「隣とつながった家だから、勝手に売ったら隣に迷惑がかかるのでは」
「不動産会社に相談したら、この物件は難しいと言われてしまった」
長屋は売却できます。隣家の承諾が要るのは壁を壊して切り離す場合で、切り離さずに現況のまま買取に出すなら要りません。売れにくい理由、承諾が要る場面、売る前の確認、4つの売り方をご案内します。
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隣家に売却の話を切り出す前の段階から、長屋の売り方のご相談をお受けしています。
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長屋(連棟式建物)とは?共同住宅との違いと法律上の扱い

長屋は、住戸が横に並んで隣と壁を共有し、共用の廊下や階段を通らずに各戸の玄関から直接外へ出られる建物です。建築基準法は長屋を共同住宅と並ぶ類型として扱い、各戸を仕切る界壁に構造の要件を課しています。
連棟式建物と呼ばれることもありますが、指しているものは同じなんです。
共同住宅(アパート・マンション)との違い
界壁とは、長屋や共同住宅で隣の住戸との間を仕切る壁のことです。建築基準法30条はこの界壁を小屋裏または天井裏まで達するものにするよう求め、施行令114条1項は準耐火構造にすることを定めています。ただの間仕切りではないんです。
| 比べる点 | 長屋 | 共同住宅 |
| 玄関 | 各戸から直接、外へ出られる | 共用の廊下や階段を通る |
| 共用部分 | 原則として持たない | 廊下・階段・エントランスを共有 |
| 各戸を仕切る壁 | 界壁(小屋裏や天井裏まで達する) | 界壁(同じ要件) |
データ出典: 建築基準法30条/建築基準法施行令114条1項
⇒ 隣との壁は、法律が構造まで指定している部位です。ここが後で効いてきます。
テラスハウスとタウンハウスで、権利の形が変わる
呼び分けとしては、敷地を各戸が単独で所有しているものをテラスハウス、全戸で共有しているものをタウンハウスと言います。売るときに相手にする人が変わるのは、こちらのほうなんです。敷地が共有なら自分の持分を動かすことになり、話は隣戸の所有者にも及びます。
相続した長屋に家財がそのまま残っている場合は、片付けてから売るか、残したまま売るかで動き出す速さが変わります。残置物とは、前に住んでいた方が残していった家具や生活用品のことです。判断の順序は残置物撤去の要否から考える売却の判断基準にまとめました。
長屋が売れにくくなる3つの条件
長屋が売れにくくなるのは、自分の住戸だけでは建て替えられない、買主が住宅ローンを使いにくい、買える相手が限られる、の3つが重なったときです。逆に言えば、このうち1つでも外れれば買い手の幅は広がります。
1. 自分の住戸だけでは建て替えられないことがある
切り離した住戸を単独で建て替えられるかどうかは、その敷地が道路に2m以上接しているかで決まります(建築基準法43条1項)。長屋は間口の狭い住戸が並ぶため、切り離した一区画だけでは接する幅が足りない形になりやすいんです。
再建築不可とは、いま建っている家を壊すと同じ敷地に新しい建物を建てられない状態のことです。どんな条件でそうなるのかは接道義務を満たさず再建築不可になる条件で扱っています。
長屋のまま建て直す場合は、接道とは別に自治体の条例が加わります。東京都は建築安全条例5条で長屋の主要な出入口と通路の要件を定め、大阪でも府条例6条の長屋の解釈と敷地内通路の取扱いが公開されています。確認する対象は、残る長屋の敷地のほうです。
2. 買主が住宅ローンを使いにくい
隣と一体になった建物は、金融機関から見ると担保として評価しづらい形です。担保評価が伸びなければ、自分の住まいとして買う個人が住宅ローンを組む前提が崩れます。
築年数が古い戸建ても似た壁にぶつかりますが、そちらは傷み方しだいで値が付きます。判断材料は築30年の一戸建てに残る価値と売り方をご覧ください。
3. 買い手が現金で動ける個人と再生事業者に絞られる
ローンが前提から外れると、買い手は現金で動ける個人や、買い取って再生を手がける事業者に絞られます。数は減りますが、この層に届けば長屋のままでも話は進みます。
中住戸と端の住戸で、売りやすさはどう変わるか
真ん中の住戸だから売れない、という話ではありません。変わるのは切り離した後に単独で建てられるかどうかで、端の住戸のほうが道路に接する幅を確保しやすい、という違いです。
中住戸でも、切り離しをしない売り方を選ぶなら建て替えの可否は関係ありません。次の章から、その線引きを見ていきます。
隣家との切り離しはどこまでできる?同意の取り方と揉めやすい場面

隣家の承諾が要るのは、壁を壊して切り離す工事に進む場合です。壊すことになる壁は1棟の建物の一部で、民法230条1項により当然に共有とは扱われません。だから壁の帰属を確かめたうえで、承諾と費用の分担を書面に残してから工事に入ります。
切り離しに承諾が要るのは、隣家の建物の一部を壊し、隣家側に新しい外壁が必要になるため
民法は、境界にある壁について次のように定めています。
(境界標等の共有の推定)
第二百二十九条 境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。
第二百三十条 一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁については、前条の規定は、適用しない。出典: e-Gov法令検索 民法
塀のような境界上の壁は共有と推定されるのに、長屋のように1棟の建物の一部になっている壁は、その推定から外れます。つまり「共有の壁だから当然に折半」という前提は、長屋には成り立ちません。
実務では、切り離しは「自分の壁を壊す工事」ではなく「隣家の建物にも手を入れ、隣家側に新しい外壁を作る工事」になります。費用も工期も隣家の暮らしに降りかかるので、承諾なしには進みません。
同意を取るときの進め方と、書面に残しておくこと
「隣が反対しているから売れない」と感じている場合でも、隣家へ具体的な説明をしていない段階で止まっていることがあります。口頭で話しただけで書面にしていない、という段階も同じです。反対されたのではなく、判断材料が渡っていないだけ、という状態ですね。
| 工程 | 相手 | 揉めやすい点 | 先に決めること |
| 1. 申し入れと説明 | 隣家の所有者 | 口頭のままで話が消える | 説明の内容と日付を書面に |
| 2. 壁の帰属の確認 | 隣家の所有者 | 折半と思い込んで進む | 登記と図面で帰属を確かめる |
| 3. 残る側の外壁の新設 | 隣家・施工者 | 雨仕舞いが後日のクレームに | 費用の負担割合と仕上げの範囲 |
| 4. 境界と登記の整理 | 土地家屋調査士 | 境界が未確定で引渡しが止まる | 境界確定を契約の前提条件に |
データ出典: 前掲の民法229条・230条1項/当社の買取実務
書面には、次の項目を入れておいてください。
- 工事の範囲と時期
- 費用の負担割合
- 隣家側に残る外壁の仕上げと、雨漏りが出たときの扱い
- 境界の確認方法と、確認が終わる時期
- 途中で中止する場合の取り決め
切り離しで起きやすいトラブル
起きやすいのは、外壁の雨仕舞い、境界の未確定、費用分担の後出しの3つです。どれも工事の後に表面化しますが、原因は合意の前にあります。ここを潰しておけば、隣家との関係を壊さずに済みます。
なお、切り離しの可否や費用の分担は物件ごとに結論が変わります。個別の事情は所在地の自治体の建築指導担当や、提携する司法書士・土地家屋調査士にご確認ください。
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切り離しの交渉をしない場合に長屋がいくらで動くかを、先にお確かめいただけます。
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売る前に確認する権利関係4項目

売る前に確かめるのは、壁の扱い・境界・敷地が借地か所有か・前面の道が私道か、の4つです。登記事項証明書と公図は法務局で誰でも手数料を払って取れますので、まずこの2つを手元に置いてください。あとは現地で確かめられます。
1. 壁が誰のものかは、登記と図面で確かめる
先ほど見たとおり、長屋の壁には共有の推定が働きません(民法229条・230条1項)。共有持分――1つの不動産を複数人で持っているときの、それぞれの取り分――があるかどうかも、思い込みではなく登記と図面で確かめてください。
建物が1棟としてまとめて登記されていて、自分の住戸だけの登記が見当たらない――長屋にはこういう形もあります。この場合は建物全体に対する持分を持っていることになり、売る相手も手続きも変わります。
2. 境界標と確定測量の有無を確かめる
敷地の角に境界標が入っているか、確定測量の図面が残っているかを見ます。境界が未確定のままだと、引渡しの直前で話が止まります。隣家と共同で測る流れになるため、時間もかかるところです。
3. 敷地が借地権か所有権か
借地権とは、地主から土地を借りて、自分の建物を建てている権利のことです。長屋の敷地が借地になっていることもあります。借地権を第三者に譲るには地主の承諾が必要ですから、隣家より先に地主へ話を通す順番になります。
4. 前面の道が私道か、名義が親のままになっていないか
私道とは、個人や法人が所有している道のことです。前面が私道なら、通行や配管の掘削について所有者の承諾書が要ることがあります。
名義も確かめてください。相続で取得した不動産は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務づけられています(法務省)。手続きの中身は相続した不動産の名義変更と相続登記の期限にまとめました。
長屋を売る4つの方法と、選び方の違い

長屋の売り方は、隣家に売る・隣戸を買い取って一体で売る・現況のまま買取に出す・長屋に慣れた会社に仲介を頼む、の4つです。どれを選ぶかは、住戸の位置と権利の形、そして家財が残っているかで決まります。
| 住戸の位置と権利 | 切り離しの承諾が要る売り方 | 切り離しの承諾なしで進む売り方 | 次にやること |
| 端の住戸・所有権 | 切り離して更地で売る | 現況買取/隣家に打診 | そのまま査定に出す |
| 中住戸・所有権 | 切り離して建て替える | 現況買取/隣戸とまとめて売る | 建て替えの可否を自治体で確認 |
| 端の住戸・借地権 | 切り離して更地で売る | 現況買取(地主の承諾は別途) | 地主に先に打診する |
| 中住戸・借地権 | 切り離して建て替える | 現況買取(地主の承諾は別途) | 地主と隣戸の両方を想定 |
データ出典: 前掲の民法229条・230条1項/建築基準法43条1項/当社の買取実務
4行のどれを選んでも、右側には「切り離しの承諾なしで進む売り方」が残ります。中住戸で所有権の方が更地にして売る道を選ぶなら費用が先に出ていくので、解体して更地にする場合の費用と見比べてから決めてください。
1. 隣家・隣地の所有者に売る
隣家が建て替えや増築を考えているなら、いちばん自然な相手です。相手は敷地が広がり、こちらは切り離し工事をせずに手放せます。ただし時期は相手の予定しだいで、読みにくいのが弱点ですね。
2. 隣戸を買い取って、一体にしてから売る
逆に自分が隣戸を買い取り、1棟まるごとにしてから売る形です。買い手は切り離しの心配が消えるので、条件は良くなります。ただし先に資金が要り、隣戸の所有者が売る気でなければ成立しません。
3. 現況のまま買取業者に売る
現況買取とは、家財を片づけたり傷んだところを直したりせず、今の状態のまま買い取ってもらうことです。買主が再生を前提とする事業者になるため、住宅ローンが使えるかどうかが価格の前提から外れます。仲介で止まっていた長屋が動き出す分かれ目は、ここなんです。
雨漏りや傾きがある場合も、直さずに売れます。伝え方の決まりは雨漏りがある家の告知義務と売却方法をご覧ください。なお買取は仲介より価格が下がる仕組みですので、その差の考え方は買取価格が仲介より下がる仕組みで確かめてから比べてください。
4. 長屋の扱いに慣れた会社に仲介を依頼する
時間をかけて価格を追うなら仲介です。長屋の取り扱い実績がある会社かどうかで、買い手の探し方も説明の仕方も変わります。仲介ではなく買取に出す場合の会社の比べ方は地域別の買取業者の比較・選び方にまとめています。
| 売り方 | 隣家との交渉 | 家財が残ったまま進むか | 向いている方 |
| 隣家・隣地に売る | 必須 | 相手による | 隣家が建て替えを考えている |
| 隣戸を買って一体で売る | 必須 | 進まないことが多い | 資金と時間に余裕がある |
| 現況のまま買取に出す | 原則不要 | 進む | 家財が残っている・期限がある |
| 仲介を依頼する | 場面により必要 | 片付けを求められやすい | 時間をかけて価格を追いたい |
データ出典: 当社の買取実務(隣家との交渉の要否と、家財の扱いを軸に整理)
期間の見通しも交渉の量に比例します。交渉相手が増えるほど長くなり、交渉のない現況買取がいちばん短くなります。⇒ 急ぐ事情があるかどうかが、実際の分かれ目です。
片付けから手をつけると、それだけで数か月が過ぎてしまうこともあります。手をつける前に読んでおきたいのが残置物を撤去せずに売るという選択肢です。
長屋の売却でよくある質問
隣の住人が切り離しに反対したら、長屋は売却できませんか?
売却そのものが止まるわけではありません。反対で進まなくなるのは切り離し工事だけで、現況のまま買取に出す、隣家へ打診する、仲介で買い手を探すという道は残ります。まずは切り離しを前提にしない見積もりを取ってから、交渉する価値があるかを判断してみてください。
長屋は住宅ローンを使う買主に売れますか?
使える場合もありますが、条件は厳しめです。分かれ目は建物の担保評価と敷地の権利で、借地権付きや1棟でまとめて登記された建物だと、金融機関の審査は通りにくくなります。現金で買える個人や再生を手がける事業者が相手なら、この制約はかかりません。
共用の壁の修繕費は誰が負担しますか?
まず壁が誰のものかを確かめるところからです。境界上の壁は相隣者の共有と推定されますが、長屋のように1棟の建物の一部を構成する壁にはこの推定が適用されません(前掲の民法229条・230条1項)。確認の結果、実際に共有だった場合は、民法253条1項により持分に応じた負担になります。
空き家のまま放置している長屋でも買い手は見つかりますか?
家財や傷みが残っていても、現況で扱える売り方があります。ただし買い手の層は変わり、自分の住まいとして買う個人より、再生して貸したり売ったりする事業者が中心です。片付けや修繕を先に済ませるかは、費用と手元に残る金額を見比べて決めてください。
買取くんでは、家財が残ったままの長屋でも売却の相談はできますか?
ご相談も無料査定のご依頼もいただけます。当社の買取くんは全国で直接買い取っており、家財を残したままの現況買取や、他社で断られた物件のご相談にも対応しています。切り離しや権利関係の手続きが要る場合は、提携する司法書士・土地家屋調査士を含む専門チームで進めますので、隣家に話を切り出す前の段階でお声がけください。
まとめ
長屋は、隣家との切り離しをしない売り方を選べば、切り離しの承諾を待たずに手放せます。切り離しや建て替えを前提にするなら隣家の承諾と自治体への確認が要りますが、現況のまま売るならその両方を避けられます。自分の住戸が端か中住戸か、敷地が借地か所有かを確かめてから、売り方を1つ選んでください。隣に気兼ねしたまま持ち続ける日々は、そこで区切りがつきます。
当社の買取くんは、家財が残ったままの現況買取に対応し、空き家や訳あり物件を全国で直接買い取っています。片付けや隣家との交渉に時間をかけられない方に向いています。
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長屋のままで買い手がつくかどうか、まずご相談ください。
受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)
この記事の監修者

鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)
宅地建物取引士/賃貸経営管理士/FP2級
一棟投資物件専門の仲介会社で不動産業界に参入後、前職では「訳あり・瑕疵物件」に特化したコンサルティングプログラム責任者として600名以上の投資家の購入から売却までに携わる。自身も再建築不可物件を中心に訳あり物件へ投資し、転売売買から保有物件まで数々の実績を持つ。