空き家の売却で、注意点はどこから押さえるべきか。最優先は、引き渡した後に売主へ責任が戻ってくる論点です。契約不適合責任・土地の境界・告知の3つは契約前にしか手を打てず、税金や片付けは後からでも調整できます。
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空き家売却で最初に押さえる注意点はどこですか?

空き家売却で注意すべき点は、後から取り返せるかどうかという基準で優先順位が決まります。契約不適合責任・土地の境界・不具合の告知の3つは契約前にしか手を打てず、名義や税金の手続きは後からでも順序を組み直せます。まず前者の3点から着手してください。
注意点を並べると数が多く見えますが、判断の負担は前半に固まっています。引き渡した後に不具合が見つかったときの責任や、土地の境界をめぐる食い違いは、契約書の条項と事前の調査でしか手当てできません。一方で、譲渡所得の申告や特別控除の手続きは、売却の後でも組み立て直せます。
税額の計算や申告の手順は空き家売却の税金で、相続した家に使える控除の条件は3,000万円特別控除の適用条件で扱っています。売却価格の目安は空き家買取の相場を参照してください。売却手段の選び方や全体の段取りから確認したい場合は、まず不動産売却の基本を不動産売却の完全ガイドで押さえてください。
取り返しのつきやすさで3層に分けて考えます
空き家売却の注意点:取り返しのつきやすさによる分類
| 注意点 | 手を打てる期限 | 取り返しのつきやすさ | 本記事での扱い |
| 契約不適合責任と免責の範囲 | 売買契約の締結まで | ほぼ効かない | 詳しく解説 |
| 土地の境界・越境 | 契約前の調査段階まで | ほぼ効かない | 詳しく解説 |
| 不具合・事故歴の告知 | 売買契約の締結まで | ほぼ効かない | 詳しく解説 |
| 名義(相続登記)・抵当権 | 引き渡しまで | 時間があれば戻せる | 前提として確認 |
| 残置物・鍵の状態 | 引き渡しまで | 戻せる | 伝え方を確認 |
| 譲渡所得の申告・特別控除 | 売却の翌年まで | 戻せる(期限あり) | 担当記事へ |
データ出典: 当社の買取実務での確認項目に基づく整理(2026年8月時点)
査定額や相場を調べるより先に、上の3点を自分の物件に当てはめて確認するほうが安全です。引き渡しが済んだ後では、どれだけ費用をかけても条件を戻せません。
契約不適合責任とは?空き家の売主は何を求められますか?

契約不適合責任とは、引き渡した空き家が契約の内容に合わないときに売主が負う責任です。買主は修補などの追完・代金の減額・損害賠償・契約の解除を求められます(民法第562条〜第564条、2026年8月時点)。築古の空き家ほど、外から見えない不具合で問題になりやすい論点です。
買主が請求できる4つのこと
民法第562条は、引き渡された物が種類・品質・数量について契約の内容に適合しないとき、買主が修補や代替物の引渡しといった履行の追完を請求できると定めています。追完がされない場合は、不適合の程度に応じた代金の減額請求(第563条)に進み、さらに損害賠償の請求と契約の解除も妨げられません(第564条)。
空き家で問題になりやすいのは、長く人が住んでいなかったために表面化していない不具合です。雨漏り、シロアリの被害、給排水管の漏水、床下の腐食などは、内見の段階では分かりません。買主が住み始めてから発覚すると、修理費用の負担や売買代金の減額を求められる可能性があります。売却代金を使った後に請求が届く点が、この責任の扱いにくさです。
「知った時から1年以内の通知」という期間の制限
期間の制限は民法第566条にあります。売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しない物を引き渡した場合、買主が不適合を知った時から1年以内に通知しなければ、追完・減額・損害賠償・解除を請求できなくなります。ただし、売主が引渡しの時に不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかったときは、この制限は適用されません。
誤解が起きやすいのは起算点です。「引き渡しから1年」ではなく「買主が気づいてから1年」なので、引き渡しから何年も経ってから通知が届くこともあり得ます。当社が買主として関わる契約でも、売買契約書で通知期間を短く定める特約が置かれます。条文の原則と契約の特約は分けて読みます。自分の契約書の記載は署名前に確かめてください。
免責特約を付ければ責任を負わずに済みますか?

空き家の売主が結ぶ免責特約は有効ですが、知っている不具合まで隠せる万能の条項ではありません。売主が知りながら告げなかった事実については、特約があっても責任を免れられない——これが民法第572条の原則です。免責がどこまで効くかは、知っている情報をどれだけ正確に伝えたかで決まります。
民法572条が定める免責の限界
特約で責任を負わない旨を決めても、次の条文が上書きします。
売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
(出典: 民法第572条、2026年8月時点)
条文が名指ししているのは「知りながら告げなかった事実」です。雨漏りを知っていたのに伝えなかった、過去に漏水があったのを黙っていた、といった場合は、免責特約があっても責任が残ります。免責特約は「知らなかったことまで責任を負わないための条項」であって、「知っていることを隠すための条項」ではありません。売主が先にやるべきことは、言い出しにくい情報ほど早く出しておくことです。
売主が個人か宅建業者かで特約の扱いが変わります
「契約不適合責任は引き渡しから2年」という説明の出所は、宅地建物取引業法第40条です(2026年8月時点)。この条文は、宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約について、引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法第566条より買主に不利となる特約をしてはならないと定めています。これに反する特約は無効になります。
裏を返すと、個人が売主になる空き家の売却は、この条文の名宛人ではありません。個人同士、あるいは個人が買取業者へ売る場面では、通知期間や免責の範囲を当事者間で決める余地が広く残ります。だからこそ、契約書の条項がそのまま売主の負担になります。ひな形の文言をそのまま受け入れず、免責の範囲と通知期間の2点だけは読み合わせてください。
免責を支えるのは物件状況報告書(告知書)
不具合や事故歴を伝えたという記録は、物件状況報告書(告知書)に残ります。国土交通省のガイドラインでは、媒介する宅地建物取引業者が売主に対して過去に生じた人の死について告知書等への記載を求めることで、通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする、と整理されています(国土交通省、2021年10月公表・2026年8月時点)。
売主の側から見ると、告知書に書いた内容がそのまま「告げた事実」の記録になり、書かなかった内容は「告げなかった事実」として残ります。何をどこまで書くかで迷ったときは、自分で線引きを決めず、事実だけを担当者へ伝えて記載の可否を相談してください。人の死や事件事故をめぐる告知の線引きは告知事項ありの物件の扱いで扱っています。
買主のタイプで、売主に残る負担は変わります
買主のタイプ別に見た、売主に残る負担
| 買主のタイプ | 免責特約の使いやすさ | 引き渡し後に連絡が来る可能性 | 現況のまま引き渡せるか |
| 個人(仲介で探す) | 交渉次第で決まる | 生活を始めてから発覚しやすい | 片付け・修繕を求められやすい |
| 買取業者(宅地建物取引業者) | 契約書の条項次第(免責を置くかは買主側の判断) | 業者が調査済みのため小さい | 現況のままが基本 |
| 親族・知人との個人間売買 | 書面が薄くなりがち | 関係の悪化に直結しやすい | 話し合い次第 |
データ出典: 民法第572条・宅地建物取引業法第40条と当社の買取実務に基づく整理(2026年8月時点)
免責特約は、売主の負担を軽くする手段です。ただし、買取であっても免責の条項が置かれるかどうかは契約書の記載で決まるため、署名前に条項の有無を確かめてください。当社の買取くん(株式会社リアテクス)は買主として直接買い取る立場なので、免責が実際に働くのは売主が情報を出し切っている場合だけだと考えています。そのため当社は、査定の段階で不具合や履歴を隠さず出していただくことが価格提示の前提です。大阪府堺市で相続した実家を買い取ったときも、生活用品が残ったままの状態で1,200万円で買い取りました。
要点: 免責特約が守るのは「知らなかった不具合」だけです。知っている不具合は、告知書に書いて価格へ織り込みましょう。そのほうが結果として手取りは安定するはずです。
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境界が確定していない空き家はどう扱えばよいですか?
空き家の敷地の境界標と確定測量図があるかどうかは、売却を決めた直後に確認しておきます。境界の食い違いや越境が見つかると、隣地の所有者との立ち会いや測量が発生し、引き渡し直前では日程が間に合いません。土地の面積が確定しない状態では、買主が住宅ローンを組めない場合もあります。
最初に確認する3点(境界標・確定測量図・越境物)
1つ目は現地の境界標です。コンクリート杭や金属プレートが敷地の角にあるか、草や土に埋もれていないかを見ます。2つ目は書類です。法務局の公図や地積測量図に加えて、隣地の所有者と署名を交わした確定測量図が手元にあるかを探してください。相続した家では、親が保管していた書類の束に紛れていることがあります。
3つ目は越境物です。隣家の屋根や樋、ブロック塀、庭木の枝が境界を越えていないかを確認します。越境が見つかった状態で覚書を交わさずに引き渡すと、買主と隣地の間で新たな争いが起きます。長く空き家だった土地では、塀や植栽の位置が当初と変わっていることもあります。境界の確認は査定の依頼と並行して進めておくと安全です。
隣地と食い違うときは筆界特定制度という選択肢があります
隣地の所有者と主張が合わないとき、取れる手段は裁判だけではありません。法務省が案内する筆界特定制度は、土地の所有者として登記されている人などの申請に基づき、筆界特定登記官が外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地における土地の筆界の位置を特定する制度です(法務省、2026年8月時点)。同省は「隣人同士で裁判をしなくても、筆界をめぐる問題の解決を図ることができます」と説明しています。
当社は、こじれた境界の落としどころとしてこの制度を現実的だと考える立場です。ただし限界もあり、法務省は「土地の所有権がどこまであるのかを特定するものではありません」とも明記しています。所有権の範囲そのものを争う場合は、別の手続きを取ることになります。隣地と話が付かないと分かった時点で、司法書士や土地家屋調査士へ相談するのが早道です。当社には提携の弁護士・司法書士・土地家屋調査士がいるため、境界が未整理の物件はその状態のままお持ち込みいただけます。
要点: 境界は、買主が現れてから調べる論点ではありません。売却を決めた日に境界標を見に行くだけで、引き渡し直前の停止はかなり防げます。
契約前に片づけておく書類と物件の状態は?

空き家の名義・抵当権・残置物の3点は、売買契約を結ぶ前に状態を確定させておきます。登記簿上の名義人でなければ売主になれず、抵当権が残ったままでは引き渡しが進みません。残置物は残っていても売れますが、量や中身を伝えていない場合に揉めます。
名義と抵当権は「売主になれるか」の前提
売買契約を結べるのは、登記簿上の名義人です。相続した空き家が親の名義のままなら、相続登記を済ませないと売主になれません。相続登記の申請は2024年4月から義務化されています(法務省、2026年8月時点)。必要書類や費用の内訳は土地の名義変更の手続きで扱っています。
抵当権も同じで、住宅ローンを完済していても抹消登記をしていなければ登記簿に残ります。名義と抵当権は、査定を受ける前でも確認できます。登記事項証明書を1通取り寄せれば、両方が同時に分かります。
残置物は「あるかないか」より「どう伝えるか」
家財が残ったままでも、売れないわけではありません。当社の買取では現況のまま引き取れる場合が多く、片付けの費用を先に払わずに済みます。問題になるのは、量や中身を伝えないまま契約を進めた場合です。仏壇や神棚、金庫、ピアノのように処分へ手続きや費用がかかるものは、契約前に伝えておいてください。
片付けを先に済ませるか、そのまま出すかの考え方は売却前の片付けは必要かの判断基準にまとめました。残された家財がどこまで許容されるかは残置物とは何か・そのままでも売れる条件で扱っています。
空き家売却の注意点についてよくある質問
売主が個人の場合、契約不適合責任はいつまで問われますか?
民法の原則では、買主が不適合を知った時から1年以内に通知があれば請求が成り立ちます。引き渡しから何年、という形では区切られていません。当社が買主として関わる契約でも「引渡しから3か月」などと通知期間を短く定める条項が入り、実際の期間は契約書の記載で決まります。
物件状況報告書(告知書)は必ず作成しなければいけませんか?
法律で売主に作成が義務づけられているわけではありません。ただ、国土交通省のガイドラインは媒介する宅地建物取引業者が売主へ告知書等への記載を求めることを前提としており、書いた内容が「告げた事実」の記録になります。知っている不具合を書かなかった場合は免責特約が及ばないため、作成しておくほうが売主の負担は軽くなります。
相続人が複数いる空き家は、誰が売主になりますか?
遺産分割が終わっていない空き家は相続人全員の共有になるため、相続人全員の同意がなければ売買契約は成立しません。代表者1人の署名では足りない点に注意してください。先に遺産分割協議と相続登記を済ませて名義を確定させてから売却へ進むほうが、手戻りが起きません。
更地にしてから売ったほうが売れやすいですか?
建物を解体するかどうかは、想定する買主で変わります。土地として使いたい買主が中心の立地では更地が有利ですが、解体費用は戻ってきません。建物を取り壊すと固定資産税の住宅用地特例の対象からも外れます。解体を決める前に、古家が付いたままの査定額を確かめてください。
売却手段の比較や、査定から引き渡しまでの段取りは本記事の範囲外です。不動産売却の総合ガイドで次の一手を確認すると、注意点を押さえたうえで進め方を組み立てられるはずです。
まとめ
空き家売却の注意点は、契約前にしか手を打てない3点に集まります。契約不適合責任は免責特約だけでは閉じず、知っている不具合を告知書へ書き出すことが免責の前提になります。境界は買主が現れてからでは間に合わないため、売却を決めた日に境界標と測量図を確認してください。名義と抵当権は登記事項証明書1通で確かめられます。税務や法律の個別の事情については、税理士・司法書士など該当分野の専門家にご相談ください。
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