実家売却の税金はいくら?相続前と後で変わる負担と特例

空き家買取

書類を記入するシニア夫婦(相続・登記に関する記事のイメージ)

実家を売って税金がかかるのは、売却代金そのものではなく譲渡益に対してです。同じ家でも、親が生きているうちに売るか相続してから売るかで使える特例が入れ替わり、手取りは大きく変わります。かかる税金の種類と相続前後の違い、相続後に使える取得費加算の特例を、国税庁のタックスアンサーで確認しながら整理しました。

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実家の売却にはどんな税金がかかる?

長期20.315%と短期39.63%の税率差に加え、起算日は親の購入日である点と印紙税1万円・登録免許税0.4%を並べた負担の内訳図
税率の差は約2倍。所有期間の起算は相続日ではなく親が買った日から数えます(出典: 国税庁 No.3208・No.3211・No.7108・No.7191)

実家の売却でかかる主な税金は、譲渡益に対する所得税・住民税と、契約書の印紙税、登記の登録免許税です。金額が大きく動くのは譲渡益への課税だけで、残りは売却額に応じてほぼ機械的に決まる部分です。

譲渡益が出たときだけかかる所得税・住民税

譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。取得費は購入代金や購入手数料などで、建物は減価償却費相当額を差し引きます。譲渡費用には仲介手数料や測量費のほか、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用も含まれます(国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算、令和7年4月1日現在法令等)。

売却代金の全額ではなく、差し引いた残りにだけ課税されます。税率は、売った年の1月1日時点の所有期間で2段階に分かれます。

区分 所有期間(売った年の1月1日時点) 所得税+住民税 復興特別所得税込みの目安
長期譲渡所得 5年超 15%+5% 20.315%
短期譲渡所得 5年以下 30%+9% 39.63%

データ出典: 国税庁 No.3208No.3211 短期譲渡所得の税額の計算(令和7年4月1日現在法令等、2026年8月時点)。復興特別所得税は基準所得税額の2.1%です。

税率が2倍近く違うため、長期か短期かの判定は税額に直結します。相続した実家では、この判定の起算日は相続した日ではなく親が買った日です。購入時の資料がなく取得費が分からない場合は売った金額の5%を取得費にできますが(国税庁 No.3258、令和7年4月1日現在法令等)、その扱いと計算手順は空き家売却にかかる税金の計算で整理しています。

譲渡益が出なくてもかかる印紙税・登録免許税

売買契約書には印紙税がかかります。令和9年3月31日までに作成される不動産譲渡契約書は軽減措置の対象で、契約金額1,000万円超5,000万円以下なら1万円です(国税庁 No.7108、令和7年4月1日現在法令等)。登録免許税は相続による所有権移転登記で不動産の価額の0.4%で、令和9年3月31日までの相続による土地の移転登記のうち価額100万円以下のものは免税です(国税庁 No.7191、同)。名義が親のままでは売却できないため、この登記は売却の前提条件になります。手続きは相続登記の義務化と名義変更の手順にまとめました。

売らずに持ち続ける場合は、これらとは別に毎年の固定資産税がかかります。売る・持つを比べる前提として、まず空き家の固定資産税の基本を押さえてください。

実家は相続前と相続後、どちらで売ると税金が変わる?

相続空き家の建築時期分布(1950年以前20.4%・1951〜1970年26.4%・1971〜1980年26.4%)に1981年の耐震基準線を重ねた図
1980年以前築が合計73.2%で建築年の条件は満たしうる一方、腐朽・破損がない相続空き家は28.2%にとどまります(出典: 国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査 結果のポイント」を基に当社作成)

相続後の売却では取得費と取得時期を親から引き継ぐため、税率は親の購入時からの所有期間で決まります。相続した翌月に売っても、親が30年前に買った家なら長期譲渡所得です(国税庁 No.3270、令和7年4月1日現在法令等)。変わるのは税率ではなく、使える特例の顔ぶれです。

相続前に売るなら、親のマイホームとしての特例

親が自分の住まいとして売る場合、所有期間を問わず譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。すでに住んでいない家でも、住まなくなった日から3年目の年末までに売れば対象です(国税庁 No.3302、令和7年4月1日現在法令等)。さらに家屋・敷地の所有期間が10年を超えていれば、課税長期譲渡所得6,000万円以下の部分は所得税10%となる軽減税率を、3,000万円控除と重ねて使えます(国税庁 No.3305、同)。

見落としやすいのは相続税側です。土地のまま相続すれば、特定居住用宅地等として330㎡まで評価額を80%減額できる余地が残ります(国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例、令和7年4月1日現在法令等)。生前に売って現金に変えると、この評価減が使えなくなる場合があります。譲渡所得税だけを見て生前売却が得と決めると、相続税で戻ってくることがあります。

相続後に売るなら、空き家特例か取得費加算

相続後の主役は2つです。ひとつは被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例で、譲渡所得から最高3,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡で相続人の数が3人以上なら2,000万円)を控除できます(国税庁 No.3306、令和7年4月1日現在法令等)。建築時期・耐震基準・売却代金1億円以下といった要件の全体像は3,000万円特別控除の適用条件で扱っています。もうひとつが取得費加算の特例です。詳しくは次の章で説明します。

実家の建築年が、そのまま分岐点になる

ここに実家という物件の固有事情が絡みます。国土交通省の調査では空き家の取得方法は相続が57.9%で最多、その相続空き家の建築時期は1950年以前20.4%、1951〜1970年26.4%、1971〜1980年26.4%と、1980年以前が合計73.2%を占めます(国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査 結果のポイント」、2025年8月29日公表)。

これを空き家特例の家屋要件(昭和56年=1981年5月31日以前に建築)に重ねると構図が見えます。実家の多くは、建築年の条件だけなら満たしうる側にいます。ところが同じ年代の家は旧耐震です。特例を使うには、譲渡時に耐震基準を満たすか取り壊すかという追加の関門が控えています。当社はこの「建築年では通るのに次で止まる」二段構えが、実家売却の税設計を難しくしている正体だと見ています。同じ調査で腐朽・破損がまったくない相続空き家は28.2%にとどまり、耐震改修を前提に据える判断は費用対効果の検証なしには決められません。

また、相続空き家が空き家になった原因のうち11.3%は老人ホームなどの施設への入居でした(前掲の国土交通省調査)。施設に移ったあと相続が発生すると対象外と早合点しがちですが、要介護認定等を受けて入所していた場合は一定要件で対象になり得ます(国税庁 No.3307、令和7年4月1日現在法令等)。確認せずに諦めるには惜しい規模です。

比較項目 相続前に売る(親が売主) 相続後に売る(子が売主)
税率の起算点 親の取得時 親の取得時(引き継ぐ)
使える控除 居住用3,000万円特別控除 空き家特例3,000万円(相続人3人以上は2,000万円)
税率の優遇 10年超所有の軽減税率(併用可) 通常の長期・短期区分
相続税への影響 現金化で小規模宅地等の特例を使えない場合あり 土地としての評価減の余地が残る
期限 住まなくなって3年目の年末 相続開始から3年目の年末/約3年10か月
当社の評価 親の判断能力と合意が前提。時間に余裕があるとき 当社への相談はこちらが中心。期限管理が要点

データ出典: 要件・期限は前掲の国税庁タックスアンサー各ページ(2026年8月時点)。最終行は当社の買取相談実務に基づく整理です。

売る・売らないの合意形成でつまずいている場合は、税より先に判断の順番を整理したほうが早いこともあります(実家売却で後悔しないための判断軸)。

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相続した実家の税を軽くする取得費加算の特例とは?

相続開始から10か月・3年目の年末・約3年10か月という3つの期限を1本の時間軸に並べたタイムライン図
「相続から3年」は2種類あり、空き家特例は3年目の12月31日、取得費加算は約3年10か月が期限です(出典: 国税庁 No.3267・No.3306・No.4205)

取得費加算は、支払った相続税の一部を取得費に足せる特例で、相続税の申告期限の翌日から3年以内が期限です。相続税を納めたうえに譲渡所得税もかかるという重複感を調整する仕組みだと考えると分かりやすくなります。

適用の3要件と「3年10か月」の数え方

国税庁が挙げる要件は、①相続や遺贈により財産を取得した者であること ②その財産を取得した人に相続税が課税されていること ③その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること、の3つです(国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例、令和7年4月1日現在法令等)。

実務で問題になるのは3つ目です。相続税の申告期限は死亡を知った日の翌日から10か月以内なので(国税庁 No.4205、同)、取得費加算の期限は相続開始からおよそ3年10か月です。一方、空き家特例の期限は「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」で数え方が違います。「相続から3年以内に売る」と一括りに覚えていると、どちらの3年かで判断を誤ります。なお相続税の申告も納税も不要だった場合は、取得費加算を使えません。

取得費に足せる金額と、必要な書類

加算できるのは相続税額のうち売った財産に対応する部分で、この特例を適用しないで計算した譲渡益を超えることはできません(前掲 No.3267)。適用には確定申告を行い、「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」と「譲渡所得の内訳書[土地・建物用]」を添えて提出します。この明細書を使えば加算額そのものを計算できるため、税理士に相談する前でも金額の当たりは付けられます。

空き家特例とは選択適用になる

空き家特例の適用要件には「売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと」と明記されています(前掲 国税庁 No.3306)。同じ家について、空き家特例と取得費加算を両方使うことはできません。3つの特例を積み上げる前提で試算すると、実際の手取りを見誤ります。

比較項目 取得費加算の特例 空き家特例(3,000万円特別控除)
効き方 取得費を増やして譲渡益を圧縮 譲渡所得から直接控除
上限 対応する相続税額(譲渡益が限度) 3,000万円(相続人3人以上は2,000万円)
前提 相続税を納めていること 昭和56年5月31日以前建築・耐震基準または取壊し・1億円以下など
譲渡期限 相続開始から約3年10か月 相続開始から3年目の年末
制度の期限 恒久的な措置 令和9年12月31日までの譲渡

データ出典: 国税庁 No.3267No.3306(令和7年4月1日現在法令等、2026年8月時点)。

当社の買取相談では、相続人が複数いる案件でこの選択が後回しになるパターンをよく見ます。誰が主導するか決まらないまま1年、遺品整理と片付けでもう1年が過ぎ、気づけば期限の年が近づくという進み方です。どちらの特例を選ぶにせよ、期限を過ぎれば選択肢そのものが消えます。

取得費加算と空き家特例、どちらを選べばよい?

空き家特例の要件を満たせるかで税額が0円か約488万円に分かれる試算の分岐図と、特例を使えない5つの条件
譲渡益3,000万円の試算では空き家特例が約609万円軽く、要件を満たせないときに取得費加算が主役になります(当社による試算・税率は国税庁 No.3208)

加算できる相続税額が3,000万円を超えないかぎり、要件を満たすなら控除額の大きい空き家特例が有利になりやすいです。判断の順序は、まず空き家特例の要件を満たせるかを確かめ、満たせないときに取得費加算へ進む形になります。差がどれほど出るかを、前提を固定した試算で確かめます。

試算の前提: 譲渡価額4,000万円、取得費(減価償却後)800万円、譲渡費用200万円で譲渡益3,000万円。親の取得時から5年超のため長期譲渡所得とし税率20.315%。この実家に対応する相続税額は600万円。印紙税・登録免許税および他の所得は考慮していません。

ケース 課税譲渡所得 税額の目安 特例なしとの差
特例を使わない 3,000万円 約609万円
取得費加算のみを使う 2,400万円 約488万円 約121万円軽い
空き家特例のみを使う 0円 0円 約609万円軽い

データ出典: 当社による試算(2026年8月時点)。税率は前掲の国税庁 No.3208(令和7年4月1日現在法令等)に基づき、3,000万円×20.315%=609.45万円、2,400万円×20.315%=487.56万円として算出しました。前提はすべて上記の固定値で、物件ごとの取得費や相続税額は反映していません。適用可否は建築時期・耐震基準・売却代金・相続人の数で変わるため、この試算は大小関係の傾向を示すものです。実際の税額と適用可否は税理士にご確認ください。

控除額3,000万円と加算できる相続税額を比べると、後者が3,000万円を超える例は多くありません。両方が使える状況なら、空き家特例のほうが軽くなるのが通常です。そのため実務上の問いは「どちらが得か」ではなく「空き家特例の要件を満たせるか」に移ります。空き家特例を使えず取得費加算が主役になるのは、次のような場合です。

  • 1981年6月以降に建てられた実家である
  • 区分所有建物登記がされたマンションである
  • 相続後に貸した、または誰かが住んだ
  • 売却代金が1億円を超える
  • 相続開始から3年目の年末を過ぎた

このうち最後の1つだけは、時間の使い方で回避できます。期限は待ってくれませんが、売却にかかる時間は選べます。当社の買取くん(株式会社リアテクス)は査定が最短6時間、現金化は最短3日です。買い手を探す期間が読めないまま期限が近づいている場合は、現況のまま買い取る選択肢があります。実際に大阪府堺市の相続実家は生活用品を残したまま1,200万円、東京都北区の築50年超で傾きのある物件は4,400万円で買い取りました。買取価格は仲介での成約価格より低くなるのが一般的ですが、期限を過ぎて特例を丸ごと失うのと比べれば、手取りで上回ることもあります。売却全体の進め方は実家を売却する流れにまとめています。

実家を売却したあと確定申告は必要?

譲渡益が出た場合や特例を使う場合は、売却した翌年の2月16日から3月15日までに確定申告が必要です。土地・建物の譲渡所得があるときは申告書第三表(分離課税用)を併せて使います(国税庁 No.2020 確定申告、令和7年4月1日現在法令等)。

見落としやすいのは、特例で税額がゼロになる場合です。取得費加算・空き家特例・マイホームの特例はいずれも「一定の書類を添えて確定申告をすることが必要」と定められています。税額が0円でも、申告しなければ0円になりません。共有のまま売った場合は、持分に応じて各自が申告する形です。申告書の書き方や取得費が分からないときの進め方は空き家売却にかかる税金の計算で扱っています。

実家売却の税金についてよくある質問

Q1. 相続税を払ったのに、売ったらまた税金がかかるのですか?

相続税は財産を受け継いだことに対する税、譲渡所得税は売って利益が出たことに対する税で、課税の対象が違います。負担が重なる面を調整するために設けられたのが取得費加算の特例です。相続開始から約3年10か月以内に売れば、相続税額のうち売った財産に対応する部分を取得費に足せます。

Q2. 空き家特例と取得費加算は両方使えますか?

同じ家については使えません。空き家特例の適用要件に「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例…の適用を受けていないこと」と明記されており、どちらか一方を選びます。控除額3,000万円と加算できる相続税額を比べると、要件を満たすなら空き家特例が有利になりやすい傾向です。

Q3. 相続してから何年以内に売ればよいのですか?

使いたい特例で期限が違います。空き家特例は相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、取得費加算は相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(相続開始からおよそ3年10か月)です。いずれも譲渡の時期で判定されるため、逆算して売却活動を始めましょう。

Q4. 相続人が複数いる場合、税金は誰がどう申告しますか?

共有のまま売却した場合は、各相続人が自分の持分に応じた譲渡所得を計算し、それぞれ確定申告をします。相続人の数が3人以上だと、令和6年1月1日以後の譲渡では空き家特例の控除上限が1人あたり2,000万円に下がる点も押さえておきましょう。分割の方法で結論が変わるため、遺産分割の段階で税理士に相談しておくと手戻りがありません。

保有し続けた場合の負担とあわせて検討したい場合は、空き家の固定資産税の総合ガイドで次の一手を確認することをおすすめします。

まとめ

実家の売却でかかる主な税金は譲渡益に対する所得税・住民税で、税率は親が買った時からの所有期間で決まります。相続前なら親のマイホームとしての3,000万円控除と10年超の軽減税率、相続後なら空き家特例か取得費加算という構図です。この2つは選択適用のため、両方使えるなら控除額の大きい空き家特例が有利になりやすく、要件を満たせないときに取得費加算を検討します。期限の数え方も異なり、空き家特例は相続開始から3年目の年末、取得費加算は約3年10か月です。保有中の固定資産税を含む全体像は親ページで確認し、まずは自分の実家がどちらの入口に立っているかを見極めてください。

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この記事の監修者

株式会社リアテクス 執行役員 鶴野博之

鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)

宅地建物取引士/賃貸経営管理士/FP2級

一棟投資物件専門の仲介会社で不動産業界に参入後、前職では「訳あり・瑕疵物件」に特化したコンサルティングプログラム責任者として600名以上の投資家の購入から売却までに携わる。自身も再建築不可物件を中心に訳あり物件へ投資し、転売売買から保有物件まで数々の実績を持つ。

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