借地権付き建物の売却はどう進める?売却先と7ステップ

当社は東京都北区で、築50年を超えて傾きも出ていた借地上の建物を4,400万円で買い取りました。借地権付きの建物は、借地権と建物をまとめて売却できます。ただし権利が賃借権であれば、地主から譲渡の承諾を得ることが前提です。売却先の選び方と、着手から引渡しまでの手続きの順序を整理します。借地権の全体像については借地権の基礎からの解説をご覧ください。

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借地権付き建物は建物ごと売却できる?

地上権なら地主の承諾が不要、賃借権なら必要となる判定と、旧法・定期・事業用定期それぞれの存続期間を示した分岐図
契約書と登記で権利の型を確かめると、承諾の要否と残存期間の見方が決まる(出典: 借地借家法3条・4条・19条・22条/国税庁 No.4611)

借地権付き建物は、建物の所有権と土地を使う権利をセットで売却できます。権利が賃借権であれば、地主の譲渡承諾なしに手続きを進められません。

借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権を指します(国税庁 No.4611 借地権の評価、2026年8月時点)。同ページでは借地権が相続税・贈与税の課税対象として扱われ、旧法・普通借地権のほか定期借地権、事業用定期借地権等、建物譲渡特約付借地権、一時使用目的の借地権の5つに区分されると説明されています。税務上も価額が付く財産として扱われている以上、借地権は「無価値だから処分するしかないもの」ではありません。売却にあたっては、建物の所有権と借地権を一体の商品として買主に引き渡すことになります。

地上権か賃借権かで、地主の承諾が要るかどうかが変わる

同じ借地権でも、地上権と賃借権では手続きの重さが違います。地上権は土地そのものを直接使う物権で、譲渡にあたって地主の承諾は要りません。一方、賃借権は地主に対する債権であるため、譲渡には地主の承諾が必要です。

賃借権に承諾が要ることは、借地借家法の条文構成から確認できます。同法19条1項は、借地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合に地主が承諾しないとき、裁判所が「借地権設定者の承諾に代わる許可」を与えられると定めています(借地借家法19条1項)。承諾に代わる許可という制度がわざわざ用意されているのは、原則として承諾なしには譲渡できないことの裏返しです。実務上、居住用の借地の多くは賃借権であり、まず自分の権利がどちらかを登記事項証明書と契約書で確かめるところから始まります。

残存期間の長さで、買い手の付きやすさが変わる

借地権の存続期間は30年とされ、契約でこれより長い期間を定めたときはその期間になります(借地借家法3条)。更新した場合の期間は、最初の更新が20年、以後は10年です(同4条)。更新を重ねるほど残存期間は短くなり、買主が住宅ローンを組める年数も圧迫されます

定期借地権はさらに前提が変わります。存続期間を50年以上として設定する場合、契約の更新も建物の築造による期間延長もなく、建物買取請求もしない旨を定められます(同22条1項)。つまり残存期間が、そのまま買主の利用可能年数の上限です。マンションで同じ問題に直面している場合は定期借地権マンションが売れないときの選択肢を参考にしてください。なお普通借地権・定期借地権・旧法借地権それぞれの成り立ちは借地権の基礎(普通借地権・定期借地権の違い)で扱っています。

権利の型 地主の譲渡承諾 期間の考え方 売却時に効いてくる点
地上権 不要 契約による 手続きが軽く、買主の心理的ハードルが低い
賃借権(旧法・普通借地権) 必要 30年、更新後は20年→10年 更新できる前提があり、残存期間が短くても打ち手が残る
定期借地権 必要(賃借権の場合) 50年以上・更新なし 残存期間=買主が使える年数の上限になる
事業用定期借地権等 必要(賃借権の場合) 10年以上50年未満 居住用として売れないため買主が限られる

条文の根拠は借地借家法3条・4条・19条・22条・23条(2026年8月時点)。

借地権付き建物の売却先は3つ|どこに売ると条件が合うか

現金化の速さと手取りの大きさの2軸に地主・買取業者・第三者を配置し、譲渡承諾の要否を併記した売却先の比較マップ
承諾交渉を避けるなら地主、速さなら買取業者という位置関係で読む(借地借家法の条文と裁判所の手続説明に当社の借地権案件を突き合わせて作成)

売却先は地主・買取業者・第三者の3つです。手取りを優先するか、承諾交渉の手間を避けるかで選び分けます。

売却方法を並べた解説は多いものの、自分の条件でどれを選ぶべきかまで踏み込んだ情報は多くありません。当社が実際に扱った借地権案件で手続きが止まった箇所を踏まえ、5つの軸で整理しました。

評価軸 地主に売る 買取業者に売る 第三者(個人)に売る
現金化までの速さ 地主の資金次第で長引く 速い 買主探しに時間がかかる
手取りの大きさ 承諾料が不要な分だけ有利 相場価格だが仲介手数料は不要 上振れの余地があるが諸費用が乗る
地主の譲渡承諾 不要(地主自身が取得するため) 必要 必要
建物が古くても成立するか 地主の意向次第 成立しやすい 難しい
解体費の負担 更地渡しを求められる場合がある 現況のまま引き渡せる場合がある 買主との交渉次第

この表は、公開されている制度情報(借地借家法の条文および裁判所の手続説明)と、当社の借地権案件で実際に手続きが止まった箇所を突き合わせて評価軸を設定したものです(2026年8月時点)。金額の高低ではなく「何が引っかかって止まるか」を基準に置きました。

底地とセットで売る方法や、等価交換で所有権にしてから売る方法もあります。これらを含めた売却手段の全体像は借地権を売却する4つの方法と流れで解説しています。売却価格の目安は借地権の売却相場、自分で概算する計算式は借地権の売却価格の計算を参照してください。

地主に買い取ってもらう

地主が買い取る場合、地主自身が借地権を取得するため譲渡承諾という手続きが発生しません。承諾料の支払いも生じないので、その分が手取りに残ります。地主にとっても、底地と借地権が1つにまとまって完全な所有権になるという利点があります。

一方で、結果を左右するのは地主に買い取る資金と意思があるかどうかです。相続で代替わりした直後や、地主自身が高齢で新たな投資を避けたい局面では話が進みません。交渉の具体的な進め方は借地権を地主・業者に買い取ってもらう方法にまとめています。

借地権を扱う買取業者に直接売る

買取業者への売却は、買主を探す工程そのものをなくせる点が特徴です。売主が向き合う相手が1社に固定されるため、地主との承諾交渉と売買条件の調整を並行して進められます。

当社は大阪府堺市で、相続した実家を家財が残ったまま1,200万円で買い取りました。家具だけを回収し、残りは現況のまま引き取っています。片付けと解体を終えてからでないと売れない、という前提は必ずしも当てはまりません。当社は購入意欲の高い不動産投資家との接点を常時持っており、借地権付きの建物もその出口に載せられます。ただし買取価格が仲介での成約価格を上回るとは限らないため、手取りを最優先するなら第三者への売却も並べて検討してください。

地主の承諾を得て第三者(個人)に売る

第三者への売却は、条件が合えば手取りが最も大きくなる方法です。ただし関門が2つ重なります。1つは地主の譲渡承諾、もう1つは買主側の資金調達です。借地権付き建物は土地に担保を設定できないため、金融機関によっては住宅ローンの審査が通りません。

承諾が取れて買主も決まったのに、融資の内定が下りずに契約が流れる展開は珍しくありません。第三者売却を選ぶなら、買主の資金調達の見通しを承諾申請より前に確認しておくべきです

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借地権と建物をまとめて当社が引き取るため、買主探しが不要になります。

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借地権付き建物を売却する流れは?7ステップで解説

売却は借地契約書と登記の確認から始まり、査定・地主への打診・承諾取得・契約・決済・申告の順に進みます。

流れの起点を「査定を依頼する」に置く解説が大半です。ただ借地権付き建物の場合、査定より前に契約書と登記を確認しておくかどうかで、その後の進み方が変わります。着手前の確認を第1段に置いた7ステップで整理します。

Step やること 主な相手・確認先
1 借地契約書と登記を確認する 手元の契約書・登記事項証明書
2 借地権に対応できる会社に査定を依頼する 不動産会社・買取業者
3 地主に売却の意向を伝える 地主
4 売却先を決めて売買条件を固める 買主候補
5 譲渡承諾を書面で取り付ける 地主
6 売買契約から決済・引渡しまで 買主・司法書士
7 翌年の確定申告まで見届ける 税務署・税理士

ステップ1:借地契約書と登記を確認する

最初に見るのは借地契約書です。契約の締結日で旧法か新法かが分かれ、条項の書き方で普通借地権か定期借地権かが決まります。残存期間、地代の額、譲渡や増改築に関する条項の有無を書き出してください。

あわせて登記事項証明書で建物の所有名義を確認します。相続で引き継いだ建物では、名義が被相続人のままになっていることがあります。この状態では売主として契約できません。ここで判明した課題は、以降のすべての工程の前提になります。

ステップ2:借地権に対応できる会社に査定を依頼する

借地権付き建物の査定では、建物の評価と借地権の評価の両方が必要です。築年数・構造・設備といった建物側の要素に加えて、残存期間と地代の水準が価格に反映されます。

依頼するときは、価格だけでなく地主の承諾が得られる見通しまで含めて意見をもらうと、次のステップの組み立てが楽になります。査定でどこを見られるかは借地権の査定基準にまとめました。

ステップ3:地主に売却の意向を伝える

査定の目安が出た段階で地主に打診します。伝える内容は、売却を考えていること、想定している相手(地主自身に買い取ってもらう案を含む)、おおよその時期の3点です。金額の交渉から入らず、まず意向の共有に留めるほうが話が進みます。

地主が「自分が買い取る」と答える場合もあります。その場合は譲渡承諾の手続き自体が不要になるため、条件を詰める前に確認しておきたいところです。

ステップ4:売却先を決めて売買条件を固める

打診への反応を踏まえて、地主・買取業者・第三者のどこに売るかを決めます。ここで金額と同時に決めておくのが、解体費と残置物の処分費を誰が負担するかです。この負担が決まらないまま契約直前まで進むと、引渡し条件でもめて振り出しに戻ります

解体費の目安は家の解体料金で扱っています。なお、地主から承諾を得られず売却が止まってしまった場合の打開策は借地権付き建物が売れない理由と対処法にまとめました。

ステップ5:譲渡承諾を書面で取り付ける

買主が固まったら、地主に譲渡承諾を正式に依頼します。承諾は口頭ではなく書面で受け取ってください。承諾料が発生する場合は、金額と支払時期を書面に明記します。買主が建て替えを前提にしているなら、この段階で建替えの承諾もあわせて依頼してください。

ステップ6:売買契約から決済・引渡しまで

売買契約を結び、決済日に代金の授受と引渡しを行います。建物については所有権移転登記、借地契約については地主との名義変更手続きが並行して必要です。当社では提携する司法書士が所有権移転登記を担当し、決済当日に登記申請まで進めます。

引渡しでは鍵のほか、借地契約書、譲渡承諾書、建物の図面や設備の保証書などを買主に渡します。譲渡承諾書は買主が地主に対して権利を主張する根拠になるため、原本の受け渡しを確実に行ってください。

ステップ7:翌年の確定申告まで見届ける

売却によって利益が出た場合、翌年に譲渡所得の確定申告が必要です。取得費や譲渡費用の集計が税額を左右するので、契約書・領収書・承諾料の支払記録は保管しておいてください。適用できる特例は物件の状況で変わるため、個別の判断は税理士に相談してください。税額の計算方法と申告の手順は借地権売却の税金で扱いました。

地主の譲渡承諾はいつ・どうやって取り付ける?

譲渡承諾(19条1項・名義変更料)と建替承諾(17条2項・建替え承諾料)の違いと、裁判所の許可が1年以内に終結する流れを示した図
承諾は2種類あり、拒否されたときの借地非訟は多くが1年以内に終結する(出典: 東京地方裁判所民事第22部 借地非訟事件手続の流れ・費用)

買主のあてが立った段階で、書面による承諾を依頼します。承諾料は借地権の価格を基礎に、当事者の協議で決まります。

切り出すタイミングと、最初に伝える3つのこと

承諾の正式な依頼は買主が固まってからですが、意向の共有はもっと早い段階で行うほうが進みます。地主にとっては、突然「明日承諾してほしい」と言われるより、数か月前に相談を受けているほうが検討の時間を取れます。

最初に伝えるのは、売却を検討していること、想定している相手、おおよその時期です。この3点だけなら地主に判断を迫ることにならず、地主自身が買い取る意思を示す余地も残せます。

譲渡承諾と建替承諾はセットで考える

見落とされやすいのが、譲渡の承諾と、建替え・増改築の承諾は別の話だという点です。借地借家法は、譲渡についての承諾に代わる許可を19条1項で、増改築についての承諾に代わる許可を17条2項で、それぞれ別の条文として定めています(借地借家法17条2項・19条1項、2026年8月時点)。

裁判所の実務でも両者は区別されています。東京地方裁判所民事第22部の説明では、借地非訟事件で裁判所が支払を命じる金銭について「建替え承諾料」と「名義変更料」が別の呼称として並記されています(東京地方裁判所民事第22部 借地非訟事件手続の流れ、2026年8月時点)。

これは売主にとって実務上の意味を持ちます。買主が建て替えや大規模なリフォームを前提にしている場合、譲渡承諾だけを取り付けても契約は完結しません。承諾を依頼する時点で、買主が建物をどう使うつもりかを確認し、必要な承諾をまとめて依頼しておきます。

承諾料の算定ベースと、承諾書に残しておく条件

承諾料には法定の料率がありません。実務では借地権の価格を基礎に当事者の協議で決まります。建物の売買代金そのものが算定の基礎になるわけではないため、建物に価値がある物件ほど「売買代金の何割」で提示されると割高になります。この点は依頼の段階で認識を合わせておいてください。承諾料の水準や更新料との関係は借地権の更新料でも触れています。

承諾書には、次の項目を入れておくと引渡し後の争いを減らせます。

  • 譲渡の承諾(買主の氏名・名称を特定して記載)
  • 建替え・増改築の可否(買主の利用計画に合わせて)
  • 地代と更新料の据え置き(買主に承継される条件の確認)
  • 承諾料の額と支払時期(決済との前後関係を明示)

承諾が得られないときは裁判所の許可という道がある

地主が承諾しない場合でも、借地権者は裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てられます(借地借家法19条1項)。東京地方裁判所民事第22部の説明によると、代理人は弁護士に限られ、第1回審問期日は申立てから概ね1か月から1か月半後に指定され、多くの事件は1年以内に終結しています。申立手数料は借地権が設定された土地の価格を基礎に算定され、鑑定委員に要する費用は国が負担するため当事者の負担にはなりません(東京地方裁判所民事第22部 借地非訟事件の費用、2026年8月時点)。

つまり、費用が青天井になる手続きではありません。ただし時間はかかるため、まず条件を組み直して再交渉するのが先です。申立ての進め方は借地権を売却する4つの方法と流れで詳しく扱っています。

売却前に確認すべきことは?建物名義・残存期間・境界・契約書

売却前の確認9項目を、決済到達・買主の評価・引渡し条件の3層に優先度で並べ替えたピラミッド図
9項目のうち契約書の条項と建物の登記名義が最優先(出典: 借地借家法10条1項/法務省 民事基本法制の見直し)

建物の登記名義、残存期間、境界、契約書の条項の4点を、売り出す前に確認しておきます。

売却が途中で止まる原因の多くは、価格ではなく前提の未整備です。着手前に確認しておく9項目を、確認先と、放置した場合に何が起きるかとあわせて整理しました。

# 確認項目 確認先 未整備だと起きること
1 権利の型(地上権/賃借権) 借地契約書・登記事項証明書 承諾が要るかどうかの前提が決まらない
2 契約の型(旧法/普通/定期) 借地契約書の締結日と条項 更新の可否で買主の評価が変わる
3 残存期間 借地契約書 買主の資金計画が立たず契約直前で価格交渉になる
4 譲渡・増改築に関する条項 借地契約書 取り付けるべき承諾の種類を取り違える
5 建物の登記名義 登記事項証明書 買主が借地権を第三者に対抗できない
6 相続登記の完了 登記事項証明書 売主として契約できない
7 境界・越境の状態 測量図・現地 引渡し後の紛争と契約不適合の論点が残る
8 地代・更新料の滞納の有無 支払記録 承諾交渉の入り口で不利になる
9 残置物・付属建物の扱い 現地 撤去費の負担が決まらず条件が固まらない

この表は、借地借家法の条文・東京地方裁判所の手続説明・国税庁の解説を突き合わせたうえで、当社の借地権案件で実際に手続きが止まった箇所を「未整備だと起きること」として付したものです(2026年8月時点)。

建物の登記名義が済んでいるか

登記の確認が単なる書類仕事ではない理由は、借地借家法10条1項にあります。同項は「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる」と定めています(借地借家法10条1項、2026年8月時点)。

つまり建物の登記こそが、借地権を守る盾になっています。建物が未登記のままだと、土地が第三者に売られたときに買主は借地権を主張できません。建物の登記の有無は「引渡しまでに直せばよい事務」ではなく、買主が引き受ける権利の強さそのものを決めます。

相続で引き継いだ建物の名義変更も同じです。相続登記の申請は令和6年(2024年)4月1日から義務化されています(法務省 民事基本法制の見直し、2026年8月時点)。名義変更の手続きと費用は土地の名義変更で解説しています。

残存期間があとどれだけ残っているか

残存期間が左右するのは、買主が組める住宅ローンの年数と、その後の売却のしやすさです。旧法・普通借地権であれば更新できる前提があるため、残りが10年を切っていても打つ手は残ります。一方、定期借地権では更新も建物買取請求も契約で排除できるため(借地借家法22条1項)、残存期間がそのまま上限になります。

残存期間が短い物件ほど、買い手を探している時間そのものが価値の目減りにつながります。買主を待つ方針を続けるか、期間を確定できる相手に売るかは、早めに決めてください。

境界と越境が整理されているか

借地は、隣地との境界に加えて、地主の他の所有地との境界があいまいなまま長年使われている場合があります。塀や庭木、屋根の一部が越境していると、引渡し後に買主と隣地の間で紛争が起きます。売却の意向を地主に伝える段階で、境界の資料が手元にあるかどうかも確認事項です。境界や契約不適合の考え方は空き家売却の注意点にまとめています。

建物を解体してから売ろうとしていないか

築古の建物を抱えていると、更地にしたほうが売りやすいと考えがちです。ただし解体は、借地権を守っていた盾を自分から外す行為です。前述のとおり借地権の対抗力は登記された建物の所有によって生じるため、建物が消えると根拠がなくなります。

もっとも、借地借家法10条2項が用意しているのは救済の規定です。建物が滅失しても、建物を特定するために必要な事項・滅失した日・新たに築造する旨を土地の見やすい場所に掲示すれば、対抗力は維持されます。ただし滅失の日から2年を経過した後は、その前に建物を新築して登記した場合に限られます。

また、存続期間が満了して契約の更新がないときは、借地権者は地主に対し建物を時価で買い取るよう請求できます(同13条1項)。地主から更地での返還を求められた場合でも、条件次第では建物の対価を求める余地があるということです。解体を決める前に、建物付きのまま売れるかどうかを確認しておくべきです。税務上、取壊し費用は譲渡費用に含まれます(国税庁 No.3202、2026年8月時点)。

地代・固定資産税の負担関係を整理しておく

地代の支払状況は、承諾交渉の入り口で話題になります。滞納があれば先に解消してください。土地の固定資産税を納めるのは地主で、借地人が負担するのは建物分です。この役割分担も買主に説明できるようにしておきます。詳しくは借地権の固定資産税は誰が払うかで解説しています。地代の水準や値上げを求められたときの考え方は借地権の基礎からの解説をご覧ください。

当社が査定額より先に確認していること

当社が借地権付き建物の相談を受けたとき、金額より先に確かめるのは契約書の条項と建物の登記名義です。理由は単純で、この2つが整っていない案件は、価格の話がまとまっても決済までたどり着かないからです。

登記名義が被相続人のままであれば、提携する司法書士とともに相続登記から着手します。譲渡の承諾に不安がある案件で買主を探す前に確かめるのは、地主の意向です。順番を入れ替えるだけで、同じ物件でも引渡しまでの期間が変わります。

借地権付き建物の売却でよくある質問

地主に売却を切り出すタイミングはいつがよいですか?

査定の目安が出た段階が適切なタイミングです。金額の見当がつかないまま相談すると、地主が判断できずに保留になります。逆に買主と契約寸前になってから初めて伝えると、地主は検討の時間を取れないまま承諾を求められることになり、条件交渉が長引きます。査定後・買主決定前が、双方にとって話しやすい時期です。

借地権付き建物の売却にはどのくらいの期間がかかりますか?

売却先によって差があります。買取業者への売却では、条件が整っていれば数週間で決済まで進みます。第三者への売却では、買主探しに数か月かかったうえに承諾手続きが重なるため、さらに時間が必要です。地主の承諾が得られず裁判所の許可を求める場合、東京地方裁判所民事第22部の説明では第1回審問期日が申立てから概ね1か月から1か月半後に指定され、多くの事件は1年以内に終結しています(2026年8月時点)。

地主が代替わりしていて面識がない場合でも売却できますか?

売却できます。地主が変わっても借地契約は新しい所有者に引き継がれるため、承諾の依頼先が変わるだけです。現在の土地所有者は、法務局で土地の登記事項証明書を取得すれば確認できます。ただし面識がない相手にいきなり承諾を求めると身構えられるため、まず契約内容の確認と挨拶から入り、地代の支払先も含めて現状を共有するところから始めます。

売却にあたって用意する書類は何ですか?

借地権付き建物では、通常の売却に必要な書類に加えて借地関係の資料が必要です。

書類 入手先 用途
借地契約書 手元・地主 権利の型・残存期間・条項の確認
建物の登記事項証明書 法務局 所有名義と登記の有無の確認
土地・建物の固定資産評価証明書 市区町村(東京23区は都税事務所) 評価額の確認・登記費用の算定
測量図・境界確認書 手元・法務局 境界と越境の確認
地代の支払記録 手元・通帳 滞納がないことの確認
譲渡承諾書 地主 買主が権利を主張する根拠
建物の図面・設備の保証書 手元 買主への引継ぎ

契約書が見当たらない場合でも、地代の支払記録と建物の登記から契約の実態をたどれることがあります。手元に何もない状態でも、まずは現状の整理から始めて構いません。

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まとめ

借地権付きの建物は、借地権と建物をまとめて売却できます。地主の承諾が要るかどうかは権利が地上権か賃借権かで決まり、売却先は地主・買取業者・第三者の3つから、現金化の速さ・手取り・承諾の手間で選び分けます。手続きの順序を左右するのは価格ではなく、借地契約書の条項と建物の登記名義という前提の整備です。ここが整っていれば、承諾の取り付けから決済までは想定した期間で進みます。築古でも、残置物が残っていても、建物付きのまま売れるかどうかを確かめてから解体を判断してください。

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