「相続で登記簿を取ったら、土地はあるのに家が出てこない」 「固定資産税は払っているのに、どういうこと」
未登記建物とは登記簿が作られていない建物で、取得から1か月以内に表題登記を申請する義務があります。放置すると自分のものだと第三者に主張できず、10万円以下の過料の対象にもなるんです。未登記かどうかの確かめ方と、相続後の2つの登記をご案内します。
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未登記建物とは?表題登記がない建物と、表題登記だけある建物

家屋番号欄が空欄なら状態①、証明書の権利部が空なら状態②と読み分けます(出典: 不動産登記法47条1項・51条1項・74条1項、法務省 登記手数料)
未登記建物とは、表題登記がされておらず、法務局に登記簿が作られていない建物のことです。表題登記とは、建物の所在・種類・構造・床面積を記録して登記簿そのものを作る登記で、取得の日から1か月以内の申請が義務づけられています(不動産登記法47条1項)。ただし「未登記」と呼ばれる状態は1つではありません。
やるべき登記が残っている点は同じでも、次の3つは別物です。市区町村が使う「未登記家屋」も同じ意味です。
| 状態 | 手元での見分け方 | やる登記 | 申請期限 |
|---|---|---|---|
| ① 登記簿そのものがない | 登記事項証明書が出ない | 表題登記→所有権保存登記 | 取得から1か月以内 |
| ② 表題部だけある | 証明書は出るが権利部が空 | 所有権保存登記 | 定めなし |
| ③ 増築部分だけ未登記 | 証明書の床面積が今と違う | 表題部の変更登記 | 変更から1か月以内 |
データ出典: 不動産登記法 47条1項・51条1項・74条1項・164条1項(前掲)
まず自分がどの行かを確定させてから、費用や依頼先の話に進むのが早道です。
表題登記も権利の登記もない「完全な未登記」
登記簿は2階建てです。1階が建物の物理的な情報を書く表題部、2階が誰のものかを書く権利部で、表題登記は1階を作る手続きです。これがなければ登記簿が存在しません。
昭和のころに親が自己資金で建てた離れを思い浮かべてください。融資を受けるなら抵当権の設定に登記が要りますが、現金で建てた建物にその必要はなく、何十年も登記されずに残ることがあるんです。
表題登記はあるが所有権保存登記がない状態
表題部には所有者の名前が入っているのに、権利部が作られていない建物もあります。この場合に必要なのは表題登記のやり直しではなく、所有権保存登記だけです。
相続したケースで申請できるのは、表題部に所有者として記録された人か、その相続人その他の一般承継人です(不動産登記法74条1項一号)。①との見分け方は、登記事項証明書が発行されるかどうかです。証明書が出るなら表題登記は済んでいます。
本体は登記済みで増築部分だけが未登記の状態
母屋は登記されているのに、建て増しした部分の床面積が登記簿に反映されていない。これも未登記です。登記の内容が変わったときは、新たな表題登記ではなく表題部の変更登記を、変更の日から1か月以内に申請します(不動産登記法51条1項)。
取り壊したときの手続きも、登記の有無で分かれます。登記のある建物なら法務局への滅失登記ですが、未登記家屋については家屋滅失届を別の手続きとして案内している自治体があります(宜野湾市)。取り壊す予定があるなら建物の滅失登記の仕組みと必要書類を先にご覧ください。
自分の建物が未登記かどうかを確かめる3つの経路
確かめ方は3つあります。法務局で登記事項証明書を取る方法、毎年届く課税明細書の家屋番号欄を見る方法、自治体によっては課税明細書の「登記」欄を見る方法です。匝瑳市は未登記家屋について「課税明細書、各種証明書もしくは名寄帳において、家屋番号の表示がないような形式で記載されています」と案内しています(匝瑳市)。明細書の家屋番号は登記上の番号で、付すのは登記所ですから(不動産登記法45条)、登記がなければ書きようがないわけです。
⇒ 手元の課税明細書だけで、費用をかけずに一次判定ができます。
ただし様式は自治体ごとに違います。家屋番号欄がある自治体なら、欄が空のとき未登記家屋として課税されていると読めます。土岐市のように「登記」欄を設け0=登記有/1=登記無と表示する自治体もあり(土岐市)、どちらの欄もない様式では判断できません。
| 確かめ方 | 費用 | そこで分かること |
|---|---|---|
| 法務局で登記事項証明書を請求する | 書面600円/オンライン520円 | 出なければ状態①。出て権利部に所有者の記載があれば保存登記まで済み、記載がなければ状態② |
| 課税明細書の家屋番号欄を見る(欄がある様式) | 無料 | 家屋番号が空欄なら状態①として課税されている |
| 課税明細書の「登記」欄を見る(欄がある自治体) | 無料 | 0=登記あり/1=登記なし |
| 家屋番号欄も登記欄もない様式のとき | 書面600円 | 課税明細書では判定できないため、法務局で確かめる |
データ出典: 法務省 登記手数料・匝瑳市・土岐市(前掲)
なお、固定資産税は家屋補充課税台帳(登記のない土地・家屋のうち課税できるものを登録した台帳)に載っている人にも課されます(地方税法343条2項)。納税通知書が届くことは登記がある証明になりません。税額の仕組みは空き家の固定資産税へ。
要点: 未登記は3つの状態に分かれ、①と③には1か月以内の申請期限があります。課税明細書、次に登記事項証明書の順で見れば、自分の状態は600円までで確定します。
未登記のままにしておくと何が起きる?

過料の対象は表題登記・表題部の変更登記・相続登記の3つで、土地が登記済みなら土地側は3年以内の相続登記が必要です(出典: 不動産登記法47条1項・51条1項・76条の2・164条1項、民法177条)
未登記のままでも住み続けられますが、表題登記や表題部の変更登記の申請を怠ると10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法164条1項)。さらに、登記がなければその建物を自分のものだと第三者に主張できません(民法177条)。
表題登記の申請は義務で、怠ると10万円以下の過料
不動産登記法47条1項は、表題登記がない建物の所有権を取得した人に、取得の日から1か月以内の表題登記の申請を義務づけています。正当な理由なく怠ったときが10万円以下の過料です。過料は刑事罰ではなく手続きを怠ったことへの行政上のペナルティで、前科にはなりません。
対象になる条文の範囲も押さえてください。164条1項が挙げるのは47条1項(表題登記)・51条1項から4項(表題部の変更登記)・76条の2(相続登記)などで、74条の所有権保存登記は入っていません。表題登記だけ済んだ状態②は、この過料の対象にあたらないんです。
⇒ 急いで動く必要があるのは、状態①と③の建物です。個別の事情による判断は司法書士へご相談ください。
自分のものだと第三者に主張するには登記が必要
民法177条は、不動産の物権の得喪と変更は登記をしなければ第三者に対抗できないと定めています。対抗要件とは、自分の権利を当事者以外にも主張するための条件で、不動産では登記がそれにあたります。
相続人が複数いる場合で考えてみましょう。遺産分割でその建物を自分が取得すると決まっても、法定相続分を超える部分は対抗要件を備えなければ第三者に主張できません(民法899条の2第1項)。建物に登記簿がなければ、備えようがありません。
⇒ 住み続けているだけでは、争いになったときに権利を示す手段が残りません。
担保に入れるにも、買主へ名義を移すにも、先に登記が要る
抵当権を設定する登記は権利部に記録するので、登記簿がなければ設定できません。金融機関の担保に使えないのは、そのためです。
売るときも、買主へ名義を移す登記の前に表題登記と所有権保存登記が要ります。未登記のまま売買できるのかは未登記建物を売買するときの手続きで整理しています。
建物と一緒に手放す土地に住宅ローンの抵当権が残っているなら、抵当権が残っている建物の抹消手続きを見ながら、そちらの処理も並行して進めてください。
相続登記の義務化は未登記建物にも及ぶのか
相続で不動産を受け継いだ人に、名義を自分へ変える登記の期限ができました。相続登記の義務化とは、取得を知った日から3年以内の相続登記を義務づけ、正当な理由なく怠ったときは10万円以下の過料の対象とする制度のことです。令和6年4月1日より前に開始した相続も対象で、その場合は令和9年3月31日までに申請が必要です(法務省)。
この義務を定めた不動産登記法76条の2第1項は「所有権の登記名義人について相続の開始があったとき」が対象です。未登記建物に所有権の登記名義人はいません。かわりに47条1項の1か月以内という期限が及び、これも164条1項の過料の対象です。
見落としやすいのが土地側です。建物だけが未登記で土地は登記済みなら、土地は3年以内の相続登記の対象になります。どちらの条文が当てはまるかは司法書士へご確認ください。
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相続した未登記建物を登記する2つの手順

保存登記を申請できる人が表題部の記録で決まるため、2つの登記は入れ替えられません(出典: 不動産登記法47条1項・74条1項一号)
相続した未登記建物は、表題登記と所有権保存登記の2つを順に申請すると登記簿ができます。相続した人が申請する場合、この順番は入れ替えられません。保存登記を申請できるのは表題部に所有者として記録された人か、その相続人その他の一般承継人だからです(不動産登記法74条1項一号)。
1. 表題登記で登記簿そのものを作る
1つ目の表題登記では、建物の所在・地番・家屋番号・種類・構造・床面積を記録して、登記簿の1階部分を立ち上げます。家屋番号はこのとき登記所が付け、申請先は建物の所在地を管轄する法務局です。
つまずきやすいのが書類です。建築確認済証や工事完了引渡証明書が残っていない古い建物では、建物の存在と自分が所有者であることを別の書類で示すことになります。何をそろえるかは建物ごとに違うので、管轄の法務局の登記相談を先に使うほうが早いです。
2. 所有権保存登記で「誰のものか」を記録する
2つ目の所有権保存登記で、権利部に最初の所有者を記録します。ここまで済んで、ようやく民法177条の対抗要件が備わります。
土地も含めた名義変更の総額は、家の名義変更の費用をご覧ください。
登記の費用と依頼先はどう考える?

台帳価格500万円なら保存登記の登録免許税は2万円で、表題登記は登録免許税の対象から外れています(出典: 国税庁・登録免許税法別表第一の税率を基に当社試算)
法律で決まっているのは所有権保存登記の登録免許税だけで、専門家に払う報酬は事務所ごとに違います。登録免許税とは、登記を受けるときに国へ納める税金のことで、建物の所有権保存登記は不動産の価額の1,000分の4です(国税庁)。
法律で決まっている費用は登録免許税だけ
登録免許税は、登録免許税法の別表第一に掲げる登記に課されます(同法2条)。その別表第一 一(十四)は「土地又は建物の表示に関するもの」を除いているため、表題登記と表題部の変更登記に登録免許税はかかりません(登録免許税法)。
課税標準の「不動産の価額」は、固定資産課税台帳に登録された価格が原則です。台帳の価格が500万円の建物なら、500万円×1,000分の4=2万円です。
軽減税率には期待しないでください。1,000分の1.5への軽減は、令和9年3月31日までに新築または建築後使用されたことのない住宅用家屋を取得して住まいにした場合が対象で、相続した築古の建物は対象外です。
表題登記は土地家屋調査士、保存登記は司法書士
依頼先が2つに分かれるのには理由があります。表示に関する登記の申請手続の代理は土地家屋調査士の業務(同法3条1項二号)、登記手続の代理は司法書士の業務(同法3条1項一号)と、法律で書き分けられているためです。
| 登記の種類 | 代理を頼む相手 | 登録免許税 |
|---|---|---|
| 建物表題登記 | 土地家屋調査士 | かからない |
| 建物表題部の変更登記 | 土地家屋調査士 | かからない |
| 所有権保存登記 | 司法書士 | 不動産の価額の1,000分の4 |
自分で申請することもできます。ただし表題登記では建物図面と各階平面図の作成が必要です。
報酬額に法定の基準はありません。見積もりを比べるときは、次の3点を聞いてください。
- 自分の建物が3つの状態のどれで、必要な登記はいくつか
- 登録免許税などの実費と報酬がそれぞれいくらか
- 1か月以内の期限に対し、いつまでに申請できるか
「登記する」と「市区町村へ届け出るだけ」は別物
未登記家屋の所有者が変わったとき、匝瑳市は「法務局にて当該家屋の表示登記の手続きを行うか、市で不動産登記に準じた手続きを行う必要があります」と2つの道を示しています。誤解が起きやすいのはここで、市への名義変更届で変わるのは家屋補充課税台帳の名義だけです。登記簿はできません。
⇒ 課税上の名義を直しても、建物を自分のものだと第三者に主張できる状態にはなりません。
さいたま市も「当該家屋が登記された場合については、登記事項が優先されます」としており(さいたま市)、台帳は登記の代わりではなく間に合わせです。
とはいえ届出を出さないままでよいわけでもありません。東大阪市は、届が提出されないと「誤った課税がなされるほか、納税証明等の発行に問題が生じたり」すると注意を促しています(東大阪市)。登記の段取りがつかないなら、届出だけは先に出しておいてください。
取り壊しから売却までの流れは滅失登記から売却までの手続きの全体像にまとめています。当社は登記の状況にかかわらず無料査定のご相談を受け付けており、必要な場合は提携する弁護士・司法書士・土地家屋調査士を含む専門チームで対応します。
法定費用は保存登記の登録免許税だけで、残りは依頼先と自分でやる範囲の決め方しだいです。
未登記建物に関するよくある質問
固定資産税を払っていれば登記されていることになりますか
なりません。市区町村は登記されていない家屋も家屋補充課税台帳に登録して課税するため、納税通知書が届くことと登記があることは別々に動いています。課税は市区町村、登記は法務局と、そもそも所管が違うからです。
未登記建物は自分で登記できますか。専門家に頼むといくらかかりますか
自分で申請できます。ただし表題登記では建物図面と各階平面図を作って添える必要があり、ここが山場です。法律で決まっている費用は保存登記の登録免許税(不動産の価額の1,000分の4)だけで、専門家の報酬に一律の基準はありません。実費と報酬を分けた見積もりを取ってから決めてください。
増築した部分だけが未登記の場合も手続きは必要ですか
必要です。床面積が変わったときは新たな表題登記ではなく建物表題部の変更登記で、変更があった日から1か月以内に申請します(不動産登記法51条1項)。怠れば同法164条1項の10万円以下の過料の対象です。母屋とは別に建てた物置や車庫も、登記の対象になる建物なら同じです。
未登記のまま相続登記の期限を過ぎたらどうなりますか
建物と土地を分けて考えてください。相続登記の3年以内という期限は所有権の登記名義人に相続が開始した場合の規定で、登記名義人がいない未登記建物には及びません。建物側は表題登記の1か月以内、土地が登記済みなら土地側は3年以内で、どちらも正当な理由なく怠れば10万円以下の過料の対象です。過ぎている場合の扱いは事情で変わるため、司法書士にご相談ください。
建物が未登記のままの空き家でも、買取くんに査定を依頼できますか
依頼できます。当社の買取くんは空き家・訳あり物件を全国で直接買い取っており、無料査定は最短6時間、仲介手数料は0円です。手続きは提携する弁護士・司法書士・土地家屋調査士の専門チームで対応します。登記をどう進めるか決める前でも、今の物件の状態をそのままお聞かせください。
まとめ
未登記建物は登記簿が作られていない建物で、相続したら表題登記と所有権保存登記を順に申請すれば登記簿ができます。市区町村への届出でできるのは課税上の名義を直すところまでで、登記簿を作れるのは法務局への申請だけなんです。取り壊して登記を閉じるまでの流れは滅失登記の記事が扱っています。まずは課税明細書の家屋番号欄を見て、番号があるなら登記事項証明書の権利部に自分か親の名前があるかを確かめてください。
当社の買取くんは、家具や生活用品などの残置物が残ったままでも、片づけずに今の状態で買い取る現況買取に対応しています。登記に費用をかける前に、その建物がいくらになるかを知りたい方に向いています。
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