空き家も相続放棄できますが、放棄した時点でその家を現に占有していた人には保存義務が残ります。根拠は2023年4月に施行された改正民法940条で、義務の範囲と終わり方も条文が定めるとおりです。この記事では、義務から解放される方法と、放棄以外に手放す選択肢まで整理しました。
\ 残置物そのままOK・査定無料 /
家財が残ったままの実家でも、現況のまま買取のご相談を承ります。
受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)
空き家は相続放棄できる?

空き家も相続放棄の対象になりますが、空き家だけを選んで手放すことはできません。相続放棄をした人は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされるため(e-Gov法令検索 民法939条、2026年8月時点)、預貯金や有価証券を含めた相続財産のすべてを同時に失います。
相続放棄をすると空き家はどう扱われるのか
相続放棄は、家庭裁判所に申述して初めて効力が生じます(民法938条、2026年8月時点)。親族間で「自分は要らない」と決めただけ、あるいは遺産分割協議で不動産を取得しなかっただけでは相続人のままで、後から債務を引き継ぐ可能性が残ります。
放棄が受理されると、その空き家は次順位の相続人へ移ります。税負担を理由に放棄を考えているなら、課税の仕組みを先に確認しておくと判断がぶれません。空き家の固定資産税を基礎から確認したい方は空き家の固定資産税の全体解説へ。税額が変わる条件と時期は固定資産税が6倍になるのはいつからかで扱っています。共有名義で自分の持分だけを手放したい場合は別の手続きになるため、共有持分の放棄の手続きと注意点をご確認ください。
空き家を相続放棄するメリット・デメリット
| 観点 | 相続放棄した場合 | 相続した場合 |
| 固定資産税・維持費 | 負担しなくなる | 所有し続ける限り発生 |
| 建物の管理・修繕 | 原則として不要(占有していた場合は保存義務あり) | 所有者として継続的に必要 |
| 他の相続財産 | 預貯金・有価証券なども含めてすべて放棄 | 受け取れる |
| 撤回 | 家庭裁判所での受理後は原則できない | — |
| 空き家の売却益 | 受け取れない | 売却できれば現金化できる |
建物に資産価値がなくても土地が売れる立地なら、放棄よりも売却のほうが手元に現金の残る選択です。
相続放棄しても空き家の管理義務は残る?

相続放棄をした人でも、放棄の時点でその空き家を現に占有していた場合は保存義務が残ります。民法940条は「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない」と定めています(e-Gov法令検索 民法940条、2026年8月時点)。
「現に占有している」とはどういう状態か
条文が義務の対象にしているのは、放棄の時点でその不動産を実際に支配下に置いていた人です。親と同居していた実家をそのまま使い続けている、鍵を管理して出入りしている、といった状態が典型にあたります。遠方に住んでいて一度も立ち入らず、鍵も持っていない相続人は、条文の文言上は保存義務を負いません。
義務の内容は「保存」であり、価値を高める修繕や活用まで求められるものではありません。義務が終わるのは、次順位の相続人か相続財産の清算人へ引き渡した時点です。占有に当たるかは実際の関わり方で評価が変わるため、迷う状態なら司法書士や弁護士に事実関係を伝えて確認してください。
2023年4月の民法改正で何が変わったのか
| 観点 | 改正前 | 現行(2023年4月1日〜) |
| 義務を負う人 | 放棄した相続人(占有の有無を問わない書きぶり) | 放棄の時に現に占有している人に限定 |
| 義務の内容 | 「管理」(範囲が不明確) | 「保存」(自己の財産におけるのと同一の注意) |
| 義務の終わり | 相続人となった者が管理を始めることができるまで | 相続人または相続財産の清算人に引き渡すまで |
改正から日が浅く、改正前の説明が残ったままの解説も見かけるため、条文そのものを確認しておく価値があります。保存義務を負う立場で建物を放置した結果、倒壊や外壁の落下が起きれば損害賠償の問題に発展しかねません。管理を怠った場合に何が起きるかは空き家を放置する5つのリスクにまとめました。
要点: 相続放棄後に空き家の保存義務を負うかどうかは、放棄した時点で現に占有していたかどうかで決まり、義務は引渡しによって終わります。
空き家の保存義務から解放されるには?

保存義務から抜けるには、空き家を次順位の相続人か相続財産の清算人へ引き渡す必要があります。民法940条は義務の終期を「引き渡すまでの間」と定めているため、引き受け手へ現実に渡すことが唯一の出口です(民法940条、2026年8月時点)。放棄の受理通知が届いた時点で終わるわけではありません。
次順位の相続人に引き渡す
自分が放棄したことで相続人になる人がいる場合は、その人へ鍵や書類を渡すのが最短の方法です。第一順位の子が全員放棄すれば第二順位の直系尊属へ、直系尊属もいなければ第三順位の兄弟姉妹へと移ります。放棄によってそれまで当事者でなかった親族が突然相続人になるため、受理と同時に連絡と引渡しを済ませると義務が長引きません。
相続財産清算人の選任を申し立てる
引き受ける相続人が誰もいない場合は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てます。相続人全員が相続放棄をして結果として相続する者がいなくなった場合も、この手続きの対象です(裁判所 相続財産清算人の選任、2026年8月時点)。
費用は収入印紙800円分と連絡用の郵便切手、官報公告料5,582円です。加えて、清算人が財産を管理する費用や報酬に不足が出る可能性がある場合、申立人が相当額を予納金として納めることがあります。予納金は財産の内容や作業量で決まるため金額は事案ごとに異なり、申立てができるのも利害関係人と検察官に限られます。自分が申し立てられる立場かも含め、申立先の家庭裁判所に確認してください。
\ 他社で断られた物件も相談可 /
仲介では買い手がつかない築古の空き家も、当社が直接買い取ります。
受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)
相続人全員が相続放棄したら空き家はどうなる?
相続人全員が放棄した空き家は、相続財産清算人が選任されて清算され、残った財産が国庫に帰属します。清算人は債権者への弁済などの清算を行い、清算後に残った財産を国庫へ帰属させます(裁判所の相続財産清算人の選任の案内、2026年8月時点)。特別縁故者への財産分与がなされる場合もあります。
ただし、この流れは自動では始まりません。清算人は申立てがあって初めて選任されるため、誰も申し立てなければ空き家は名義も管理者も定まらないまま残ります。放棄時にその家を現に占有していた人は引渡しまで保存義務を負ったままなので、誰が申立てを担うのかまで親族間で決めておく必要があります。
空き家の相続放棄の手続きと期限は?
相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ行います(裁判所 相続の放棄の申述、2026年8月時点)。起算点は死亡日ではなく、自分が相続人になったと知った日です。
申述先・費用・必要書類
| 項目 | 内容 |
| 申述先 | 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 |
| 期限 | 自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内 |
| 費用 | 収入印紙800円分(申述人1人につき)+連絡用の郵便切手 |
| 共通の必要書類 | 被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本 |
| 追加の必要書類 | 申述人の順位に応じた被相続人等の戸籍・除籍・改製原戸籍謄本 |
郵便切手の金額は裁判所ごとに異なるため、申述先で確認してください。財産の状況を調べても判断材料がそろわない場合は、相続の承認又は放棄の期間の伸長を申し立てることで、家庭裁判所が期間を延ばせます。3か月が迫っているなら、放棄そのものより先にこの申立てを検討する余地があります。放棄せずに引き継ぐ場合は、相続登記の義務が別途生じます(土地の名義変更の手続きと費用)。
相続放棄ができなくなる行為に注意
期限内であっても、相続財産を処分すると単純承認したものとみなされ、放棄が認められなくなります。空き家で起こりやすいのは、家財を売却して代金を受け取る、建物を取り壊す、賃貸に出すといった行為です。遺品整理のつもりの作業が処分と評価される可能性もあり、線引きは個別の事情によります。放棄を検討している段階では現状を動かさず、手を入れる前に司法書士や弁護士へ作業内容を伝えて確認してください。
相続放棄以外に空き家を手放す方法は?

相続土地国庫帰属制度は建物がある土地を申請できないため、空き家が建ったままでは利用できません。相続や遺贈で取得した土地を国に引き取ってもらう仕組みで、2023年4月27日に始まりましたが、建物がある土地は却下事由として明記されています(法務省 相続土地国庫帰属制度の概要、2026年8月時点)。
| 区分 | 件数(2026年6月30日現在の速報値) |
| 申請件数(総数) | 5,698件 |
| 帰属件数(総数) | 2,885件 |
| 却下件数 | 83件 |
| 不承認件数 | 93件 |
| 取下げ件数 | 1,063件 |
数値は法務省 相続土地国庫帰属制度の統計の公表値(2026年7月16日更新)です。これをもとに当社で比率を算出すると、申請総数に対する帰属件数は50.6%、却下と不承認を合わせた176件は3.1%、取下げは18.7%になります。算出は公表された累計の速報値をそのまま分母・分子に用いた単純比率で、申請から審査完了までに時間差があるため、審査の通過率ではなく累計ベースの目安です。却下・不承認で門前払いになる割合は低い一方、申請しても帰属まで到達したのは半数程度という実態が読み取れます。
制度の要件と費用
国が引き取れない土地は、却下事由と不承認事由に分かれます。却下事由は、建物がある土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染されている土地、境界が明らかでない土地の5つです。不承認事由には、管理に過分な費用がかかる崖がある土地や、管理・処分を阻害する有体物が地上や地下にある土地などがあります。
費用は、申請時の審査手数料が土地一筆当たり14,000円で、取下げや却下・不承認でも返還されません。承認後はさらに負担金を納めます。負担金は国有地の種目ごとに管理に要する10年分の標準的な費用を考慮して算定され、納付は承認時の一度のみです。納付期限は通知が到達した日の翌日から30日以内で、期限内に納めないと承認が失効します(法務省 相続土地国庫帰属制度の負担金、2026年8月時点)。金額は土地の種目と区域で変わるため、申請先の法務局で確認してください。
空き家が建ったままでは使えない
空き家を抱えている人にとって最大の関門は、却下事由の1番目にある「建物がある土地」です。制度を使うには先に建物を解体して更地にする必要があり、解体費という先払いの出費が発生します(家の解体料金の相場)。解体費に審査手数料と負担金が加わり、いずれも支出だけが発生する仕組みです。管理し続けるより総額が小さくなるなら合理的ですが、土地に売却の見込みがあるなら、別の出口を先に検討する順序が現実的です。
申請前に引き受け手が見つかることもある
取下げ1,063件のうち562件は、「有効活用の見込みが生じた」ことが理由で、取下げの52.9%にあたります。法務省は具体例として、自治体や国の機関による有効活用の決定、隣接地所有者からの引き受けの申出、農業委員会の調整による農地活用の見込みを挙げています。手放すつもりで動き始めた土地の一定数に、実際には引き受け手が現れているという意味です。
| 出口 | 建物があっても可 | お金の向き | 他の相続財産への影響 |
| 相続放棄 | 可(占有していれば保存義務が残る) | 支出(申述費用・清算人の申立費用) | すべて放棄することになる |
| 相続土地国庫帰属 | 不可(解体して更地にする必要) | 支出(解体費・審査手数料・負担金) | なし |
| 売却・買取 | 可(現況のまま売れる場合がある) | 収入(売却代金) | なし |
売却は3つのうち唯一お金が入る出口で、他の相続財産にも影響しません。築古や傾き、残置物ありといった条件でも買い取れる場合はあるため、価格がつくかを先に確かめてから順番を決めると選択肢が狭まりません。
要点: 国庫帰属制度は建物がある土地では入口に立てず、放棄・国庫帰属・売却のうち手元に現金が残るのは売却だけです。
空き家の相続放棄でよくある質問
Q1. 空き家に住んでいなければ、相続放棄後の管理義務はないのですか。
民法940条が保存義務を課しているのは、放棄の時に相続財産を現に占有していた人です。一度も立ち入らず鍵も管理していなければ、条文の文言上は義務を負いません(民法940条、2026年8月時点)。鍵を預かっている、荷物を置いているといった事情がある場合は専門家に確認してください。
Q2. 相続放棄をしたのに固定資産税の納税通知が届くのはなぜですか。
固定資産税は毎年1月1日時点の登記名義人などに課される仕組みで、放棄の受理と課税台帳の情報は自動的には連動しません。通知が届いた場合は、相続放棄申述受理通知書を添えて市区町村の資産税担当課に相談してください。課税の仕組みは空き家の固定資産税の完全ガイドをあらためて確認するで確認できます。
Q3. 相続放棄の期限3か月を過ぎそうなときはどうすればよいですか。
財産の状況を調査してもなお承認か放棄かを判断する資料が得られない場合は、相続の承認又は放棄の期間の伸長を家庭裁判所に申し立てられます(裁判所の相続の放棄の申述の案内、2026年8月時点)。申立ては期限内に行う必要があります。
Q4. 相続土地国庫帰属制度は空き家が建っていても使えますか。
建物がある土地は却下事由にあたるため、申請できません(法務省の相続土地国庫帰属制度の概要、2026年8月時点)。利用するには先に建物を解体し、更地にしたうえで申請します。解体費と審査手数料14,000円、承認後の負担金がそれぞれ必要です。
まとめ
空き家の相続放棄は、放棄した時点でその家を現に占有していたかどうかで、その後に残るものが変わります。占有していた場合は次順位の相続人か相続財産清算人へ引き渡すまで保存義務が続き、引き受け手がいなければ清算人の選任を申し立てる費用も発生します。放棄以外の出口である相続土地国庫帰属制度は建物がある土地を申請できず、解体費と手数料と負担金を先に負担する仕組みです。一方で国庫帰属の取下げの半数以上は引き受け手が見つかったことが理由でした。3か月の期限が動き出す前に、その空き家に価格がつくかどうかを確かめてください。
\ 査定最短6時間・全国対応 /
大阪府堺市の相続実家を1,200万円で買い取った実績があります。
受付時間 10:00〜19:00(水・日曜定休)
この記事の監修者

鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)
宅地建物取引士/賃貸経営管理士/FP2級
一棟投資物件専門の仲介会社で不動産業界に参入後、前職では「訳あり・瑕疵物件」に特化したコンサルティングプログラム責任者として600名以上の投資家の購入から売却までに携わる。自身も再建築不可物件を中心に訳あり物件へ投資し、転売売買から保有物件まで数々の実績を持つ。