古家付き土地のトラブルはなぜ起きる?売主が契約前に防ぐ5つの型

空き家買取

丸型の境界点プレート(土地に関する記事のイメージ)

古家付き土地のトラブルは、建物の劣化ではなく、境界・地中・引き渡し範囲・告知が契約時に確定していないことから起きます。当社は東京都北区で築50年超・傾きのある家が建った土地を、解体も修繕もせず4,400万円で買い取った実績があります(買取くん)。売主が契約前に防げる5つの型に分けて整理します。

古家付き土地のトラブルは、なぜ建物の古さと関係なく起きるのか?

境界標の位置・地中の埋設物・引き渡し範囲・売主だけが知る不具合という4つの記録の有無がトラブルの火種になることを整理した図解
確認すべきは傷み具合ではなく、この4点の資料が手元に残っているか(当社の買取実務での整理に基づく)

古家付き土地のトラブルは、境界・地中・引き渡し範囲・告知の4点が契約時に確定していないことから起きます。古家付き土地とは、建物にほとんど価値が付かず、土地の価格を中心に売買される物件です。築年数が古いほど、この4点の記録が手元に残っていない確率が上がります。

火種になるのは屋根や柱の傷みではありません。境界標の位置が分からない、地中に何が埋まっているか誰も知らない、どこまで片付けて渡すか決めていない、売主だけが知る不具合を伝えていない——この4つです。建物の状態とは別の問題なので、築浅でも記録がなければ同じことが起きます。

逆に言えば、4点とも契約前に手を打てます。古家付き土地のトラブルは、古さの問題ではなく情報の問題です。確認すべきは傷み具合ではなく、この4点の資料が手元に残っているかどうかです。売りにくい家の前提知識はボロ家・売りにくい家の手放し方ガイドにまとめています。

古家付き土地の売買で起きるトラブルは、どんな5つの型に分かれるのか?

5つのトラブル型を表面化する時期と契約前に確定できるかの2軸に配置し、確定できないのは地中埋設物1つだけと示したポジショニング図
右下に外れる③地中埋設物だけが契約前に確定できない(当社の買取実務における紛争類型の分類に基づく)

古家付き土地のトラブルは、契約不適合・境界・地中埋設物・引き渡し範囲・解体時期という5つの型に分かれます。共通するのは、どれも引き渡し前なら確定できたのに、確定しないまま契約が進んだ点です。表面化する時期と売主に残る責任は型ごとに違います。

表面化するタイミング 売主に残るリスク 契約前に確定できるか
①契約不適合 引き渡し後 修補費用・減額・損害賠償・解除 ○(調査と告知)
②境界・越境 契約後〜決済前 決済日の延期・白紙解約 ○(測量・筆界特定)
③地中埋設物 解体後・着工後 撤去費用の追加負担 △(解体しないと不明)
④引き渡し範囲 引き渡し前後 処分費用の負担・引き渡し拒否 ○(契約書に明記)
⑤解体の着工時期 契約後〜決済前 引き渡し日の変更・違約金 ○(工程の逆算)

データ出典: 当社の買取実務における紛争類型の分類に基づく(2026年8月時点)

雨漏り・シロアリ・給排水——契約不適合責任を問われる型

引き渡し後に不具合が見つかり、買主から修補や減額を請求される型です。民法は、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないときに追完を請求できると定めています(e-Gov法令検索 民法562条)。

判定軸は建物の古さではなく契約書の内容との一致です。築50年でも雨漏りを契約書に書いて売れば不適合になりません。逆に築浅でも、伝えていない不具合があれば責任を問われます。売主がやるべきは建物を直すことではなく、知っている不具合を書き出すことです。

境界標が見つからない——引き渡し自体が止まる型

境界標が地中に埋もれていたり、設置の記録が残っていなかったりする型です。塀や生垣が隣地にはみ出している場合も含みます。境界が確定しないと確定測量図が作れず、決済日そのものが動きます

当社が扱う築古の土地でも、分筆当時の資料をそのまま引き継いでいて現況と図面がずれている例は珍しくありません。隣地の所有者が高齢、名義が相続で分かれている、遠方で連絡が付かない——こうした事情が重なると、立会いを取り付けるだけで数か月かかることもあります。

地中埋設物——解体して初めて出てくる型

旧建物の基礎、浄化槽、井戸、埋め戻されたコンクリートガラなどが解体の途中で出てくる型です。撤去費用は当初の見積もりに入っておらず、誰が負担するかで揉めます。

ここには逆説があります。更地にしてから売ると、売主のリスクはむしろ増えます。現況で引き渡せば、地中の状態が判明するのは買主の解体時であり、契約で扱いを決めておく余地が残るためです。先に解体した場合は、出てきたものを売主の負担で処理してからの引き渡しとなり、費用の見込みも立てにくくなります。費用の目安は家の解体にかかる費用の目安で扱っています。

「現況有姿」の解釈ズレ——残置物・庭木で揉める型

契約書に「現況有姿」と書いたのに、買主は家具や庭木の撤去を当然と考えていた、という型です。この言葉はどこまでを今の状態と呼ぶかを定義していません。当社が大阪府堺市で相続した実家を買い取ったときは、生活用品を残したまま1,200万円で成立しました。残置物の扱いを査定の前提として先に決めていたからです。仲介でも同じで、残す物と撤去する物を契約書に列挙すればこの型は起きません。

解体の着工時期——決済に間に合わない型

更地渡しを条件にしたのに、解体の着工が遅れて引き渡し日に間に合わない型です。費用の負担ではなく日程の問題として起きます。解体には近隣説明、行政への届出、廃棄物の搬出計画が挟まり、繁忙期は着工まで1か月以上待つこともあります。更地渡しの契約を結ぶ前に届出から完了までの日数を逆算しないと、違約金の話になります

要点: 5つの型のうち4つは契約前に確定できます。確定しきれない③地中埋設物こそ、更地にせず現況のまま扱ったほうが売主のリスクは小さくなります。

契約不適合責任の免責特約を付ければ、売主は本当に安全なのか?

不具合を知っていたか・契約書や告知書に書いたかの2つの分岐で免責特約が効くかどうかが決まる判定フロー図
知りながら告げなかった事実にだけ免責が効かない(出典: e-Gov法令検索 民法572条・566条)

免責特約を結んでも、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れられません(e-Gov法令検索 民法572条)。免責特約とは、引き渡し後に見つかった不具合について売主が責任を負わないと定める契約条項です。売主にとっては、黙っていることが最大のリスクになります

免責特約で免れられるもの 免責特約でも免れられないもの
売主も知らなかった構造部分の劣化 売主が知りながら告げなかった事実
引き渡し後に自然に生じた不具合 売主が第三者のために設定した権利
契約書に明記した既知の不具合 売主が第三者に譲り渡した権利

データ出典: e-Gov法令検索 民法572条(2026年8月時点)

この条文があるため、当社は免責特約を「書けば守られる盾」ではなく「告知を尽くした人だけが使える盾」と考えています。不利に見える情報ほど書面に残したほうが売主を守ります。免責の文言を強くするより、告知書の記入欄を埋めきるほうが効きます。

期間にも決まりがあります。買主が不適合を知った時から1年以内に通知しなければ、追完や減額を請求できません(民法566条)。ただし売主が引き渡し時にその不適合を知っていた場合、この期間制限は適用されません。免責条項の書き方は空き家売却で注意したい契約のポイントで扱っています。

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買主は古家付き土地の何を警戒しているのか?

買主が古家付き土地で警戒するのは、解体費用・境界・再建築の可否・住宅ローンの担保評価の4点です。この4点はそのまま値引き交渉と契約解除の理由になります。売主が先に材料を揃えると、交渉は価格の削り合いではなく条件の調整に変わります。

買主が警戒すること 交渉で出てくる要求 売主が先に用意できる材料
解体費用が読めない 解体費相当の値引き 解体業者の見積書
境界があいまい 確定測量の条件化 確定測量図または筆界特定の申請状況
建て替え可否が不明 再建築不可なら白紙解約 前面道路の幅員と接道状況の調査結果
住宅ローンが不安 ローン特約付きの契約 登記事項証明書・公図

データ出典: 当社の交渉実務における分類(2026年8月時点)

買主向けの解説と売主向けの解説は別々に書かれていることが多く、当社が検索上位の解説記事を確認した範囲では、買主の警戒点を売主の交渉材料へ翻訳した情報は見当たりませんでした。買主が何を心配しているかを知れば、売主は先回りできます。交渉を受けてから慌てるのではなく、上表の右列を契約前に揃えておくことが主導権につながります。買い手の母数が少ない立地では、この4点がそのまま価格へ跳ね返る点にも注意が必要です。地域差は田舎の家が売れない理由と手放し方、買取業者との取引で起きやすい揉め事は不動産買取で起きやすいトラブルで扱っています。

売主が契約前に打てる手当ては何か?

解体の着工日から逆算し、石綿は作業開始14日前・分別解体は着手7日前に発注者が届け出る義務を示したタイムライン図
解体を発注すると届出義務者は業者ではなく売主本人になる(出典: 環境省・厚生労働省・法務省の各制度資料を基に当社作成)

売主が契約前に打てる手当ては、境界を公的に確定させることと、解体を発注するかを義務ごと理解して決めることの2つです。境界は隣地が立会いに応じなくても筆界特定制度で進められます。解体は発注した時点で、売主自身が行政への届出義務者になります。

隣地が立会いに応じないときはどうするか?

測量を頼んでも、隣地の所有者が立会いに応じなければ確定測量図は作れません。この行き止まりを抜ける公的な手段が筆界特定制度です。法務省によれば、土地の所有者として登記されている人などの申請に基づき、筆界特定登記官が外部専門家の筆界調査委員の意見を踏まえて現地の筆界の位置を特定する制度で、新たに筆界を決めるのではなく、もともとあった筆界を明らかにする手続きです(2026年8月時点)。

値打ちは、隣人同士で裁判をしなくても公的な判断として筆界を示せる点にあります。ただし法務省は、所有権がどこまであるかを特定する制度ではないこと、結果に納得できないときは後から裁判で争えることも明記しています。揉めているのが「線の位置」か「所有権の帰属」かを見分けてから検討し、個別の事情は土地家屋調査士や司法書士にご相談ください。

解体を発注すると、売主自身に何の義務が生まれるのか?

「更地にすれば楽に売れる」という判断には副作用があります。解体を発注した瞬間から、売主は工事の当事者です。環境省によれば、建設リサイクル法は床面積80m2以上の解体を対象とし、工事着手の7日前までに発注者から都道府県知事へ分別解体等の計画等を届け出ることを義務付けています。届け出るのは業者ではなく発注者です。

石綿(アスベスト)が絡むと義務はさらに増えます。厚生労働省は、吹付け石綿や石綿含有断熱材・保温材・耐火被覆材等が使われた建築物等の解体・改修工事について、作業開始の日の14日前までに発注者が地方公共団体へ特定粉じん排出等作業実施届出書を提出すると定めています。発注者にはこのほか、設計図書などの情報提供、事前調査費と除去工事費の適正な負担、法令を守れる工期・作業方法での発注も義務です。石綿は2006年9月から製造・輸入・使用等が禁止されており、それ以前の建物には使われている可能性が残ります。事前調査自体は規模を問わず必要で、建築物は2023年10月から有資格者による調査が求められます(2026年8月時点)。

比較軸 現況のまま売る 解体して更地で売る
行政への届出 不要 発注者として2種類(着工7日前・作業開始14日前)
費用の先出し なし 解体費・事前調査費・石綿除去費を先に負担
地中埋設物 買主の解体時に判明(契約で扱いを決められる) 売主の負担で処理後に引き渡し
引き渡しまでの日数 短い 届出・調査・工事の日数が上乗せ
残る不確定情報 地中・建物内部 ほぼ解消するが費用確定は着工後

データ出典: 環境省・厚生労働省・法務省の各制度資料を横断し、売主の負担軸で当社が整理(2026年8月時点)

要点: 更地にすると不確定情報は減りますが、その代わりに届出義務と費用の先出しが売主へ移ります。どちらを選ぶかの判断軸は現況のまま売るか更地にするかの選び方にまとめました。

確定できないまま手放す選択肢はあるのか?

境界も地中も確定させられない場合は、確定を前提にしない買い手へ現況のまま引き渡す方法が残ります。確定作業は、売却前に費用と時間を先に出す構造です。売れる保証のないまま先払いする判断になるため、当社はこの不確定さを、価格を削る理由ではなく引き受ける範囲として扱っています。

冒頭の東京都北区の物件は、築50年を超えて建物が傾き、借地人の退去後という条件でした。それでも解体も修繕も前提にせず、現況のまま4,400万円で買い取っています。確定できない情報があるほど仲介では買い手が付きにくくなりますが、その部分を引き受ける買い手であれば取引は成立します

こう判断する理由は出口にあります。当社の買取くんは購入意欲の高い不動産投資家とつながっており、境界や地中の不確定さを前提に採算を組める買い手へ引き渡せます。選択は「確定させてから売る」か「確定させずに引き受けてもらう」かの2択で、確定作業に数十万円と数か月をかける前に後者で成立するかを確かめる順番が合理的です。田舎の物件は田舎の空き家を処分する現実的な方法を参照してください。

よくある質問

境界標が見つからないとき、売主はどこまで調べる必要がありますか?

公図と地積測量図を法務局で取得し、境界標が現地に残っていないかを土地家屋調査士と確認します。立会いが取れれば確定測量、取れなければ筆界特定制度の申請という順序です。同制度は所有権の範囲を決めないため、越境物は隣地との覚書で別に整理します。

契約書に「現況有姿」と書けば、残置物を残したまま引き渡してよいのですか?

この記載だけでは足りません。現況有姿は家具・家電・庭木・物置のどれを残してよいかを定義しないためです。残す物と撤去する物を品目単位で契約書に列挙し、買主の同意を取れば解釈のずれは起きません。

解体前のアスベスト調査は誰が手配し、誰が費用を負担するのですか?

調査を実施して行政へ報告するのは工事の元請業者で、費用は発注者が負担します。厚生労働省は、事前調査費と石綿が使われていた場合の除去工事費を発注者が適正に負担することを義務としています。見積書に事前調査費が入っているかを契約前に確認してください。

引き渡し後、買主からいつまで責任を問われる可能性がありますか?

民法566条は、買主が不適合を知った時から1年以内に通知しなければ、追完・減額・損害賠償・解除を請求できないと定めています。起算点は引き渡し日ではなく買主が気づいた日です。ただし売主が引き渡し時にその不適合を知っていた場合、期間制限は適用されません。個別の契約条件による違いは、契約書を持参のうえ司法書士や弁護士にご確認ください。

売りにくい家ガイドで全体像を再確認すると、ここまでの5つの型が売却全体のどこに位置するかを整理できます。

まとめ

古家付き土地のトラブルは、建物の古さではなく、境界・地中・引き渡し範囲・告知が確定していないことから起きます。免責特約は万能ではなく、知りながら告げなかった事実には効きません。売主の打ち手は、確定できる4点を契約前に確定させるか、確定できないまま引き受ける買い手を選ぶかの2つです。どちらが合うかは、確定作業の費用と時間を先に出せるかどうかで決まります。

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この記事の監修者

株式会社リアテクス 執行役員 鶴野博之

鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)

宅地建物取引士/賃貸経営管理士/FP2級

一棟投資物件専門の仲介会社で不動産業界に参入後、前職では「訳あり・瑕疵物件」に特化したコンサルティングプログラム責任者として600名以上の投資家の購入から売却までに携わる。自身も再建築不可物件を中心に訳あり物件へ投資し、転売売買から保有物件まで数々の実績を持つ。

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