「親の土地に建てた家、使用貸借ってどういう扱い?」 「兄が住む実家、使用貸借のままでも売れるのかな?」
使用貸借について調べている方は、このような疑問をお持ちではないでしょうか。地代を払わずに親の土地に建てた家や、家賃なしで住む実家は、多くの場合「使用貸借」という無償の貸し借りにあたります。賃貸借との違い、終わる時期、契約書に書くことを知っておくと、相続や売却の前に家族で決めることが見えてきます。
使用貸借とは?土地や家を無償で借りて、終わったら返す約束の契約

土地と家の名義、地代の有無の3点がそろえば、まず使用貸借と考えられる(出典: 民法593条・不動産登記法3条、国税庁タックスアンサーNo.4552を基に当社作成)
使用貸借は、土地や家などを無償で借りて使い、契約が終わったら返す約束をする契約です(民法593条)。契約書がなくても、貸す人と借りる人が口頭で合意すれば成り立ちます。借り手が持つ「使う権利」は、貸してくれた相手に対してだけ主張できる権利です。
親の土地に子が家を建て、地代を払っていないのが典型例
国税庁のタックスアンサーNo.4552は、「親族間で親の土地に子供が家を建てたときに地代や権利金を支払うことは通常ありません」と説明しています。この地代も権利金もない貸し借りを、国税庁は「土地の使用貸借」と呼んでいます。親名義の土地に自分名義の家があり、地代を払っていないなら、まず使用貸借だと考えてください。兄弟の1人が親名義の家に家賃なしで住むのも同じ形です。
意外かもしれませんが、登記事項証明書(登記簿)を取り寄せても、この貸し借りは出てきません。使用貸借で借りる権利は、不動産登記法3条の「登記できる権利」に入っていないからなんです。
使用貸借と賃貸借の違い|地代を払う賃貸借だけが借地借家法と登記で守られる

固定資産税程度までの支払いは税の扱いで使用貸借のまま。新しい持ち主に主張できるのは登記のある賃貸借(出典: 民法・借地借家法・不動産登記法、国税庁No.4552・国税庁の通達を基に当社作成)
使用貸借と賃貸借は、借り手が地代や家賃を払うかどうかで分かれます。払わない使用貸借には、借地借家法(地代や家賃を払って土地や家を借りる人を守る法律)が適用されません。借り手の権利は不動産登記法で登記できる権利にも入っていないため、土地の持ち主が替わると、使い続けられるかは新しい持ち主次第になります。
賃貸借は、地代や家賃を払って借りる契約です(民法601条)。建物を建てるために土地を借りる権利は「借地権」と呼ばれ、借地借家法が借り手を守っています。
| 比べる点 | 使用貸借 | 賃貸借(借地) |
|---|---|---|
| 地代・家賃 | 払わない | 払う |
| 適用される法律 | 民法だけ | 民法と借地借家法 |
| 権利の登記 | できない | 賃借権の登記ができる |
| 土地の新しい持ち主に主張 | できない | 賃借権か建物の登記があればできる(民法605条・借地借家法10条) |
| 期間 | 決めなくてもよい | 30年以上(借地借家法3条) |
| 貸主から終わらせる | 期間も目的も決めていなければいつでも(民法598条) | 更新を拒むには正当な理由が要る(借地借家法5条・6条) |
| 借主が亡くなったとき | 原則として契約が終わる(民法597条3項) | 相続人が引き継ぐ(民法896条) |
| 親の相続での土地の評価 | 自用地(貸していない土地) | 貸宅地(人に貸している土地) |
データ出典: 民法・借地借家法・不動産登記法、国税庁No.4552をもとに当社作成
対抗要件とは、登記などを備えて、土地の持ち主が替わっても借りる権利を主張できる条件のことで、使用貸借にはこれがありません。倉敷市農業委員会も、使用貸借の借り手の権利は「貸主以外の第三者に対して主張できず」と説明しています。土地を相続した兄がその土地を売れば、子は買った人に「使用貸借だから住み続けられる」とは言えません。
地代を払う賃貸借のときは、借り手の権利は賃借権になります。賃借権とは、地代を払って土地を借りる契約から生まれる、土地を使う権利のことです。無償をやめて地代を取る(払う)形に切り替えたいなら、有償で貸すときの賃借権の登記や借地権との関係を先に知っておくと、切り替えたあとの立場がつかめます。賃借権は、登記すれば登記簿に「賃借権設定」と記録され、土地の新しい持ち主にも主張できます(民法605条)。
地代が固定資産税程度なら使用貸借として扱われる
子が親に固定資産税の分だけ渡している場合も、税の扱いでは使用貸借のままです。国税庁の通達は「土地の公租公課に相当する金額以下の金額の授受があるにすぎないもの」を使用貸借に含めています。公租公課とは、固定資産税などの税金のことです。権利金など地代の代わりになるお金を受け取ったり、相場並みの地代を払ったりすれば、使用貸借には当たりません。どれに当たるか迷うときは、税理士に確かめてください。
使用貸借はいつ終わる?決めた期間・目的と借主の死亡で決まる

当事者の死亡、契約で決めた内容の順にたどると、終わる時点と貸主が解除できる時期が分かる(出典: 民法597条・598条・599条・896条〔e-Gov法令検索〕を基に当社作成)
使用貸借は、決めた期間が過ぎたとき、決めた目的どおりに使い終わったとき、借主が亡くなったときに終わります(民法597条)。期間も目的も決めていなければ貸主はいつでも解除でき、貸主が亡くなっても契約は終わりません。
| 契約で決めたこと | 終わる時点 | 貸主が返してと言える時期 |
|---|---|---|
| 期間(例: 〇年〇月まで) | 期間が過ぎたとき | 期間が過ぎたとき |
| 目的だけ(例: 子の自宅を建てて住むため) | 目的どおりに使い終わったとき | 使うのに足りる期間が過ぎたとき |
| 期間も目的も決めていない | 貸主が解除したとき | いつでも |
| (どの場合も)借主が亡くなった | 原則として借主が亡くなったとき | 契約が終わった時点から |
| (どの場合も)貸主が亡くなった | 終わらない(相続人が貸主を引き継ぐ) | 上の各行と同じ |
※ 借主のほうは、どの場合でも自分からいつでも解除できます(民法598条3項)。データ出典: 民法597条・598条・896条(e-Gov法令検索)をもとに当社作成
期間か目的を決めていれば、その期間の満了か使い終わった時点
期間を決めた貸し借りは、その日が来れば終わります。口約束で「子の家を建てて住むため」とだけ決めたなら、目的を決めた貸し借りです。子が住み続ける間は目的が続きますが、使うのに足りる期間が過ぎれば貸主は解除できます(民法598条1項)。どれくらいで「足りる」とみるかは家が建ってからの年数や事情で分かれるため、揉めたら弁護士に相談してください。
何も決めていなければ、貸主はいつでも解除できる
期間も目的も決めていない貸し借りなら、貸主はいつでも解除できます(民法598条2項)。契約書がないと、期間や目的を決めていたことを後から示しにくくなります。
返すとき、借主は借りた物に付けた物を取り除き、傷めた部分を元に戻すのが原則です(民法599条)。土地の上の家も取り壊しを求められる場合があるので、家をどうするかは早めに話し合っておきましょう。
借主が亡くなると原則として終わり、貸主が亡くなっても続く
借主が亡くなると、使用貸借はそこで終わるのが民法の原則です(民法597条3項)。ただ、この原則どおりにならなかった裁判例もあります(東京地裁平成5年9月14日判決。公益財団法人不動産流通推進センター 相談事例1902-R-0199)。家を建てるために土地を貸した場合は、特別な事情がない限り、その家を使い終わるまでは借主が亡くなっても当然には終わらないと判断しました。どちらになるかは、貸した経緯や家族の事情で分かれます。子が先に亡くなったとき家族が住み続けられるかで揉めないよう、土地の持ち主と書面で決めておきましょう。
一方、貸主の親が亡くなっても使用貸借は終わりません。597条は終わる理由に貸主の死亡を挙げておらず、貸主の立場は土地を相続した人に引き継がれるからです(民法896条)。兄が土地を相続すれば、新しい貸主は兄です。
⇒ 期間も目的も決めていなければ、貸主はいつでも返してと言えます。期間か目的を書面に残せば、終わる時点を家族で共有できます。
土地の使用貸借契約書に書く8項目
土地の使用貸借契約書には、どの土地を・何のために・いつまで無償で貸すかと、終わったときの家の扱いなど8項目を書きます。書面にしておくと、貸主は土地を引き渡す前でも、一方的に取りやめられなくなります(民法593条の2)。
| No. | 書く項目 | 書く内容の例 | 決めておく理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | 貸す土地 | 所在・地番・地積(登記簿のとおり) | 貸した範囲で揉めないため |
| 2 | 無償であること | 地代・権利金を受け取らない | 無償が使用貸借の前提(593条) |
| 3 | 使う目的 | 借主が自宅を建てて住むため | 使い終わると契約が終わる(597条2項) |
| 4 | 期間・終わる条件 | 〇年〇月まで、借主が住まなくなったとき | 決めないと貸主はいつでも解除できる(598条2項) |
| 5 | 費用の負担 | 固定資産税・草刈りなどを誰が払うか | ふだんの維持費は借主の負担が原則(595条) |
| 6 | 終わったときの家の扱い | 取り壊して返す、相続人で話し合う | 借主は付けた物を取り除く義務を負う(599条) |
| 7 | 当事者が亡くなったとき | 借主の家族が住み続けられるか | 借主の死亡で終わるのが原則(597条3項) |
| 8 | 又貸し・建て替え・増築 | 又貸しは貸主の承諾が必要/建て替え・増築を認めるか | 又貸しは承諾が要る(594条2項)。建て替えは契約で決める |
※ 表は横にスクロールできます。データ出典: 民法593条〜599条(e-Gov法令検索)をもとに当社作成
貸主の立場は土地を相続した人に引き継がれるため、書面がないと、相続した兄弟は親と子の約束を確かめられないんです。8つ目の建て替えや増築は民法に直接の決まりがないので、認めるかどうかを自分たちで書いておきます。ひな形を使う場合も、家族の事情に合わせて書き換え、司法書士や弁護士に確認してもらってください。
親の土地を無償で借りて家を建てたら税金は?贈与税はかからず、相続では貸していない土地として評価される

使用貸借の土地は借地権の割合を差し引かず、自用地の評価額のまま相続税を計算する(出典: 国税庁タックスアンサーNo.4552・No.4613、国税庁「借地権の使用貸借に関する確認書」を基に当社作成)
親の土地を無償で借りて子が家を建てても、土地を使う権利をもらったとして贈与税がかかることはありません。その代わり、親の相続ではその土地は貸していない土地(自用地)として評価されます(国税庁タックスアンサーNo.4552)。
土地を使う権利は0円と扱われ、相続では自用地の評価になる
前掲のNo.4552は、使用貸借で土地を使う権利の価額を「ゼロ」として扱うため、借地権に当たる分の贈与にはならないと説明しています。
その裏返しで、親の相続では「人に貸している土地」として評価を下げる扱いは受けられません。地代を払う借地なら、土地の評価額から借地権の割合を差し引いて計算します(国税庁タックスアンサーNo.4613)。使用貸借ではこの差し引きがなく、自用地(持ち主が自分で使っている土地)の評価額のままです。相続税の額は税理士に試算してもらってください。
親が地主から借りている借地権を子が無償で使うときは確認書を出す
親が地主から借りている土地(借地)を使用貸借で借りて子が家を建てたときは、国税庁の「借地権の使用貸借に関する確認書」を出します。子・親・地主の3人で使用貸借であることを確かめ、子が住所地の税務署へすみやかに出します。
確認の結果、使用貸借に当たらないと判断されると、借地権や転借権(借地をさらに借りる権利)の贈与として贈与税がかかる場合があります(国税庁の通達)。建て替えで子が親の借地を使い始めるときは、地主にも声をかけておきましょう。
使用貸借の土地や家は売れる?売る前に土地と建物の名義と相続人の意向をそろえる
使用貸借の土地や家も売れますが、その前に土地と建物の名義と相続人の意向をそろえます。借り手は新しい持ち主に使い続けると主張できず、子の名義の家だけを売っても、買った人が親の土地を使えるとは限らないためです。
貸主が土地を売ったら、借り手は出ていく必要がある?
貸主が土地を売ると、借り手は新しい持ち主に使用貸借を主張できません。明け渡しを求められれば原則として応じることになるため、売る側は売り出す前に、借り手と明け渡しの時期と家の扱いを決めておきましょう。
長く無償で住んできても、時効で土地を自分のものにするのは難しくなります。取得時効(自分の物として一定の期間使い続けた人が所有権を得る制度)は、借りている立場の使い方では条件を満たしにくいからです(民法162条)。認められる条件と認められにくい理由は無償で使ってきた土地の時効取得にまとめました。
子の名義の家だけを売っても、買った人が親の土地を使えるとは限らない
借り手は、貸主の承諾がなければ第三者に土地を使わせられません(民法594条2項)。そのため子の名義の家だけを買った人は、親の土地を使い続けられる保証がないまま家を持つことになります。
法定地上権とは、抵当権(借入れの担保として付ける権利)の実行で土地と建物の持ち主が分かれたとき、建物のために土地を使う権利が法律上生まれる制度です。抵当権を付けた時点で土地と建物の持ち主が同じ場合に限られるため(民法388条)、親の土地に子の家が建つ形には原則として当てはまりません。成り立つのがどんな場面かは、法定地上権が成立する条件で確かめられます。
当社は、使用貸借の家を売るなら、土地と家を一緒に売るか、先に名義をそろえるかを最初に決めると、買い手に説明しやすいと考えています。地上権(建物などを持つために他人の土地を使う権利)や賃借権が付いた土地と比べて売り方を考えたいときは、比較表が役立ちます。地上権・賃借権と使用貸借の違いに、その比較表と売る前に確かめる順番を載せています。
兄弟で共有持分を持つ実家に1人が無償で住んでいる場合
兄弟で相続した実家は、遺産分割が終わるまで兄弟の共有になり、各自が共有持分(共有する不動産に対する各自の取り分)を持ちます(民法898条)。最高裁平成8年12月17日判決が扱ったのは、相続人の1人が相続前から親の許しを得て親と同居していた場面です。判決は、特段の事情がない限り、相続開始から遺産分割までの使用貸借が推認されると判断しました。つまり親と同居していた兄弟には、遺産分割まで無償で住み続ける根拠があり、その間に家賃を求めるのは難しい場面があります。
一方で民法249条2項は、自分の持分を超えて使う共有者は、別の合意がなければ、持分を超えて使った分の対価をほかの共有者に払うと定めています。どこまで使えるかや共有をやめる方法は共有持分の権利の範囲と共有をやめる方法で確かめられます。どちらが当てはまるかは事情で分かれるため、家賃を求める前に弁護士へ相談してください。
⇒ 売る前にそろえるのは、土地と建物の名義、住んでいる人との明け渡しの取り決め、相続人どうしの合意の3つです。
買取くんは親名義の土地に建つ家の売却に使える?名義の整理が途中でも相談できる
親名義の土地に建つ家を手放したいときは、名義の整理や家の片付けが済んでいない段階でも、当社の買取くんに相談できます。買取くん(株式会社リアテクス)は、訳あり物件を当社が直接買い取るサービスです。
売り方は、次の2つで考えてみてください:
- 名義と相続人の合意を自分でそろえられるか——使用貸借のままでは、買った人が土地を使える保証がないため
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不動産会社に買い手を探してもらう仲介では、名義と土地を使う権利を整理し、家の中を空にしてから売り出すのが基本です。相続人が離れて暮らしていると、合意と片付けがそろうまで時間がかかります。名義をそろえて自分で売るなら、実家の売却の進め方に沿って進めると、相続の前後に何を決めるかが分かります。
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使用貸借についてよくある質問
使用貸借の土地の固定資産税は誰が払う?
固定資産税は、土地の持ち主である貸主に課されます(地方税法343条)。ただし、借主が払うと親子で取り決めることはできます。その額が公租公課(固定資産税などの税金)に相当する額以下なら、税の扱いでは使用貸借のままです(前掲の国税庁の通達)。
使用貸借の契約書に収入印紙は必要?
国税庁は、土地の賃借権を設定する契約書は印紙税の「第1号の2文書」に当たるとしています。一方で、土地の使用貸借権を設定する契約書は、この文書に当たりません(国税庁 質疑応答事例)。お金の受け取りなど別の約束を同じ書面に入れる場合は、税務署に確かめてください。
使用貸借を終えるとき、立ち退き料はもらえる?
民法の使用貸借の決まり(593条〜600条)には、立ち退き料の定めはありません。払うかどうか、いくら払うかは、貸主と借主の話し合いで決まります。話がまとまらなければ弁護士に相談してください。
買取くんでは、使用貸借の土地に建つ家の買取を相談できますか?
相談できます。当社の買取くんは全国の物件を対象にしており、ご相談はフォームのほか、電話(10:00〜19:00、水・日曜定休)でも受け付けています。土地が親名義で家が子の名義のように、名義が分かれたままの段階でもお問い合わせいただけます。まずは土地と建物それぞれの名義と、いま住んでいる方の状況をお聞かせください。
まとめ
使用貸借は、土地や家を無償で借りて使い、終わったら返す約束の契約です。地代を払う賃貸借と違って借地借家法には守られず、借り手は土地の新しい持ち主に使い続けると言えません。契約書に8項目を書き、相続や売却の前に土地と建物の名義と相続人の意向をそろえておきましょう。そうすれば、受け継いだ土地と家を揉めずに次の持ち主へ渡せます。
買取くんは、宅地建物取引業の免許(東京都知事免許(1)第107888号)を持つ当社が運営しています。共有持分や借地権のように、権利が絡む家や土地も買い取っています。名義や住む人の事情が入り組み、売り方が決まらない家を抱えている人に向いています。
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