不動産買取の基礎知識

相続土地国庫帰属制度とは?使えない土地の要件と申請の流れ

住宅模型を使ってミーティングをする男女(相続・登記に関する記事のイメージ)

「親から継いだ田んぼ、国が引き取ってくれるって本当ですか」 「家が建ったままの実家でも、お願いできるものなんでしょうか」

相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国が引き取る制度で、建物が建っていない土地だけが申請できます。申請5,863件中3,008件が国のものに。入口で外れる条件もあります。要件と流れ、実績、使えないときの出口まで見通せます。

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相続土地国庫帰属制度とは?相続した土地を手放す4つの出口の中での位置づけ

制度の対象・却下と不承認の要件数・費用14,000円と20万円・申請5,863件中3,008件を1枚にまとめた全体像の図解

建物の有無で進む道が分かれます(出典: 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」「同 統計」を基に当社作成)

相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き取ってもらう制度で、手放す4つの出口のうち「国に返す」にあたります。始まったのは令和5年4月27日ですが、それより前に相続した土地も対象で、法務省は数十年前に相続した土地も使えると示しています。

相続した土地を手放したいとき、選べる道は4つあります。どれが自分に合うかは、建物が残っているか、境界がはっきりしているか、相続人が何人いるか、いつまでに手放したいか——この4点で変わってきます。まずは全体の地図から見ていきましょう。

相続した土地を手放す4つの出口

出口向く状況このガイドでの読み進め先
国に引き取ってもらう(この制度)建物が建っておらず、境界の争いもない土地「国が引き取れない土地の要件」「申請から国庫帰属までの流れ」
相続放棄する土地だけでなく、相続そのものを受けないと決められる場合「建物が残る空き家や共有の土地はどうする?」
売る・買い取ってもらう建物が残る、境界が未確定、共有で同意が取りにくい土地「建物が残る空き家や共有の土地はどうする?」
持ち続ける貸す・使うなど、活用の見込みがある場合毎年の維持費と活用の見込みを並べて判断

この制度が生まれた背景には、持ち主の分からない土地が全国で増えてきたという事情があります。相続した土地を手放す受け皿がなかったため、登記もされないまま放置される土地が積み上がってきました。⇒ 国が引き取る窓口を作って、持ち主の分からない土地がこれ以上増えないようにするのがねらいです。

申請できるのは誰か(相続で取得した人・共有なら全員で)

申請できるのは、相続または相続人への遺贈で土地を取得した方に限られます。自分で売買して買った土地や、法人が持っている土地は基本的に使えません。

たとえば、何十年も前に親から相続した田を、名義だけそのままにしている場合。制度が始まる前の相続でも対象になりますので、「古い相続だから無理だろう」と諦める必要はありません。

では、きょうだいで分け合っている土地はどうでしょうか。共有持分(1つの土地を複数人で持つときの、一人ひとりの取り分のこと)を相続で取得した方がいる土地なら、共有者の全員が共同で申請することで利用できます。裏を返せば、1人でも申請に加わらない方がいると、そこで止まります。

国が引き取れない土地の要件(申請で却下される5つ・審査で不承認になる5つ)

却下85件の最多は添付書類の不足37件、境界不明23件と続き、建物がある土地は4件にとどまる内訳の図

土地の性質より書類と境界でつまずいています。地目は宅地に限りません(出典: 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」を基に当社作成)

国が引き取れるのは、建物が建っておらず、境界の争いがなく、管理に手がかからない土地です。宅地に限った制度ではなく、田や畑、山林も申請できます。外れるかどうかは地目ではなく、建物の有無や境界といった土地の状態で決まります。

地目(登記に記録された土地の区分で、宅地・田・畑・山林などの別のこと)は、毎年届く固定資産税の納税通知書や登記事項証明書で確かめられます。国のものになった土地も、農用地964件・森林199件と宅地以外が多く含まれます(法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」)。田畑や山林だから門前払い、ということはありません。

要件は二段構えです。申請を受け付けてもらえない「却下」と、審査で落ちる「不承認」に分かれます。

申請の入口で却下される5つの土地

次の5つに当てはまる土地は、申請しても受け付けてもらえません(法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)。

  1. 建物がある土地
  2. 担保権や使用収益権が設定されている土地
  3. 他人の利用が予定されている土地
  4. 土壌汚染されている土地
  5. 境界が明らかでない土地・所有権に争いがある土地

落ちている理由を見ると景色が変わります。却下された土地の理由で最も多いのは、添付書類の提出がなかったもので37件。次いで境界が明らかでない土地23件、現に通路として使われている土地22件と続きます。申請権限のない方の申請は10件、建物がある土地は4件でした(法務省の統計)。

入口でつまずいた方の多くは、土地の性質ではなく書類と境界でつまずいています。⇒ 解体を考える前に、境界と書類がそろうかを先に確かめてください。

審査で不承認になる5つの土地

受け付けられても、審査で引き取ってもらえないことがあります。次の5つです。

  1. 勾配30度以上・高さ5メートル以上の崖で、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  2. 管理や処分を阻害する工作物・車両・樹木などが地上にある土地
  3. 除去しなければ管理・処分ができない物が地下にある土地
  4. 隣接地の所有者などと争わなければ管理・処分ができない土地
  5. その他、通常の管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地

不承認96件の理由で最も多いのは、地上に有体物がある土地の46件。次いで国による追加の整備が必要な森林37件、災害の危険を防ぐ措置が必要な土地11件です(法務省の統計)。

読み替えると、物置や古い車、伸びきった樹木が残っているだけで引っかかることがあるということです。地目によって通りやすさも負担金の額も変わります。

制度を使うといくらかかるのか(審査手数料と負担金の全体像)

出ていくお金は申請時の審査手数料と、承認された後に納める負担金の2回に分かれます。1回目の審査手数料は土地1筆あたり14,000円で、取り下げても却下・不承認でも戻ってきません(法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)。2回目の負担金は、原則として1筆ごとに20万円が基本です(法務省「相続土地国庫帰属制度に関する相談」)。

ここで出てくる「筆(ふで)」は、登記の上での土地の数え方です。見た目がひと続きの土地でも、登記簿の上で2筆に分かれていれば審査手数料も2つ分になります。

大事なのは、お金を払う順番と所有権が移るタイミングです。負担金を納めた時点で、土地の所有権が国に移ります。裏を返せば、承認の通知が届いてから負担金を納めるまでは、まだ自分の土地ということです。

負担金の額は、土地の種類と場所、面積で変わります。市街化区域の宅地や、農用地区域の田・畑、森林は面積に応じた計算式に移るため、20万円で収まらないこともあります。地目ごとの実額と計算方法は国庫帰属にかかる費用と負担金の内訳で詳しく解説していますので、自分の土地でいくらになるかはそちらで確かめてください。

申請から国庫帰属までの流れと、必要書類・審査期間・提出先

申請は土地がある都道府県の法務局本局へ出し、審査には約半年から1年ほどかかります(日本司法書士会連合会)。支局や出張所では受け付けてもらえません。申請書を出す前に、法務局での事前相談から始めるのが基本の流れです。

相談から国庫帰属までの5ステップと、そろえる書類

  1. 法務局へ事前相談:申請できそうかの見通しを立てる
  2. 申請書の提出と審査手数料の納付:収入印紙で納める
  3. 書類審査・現地調査:資料確認と実地調査が入る
  4. 承認と負担金の通知:納入告知書が届く
  5. 負担金の納付:納めた時点で所有権が国に移る

付ける書類は次の4点です(法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)。

  • 土地の位置と範囲を明らかにする図面
  • 隣接地との境界点の写真
  • 土地の形状の写真
  • 申請者の印鑑証明書

気をつけたいのが負担金の期限です。通知が到達した日の翌日から30日以内に納めないと承認そのものが失効し、もう一度申請し直すことになります(法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」)。

司法書士や弁護士に申請書類の作成は頼めますが、代理人による申請は認められておらず、提出は本人か法定代理人が行います。

名義の問題もあります。亡くなった方の名義のままでは進みませんので、先に相続登記が必要です。相続登記の義務化とは、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に登記を申請しなければならない決まりのこと。詳しくは土地の名義変更(相続登記)の進め方にまとめています。

相談はどこへ、どう申し込むのか

相談先は法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門で、支局・出張所では受け付けていません。土地が遠方なら、近くの本局でも相談できます(法務省「相続土地国庫帰属制度に関する相談」)。

たとえば東京にお住まいで、青森にある相続した田の相談をしたい場合。申請書を出す先は青森県内の本局ですが、相談だけなら東京法務局の本局で受けられます。

相談枠は予約制で、一人1日1回・30分。対面・電話・ウェブから選べます。持ち物は相談票とチェックシート、登記事項証明書、公図、土地の現況が分かる写真、固定資産税の納税通知書など。

ただし、相談担当者の見解は承認を保証するものではありません。実際の審査は資料確認と実地調査を経て判断されるため、結果が違うこともあります。⇒ 相談は合否の判定ではなく、手数料を払う前に見通しを立てる場です。

⇒ 出す先は本局だけ。相談は予約制で30分。負担金は通知から30日以内です。

実績から見る「自分の土地は通るのか」(申請5,863件の行き先)

申請5,863件の行き先と、取下げ1,102件を通らなかった573件と別の出口が決まった571件に読み替えた図

審査を待たずに別の引き受け手が決まった件数がほぼ同数あります(出典: 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」速報値を基に当社作成)

これまでに5,863件の申請があり、3,008件の土地が実際に国のものになっています。却下は85件、不承認は96件で、審査で落ちた数そのものは多くありません。むしろ目を引くのは、取り下げられた1,102件という数字です(法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」)。

申請5,863件の行き先

区分件数中身
国のものになった(帰属)3,008件所有権が国へ移った
却下85件入口で受け付けられなかった
不承認96件審査で引き取られなかった
取下げ1,102件申請した側が取り下げた

データ出典: 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(速報値)。合計が申請件数と合わないのは、審査中のものが含まれるためです。

承認率という一つの比率だけでは、この制度の通りやすさは測れません。取下げの中身を開くと景色が変わります。取下げ1,102件の理由は、有効活用の見込みが生じたもの571件、却下・不承認と判明したもの392件、その他139件。審査で落ちた181件に、通らないと分かって取り下げた392件を足すと573件。これが結局は通らなかった側です。一方、別の引き受け手や活用先が決まって取り下げた方が571件と、ほぼ同数います。

有効活用の見込みとは、たとえば自治体や国の機関の活用が決まった場合です。隣接地の所有者から引き受けの申出があった、農業委員会の調整で農地として活用される見込みになった、といったケースも含みます。当社はこの571件を、申請を通さなくても手放せた土地だと読んでいます。

⇒ 審査手数料を払う前に、隣の土地の所有者・自治体の窓口・買取という3つを先に当たる。この順番なら、半年から1年の審査を待たずに決着する道が残ります。

出す地目と通る地目のずれ

地目申請された件数国のものになった件数
田・畑(帰属の区分は農用地)2,278件964件
宅地2,040件1,115件
山林(帰属の区分は森林)893件199件

データ出典: 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」。申請と帰属で区分の呼び方が異なるため、対応づけて並べています。

出す人が多いのは田・畑なのに、通っている数の最多は宅地です。特に山林は893件出て199件という開き。不承認理由に「国による追加の整備が必要な森林」が37件あったことと重ねると、手を入れずに引き渡せる状態かが分かれ目だと読めます。田畑や山林なら、申請書を書く前に相談枠で見通しを確かめてください。

⇒ 取り下げた1,102件のうち571件は、審査を待たずに別の活用先が決まっています。

建物が残る空き家や共有の土地はどうする?(相続放棄・売却との使い分け)

建物の有無と境界・共有・期限で国庫帰属、解体して申請、現況買取、相続放棄や保有に分かれる判断フロー図

解体費+審査手数料14,000円+負担金20万円と、現況で売れる金額を並べて選びます(法務省の公表要件と当社の買取実務を基に当社作成)

建物が残る土地は申請の入口で外れるので、解体して出す・建物ごと売る・相続放棄する・持ち続けるの4つから選びます。どれを選ぶかは、解体にお金をかけられるか、いつまでに手放したいか、相続人が何人いるかで決まります。

建物が残る土地は、壊してから出すか、建物ごと手放すか

却下事由の1つ目に挙がるのが「建物がある土地」です。古家付きの実家をそのまま引き取ってもらうことはできず、解体して土地だけにするのが原則です。残置物(家具や家電など、家に残されたままの物)の処分費も、解体より前に出ていきます(家の解体にかかる料金の目安)。

ここでお金の向きを比べてみてください。解体して制度を使う道では、解体費に加えて審査手数料14,000円と負担金20万円が出ていきます(1筆・負担金が基本額の場合)。土地は手放せても、手元に入るお金はありません。建物を残したまま売る道なら、金額の大小はあってもお金が入ってくる向きになります。

つまり、建物があるかどうかで入口が決まります。解体費を払ってまで制度を使うかは、そのまま売れる見込み次第。⇒ 解体費+審査手数料+負担金の合計と、現況のまま売れる金額を並べてから決めてください。

4つの出口の分岐と、次に取る行動

出口こんなときに選ぶ次に取る行動
国に引き取ってもらう建物がなく、境界の争いもない法務局の本局に相談枠を予約する
相続放棄する相続そのものを受けないと決められる期限内に家庭裁判所へ申述する
売る・買い取ってもらう建物が残る・境界が未確定・共有で同意が取りにくい売れる金額を確かめる
持ち続ける貸す・使うなど活用の見込みがある毎年の維持費と見込みを並べる

相続放棄は、いらない土地だけを選んで手放せる手続きではありません。プラスの財産も含めて相続そのものを受けない選択になり、放棄した後も管理の責任が残る場合があります(空き家の相続放棄と放棄後に残る管理義務)。売る道なら、まず金額を確かめるところから。現況買取とは、家財が残ったまま、修繕もしない状態で不動産会社が直接買い取る方法のことです(実家の売却を始めるときの流れ)。

そしてもうひとつ、きょうだいで相続した土地。共有の土地は共有者の全員がそろって申請する必要があり、1人でも「自分は関わらない」となれば、そこで制度の道は閉じます。全員の同意が取れない、現金で分けたい——そんなときの選択肢が、売って代金を分ける方法です。

この方法では、まず遺産分割協議で「売って分けること」と分配の割合を決め、相続登記で名義を移してから売却に進みます。亡くなった方の名義のままでは売買契約に進めませんので、登記が先です。名義のまとめ方や税の分担は、協議書の書き方で変わります。書き方によっては贈与税の話に飛び火することもありますので、手順と協議書に書く項目は換価分割で売って現金を分ける方法で確認し、税の扱いはご自身の事情に合わせて税理士にご確認ください。売れなかったときの取り決めも、協議の段階で先に入れておきましょう。

国庫帰属が使えない土地を確実に手放すなら買取くんへ!

建物が残る土地や共有で止まっている土地でも、当社は現況のまま直接の買主として査定します。制度・相続放棄・売却のどれを選ぶかは、建物の有無、境界、相続人の数、そしていつまでに手放したいか——この4つで決まります。

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相続土地国庫帰属制度のよくある質問

相続土地国庫帰属制度はいつから始まった制度ですか

令和5年4月27日に始まりました。制度が始まる前に相続した土地も対象ですので、開始日より後の相続に限られるわけではありません。

建物が建っている空き家の土地でも申請できますか

建物がある土地は却下事由の1つ目に挙げられており、そのままでは申請できません。解体して土地だけにすれば申請できますが、解体費に加えて審査手数料と負担金が出ていきます。建物ごと手放す道と金額を並べてから決めてください。

申請してから承認されるまでどれくらいかかりますか

審査に要する期間は約半年から1年程度が想定されています(日本司法書士会連合会)。書類審査のほかに現地調査が入るためです。期限のある事情をお持ちなら、この期間を見込んで動く必要があります。

相続してから何年も経った土地でも申請できますか

できます。制度が始まった令和5年4月27日より前に相続した土地も対象で、数十年前の相続でも申請できます。ただし名義が亡くなった方のままなら、先に相続登記を済ませる必要があります。

買取くん(株式会社リアテクス)は、建物が残ったままの土地でも査定を受け付けていますか

受け付けています。当社は家財や生活用品が残ったままの現況で買い取っており、解体や片付けを済ませてからでなくても構いません。

まとめ

相続土地国庫帰属制度は、建物がなく境界がはっきりした土地なら、国に引き取ってもらえる制度です。建物が建っておらず境界が明確なら、宅地でも田・畑・山林でも申請できます。反対に、建物が残る土地、境界に争いがある土地、共有で全員の同意が取れない土地は、入口の段階で外れます。審査手数料を払う前に、法務局の相談枠で見通しを確かめるか、現況のまま売れる金額を確かめてください。

当社の買取くんは全国対応で、建物や家財が残ったままの土地も、直接の買主として査定します。半年から1年の審査を待てない方や、解体費をかけずに手放したい方に向いた出口です。

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監修

株式会社リアテクス 執行役員 鶴野博之

鶴野 博之

株式会社リアテクス 執行役員

宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸経営管理士/FP2級

一棟投資物件専門の仲介会社で不動産業界に参入後、前職では「訳あり・瑕疵物件」に特化したコンサルティングプログラム責任者として600名以上の投資家の購入から売却までに携わる。自身も再建築不可物件を中心に訳あり物件へ投資し、転売売買から保有物件まで数々の実績を持つ。