市街化調整区域の売却|売れる物件の条件と3つの売り方

空き家買取

測量機器と現場(土地に関する記事のイメージ)

市街化調整区域にある土地や家も、売却そのものはできます。売買や名義変更に行政の許可は必要なく、価格と売りやすさを分けるのは立地よりも「建物を建てられるかどうか」です。売れる物件を見分ける3つの確認軸と、条件別の売り方を整理します。

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市街化調整区域の不動産は売却できる?

売買契約・名義変更に許可は不要、新築や用途変更には都市計画法43条の許可が必要と整理した図
売買と建築で許可の要否が分かれる(出典: 都市計画法第7条第3項・第29条・第43条)

市街化調整区域にある土地や家も、売買そのものに行政の許可は必要なく、売却すること自体は可能です。市街化調整区域とは、都市計画法第7条第3項で「市街化を抑制すべき区域」と定められた区域を指します(2026年8月時点)。制限がかかるのは所有権の移転ではなく、その土地で建物を建てたり用途を変えたりする行為のほうです。

都市計画区域は「市街化区域」「市街化調整区域」、区域区分を定めていない「非線引き区域」の3つに分かれます。売買は自由にでき、制限がかかるのは建築のほうです

区分 位置づけ 建築の扱い
市街化区域 すでに市街地、または10年以内に市街化を図る区域 用途地域のルール内で建てられる
市街化調整区域 市街化を抑制すべき区域 原則として開発許可・建築許可が必要
非線引き区域 区域区分を定めていない都市計画区域 一定規模以上の開発で許可が必要

つまり売却の可否は二択ではなく、買い手がその土地で何をできるかの幅で決まります。

なぜ「市街化調整区域は売れない」と言われるのか?

都市計画区域の総面積5,215,080haのうち市街化調整区域が約72%を占めることを示した面積構成図
面積は多数派でも買い手は市街化区域に集中する(出典: 国土交通省 令和7年都市計画現況調査を基に当社算出)

売れにくい主因は建築制限です。市街化調整区域では、開発許可や建築許可がないと建て替えができません。都市計画法第29条は開発行為に都道府県知事等の許可を求め、第43条は開発許可を受けた区域以外での新築・改築・用途変更にも許可を求めています。

建て替えに許可がいる

建物の新築・改築や用途の変更には、原則として都道府県知事等の許可が要ります(都市計画法第43条第1項)。許可基準は開発許可の基準に準じて政令で定められており、申請すれば通るものではありません。買い手は「今ある建物を使い続ける」前提でしか検討できず、建て替え前提の一般の住宅購入者は検討から外れます

なお、道路に接していないため建て替えられない「再建築不可」は接道義務による別の制限で、詳しくは再建築不可物件の完全ガイドで確認できます。

買い手の住宅ローンが通りにくい

建て替えや増改築に許可が要る土地は、金融機関から見ると担保として評価しにくくなります。そのため住宅ローンの審査で不利になりやすく、買い手は現金や自己資金比率の高い層に絞られがちです。取扱いは金融機関ごとに違うため、可否は購入検討者に直接確認してもらう前提で進めます。

買い手の母数が構造的に少ない

国土交通省の令和7年都市計画現況調査によると、区域区分が定められた都市計画区域の総面積5,215,080haのうち、市街化調整区域は3,758,731ha、割合にすると約72%です(国土交通省 令和7年都市計画現況調査の集計表(PDF)の公式値を基に当社算出、令和7年3月31日現在)。一方、市街化区域には約8,881万人(88,806.2千人)が暮らしています。

当社はこれを「土地は余っているのに、買い手の視線は市街化区域に向いている」構造だと見ています。物件数は多いのに探している人が少ない市場では、掲載して待つ売り方が機能しません。だからまずやるべきことは、価格を下げることではなく探す相手を変えることです。立地条件が重なって長期化しているなら、田舎の家が売れない理由と手放し方もあわせてご覧ください。

要点: 売れにくさの正体は立地ではなく、建築制限が買い手の使い道を狭めていることです。

売れる物件の条件はどこで見極める?

建築時期・条例の指定区域・地目の3点を順に確認して売り方を絞り込む判定フロー図
3つの分岐を通せば選べる売り方が決まる(出典: 都市計画法第34条第11号/農林水産省 農地転用許可制度)

線引き前からの建物か、自治体の条例で指定された区域内かを確認すると、売れる見込みが判断できます。都市計画法には例外がいくつも用意されており、当てはまる物件は建築の見通しが立つぶん買い手の幅が広がります。確認するのは建築時期・条例の区域指定・地目の3つです。

確認軸 何を見るか 調べ先
建築時期 線引きより前から建っているか 登記事項証明書・建築確認台帳
条例の区域指定 第34条第11号・第12号の指定区域に入っているか 市区町村の都市計画課
地目 農地になっていないか、農用地区域か 登記事項証明書・農業委員会

線引き前から建っている家か

区域区分が決まる前から建っている建物は、その後に建てられたものと扱いが変わります。注意したいのが「既存宅地」という言葉です。かつては線引き時点で宅地だった土地を知事等が確認すれば許可不要で建築できましたが、既存宅地制度は2001年5月18日に廃止されています福岡市 既存宅地制度の廃止、2026年8月時点)。福岡市では独自の経過措置も2006年5月17日で終了しました。

似た言葉の「既存権利」は都市計画法第34条第13号に基づく別の仕組みで、線引きの日に土地の権利を持っていた人が6か月以内に届け出た場合に限られます。人に紐づく権利のため、売却しても買い手に引き継がれません。「既存宅地だから建てられる」という説明が出てきたら、現行の根拠条文まで確認してください。

自治体の条例で指定された区域内か

都市計画法第34条第11号は、市街化区域に隣接・近接し、おおむね50以上の建築物が連たんする地域のうち、都道府県などの条例で指定した区域での開発行為を許可できると定めています。この指定区域なら住宅などを建てられる可能性があります。ただし条例の中身は自治体ごとに違い、距離要件も連たん戸数も用途の範囲も揃っていません。

自治体 市街化区域からの距離要件 連たんの目安 建てられる用途の目安
都市計画法34条11号(全国共通の枠) 市街化区域に隣接・近接 おおむね50以上の建築物 条例で定める
栃木県 定めていない 50m以内の間隔で50以上が連たん 専用住宅・共同住宅・150㎡以内の店舗等
千葉県 市街化区域から1.1km以内 半径150m内に40以上、または敷地間55m以内で40以上 条例で用途を限定
福岡市 市が既存集落を指定 地域の合意を経て市が指定 住宅・小規模な店舗等(空家の賃貸も可)

データ出典: 栃木県 都市計画法第34条第11号に基づく条例に関する指定区域千葉県 都市計画法に基づく開発行為等の基準に関する条例福岡市 区域指定型制度都市計画法第34条第11号(いずれも2026年8月時点)

当社はこの差を、売却前に先へ潰しておくべき最大の変数だと見ています。同じ条文でも、売れる条件は自治体ごとに違います。他県の解説を当てはめず、物件所在地の市区町村窓口で指定区域図を確認してから売り出し方を決めてください。

地目が農地になっていないか

登記上の地目が農地なら、都市計画法とは別に農地法の転用許可が要ります。特に農業振興地域のうち農用地区域では、農地転用そのものが禁止されています農林水産省 農業振興地域制度及び農地転用許可制度、2026年8月時点)。条例の指定区域内でも、転用許可が下りなければ建築はできません。地目は登記事項証明書、区分は農業委員会が窓口です。周辺の土地も含めて動かない場合は、田舎の土地が売れないときの選択肢もご覧ください。

押さえどころ: 建築時期・条例指定・地目の3点が確認できれば、売り方の選択肢は自分で絞り込めます。

市街化調整区域を売る3つの方法

築50年超で傾きのある物件4,400万円など、現況のまま買い取った3件の金額を比較した図
解体も片付けもせず金額が付いた3件(当社の買取実績に基づく)

売り方は、現況のまま仲介で買い手を探す、使い道を限定して相手を絞る、専門の買取業者に直接売る、の3つです。建物が使える状態か、条例の指定区域に入っているかで、どれが現実的かは変わります。

売り方 向いている物件 期間の目安 注意点
現況のまま仲介 建物が使える/指定区域内 長期化しやすい 買い手の資金調達
相手を絞って売る 隣地がある/事業用途に向く 交渉次第 相手が限られる
専門業者へ直接売却 老朽化・残置物あり・他社で断られた 短い 扱える範囲が業者で違う

現況のまま仲介で買い手を探す

建物が住める状態で条例の指定区域にも入っているなら、現況のまま仲介で売り出す方法が第一候補です。建物が使えるうちは、壊さずに売る道から検討してください。ただし買い手の住宅ローンが通りにくいぶん、市街化区域の物件より販売期間は長くなりがちです。価格の付き方そのものは不動産買取の相場で確認できます。

使い道を限定して相手を絞る

建築を前提としない買い手に絞る方法もあります。隣地の所有者に買い足してもらう、周辺で農業を営む人に譲る、資材置場や駐車場として使う事業者を探す、といった売り先です。都市計画法第34条は、周辺住民の日常生活に必要な店舗や農林漁業用の建築物を開発許可の対象に挙げています。立地が当てはまれば、事業者には使い道のある土地です。

専門の買取業者に直接売る

買い手を待たずに現金化したい場合は、訳あり物件を扱う買取業者への直接売却が選択肢です。当社の買取くんは、購入意欲の高い不動産投資家と常時300名以上つながっているため、一般の購入検討者が付きにくい物件でも出口を用意できます。無料査定は最短6時間、買取は最短3日で、仲介手数料はかかりません。残置物や生活用品が残ったままの現況でもそのまま買い取ります。ただし買取は仲介より価格が下がりやすい売り方でもあるため、期間・手間と手取りのどちらを優先するかで選んでください。

実際の買取例は次のとおりです。老朽化や傾きがあっても、条件が整えば金額は付きました。

物件の条件 エリア 他社での状況 当社の買取額
相続した実家・生活用品が残置されたまま 大阪府堺市 希望額の提示なし 1,200万円
投資用・8年間空き家 富山県富山市 老朽化で買い手がつかず 450万円
築50年超・建物に傾きあり 東京都北区 4,400万円

データ出典: 当社の買取実績(2026年8月時点)

業者によって扱える物件の範囲は大きく違うため、選び方の基準は空き家買取業者の選び方ガイドで確認してください。

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売却前にやってはいけないことは?

売る前に建物を解体すると、更地に戻った土地での建築は許可の対象になり、買い手の幅がかえって狭まります。開発許可を受けた区域以外での新築には知事等の許可が要るためです。片付けや整地は、買い手が決まってからでも間に合う作業です。

先に建物を解体しない

建物が現存する間は、買い手は「今ある建物を使う」前提で検討できます。ところが更地にすると次に建てるには許可の見通しが要り、それが立たない土地は評価が大きく下がります。売れないから更地にする、という順番は逆効果になりやすいと考えてください。

当社が残置物を残したままの現況買取を標準にしているのも、この理由からです。費用と手間をかけて解体して価値が下がるより、現況のまま引き取って用途を組み立てたほうが、手取りが増える場合もあります。迷ったら何も手を付けないまま相談するのが、最も選択肢が残ります

農地を先に埋め立て・整地しない

地目が農地の土地を、転用許可を得る前に埋め立てたり造成したりしないでください。許可前の造成は農地法上の問題になり得ます。転用の可否や手続きは地域ごとに運用が異なるため、個別の事情は農業委員会や行政書士へご相談ください。

古家付きで売るときの条件を曖昧にしない

建物を残したまま売る場合は、解体費の負担・引渡し時の状態・建物の不具合に売主が負う責任の範囲を、契約前に文書で決めておく必要があります。曖昧なままだと、引渡し後の紛争につながりかねません。想定される揉め方は古家付き土地の売買で起きるトラブルで整理しています。税務や登記の個別判断は税理士・司法書士へご相談ください。

よくある質問

Q. 自分の土地が市街化調整区域かどうかはどう調べればよいですか。
A. 物件所在地の市区町村の都市計画課で確認するのが確実です。多くの自治体は都市計画情報をウェブ地図で公開しており、住所から区域区分を表示できます。指定区域に該当するかどうかも、同じ窓口で分かるはずです。

Q. 市街化調整区域の家は建て替えできますか。
A. 原則として都道府県知事等の許可が必要で、無条件には建て替えられません。都市計画法第43条が、開発許可を受けた区域以外での新築・改築・用途変更に許可を求めているためです。条例の指定区域内か、例外に当たるかで結論が変わります。

Q. 市街化調整区域に建てられる建物は何ですか。
A. 農林漁業用の建築物とその従事者の住宅、周辺住民の日常生活に必要な店舗、公益上必要な施設などが、都市計画法第29条・第34条にもとづく開発許可の対象です。条例の指定区域内なら住宅や小規模な店舗も建てられる場合があります。

Q. 市街化調整区域の物件は住宅ローンを使えますか。
A. 使えないと決まっているわけではありませんが、建て替えの制限から担保評価が下がりやすく、審査は市街化区域の物件より厳しめです。取扱いは金融機関ごとに異なるため、購入検討者に早めに確認してもらうとよいでしょう。

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まとめ

市街化調整区域の不動産は、売買そのものに許可は要らず、売却できます。売れるかどうかを分けるのは、線引き前からの建物か、条例の指定区域に入っているか、地目が農地でないかの3点で、条例の中身は自治体ごとに違います。売り方は現況仲介・相手を絞った売却・専門業者への直接売却の3つ。解体や整地に踏み切る前に、まず現況のまま条件を確かめるところから始めてください。

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登記簿と住所が分かれば、売れる条件に当てはまるかその日のうちに確かめられます。

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この記事の監修者

株式会社リアテクス 執行役員 鶴野博之

鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)

宅地建物取引士/賃貸経営管理士/FP2級

一棟投資物件専門の仲介会社で不動産業界に参入後、前職では「訳あり・瑕疵物件」に特化したコンサルティングプログラム責任者として600名以上の投資家の購入から売却までに携わる。自身も再建築不可物件を中心に訳あり物件へ投資し、転売売買から保有物件まで数々の実績を持つ。

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