事業用定期借地権とは?期間・公正証書・更地返還の要点を解説

借地のご相談をお受けしたとき、当社が契約書で最初に確かめるのは、存続期間の残りと、その契約が公正証書で結ばれているかどうかの2点です。事業用定期借地権は、事業用の建物を所有する目的に限って設定でき、存続期間10年以上50年未満・公正証書による契約が法律上の要件だからです(借地借家法23条)。更新はなく、期間が満了すれば建物を取り壊して更地で返すのが原則になります。

\ 最短3日で現金化・全国対応 /

借地権や底地は権利関係が入り組み、仲介では相談先が見つからないことがあります。

受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)

事業用定期借地権とは?成立に必要な3つの要件

用途・期間10年以上50年未満・公正証書の3つのゲートをすべて通らないと成立しないことを示す判定フロー図
3つの要件はどれか1つでも欠けると事業用定期借地権にならない(出典: 借地借家法23条の要件を当社が整理・2026年8月時点)

事業用定期借地権とは、事業用の建物の所有を目的に、10年以上50年未満の期間で公正証書により設定する借地権です。根拠は借地借家法23条で、契約は更新されず、居住用の建物には使えません。用途・期間・契約方式の3つが法律上の要件として並ぶ点が、他の借地権にはない特徴です(2026年8月時点)。

条文は「専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし」と書き出されています。つまりこの制度は、土地を借りる目的そのものを法律で絞り込んでいます。そのうえで期間の幅と契約書の作り方まで指定しているため、3つの要件はどれか1つでも欠けると事業用定期借地権として成立しません

要件 内容 満たさないとどうなるか
用途 専ら事業の用に供する建物(居住用を除く) 定期借地権の別の型か普通借地権の枠で考えることになる
存続期間 10年以上50年未満 50年以上なら一般定期借地権、10年未満なら要件を満たさない
契約方式 公正証書によること 事業用定期借地権としての効力が認められない可能性がある

データ出典: 借地借家法23条の要件を当社が整理(2026年8月時点)

使えるのは「専ら事業の用に供する建物」だけ

対象になるのは、店舗・工場・倉庫・事務所・ロードサイドの商業施設など、事業のために使う建物です。居住用の建物は明文で除かれているため、賃貸マンションやアパート、社宅、寮を建てる目的では設定できません。

ここで混乱しやすいのが、賃貸住宅は「オーナーにとっては事業」だという点です。しかし条文が見ているのは、建物が事業に使われるかどうかではなく、建物が居住の用に供されるかどうかです。賃貸住宅は入居者が住む建物なので、オーナーの側から見て収益事業であっても対象になりません。ホテルや旅館のように宿泊させる施設は居住とは区別されますが、長期滞在型の施設などは判断が分かれるため、契約前に公証人や専門家へ確認しておくほうが安全です。

存続期間は10年以上50年未満で設定する

期間は10年以上50年未満の範囲で自由に決められます。10年を下回る契約は事業用定期借地権として成立せず、50年以上にしたい場合は存続期間50年以上の一般定期借地権(借地借家法22条)の出番です。

この幅は、事業の投資回収期間に合わせて選ぶ前提で設計されています。ロードサイドの店舗のように出店サイクルが短い業態なら10〜20年、大型の商業施設や物流施設のように建物への投資が大きい業態なら30年以上、という選び方です。ちなみに更新のある普通借地権は存続期間30年が原則で(借地借家法3条)、期間を自分たちで刻めること自体が事業用定期借地権の使いどころになります。

契約は公正証書でなければ成立しない

23条3項は「前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない」と定めています。書面であればよいのではなく、公証役場で公証人が作成する公正証書という形式そのものが要件です。

比較すると、一般定期借地権を定める22条は「その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない」となっており、公正証書は例示にすぎません。同じ定期借地権でも、事業用だけが形式を厳格に縛られています。私文書の契約書や口頭の合意では、事業用定期借地権としての効力が認められない可能性があります。当社が契約書を見るときに公正証書かどうかを真っ先に確認するのは、ここで結論が変わってしまうからです。

借地権の前提知識は借地権の基礎からの解説にまとめています。種類の全体像から確認したい場合は、あわせてご覧ください。

契約期間は10年以上50年未満|10〜30年と30〜50年で何が違う?

30年を境に借地借家法23条2項と1項へ分かれ特約の要否が変わることを示す存続期間チャート
30年をまたぐかどうかで根拠条文と契約書に書く特約が変わる(出典: 借地借家法23条と国土交通省の制度整理をもとに当社が作成)

同じ事業用定期借地権でも、10年以上30年未満と30年以上50年未満では根拠条文も必要な特約も変わります。前者は借地借家法23条2項、後者は同条1項が根拠です。2項では更新に関する規定が自動的に適用除外になり、1項では特約を定めて初めて更新がなくなります(2026年8月時点)。

上位の解説記事の多くは「10年以上50年未満」と一括りに説明しますが、実務で効いてくるのはこの分かれ目です。自分の契約がどちらの類型かを最初に確かめてください

存続期間 根拠条文 3つの特約 見落としやすい点
10年以上30年未満 23条2項 不要(当然に適用除外) 30年以上なら1項の扱いになる
30年以上50年未満 23条1項 必要(定めて初めて有効) 書き漏らすと更新のある契約になる

データ出典: 借地借家法23条と国土交通省の制度整理をもとに当社が作成(2026年8月時点)

10年以上30年未満は更新なしが自動で適用される

23条2項は、存続期間を10年以上30年未満とする場合について「第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない」と定めています。ここで外れる条文が、存続期間30年の原則(3条)、更新に関する規定(4〜8条)、建物買取請求権(13条)、再築の許可(18条)です。

つまりこの期間帯では、契約書に更新拒絶の特約を書いていなくても、法律の側で更新も期間延長も買取請求も起きない状態になります。特約の書き方に左右されないぶん、短期の出店計画には扱いやすい形です。一方で、当初10年で契約して事業が軌道に乗ったときに「あと数年延ばす」という発想は通らないので、期間の設定は事業計画と正面から突き合わせて決める必要があります。

30年以上50年未満は3つの特約を書いて初めて更新がなくなる

23条1項は、存続期間30年以上50年未満で設定する場合に「契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる」と書いています。「定めることができる」という書き方が示すとおり、更新なし・延長なし・買取請求なしの3点は、契約で定めなければ効力を持ちません。

これは、一般定期借地権(22条)と同じ構造です。3つの特約のいずれかを書き漏らすと、その部分は更新のある借地権と同じ扱いになりかねません。30年以上の契約は建物投資も大きく、締結から満了まで担当者が何度も代わります。当社が中古の借地案件で契約書を確認する際に、期間だけでなく特約の3点セットが揃っているかを見るのはこのためです。

上限が50年未満になったのは平成20年の改正から

事業用定期借地権の期間は、制度創設当初は「10年以上20年以下」でした。国土交通省の解説は「平成20年1月1日の借地借家法の改正で、事業用定期借地権は従前の『10年以上20年以下』から『10年以上50年未満』に延長された」と説明し、その背景として、当初はロードサイド店舗のような短い事業期間を想定していたところ、実際にはショッピングモール等の大規模施設が数多く登場し、税制上の建物償却期間との不整合が問題になったことを挙げています(国土交通省「定期借地権の解説」)。

当社から見ると、この改正で事業用定期借地権は短期の出店用から長期の施設用まで守備範囲を広げた制度になりました。古い解説記事や社内の古い雛形が20年上限を前提にしていないかを確認しておくと、期間設定の選択肢を自分から狭めずに済みます。

要点: 期間帯を30年でまたぐかどうかで、契約書に書くべき内容が変わります。30年以上を選ぶなら3つの特約の記載、30年未満を選ぶなら事業計画との整合が、それぞれ確認の中心です。

契約が満了するとどうなる?原則は建物を壊して更地で返す

事業用定期借地権は契約が更新されず、期間が満了したら借主が建物を取り壊し、土地を更地にして返すのが原則です。国土交通省も、契約終了時の建物の扱いを「原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する」と整理しています。建物を買い取ってもらう請求もできません(2026年8月時点)。

「更新」と「再契約」は別物です。この区別を曖昧にしたまま満了日を迎えると、解体費用の見込みも次の一手も間に合わなくなります。

更新も建物買取請求もできない

普通借地権であれば、存続期間が満了して契約の更新がないとき、借主は貸主に対して建物を時価で買い取るよう請求できます(借地借家法13条)。建物という資産を残したまま土地だけ返す、という出口が法律で用意されているわけです。

事業用定期借地権では、この13条が適用除外になるか、特約で排除されます。建物にどれだけ投資していても、満了時にその価値を貸主へ請求することはできません建物の残存価値を回収する手段がないという前提で投資計画を立てる必要があり、これが「地代が安い代わりに出口が固い契約」と言われる理由です。

更新はできないが再契約はできる

法律上の更新は、従前の契約がそのまま続くことを指します。事業用定期借地権ではこれが起きません。ただし、貸主と借主が改めて合意すれば、同じ土地について新しい事業用定期借地権を設定し直すことはできます。

注意したいのは、再契約もまた新規の設定契約だという点です。したがって公正証書の作成が改めて必要になり、期間も10年以上50年未満の範囲で決め直します。貸主に応じる義務はないので、事業を続けたいなら満了の何年も前から交渉を始めることになります。契約書に更新の協議に関する条項が入っているかどうかも、あらかじめ見ておきたいところです。

解体と原状回復の費用を誰が負担するかは契約で決まる

借地借家法には、解体費用を誰が負担するかという定めがありません。更地返還が原則である以上、実務では借主が建物を解体して返すのが通例ですが、地中の基礎や埋設物をどこまで撤去するか、造作や外構をどう扱うかは契約書の原状回復条項が決めます。

この条項が薄いまま満了を迎えると、撤去範囲をめぐって費用を押し付け合うことになります。解体費用そのものの目安は建物の構造や立地で大きく変わるため、家の解体料金の相場を早い段階で確認し、原状回復の範囲と突き合わせておくと安心です。

要点: 満了時には「建物の除却費用」と「回収できない建物価値」の2つが同時に効いてきます。どちらも契約時点で金額の当たりを付けられるので、期間の終わりから逆算して条項を確認しておけば、後から揉める余地は小さいはずです。

\ 他社で断られた物件も買取可能 /

仲介で買い手がつかなかった借地権付き建物や底地も、当社が直接買い取れる場合があります。

受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)

普通借地権・一般定期借地権とどう違う?

存続期間と契約終了時に残るものの2軸で借地権4種類を配置した位置関係マップ
終期の明確さと契約終了時に残るもので4類型の位置づけを整理(出典: 国土交通省「定期借地権の解説」の種類表をもとに当社作成)

事業用定期借地権は、普通借地権と違って更新がなく、一般定期借地権と違って用途が事業用に限られます。期間も10年以上50年未満と独自です。国土交通省は借地権を、一般定期借地権・事業用定期借地権・建物譲渡特約付借地権・普通借地権の4つに整理しています(2026年8月時点)。

制度の違いは表で並べられることが多いのですが、当社が査定で実際に見ているのは契約が終わったときに何が残るかです。その軸で並べ替えると、4種類の性格の差がはっきりします。

借地権の種類 存続期間 契約終了時に残るもの 手放すときの見通し
普通借地権 30年以上 建物(買取請求が可能) 終期が読めず地主との交渉次第
一般定期借地権 50年以上 更地(建物は取り壊し) 終期は明確だが残期間が長い
事業用定期借地権 10年以上50年未満 更地(建物は取り壊し) 終期が明確で残期間から逆算しやすい
建物譲渡特約付借地権 30年以上 建物(地主が買い取る) 建物を壊さずに終えられる

データ出典: 国土交通省「定期借地権の解説」の種類表をもとに、当社の買取査定の観点を加えて作成(2026年8月時点)

普通借地権との違いは「更新されるかどうか」

普通借地権は存続期間30年以上で、期間が来ても法律上は更新されるのが基本です。貸主が更新を拒むには正当な事由が必要で、実際には土地が戻ってこない前提で長く続きます。更新の場面では更新料の支払いが問題になることが多く、金額の考え方や請求を断られた場合の対応は借地権の更新料の相場と拒否された場合で整理しています。

これに対し事業用定期借地権は、更新という概念そのものがありません。終わりの日が最初から決まっているという一点で、貸主・借主の力関係が普通借地権とはまったく違う形になります。なお、借地の権利が地上権なのか土地の賃借権なのかでも扱いが変わるため、その区別は地上権と借地権の違いで確認しておくと理解が早くなります。

一般定期借地権との違いは期間と用途制限

一般定期借地権は存続期間50年以上で、用途の制限がありません。住宅でも商業施設でも設定でき、契約は「公正証書による等書面」で足ります。一方の事業用定期借地権は、期間が50年未満に収まり、用途は事業用に限られ、契約方式も公正証書だけです。

言い換えると、50年という数字が2つの制度の境目になっています。事業用の建物で50年以上の期間を確保したいなら一般定期借地権を選ぶ、という使い分けです。普通借地権・定期借地権・旧法借地権を含めた種類の全体像は借地権の基礎で扱っています。

30年以上なら建物譲渡特約付借地権と組み合わせられる

国土交通省の解説は、事業用定期借地権で30年以上の契約期間を定める場合には、建物譲渡特約付借地権(借地借家法24条)を併用することもできると説明しています。建物譲渡特約付借地権は、設定から30年以上を経過した日に、土地の上の建物を相当の対価で地主へ譲渡する旨を定めるものです。

併用すると、満了時に建物を取り壊さず、地主が買い取る形で終えられます。当社にとっては、更地返還の重い解体費用を回避できる数少ない選択肢です。30年以上の契約を検討している段階なら、建物譲渡特約を入れられないかを設計に含めておくと、出口の選択肢が1つ増えます。

借地権割合や路線価の読み方、相続税評価額の考え方は、借地権の基礎解説側でまとめて扱う範囲です。

事業用定期借地権で起きやすいトラブルは?

事業用定期借地権のトラブルは、制度そのものより契約書に書き切れていない事柄から起きます。多いのは、資産区分と原状回復の範囲、借主の撤退・破綻、保証金の返還、中途解約の可否の4つです。いずれも締結時に条項へ落とし込めば避けられる種類の問題です(2026年8月時点)。

トラブルの共通原因は、10年から50年という長さのあいだに前提が変わることです。担当者も、事業環境も、当事者の相続関係も動きます。

トラブル類型 起きる理由 防げる契約条項
資産区分・原状回復 どこまで撤去するかの線引きがない 原状回復の範囲・地中埋設物・造作の帰属
借主の撤退・破綻 更地返還義務が履行されない 保証・連帯保証・解体費用の積立
保証金の返還 返還原資と時期が決まっていない 返還時期・分割返還・相続時の承継
中途解約 法律に定めがない 中途解約の可否・予告期間・違約金

データ出典: 当社が借地・底地の相談で確認している論点を整理(2026年8月時点)

資産区分と原状回復の範囲があいまいなまま契約する

更地で返すと言っても、どこまでが「更地」かは意外に決まっていません。建物を解体しても、地中の基礎、杭、舗装、埋設配管、看板の基礎などが残ります。これらを撤去するのか残置してよいのかで、費用は大きく変わります。

さらに、借主が後から設置した造作や外構設備の所有権が誰にあるのかも争点です。原状回復の「原状」がいつの状態を指すのかを契約書で特定しておくことが、最も費用対効果の高い予防策になります。

借主が撤退・破綻して建物が残る

契約上は借主が解体して返す義務を負っていても、事業がうまくいかず撤退したり、法人が破綻したりすれば、その義務は実行されません。結果として、貸主の土地には事業用の建物だけが残されたままです。

建物が残ったままの土地は、買い手にとって解体費用を上乗せして考える対象になり、売却先が一気に狭まります。当社が訳あり物件を査定するときも、建物が残っているかどうかで値付けの前提が変わります。解体費用相当の積立や保証を契約に組み込んであるかどうかが、この場面の重さを分ける分岐点です。

保証金・預り金が返せなくなる

事業用の借地では、貸主が借主から保証金を預かる形が取られることがあります。10年から50年という期間のあいだに、預かった側の資金繰りが変わったり、相続が発生したりします。

そのときに問題になるのが返還原資です。保証金の返還義務は相続されても消えず、相続人がそのまま引き継ぎます。契約時に返還時期・返還方法・承継の扱いを明記し、預かった資金を返還原資として区別しておくことが、後々の負担を軽くします。

中途解約できるかどうかで揉める

借地借家法23条には、中途解約に関する規定が置かれていません。つまり途中でやめられるかどうかは、契約書の特約だけで決まります。特約がなければ、期間中は原則として契約に拘束される前提で考えるほかありません。

実務では、借主側に一定の予告期間と違約金を条件とする中途解約権を認める形が取られることがあります。予告期間の長さ、違約金の算定方法、貸主側からの解約の可否は、いずれも交渉で決める事柄です。条文を探しても答えが出ない領域なので、契約書のこの条項は入念に読み込んでおいてください。

要点: 4類型はどれも「契約時に決めていなかったこと」が原因です。締結の場では条項を1つ増やすだけの手間でも、満了時には解体・撤去の範囲や保証金の精算をめぐる負担の差として跳ね返ります。

契約の前に何を確認しておくべき?

存続期間・公正証書・原状回復・保証金・中途解約を査定の前提が変わる順に並べた契約書確認フロー
査定の前提が変わる項目から順に5点を確認する手順(当社が借地・底地の買取相談で用いている確認手順に基づく)

事業用定期借地権は途中で条件を変えにくいため、期間・原状回復・保証金・中途解約の4点を締結前に固めます。すでに契約が動いている場合でも、この4点を読み直せば、満了までに何が起きるかを見通せます(2026年8月時点)。

固めるべきは4点だけです。制度の細部より、この4点の書きぶりのほうが実際の損得を左右します。

借りる側の利点と負担

借りる側の利点は、土地を買わずに事業を始められることです。土地の取得費が不要で、土地の固定資産税・都市計画税は所有者である貸主が負担します。立地の良い土地に、購入より小さい初期投資で出店できます。

負担が集中するのは出口です。期間が満了すれば事業を続けられず、建物の解体費用も自分で持つのが原則です。建物の残存価値を買い取ってもらう請求もできません。途中で権利を手放したくなった場合の進め方は借地権を売却する4つの方法と流れで解説しています。

貸す側の利点と負担

貸す側の利点は、建物への投資をせずに土地を活用でき、契約期間が満了すれば確実に土地が戻ってくることです。普通借地権のように更新で土地が戻らなくなる心配がありません。

負担としては、住宅用地ではないため固定資産税の住宅用地特例が使えず、税負担が下がりません。加えて、貸主の側から一方的に中途解約することも原則としてできません。地代の水準や改定の考え方は、借地権の基礎解説側でまとめて扱っています。

当社が契約書で最初に確認する5つの項目

借地上の建物や底地の買取相談をお受けするとき、当社は契約書を査定の前提が変わる項目から順に確認しています。並べ方は次のとおりです。

確認項目 見るポイント 見落とすとどうなるか
存続期間の残り 満了日までの年数と、30年をまたぐ類型か 建物の使える期間を過大に見積もる
公正証書か 公正証書の正本・謄本があるか 想定と違う種類の借地権として扱われる
原状回復と資産区分 撤去範囲・地中埋設物・造作の帰属 満了時の解体費用が読めない
保証金の残高と返還時期 金額・返還時期・承継の定め 返還義務の存在に気づかず精算が狂う
中途解約と違約金 解約権の有無・予告期間・違約金 早期に手放す選択肢が事実上なくなる

データ出典: 当社が借地・底地の買取相談で用いている確認手順(2026年8月時点)

当社は、権利関係が複雑な物件を減点要因ではなく専門領域として扱っています。借地上の建物や底地は、更新の有無と出口が決まっているかで扱いやすさが大きく変わり、そこを読み解ければ仲介で買い手がつかなかった物件にも価格を付けられるからです。所有権移転登記は提携先の岩村司法書士事務所(司法書士 岩村広宣)が担当し、弁護士・土地家屋調査士とあわせた体制で権利調整に対応しています。地主や業者との買取交渉の進め方は借地権を地主・業者に買い取ってもらう方法にまとめました。

なお、個別の契約内容の有効性や税務上の取り扱いについては、弁護士・司法書士・税理士などの専門家へご相談ください。

事業用定期借地権のよくある質問

Q1. 事業用定期借地権は公正証書がないとどうなりますか?

借地借家法23条3項が求める形式を欠くため、事業用定期借地権としての効力が認められない可能性があります。契約内容によっては更新のある普通借地権として扱われ、貸主は正当な事由がなければ土地の返還を求められない立場になります。締結済みの契約であれば、公正証書の正本または謄本が手元にあるかをまず確認してください。

Q2. 事業用定期借地権は登記しないといけませんか?

借地権そのものの登記は義務ではありません。借地借家法10条は「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる」と定めており、建物を自分名義で登記していれば土地が売られても権利を主張できます。登記すべきかどうかの判断基準は借地権の登記は必要かの判断基準で詳しく扱いました。

Q3. 契約の途中で解約することはできますか?

借地借家法23条に中途解約の規定はないため、可否は契約書の特約で決まります。特約があっても、予告期間や違約金が条件として付いていることが一般的です。契約書に中途解約の条項が見当たらない場合は、期間中は契約に拘束される前提で計画を立ててください。

Q4. 店舗の上に住居がある建物でも設定できますか?

23条は対象を「専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)」と定めているため、居住部分を含む建物は原則として対象外です。1階が店舗で2階が住居という併用住宅は、この「専ら」の要件を満たさないと判断される可能性が高くなります。建物の用途構成が微妙な場合は、公正証書を作成する公証人に事前相談するのが確実です。

Q5. 契約期間を50年以上にしたいときはどうすればよいですか?

事業用定期借地権の上限は50年未満なので、50年以上にしたい場合は一般定期借地権(借地借家法22条)を使います。一般定期借地権には用途制限がないため、事業用の建物でも設定できます。契約方式は公正証書に限定されず「公正証書による等書面」で足りる点も違いです。

借地権の種類や割合の考え方をあらためて整理したい場合は、借地権ガイドで全体像を再確認すると、本記事で扱った制度の位置づけがつかみやすくなります。

まとめ

事業用定期借地権は、事業用の建物に用途を限り、10年以上50年未満の期間を公正証書で定める、更新のない借地権です。期間が30年をまたぐかどうかで契約書に書くべき特約が変わり、満了時は建物を取り壊して更地で返すのが原則になります。実務で揉めるのは制度そのものではなく、原状回復の範囲・保証金・中途解約といった契約書の書きぶりです。手元の契約書で、存続期間の残りとこの3点を確かめるところから始めてみてください。

\ 査定最短6時間・仲介手数料0円 /

契約書と登記情報をご用意いただければ、物件の状態はそのままで査定できます。

受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)

関連記事