「市役所から手紙が来た。もう特定空き家なのかな」 「指定されたら固定資産税が跳ね上がると聞いた。もう手遅れ?」
特定空き家とは、倒れそう・不衛生・景観を損ねている・近所に迷惑、の4つの状態のどれかにあると市町村が認めた空き家です。認定されただけでは土地の税負担は変わらず、変わるのは勧告を受けた段階です。確かめ方と認定後にできることを見ていきます。
特定空き家とは?空家法が定める4つの状態にあると市町村が認めた空き家

3つの語の範囲を入れ子で整理しました。判定の単位は建物ではなく敷地と立木まで含みます(出典: 空家等対策の推進に関する特別措置法 第2条・第13条を基に当社作成)
特定空き家とは、倒れそう・不衛生・景観を損ねている・近所の暮らしに差し支えている、の4つの状態のいずれかにあると市町村が認めた空き家のことです。空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)の第2条第2項に定めがあり、条文では「特定空家等」と書かれます。
法律が言う「空家等」と、普段使いの「空き家」の違い
空家法第2条第1項は空家等を、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)と定めています(e-Gov法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法)。空家等とは、建物だけでなく敷地や庭木まで含めた一かたまりを指す、この法律の対象単位のことです。
当社は、この定義の広さを見落とさないでほしいと考えています。誰も住まなくなって数年たち、庭木が伸びた実家。行政が見るのは建物の中ではなく、立木まで含めた敷地の外側です。
特定空き家は「空家等」のうち状態が進んだもの
空家等がそのまま特定空き家になるわけではありません。そのうち、保安上危険・衛生上有害・景観・周辺の生活環境という4つの状態のいずれかにあると認められたものが特定空家等です。条文の正式な文言は、次の章で1つずつ引きます。
手前にもう一段階あります。空家法第13条第1項は、放置すれば特定空家等に該当するおそれのある状態の空家等を管理不全空家等と定め、市町村長が指導できるとしています。段階と扱いの違いは管理不全空家と特定空家の違いで整理しました。持ち続けるあいだに何にいくらかかるのかは、空き家活用の前に押さえる維持コストにまとめています。
どんな状態だと特定空き家になる?認定の目安になる4つの状態
認定の目安になるのは、倒れそう・不衛生・景観を損ねている・近所の暮らしに差し支えている、の4つの状態です。国土交通省と総務省が出しているガイドラインが状態の例を挙げており、市町村はその例を参考に総合的に判断します。自分の家のどこを見るかは、次の章の早見表で確かめられます。
1. 倒れそうで危ない——倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
条文の文言は「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」です。ガイドライン(国が市町村向けに示した判断の手引き)の概要資料は、次の状態を例に挙げています(国土交通省・総務省 ガイドライン概要資料)。
- 倒壊のおそれがあるほどの著しい建築物や門・塀の傾斜
- 擁壁の一部の崩壊
- 外装材・屋根ふき材・雨樋等の剥落又は脱落
どの例にも「著しい」という程度の限定が付きます。少し傾いている、塗装が剥がれている、という段階はここに入りません。
2. 不衛生になっている——著しく衛生上有害となるおそれのある状態
条文の文言は「著しく衛生上有害となるおそれのある状態」です。同じ概要資料は、次の状態を例に挙げています。
- 石綿の飛散の可能性が高い吹付け石綿の露出
- 排水設備からの汚水等の流出
- 敷地等からの著しく多数の蚊・ねずみ等の発生
- 敷地等の著しい量の動物の糞尿等
「著しく多数」「著しい量」という限定があるため、庭に蚊がいる程度では当てはまりません。
3. 景観を損ねている——適切な管理が行われず著しく景観を損なっている状態
条文の文言は「適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態」です。挙げられている例は、屋根ふき材・外装材・看板等の著しい色褪せ、破損又は汚損です。
景観と聞くと好き嫌いで決まるように感じますが、判断はこの状態の例に照らして行われます。見られるのは、いま外からどこまで傷んで見えるかです。
4. 近所の暮らしに差し支える——周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
条文の文言は「その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」です。挙げられている例は次のとおりです。
- 排水設備の汚水等による悪臭の発生
- 不特定の者が容易に侵入できるほどの著しい開口部等の破損
- 頻繁な落雪の形跡
- 著しい立木の枝等のはみ出し
- 著しい頻度又は音量の鳴き声を発生する動物の棲みつき
玄関や窓が壊れて誰でも入れる状態、枝が道路にはみ出している状態が、この4つ目です。1件の空き家に複数の状態が同時に認められることもあります。
⇒ 4つとも判断の中心は「著しい」という程度です。傷んでいるかどうかではなく、どこまで進んでいるかで分かれます。
自分の空き家は該当する?外から見える6か所で確かめる

分かれ目は場所ではなく傷みの程度です。傾斜1/20超は小平市の基準です(出典: 国土交通省・総務省 ガイドライン概要資料/小平市 管理不全空家等及び特定空家等の判断基準を基に当社作成)
外から見える6か所を順に見れば、自分の家が特定空き家にどれくらい近いかの見当がつきます。見るのは建物全体、屋根や外壁、門・塀・擁壁、立木、ごみや排水、開口部の6か所です。最終的に決めるのは市町村で、周りへの影響の大きさや危なさの切迫度まで含めて判断します。
| 外から見える場所 | 特定空家の状態の例 | 管理不全空家の状態の例 |
|---|---|---|
| 建物全体 | 倒壊のおそれがあるほどの著しい傾斜 | 構造部材の破損、腐朽、蟻害、腐食 |
| 屋根・外壁 | 屋根ふき材・外装材・雨樋等の剥落又は脱落 | 外装材・屋根ふき材等の支持部材の破損、腐食 |
| 門・塀・擁壁 | 著しい傾斜/擁壁の一部の崩壊又は著しい土砂の流出 | 擁壁のひび割れ等の劣化、水のしみ出しや変状 |
| 立木 | 著しい傾斜/著しい枝等のはみ出し | 伐採・補強がなされず腐朽が認められる状態 |
| ごみ・排水 | 著しく多数の蚊・ねずみ等の発生/汚水等の流出 | 常態的な水たまりや多量の腐敗したごみ |
| 開口部 | 不特定の者が容易に侵入できるほどの著しい破損 | 開口部等の破損 |
データ出典: 国土交通省・総務省 ガイドライン概要資料を基に当社作成。管理不全空家とは、特定空家に至る前の段階として市町村が認める空き家のことです。
屋根・外壁・塀・立木——形が変わっているところを見る
表の2列は、同じ部位を二段構えで書いたものです。2つの列を分けているのは、壊れている場所ではなく傷みの程度です。部材が破損・腐朽していれば手前の段階、傾斜や剥落・脱落まで進んでいれば特定空家の例に並びます。
程度を数字で示す自治体もあります。小平市は、倒壊のおそれがあるほどの著しい建築物の傾斜を1/20超の傾斜としています(小平市 管理不全空家等及び特定空家等の判断基準)。これは小平市の基準で全国共通ではないため、自分の家がある市区町村の公表資料を確かめてください。
ごみ・排水・開口部——近所から見える困りごとを見る
下の3行は、建物の丈夫さではなく周りの人が困るかどうかで並んでいます。悪臭も割れた窓もはみ出した枝も、隣地や道路から気づけるものです。
当社は、この3行を先に確かめてほしいと伝えています。傾きや腐食は近所の人にはわかりませんが、におい・ごみ・割れた窓は外から見えるため、市町村へ相談が入る入口になりやすいからです。年に一度しか行けない実家なら、道路から見える面を写真に撮っておいてください。
受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)
特定空き家は誰がどう決める?調査から認定までの流れ
特定空き家に認定するかどうかを最終的に決めるのは、その家が建っている市町村の長です。外から見た傷み具合だけでなく、近所への影響の大きさや危なさの切迫度まで合わせて判断するため、状態の例に当てはまれば自動的に認定されるわけではありません。
市が調べに来るとき、所有者に伝えられること
立ち入りの前には連絡が来ます。空家法第9条第3項は、職員等を立ち入らせようとするとき、その5日前までに所有者等へ通知しなければならないと定めています(通知が困難なときを除く)。立ち入る職員は身分を示す証明書を携帯し、請求があれば提示します。立入調査の権限は犯罪捜査のために認められたものではなく、国のガイドラインも報告徴収と立入調査を必要最小限度の範囲で行うべきものとしています。
その手前には、所在と所有者を把握する実態調査があります(第9条第1項)。近所から市役所へ相談が入り、担当課が外から様子を見に来た段階で、まだ認定ではありません。
状態の例のほかに市町村が見ているもの
ガイドラインは、別紙に掲げる状態の例を参考として総合的に判断するものとし、例によらない場合も個別に判断する必要があるとしています。「おそれのある状態」は、そのまま放置した場合の悪影響が社会通念上予見可能な状態を指すとしています(国土交通省・総務省 管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針)。
判断の材料には、悪影響が及ぶ範囲に周辺の建築物や通行人等が存在するかも入ります。二本松市は、一定の基準に基づき倒壊危険度や道路・近隣地への影響度、緊急性などを判定して認定していると公表しています(二本松市 特定空家等について)。小平市は物的状態のほかに周囲への悪影響の程度や危険等の切迫性を勘案するとし、派遣された専門家や判定会議の意見も踏まえるとしています。
背景として、使用目的のない空き家は平成15年の212万戸から令和5年の386万戸へ増えています(国土交通省 空き家対策)。当社は、隣に人が住む空き家ほど、相談が入れば調査の対象になりやすいと見ています。
認定された後に起きること——助言・指導から代執行までの4段階

税の扱いが動くのは勧告の段階です。勧告には猶予期限が付き、期限までに直せば撤回されます(出典: 空家等対策の推進に関する特別措置法 第22条を基に当社作成)
認定された後は助言・指導、勧告、命令、代執行の順に進み、土地の税負担が変わるのは勧告を受けた段階です。認定されただけなら、住宅の敷地に認められている税の軽減はそのまま続きます。段階ごとに、できることと失うものが変わります。
| 段階 | この段階で所有者にできること | この段階で失うもの |
|---|---|---|
| 助言・指導(第22条第1項) | 除却・修繕・伐採などの措置を自分の段取りで進める | なし(土地の税の扱いは変わらない) |
| 勧告(第22条第2項) | 猶予期限内に措置を済ませ、勧告の撤回を受ける | 住宅用地特例(土地の税負担の軽減) |
| 命令(第22条第3項) | 意見書を出す、公開による意見の聴取を請求する | 敷地に標識が立ち、命令を受けたことが外から分かる |
| 代執行(第22条第9項) | 行政代執行法の手続の中で進め方と費用の扱いを確認する | 建物の始末を自分で決める立場と、かかった費用 |
データ出典: 空家等対策の推進に関する特別措置法 第22条第1項〜第3項・第9項・第13項を基に当社作成。
助言・指導と勧告——税負担が動くところ
最初に来るのは助言・指導です。第22条第1項は、市町村長が所有者等に対し、除却、修繕、立木竹の伐採その他必要な措置をとるよう助言又は指導できると定めています。それでも状態が改善されないと認めるときに、相当の猶予期限を付けた勧告へ進みます(e-Gov法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法)。
この勧告が税の分かれ道です。住宅用地特例とは住宅が建っている土地の固定資産税を軽くする仕組みのことで、指導に従わず勧告を受けると受けられなくなります(国土交通省 空家法とは)。
指導の通知が届いた段階で屋根と塀を直せば、税の扱いは変わりません。何もしないまま勧告を受けたときに、はじめて軽減の対象から外れます。分かれ目は認定の通知ではなく勧告です。勧告に付く猶予期限までに直せば撤回されます。いつから税額がどれだけ変わるのかは、空き家の固定資産税はいつから6倍になるのかで扱っています。
命令と代執行——所有者の手を離れる段階
勧告を受けた者が正当な理由なく措置をとらず、特に必要があると認めるときは、相当の猶予期限を付けた命令が出されます(第22条第3項)。命令に係る措置が履行されないときなどは、行政代執行法の定めるところに従って代執行が行われます(同条第9項)。
いきなり取り壊されるわけではありません。命令の前には、通知書の交付、意見書の提出機会、公開による意見の聴取の請求という手続があります。放置し続けた場合に何が起きるかは、空き家を放置したときに起きることにまとめました。
⇒ 段階が1つ進むごとに、自分で決められる範囲は減り、増えるのは費用の負担だけです。
認定された空き家で、所有者にできる3つのこと

措置を実施すれば勧告は撤回されます。件数は二本松市の公表値です(出典: 二本松市 特定空家等についてを基に当社作成)
認定を受けた後でも、所有者には直す・壊す・売るという3つの道が残っていて、どれを選ぶかは自分で決められます。措置を実施したことが確認されれば特定空家等ではなくなり、勧告や命令は撤回されます。
1. 直す——措置を実施すれば勧告は撤回される
ガイドラインは、助言・指導、勧告又は命令に係る措置を実施したことが確認された場合、当該建築物等は特定空家等ではなくなるとしています。勧告や命令をしていれば、市町村はそれを撤回します。勧告の撤回とは、勧告がなかった状態に戻す手続のことです。撤回されれば、住宅用地特例の要件を満たす家屋の敷地は特例の適用対象に戻ります(国土交通省・総務省 ガイドライン)。
撤回は実際に起きています。二本松市では令和4年度は認定3件のうち2件、令和5年度は認定2件のうち2件が解除されました(二本松市 特定空家等について)。当社はこの件数を、認定が一方通行ではないことを示す数字だと受け止めています。屋根と塀を直して市へ完了を届け出れば、勧告は撤回されます。
直したあとに状態を保つには、見に行く回数と手間の見込みが要ります。空き家管理に必要な頻度と費用の目安で整理しています。
2. 壊す——除却が求められる場合と、費用が壁になる場合
どんな特定空き家でも解体を命じられるわけではありません。空家法第22条第1項の括弧書きは、保安上危険・衛生上有害の状態にない特定空家等について、助言・指導の対象から建築物の除却を除いています。景観や生活環境の面で認定された家なら、求められるのは修繕、伐採、清掃といった措置です。
倒壊のおそれまで進んだ家では、除却が現実的な選択肢になります。解体費用は構造と広さで変わるため、家の解体料金を目安にしてください。
3. 売る——認定されたままでも所有権はそのまま
空家法の措置は、所有者等に対して必要な措置をとるよう求めるものです。認定そのものが売買を禁じる仕組みではないため、認定を受けた状態でも所有権は所有者に残ります。売るときは、建物の状態を買主に正しく伝えて引き渡します。
引き受けてもらえない、直す費用が出せない——そういう状態の家は、当社にとって珍しい条件ではありません。当社の買取くんは、残置物(家に残った家財や生活用品)を置いたままの現況買取に対応しています。現況買取とは、片付けも修繕もせずに、いまの状態のまま買い取ることです。だからこそ通知が届いた時点を、直すか手放すかを決める期限だと考えています。持ち続けるか手放すかを費用の面から比べたい場合は、空き家活用と売却の分かれ目を参考にしてください。
個別の事情は、お住まいの自治体の担当課や税理士・司法書士へご相談ください。
よくある質問
特定空き家に認定されると、必ず解体しなければなりませんか?
必ずではありません。空家法第22条第1項は、保安上危険・衛生上有害の状態にない特定空家等について、助言・指導の対象から建築物の除却を除いています。求められるのは状態に応じた修繕・伐採・清掃等の措置です。
近所から通報されると、そのまま特定空き家に認定されますか?
相談や情報提供は調査のきっかけであって、認定そのものではありません。市町村が空家法第9条の調査を行い、状態の例に加えて、周辺への影響の程度と危険の切迫性を合わせて判断します。
時々使っている家でも特定空き家になりますか?
まず、空家等に当たるかどうかから判断されます。国の基本指針は、「常態である」とは建築物等が長期間にわたって使用されていない状態をいい、例えば概ね年間を通して使用実績がないことは1つの基準となると示しています(国土交通省・総務省 空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針)。
一度受けた認定や勧告は、申請すれば取り消してもらえますか?
申請によって取り消される仕組みではありません。措置を実施したことが確認されて、市町村が撤回する形になります。ガイドラインは、届出書の写しを返却する等により、特定空家等でなくなったことを所有者に示す運用も挙げています。
買取くん(株式会社リアテクス)では、特定空き家に認定された空き家でも買い取ってもらえますか?
買取の対象です。当社は空き家や訳あり物件の直接買取を専門にしていて、認定や勧告を受けた家も査定します。家財や生活用品を片付けないままの現況買取に対応し、他社で断られた物件も全国でお引き受けしています。まずは所在地と建物の状態をお聞かせください。
まとめ
特定空き家とは、4つの状態のいずれかにあると市町村が認めた空き家で、認定された後も直す・壊す・売るのどれかを選べます。状態の例に当てはまるかは外から見て自分でも確かめられますが、認定するかどうかを決めるのは市町村です。通知が届いたら、まずそれが指導か勧告かを確かめましょう。指導なら勧告を受ける前に、勧告なら書かれた猶予期限までに、直すか手放すかを決めます。
当社の買取くんは、家財を置いたままの状態でも、他社に断られた物件でも全国で買い取っています。直す費用も解体費用も出せないまま期限が近づいている方に向いています。
受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)

