借地権・底地

賃借権とは?借地権との違いと地主が替わっても住み続ける条件

草地に立つ「貸地」の看板と奥の住宅(土地を借りる賃借権のイメージ)

「登記簿に『賃借権』とあるけど、これって何の権利?」 「賃借権の土地に建つ家は、売ったり相続したりできるのかな」

賃借権の記載を書類で見つけた方は、このような疑問をお持ちではないでしょうか。賃借権は、地代や家賃を払って他人の土地や建物を使う権利で、家を建てるために借りた土地の賃借権が借地権です。借地権との違いから、地主が替わっても住み続けるための登記、期間、売る・担保にするときの制限までお伝えします。

賃借権とは?地代や家賃を払って他人の土地・建物を使う権利

賃借権は地代を払う債権で、譲るには貸主の承諾が要り、書類で確かめる3点を示した図

地上権との違いは承諾の要否。書類で「賃借権」と見たら地代・借りた目的・承諾の3点を確かめる(出典: 民法601条・612条、国税庁 質疑応答事例を基に当社作成)

賃借権は、地代や家賃を払って他人の土地や建物を使う権利で、民法の賃貸借契約から生まれる債権です。債権とは、契約の相手に何かを求める権利のことで、賃借権なら貸主に「使わせてもらう」ことを求める権利です(民法601条)。

土地を借りる賃借権と建物を借りる賃借権がある

地代を払って土地を借りれば土地の賃借権、家賃を払って家や部屋を借りれば建物の賃借権です。土地の登記簿に「賃借権設定」とあれば、その土地を借りる権利が登記されているという意味です。

国税庁は、土地の賃借権は「借地借家法第2条に規定する借地権に限らず、土地の一時使用権も含みます」と説明しています(国税庁 質疑応答事例)。当社はこれを、書類を読み解く最初の手がかりと考えています。「賃借権」とあったら、まず何のために借りた土地かを確かめると、当てはまる法律が絞れるんです。

賃借権は貸主との契約で生まれる権利で、譲るには承諾が要る

債権と対になるのが物権です。物権とは、物を直接自分のものとして使える権利のことです。地上権とは、他人の土地に建物などを持つためにその土地を使う権利です。地上権も物権なので、地主の承諾がなくても人に譲ったり貸したりできます。

これに対して賃借権は、貸主の承諾がなければ譲ることも又貸しすることもできません(民法612条)。この承諾が要るかどうかが、地上権と賃借権の違いのうち、売るときにまず効いてくる点です。登記簿で自分の権利を見分けるときも、ここが出発点になります。

地代を払わずに借りているなら、賃借権ではなく使用貸借です。使用貸借とは、お金を払わずに物を借りる契約のことで、使用貸借と賃貸借の違いは契約の終わり方にも表れます。親の土地にただで家を建てているなら使用貸借、地主に地代を払っているなら賃借権です。

賃借権と借地権の違いは?家を建てるために借りた土地の賃借権が借地権

借地権は賃借権の一部で、借りる目的により更新と新しい地主への主張の方法が変わる図

契約書の「借りる目的」欄で3つに分かれ、差が最も大きいのは更新の守られ方(出典: 民法601・604・605条、借地借家法2・3・5・6・10・26・28・29・31条を基に当社作成)

家を建てるために借りた土地の賃借権が借地権で、期間は30年以上、自分名義で登記した建物で新しい地主にも主張できます。借地権は「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と借地借家法2条1号が定めています。借地と借家のルールを決めた借地借家法(旧借地法に代わる新法)が当てはまる権利です。

何を・何のために借りたかで、当てはまる法律と守られ方は次のように変わります。

借りたもの・目的当てはまる法律最初の期間更新新しい持ち主に主張する方法
家を建てるために借りた土地(借地権)借地借家法30年以上建物があれば更新を求められ、地主が断るには正当な理由が要る土地の賃借権の登記か、
自分名義で登記した建物
家を建てずに借りた土地(駐車場など)民法だけ最長50年契約で決める土地の賃借権の登記
借りた家や部屋(借家)借地借家法1年未満は期間の定めなしとみなす満了の1年前〜6か月前に通知しなければ更新/貸主が断るには正当な理由が要る建物の引渡し

※ 表は横にスクロールできます。

データ出典: 民法601・604・605条、借地借家法2・3・5・6・10・26・28・29・31条を基に当社作成

借地権は賃借権の一部で、上に家があるかどうかで守られ方が変わるんです。どの行に当たるかは、契約書の「借りる目的」の欄で確かめられます。

借地権になると期間は30年以上になり、建物の登記で新しい地主にも主張できる

借地権の期間は30年で、契約でそれより長く決めればその期間になります(借地借家法3条)。期間が終わっても、建物が残っていれば借りている人は更新を求められます(借地借家法5条)。地主が断るには、土地を使う必要性などから見た「正当の事由」が要ります(借地借家法6条)。さらに、土地に賃借権の登記がなくても、自分名義で登記した建物があれば土地を買った人にも借地権を主張できます(借地借家法10条1項)。

マンションの敷地も、建物を持つために使う土地です。敷地利用権とは、マンションの部屋を持つために敷地を使う権利のことで、これが賃借権になっている物件もあります。敷地権とは、部屋と切り離して売れないように登記された敷地利用権のことです。その扱いは、マンションの敷地利用権と敷地権の違いを知ると整理できます。部屋の登記簿の「敷地権」の記載も、見分ける手がかりです。

駐車場や資材置き場として借りた土地は民法のルールだけ

月極駐車場や資材置き場として借りた土地は、家を建てる目的ではないため借地権にならず、民法のルールだけが当てはまります。期間の上限は50年で(民法604条)、30年という最低ラインも、更新を断るのに正当な理由を求めるルールもありません。新しい持ち主に主張する手段は、賃借権そのものの登記だけです。

たとえば駐車場として20年の約束で借りた土地なら、期間が来たとき地主は正当な理由なしに更新を断れます。これが家を建てて住む土地なら、建物がある限り更新を求められるのが借地権との差です。

賃借権は登記しないとどうなる?建物の登記があれば新しい地主にも主張できる

地主が土地を売ったとき、建物の甲区の名義や乙区の登記で主張できるかを判定する流れ図

借地は建物の登記簿・甲区が自分名義なら土地の登記がなくても新しい地主に主張できる(出典: 民法605条・605条の2、借地借家法10条・31条、不動産登記法60条を基に当社作成)

賃借権の登記も自分名義の建物の登記もないまま土地が売られると、新しい地主に借りる権利を主張できなくなります。賃借権は、登記すれば土地を買った人にも主張できます(民法605条)。借地なら、自分名義で登記した建物があれば土地の登記がなくても主張できます(借地借家法10条)。

対抗要件とは、こうした登記のように、土地を買った人など第三者に権利を主張するための条件のことです。

賃借権を登記するには地主の協力が要る

権利に関する登記は、原則として権利を得る側と渡す側が一緒に申請します(不動産登記法60条)。土地の賃借権なら地主と借りる人の共同申請になるため、地主の協力がなければ登記できません。家を建てて住む借地なら、建物の登記という別の方法で守れます。

借地は建物の登記、借家は引渡しで第三者に主張できる

借地の場合は、自分名義で登記した建物をその土地に持っていれば足ります。土地に賃借権の登記がなくても、土地を買った人に借地権を主張できます(借地借家法10条1項)。家や部屋を借りている場合は、引渡しを受けていれば登記なしで主張できます(借地借家法31条)。

対抗要件を備えていれば、土地が売られても貸主の立場は買った人へ移ります(民法605条の2)。建物が火事などでなくなったときは、建て直す旨などを土地に掲示しておきます。そうすれば、なくなった日から2年以内に建て直して登記するまで主張を続けられます(借地借家法10条2項)。

地主が土地を第三者へ売った場面で考えてみます。借地の家の登記名義があなた自身なら、新しい地主にも借地権を主張できます。名義が亡くなった親のままなら、まず相続登記で名義を自分に移せるかを確かめましょう。相続人が複数いるなど個別の事情があるときは、司法書士にご相談ください。

登記簿と契約書で自分の賃借権を確かめるときに見る欄

登記簿の権利部とは、その土地や建物にどんな権利が付いているかを記録する欄で、甲区に所有権、乙区にそれ以外の権利が記録されます(不動産登記規則4条4項)。賃借権の登記は乙区に入り、存続期間・譲渡や転貸を許す特約・建物所有の目的なども記録されます(不動産登記法81条)。

見る書類・欄書かれていること分かること次に確かめること
土地の登記簿・乙区「賃借権設定」と目的の「建物所有」借地権が登記されている同じ欄の期間と特約
乙区の賃借権の記録存続期間、譲渡・転貸を許す特約承諾なしで譲れるか特約がなければ、売る前に地主の承諾
建物の登記簿・甲区所有者の名前自分名義なら新しい地主に主張できる親の名義なら相続登記
契約書の日付借地を設定した日借地借家法の施行より前か後か前なら旧法で更新を考える
契約書の期間・特約期間と「更新しない」旨の特約普通の借地権か定期借地権か満了の年

※ 表は横にスクロールできます。

データ出典: 不動産登記法81条、不動産登記規則4条4項、借地借家法10条を基に当社作成

乙区に「地上権設定」とあれば、それは地上権です。見る欄が分かれば、司法書士に相談するときも聞くことがはっきりしますよね。

⇒ 地主が替わっても住み続けられるかは、まず建物の登記簿・甲区の名義で確かめましょう。

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賃借権の存続期間は何年?普通賃借権と定期賃借権の違い

2000年設定・期間30年の借地は2030年に満了し更新で2050年まで続く例と、各賃借権の期間

設定年に最初の期間と更新ごとの期間を足すと満了年が出る(出典: 民法604条、借地借家法3・4・5・22・23・24条・附則6条を基に当社作成)

賃借権の期間は、民法だけが当てはまる場合は最長50年、借地権は30年以上から始まり、更新のない定期借地権もあります。ただし借地借家法(平成3年公布)の施行前に設定された借地の更新には、旧法(廃止された借地法)のルールが当てはまります(借地借家法附則6条)。契約書で借地を設定した時期を確かめ、施行前なら旧法賃借権の中身を見てください。

民法の賃借権は最長50年、借地権は30年以上から始まる

民法604条の上限は、2020年3月までは20年でした(改正前の民法604条)。改正後の民法は2020年4月1日に施行され(法務省 パンフレット)、今の上限は50年です。「民法では最長20年」とする用語辞典は改正前のままなので、駐車場などの契約を見直すときは50年を上限に考えましょう。

借地権は、最初の期間が30年以上、更新後は最初が20年、その後は10年ずつです(借地借家法4条)。たとえば2000年に期間30年で設定した借地権なら2030年に満了し、1回目の更新で2050年まで続きます。

普通賃借権は更新でき、定期賃借権は期間満了で終わる

物件広告の土地権利欄にある「普通賃借権」は、更新の仕組みがある通常の借地権を指す表記です。期間が終わっても建物があれば、更新を求めたり土地を使い続けたりすることで、前と同じ条件で更新したとみなされます(借地借家法5条)。法定更新とは、このように法律によって更新したとみなされる仕組みのことです。地主が正当な理由のある異議を述べない限り、同意がなくても契約が続きます(借地借家法6条)。

「定期賃借権」は、更新のない定期借地権を指す表記です。定期借地権は、次の3つに分かれます。

  • 一般定期借地権:期間50年以上。更新しない特約などを公正証書などの書面で結ぶ(借地借家法22条)
  • 事業用定期借地権:住まい以外の事業用の建物だけ。期間10年以上50年未満で、公正証書で結ぶ(同23条)
  • 建物譲渡特約付借地権:30年以上たったら建物を地主へ相当の対価で譲る(同24条)

旧法の借地権も含めた借地権の5種類の違いと比べると、自分の契約がどれに当たるかも見えてきます。

要点: 普通賃借権か定期賃借権かの見分け方は、契約書の期間の欄と「更新しない」旨の特約の有無です。

賃借権を売る・又貸しする・担保に入れるときは何が制限される?

賃借権を売るにも又貸しするにも地主の承諾が要り、賃借権そのものには抵当権を設定できないため、担保にするのは建物です。承諾は民法612条が求め、抵当権を設定できるものは民法369条が決めています。抵当権とは、借金の返済が滞ったとき、担保の不動産を売って返済に充てられる権利です。

売るにも又貸しするにも地主の承諾が要る

借地の家を売ると、土地を借りる権利も買い手に譲ることになるため、地主の承諾が要ります。承諾なしに譲ったり又貸ししたりすると、地主は原則として契約を解除できます(民法612条2項)。

地主が承諾しないときでも、地主に不利になるおそれがなければ、借りている人の申立てで裁判所が承諾に代わる許可を出せます(借地借家法19条)。承諾料の相場や断られた後の3つの方法は、借地権の譲渡と承諾料で確かめられます。

転貸借地権とは?借地権者がさらに貸した土地の権利

転貸借地権とは、地主から土地を借りた人(借地権者)が、さらに別の人へ家を建てるために貸した土地の権利です。法律の上では「転借地権」という呼び名です(借地借家法2条4号)。

物件広告に「転貸借地権」とあれば、地主→借地権者→あなた、と貸し借りが2段になっています。転借地権者が土地を使い続けていれば、元の借地の更新でも使い続けているものとみなされます(借地借家法5条3項)。買う前や売る前には、元の借地契約の期間と、又貸しへの地主の承諾を契約書で確かめておきます。

賃借権に抵当権を設定できないのはなぜ?担保にできるのは建物

民法369条は、抵当権を設定できるものを不動産と地上権・永小作権に限っています。賃借権は入っていないため、賃借権だけを担保にはできません。

借地の家を担保にお金を借りるときは、建物に抵当権を設定します。建物が競売になり、買い受けた人が土地の賃借権も譲り受けるには地主の承諾が要ります。承諾がなければ、代金を払ってから2か月以内に裁判所へ許可を申し立てられます(借地借家法20条)。

賃借権の土地に建つ古い家を、買い手探しなしで手放すなら買取くんへ

賃借権の土地の古い家は、譲る相手と金額が決まった状態で地主に承諾を相談できる買取なら、買い手探しを待たずに手放せます。譲る相手と金額が決まっていれば、地主もそれを見て承諾するかを判断できるためです。

借地の古い家の手放し方は、次の3点で比べると選びやすくなります。

  • 地主への承諾の相談:譲る相手と金額が決まる前に始めるか、決まってから始めるか
  • 建物の状態:築年数が古い、傾きがあるといった家でも値段がつくか
  • かけられる時間:買い手が現れるまで待てるか

裁判所の許可の手続きも、建物を第三者に譲ろうとしている場面が前提です(借地借家法19条)。仲介で売る場合は、広告と内覧を重ねて買主が決まってから、譲る相手を地主に伝えます。買主が融資を使うなら、その審査の結果も待つことになります。

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賃借権についてよくある質問

賃借権は相続できる?

相続できます。相続人は亡くなった人の権利と義務を引き継ぐため(民法896条)、借地の賃借権も相続人へ移ります。民法612条の承諾は譲り渡しと又貸しが対象で、法律上当然に移る相続は対象になりません。ただ、名義や地代の振込元が黙って変わると無断で譲ったと疑われかねないので、相続したことは早めに書面で地主へ伝えましょう。

賃借権の登記にかかる費用は?

賃借権を設定する登記にかかる登録免許税は、不動産の価額の1,000分の10です(登録免許税法 別表第一)。土地の価額が1,000万円なら10万円で、司法書士に頼めば報酬が別にかかります。借地なら建物の登記で守る方法もあり、借地権の登記が必要かどうかと費用で両方を比べられます。

賃借権を時効で取得できる?

所有権以外の財産権も、自分のために平穏かつ公然と使い続けると、20年または10年で時効により取得できます(民法163条)。時効取得(取得時効)とは、このように使い続けたことで権利を得る仕組みのことです。賃借権も対象になりえますが、認められるかは地代の払い方など個別の事情で決まります。契約書のないまま使ってきた土地なら、賃借権の時効取得の要件を確かめてください。

買取くんでは、賃借権(借地)の上に建つ家も査定してもらえますか?

可能です。当社の買取くんは、借地の上に建つ建物や、底地(借地として人に貸している土地)だけをお持ちの場合のご相談も受けています。担当者が登記・図面・現地の状況を確認し、買い取れるかどうかと金額の目安をお伝えします。まずはフォームから物件の所在地と今の状況をお送りください。

まとめ

賃借権は地代や家賃を払って他人の土地や建物を使う権利で、家を建てるために借りた土地の賃借権は借地権として借地借家法で守られます。自分名義で登記した建物があれば地主が替わっても主張できますが、売るときや又貸しには地主の承諾が要り、賃借権そのものは担保にできません。土地の乙区・建物の名義・契約書の日付と特約を確かめたら、権利が付いた土地を売るときの判断の順番に当てはめてみてください。

東京都知事免許(1)第107888号の宅地建物取引業者である当社の買取くんは、買い取れない場合もその理由をお伝えしています。承諾の話が進まないまま古い借地の家を持ち続けている方に向くサービスです。

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監修

株式会社リアテクス 執行役員 鶴野博之

鶴野 博之

株式会社リアテクス 執行役員

宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸経営管理士/FP2級

一棟投資物件専門の仲介会社で不動産業界に参入後、前職では「訳あり・瑕疵物件」に特化したコンサルティングプログラム責任者として600名以上の投資家の購入から売却までに携わる。自身も再建築不可物件を中心に訳あり物件へ投資し、転売売買から保有物件まで数々の実績を持つ。