3: 重要事項説明で書面に残ること
契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士が書面を交付して説明します。35条が挙げる項目に加えて、契約不適合責任(引き渡した物件が契約の内容に合っていなかった場合に売主が負う責任)の履行についてどんな措置がとられるかも説明の対象です。
備考欄に事情が書かれていれば、それも書面として手元に残ります。ただし書面にない事情がなかったことにはなりませんので、段階1・2で聞いた内容と読み合わせて、食い違いがないかを確かめてください。
答えが得られないときの受け止め方
「分かりません」と返ってくることもあります。不動産会社が把握していない事実は説明のしようがない、という構造があるためです。この場合は、答えが得られなかったという事実そのものを日付とあわせて記録に残しておきましょう。
告知が必要な範囲と、怠った場合に何が起きるのかは告知が必要な範囲と怠った場合の責任で扱っています。自分で裏を取る手立てを探している方には事故物件かどうかを調べる方法が参考になります。
自分の物件に「告知事項あり」が付くとどうなる?
売る側では、媒介を依頼した業者から告知書への記載を求められ、その内容が買主への説明に回ります。ここまでは買う側・借りる側の目線でしたが、相続した実家を売りに出す立場になると景色が変わります。ここからは所有者側の話です。
表示が付くのはどんな場面か
売却を依頼したあと、物件の状態や過去の事情を書き出す告知書の記載を業者から求められます。国土交通省の人の死の告知に関するガイドラインでも、媒介を行う業者が売主・貸主に告知書等への記載を求めることで通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする、という考え方が示されています。
そこに書いた内容をもとに、広告の備考欄へ「告知事項あり」と表示するかどうかを業者が判断します。⇒ 表示は勝手に付くものではなく、所有者が申告した内容が出発点にあるんです。
売出価格と成約までの期間に出る影響
表示が付いた物件は、買い手が条件を承知したうえで検討に進む形になりますので、売出価格や成約までの期間に影響が出ることがあります。どのくらい動くのかは、事情の種類・時期・立地で変わるため、一律の数字では表せません。
査定額がどんな要素で決まるのかは事故物件の査定額の決まり方で内訳を扱っています。組み立てを先に確認しておけば、提示された金額の根拠を聞きやすくなるはずです。
表示が付いた物件の売り方の選択肢
売り方は大きく2つに分かれます。仲介は買主を探して市場で売る方法で、条件が整えば高く売れる可能性がある一方、検討する買い手の層は絞られます。買取は不動産会社が直接の買主になる方法で、金額は市場価格より抑えられますが、告知事項の内容を前提として話が進みます。
当社の買取くんは、残置物(家に残された家財や生活用品)をそのままにした現況買取(片付けや修繕をしない、今の状態のままでの買取)に対応しています。片付けや修繕を前提にせず、今ある状態のまま金額を出す形です。
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他社で取り扱いを断られた物件も、当社が直接の買主として検討します。
受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)
「告知事項あり」に関するよくある質問
「告知事項あり」と書かれていれば、必ず人が亡くなっているのですか
人の死は4つの理由のうちの1つにすぎません。雨漏りやシロアリなどの建物の不具合、周辺環境の事情、建て替えができないといった法令上の制限でも同じ表示が使われます。どれに当たるのかは、問い合わせのときに直接聞いて確かめてください。
告知事項の内容は、問い合わせれば教えてもらえるのですか
聞くこと自体は問題ありません。ただし宅地建物取引業法の第35条が定める説明義務は、契約が成立するまでの間のものです。詳細が書面でそろうのは重要事項説明の場面になります。業者が把握していない事実は説明できないため、答えが得られないこともあります。
「告知事項あり」の物件は、購入時に住宅ローンが通りにくいのですか
金融機関ごとに判断が異なるため、一律には言えません。担保としての評価に影響する場合がありますので、購入を検討する段階で、利用予定の金融機関に物件の事情を伝えて確認しておくと安全です。
自分の物件を売るとき、広告に「告知事項あり」と出るのですか
表示するかどうかは、媒介を依頼した業者が判断します。その判断のもとになるのが、売主が記載する告知書の内容です。事実と違う内容を書くと後の責任問題につながりますので、覚えている範囲を正確に伝えてください。
告知事項ありと表示された物件でも、買取の査定は受けられるのですか
受けられます。当社の買取くんでは、告知事項の内容を含めて物件の状況をうかがったうえで査定します。査定は無料で、片付けや修繕を済ませていない状態でもご相談いただけます。
告知義務そのものの仕組みから確かめたい方は、告知義務と事故物件の関係を先にご覧ください。
まとめ
告知事項ありとは、契約前に説明が必要な事情がある物件の表示で、その中身は聞けば確認できます。表示から分かるのは「何かある」ことだけで、理由・時期・場所は表示だけでは読み取れません。問い合わせで種類を聞き、内見で現地を確かめ、重要事項説明で書面を受け取る——この3段階を順に踏んでいけば、判断に必要な材料はそろいます。所有者の立場なら、告知書に書く内容を先に整理しておくところからです。
当社の買取くんは、家財を残したままの現況での買取に対応し、他社で取り扱いを断られた物件もご相談いただけます。片付けや修繕にお金をかける前に金額を知っておきたい方に向いています。
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告知事項ありの物件を手放したい方は、物件の状態をそのままお聞かせください(全国対応)。
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この記事の監修者

鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)
宅地建物取引士/賃貸経営管理士/FP2級
一棟投資物件専門の仲介会社で不動産業界に参入後、前職では「訳あり・瑕疵物件」に特化したコンサルティングプログラム責任者として600名以上の投資家の購入から売却までに携わる。自身も再建築不可物件を中心に訳あり物件へ投資し、転売売買から保有物件まで数々の実績を持つ。