空き家を放置しても直ちに罰則は科されませんが、市区町村の命令に従わないと50万円以下の過料と行政代執行の対象になります。放置は建物の劣化から始まり、近隣への被害、行政の措置へと段階的に進むものです。罰則が科される条件と、実際に代執行まで進んだ件数を整理します。
空き家の固定資産税全体の流れは空き家の固定資産税の全体解説をご覧ください。
空き家を放置するとどうなるのか?

空き家を放置すると、まず建物が傷み、やがて近隣への被害と行政の措置へと段階的に広がります。国土交通省は放置のリスクとして、倒壊、外壁落下、ねずみ・害虫、景観の悪化、悪臭、不法侵入、枝のはみだしの7つを挙げています(国土交通省 空き家を放置するリスク、2026年8月時点)。
この7項目は並列に並んでいますが、誰に被害が向かうかで分けると打つべき手が変わります。当社の整理は次の3層です。
| リスクの層 | 具体的に起きること | 先に効く対処 |
| 自分の資産に返る | 雨漏り・シロアリによる劣化、資産価値の低下 | 現況の把握と出口の決定 |
| 近隣・通行人に及ぶ | 外壁落下、枝のはみだし、害虫、悪臭、不法侵入 | 通風・除草・施錠、危険な部位の撤去 |
| 行政が動き出す | 管理不全空家・特定空家としての指導、勧告、命令、代執行 | 指導・勧告の段階での是正 |
出典: 国土交通省「空き家を放置するリスク」の7項目を基に当社が3層へ再分類(2026年8月時点)
自分の資産に返ってくること
放置期間が延びると雨漏りやシロアリが構造部分まで進み、修繕費が売却価格に迫ることも珍しくありません。国土交通省も「資産価値が低下し、売買等が困難になる」としています。傷みが浅いうちほど、選べる方法は多く残ります。
近隣や通行人に及ぶこと
外装材や屋根材の破損を放置すると部材が落下し、壊れた窓からの不法侵入は周辺の治安を脅かす要因です。これらは所有者が現地にいなくても起き、被害が出れば所有者の責任として扱われます。
行政が動き始める段階
市区町村は、放置すれば特定空家等になるおそれのある空き家を「管理不全空家等」として指導できます(空家法第13条第1項)。指導に従わず勧告を受けると、土地の固定資産税の軽減措置が外れます。行政が動く引き金は放置期間ではなく建物の状態です。税負担が変わる時期は空き家の固定資産税が6倍になる時期で扱っています。
空き家の放置に罰則はあるのか?

空き家を放置しているだけで罰則が科されることはなく、対象になるのは市区町村の命令に従わなかった場合です。空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)第30条第1項は、第22条第3項の命令に違反した者を50万円以下の過料に処すると定めています。立入調査を拒んだ場合は同条第2項で20万円以下の過料です(e-Gov法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法、2026年8月時点)。
罰則の対象は放置そのものではなく、命令に従わなかったという行為です。命令は助言・指導と勧告を経た先にあるため、途中で措置をとれば過料には至りません。
「3年放置で罰金100万円」に法的な根拠はない
「空き家を3年放置すると罰金100万円」という組み合わせが検索では実際に使われています。しかし空家法には「3年」という期間の要件も、100万円という金額も存在しません。条文が定める金額は50万円以下と20万円以下の2つだけで、いずれも命令違反または調査拒否という行為に対するものです。
当社はこれを、放置年数だけで結果が決まるという思い込みが生んだ誤解と見ています。効くのは経過年数ではなく建物の状態と通知の段階です。まず手元の通知が助言・指導か勧告かを確かめてください。
過料と罰金は別のもの
「罰則」と一括りにされがちですが、過料と罰金は法的な性質が異なります。
| 項目 | 過料 | 罰金 |
| 性質 | 行政上の秩序罰 | 刑事罰 |
| 前科 | つかない | つく |
| 空家法での定め | 命令違反は50万円以下、立入調査の拒否等は20万円以下 | 定めなし |
金額の大小より、行政手続の中で科されるものだという点が要点です。過料が問題になる段階では、より負担の大きい代執行が視野に入っています。
行政代執行はどの段階で行われるのか?

行政代執行は、助言・指導、勧告、命令という3段階を経てもなお措置がとられない場合に行われます。空家法第22条は特定空家等への措置をこの順で定め、命令が履行されないとき等に、行政代執行法の定めるところに従い市区町村が自ら除却等を行えるとしています(e-Gov法令検索、2026年8月時点)。
| 段階 | 根拠条文 | 起きること |
| 指導・勧告(管理不全空家等) | 第13条 | 特定空家等になることを防ぐ措置の指導、続いて具体的措置の勧告 |
| 助言・指導(特定空家等) | 第22条第1項 | 除却・修繕・立木竹の伐採等の助言または指導 |
| 勧告(特定空家等) | 第22条第2項 | 猶予期限を付けた勧告 |
| 命令(特定空家等) | 第22条第3項 | 猶予期限を付けた命令。違反は50万円以下の過料 |
| 行政代執行 | 第22条第9項 | 市区町村が自ら、または第三者に除却等を行わせる |
所有者等の調査・立入調査(第9条)が前段にあり、命令の前には意見書の提出や公開の意見聴取の機会も置かれています(第22条第4項〜第8項)。どの段階でも、求められた措置を実行すれば次には進みません。
費用は所有者が負担する
代執行にかかった費用は、市区町村ではなく所有者が負担します。所有者を確知できない場合の略式代執行(第22条第10項)でも費用は命令対象者の負担で、徴収には行政代執行法第5条・第6条が準用されます。費用を自分で管理できる最後の機会が、命令の履行期限です。
命令を経ない緊急代執行もある
令和5年の改正で、災害その他非常の場合に命令等の手続を経ず措置できる緊急代執行が新設されました(第22条第11項)。台風の直前など待っていられない状況を想定した例外です(政府広報オンライン、2026年8月時点)。
実際に代執行まで進む空き家はどれくらいあるのか?

実際に行政代執行まで進む空き家は、助言・指導を受けたもののうち1%に届きません。国土交通省・総務省の調査では、特定空家等への助言・指導が累計42,768件だったのに対し、行政代執行は286件でした(国土交通省・総務省 空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について、令和7年3月31日時点)。
| 措置の段階 | 累計件数 | 助言・指導を100としたときの割合 |
| 助言・指導 | 42,768件 | 100% |
| 勧告 | 4,153件 | 約9.7% |
| 命令 | 551件 | 約1.3% |
| 行政代執行 | 286件 | 約0.7% |
国土交通省・総務省の公式値を基に当社が算出(令和7年3月31日時点)
【調査方法】 対象: 国土交通省・総務省「空家法の施行状況等について」の措置件数/N数: 特定空家等への措置 累計48,362件(調査対象1,741市区町村)/期間: 平成27年度〜令和6年度/集計方法: 助言・指導の累計件数を分母に各段階の累計件数を除して算出(四則演算のみ)/データ出典: 上記の国土交通省・総務省調査
このほか略式代執行が累計592件、緊急代執行が12件です。大半の空き家は助言・指導か勧告の段階で終わっています。当社はこれを、行政が取り壊しを目的にしていない裏づけと見ています。
管理不全空家への指導は1年で約3.8倍に増えた
令和5年12月13日施行の改正法で新設された管理不全空家等への措置は、運用が急速に広がりました。指導は令和5年度の666件から令和6年度は2,545件へ、当社の算出で約3.8倍になり、勧告は同じ期間に0件から378件になっています(同調査、令和7年3月31日時点)。特定空家になる前の段階で行政が接触する機会が増えた形です。
要点: 代執行に至るのは約0.7%と少数ですが、行政と接触する確率自体は上がっています。
空き家が原因で他人に損害を与えたら誰が責任を負うのか?
空き家の外壁や瓦が落ちて他人に損害を与えた場合、所有者が賠償責任を負うことがあります。民法第717条第1項は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があって他人に損害が生じたとき、まず占有者が責任を負い、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは所有者が賠償すると定めています(e-Gov法令検索 民法、2026年8月時点)。
誰も住んでいない空き家では、所有者が占有者を兼ねている場合がほとんどです。住んでいないことは責任を免れる理由になりません。同条第2項は竹木の瑕疵にも準用されるため、越境した枝による損害も対象です。建築基準法第8条も建物を常時適法な状態に保つ努力を所有者等に求めています。
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行政から指導や勧告を受けている状態でも、現況のまま買い取れるかを確かめられます。
受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)
放置をやめるには何から始めればいいのか?
放置をやめる第一歩は、建物の現況と権利関係を確認したうえで、売る・貸す・解体する・管理を委託するの4つから選ぶことです。どれを選べるかは建物の傷み具合と名義の状態で決まるため、現況の把握が先に来ます。
| 出口 | 向いている状況 | 押さえておく点 |
| 現況のまま売る | 遠方で通えない、家財が残っている、傷みが進んでいる | 仲介より価格は下がりやすい |
| 貸す | 生活できる状態が保たれている | 改修費と入居者募集の手間がかかる |
| 解体して土地で売る | 建物の傷みが著しい | 解体費に加え、更地にした後の税負担が変わる |
| 管理を委託する | すぐに手放す判断ができない | 費用が継続し、放置期間そのものは延びる |
横並びで比べるなら空き家の処分方法の比較、解体費用は家の解体費用の相場、家財が残る場合は残置物とは何かをご覧ください。引き継ぎたくない場合は空き家の相続放棄と国庫帰属、売却時の税負担は実家売却にかかる税金と特例と空き家売却にかかる税金の計算で確認できます。
空き家の発生原因は半数以上が相続によるものです(政府広報オンライン、2026年8月時点)。先に名義を確認しておくことが、その後の手続きを止めないコツです。
当社の見解: 放置年数が延びるほど、出口は「売る」から「解体」へ寄る
当社の買取くん(株式会社リアテクス)は訳あり物件の直接買取を専門にしており、長く空いていた家の査定も日常的に扱っています。その現場感覚として、放置期間が延びるほど雨漏り・シロアリ・傾きといった判断材料が増え、現況のまま買い取れる幅は狭まります。傾向としては「そのまま売る」から「解体して土地で売る」へ出口が寄っていきます。
だからこそ、通知が届いてから動くのではなく、傷みが浅いうちの査定をおすすめしています。時間が経つほど、選べる出口は減っていきます。なお、特定空家等や管理不全空家等に該当するかを判断するのは市区町村です。個別の物件は所在地の自治体窓口や専門家にご確認ください。
空き家の固定資産税の基礎に立ち返って整理すると、税負担の面から全体像を確認できます。
空き家の放置に関するよくある質問
Q. 空き家を放置していると、いきなり解体されることはありますか?
原則としてありません。空家法は助言・指導、勧告、命令の順に手続を定め、代執行はその後です。例外は災害その他非常の場合の緊急代執行(第22条第11項)です。
Q. 誰も住んでいない実家に仏壇や家財が残ったままでも手放せますか?
残したままでも売却できます。生活用品が残った状態でも、当社なら現況のまま買取が可能です。家財の扱いは残置物とは何かで解説しています。
Q. しばらく使う予定があれば、空き家として扱われませんか?
空家法第2条第1項は「居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの」を空家等と定義します。判断の基準は将来の予定ではなく、使われていない状態が続いているかどうかです。
Q. 遠方に住んでいて現地に行けない場合、市区町村から連絡は来ますか?
来ます。空家法第10条第1項が、市区町村長は固定資産税の課税等のために保有する所有者情報を法の施行に必要な限度で内部利用できると定めているためです。
まとめ
空き家の放置は、建物の劣化から近隣被害、行政の措置へと段階的に進みます。罰則は放置そのものではなく命令違反に対するもので、上限は50万円以下の過料です。代執行まで進むのは助言・指導の約0.7%ですが、手前の管理不全空家への指導は1年で約3.8倍に増えました。段階が浅いうちに動けば、費用も選択肢も自分の手元に残ります。
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受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)
この記事の監修者

鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)
宅地建物取引士/賃貸経営管理士/FP2級
一棟投資物件専門の仲介会社で不動産業界に参入後、前職では「訳あり・瑕疵物件」に特化したコンサルティングプログラム責任者として600名以上の投資家の購入から売却までに携わる。自身も再建築不可物件を中心に訳あり物件へ投資し、転売売買から保有物件まで数々の実績を持つ。