「長年使ってきた土地だから、時効取得できるはず」 「固定資産税を払っていないし、時効取得は無理かも」
時効取得を考えている方は、このような疑問をお持ちではないでしょうか。実は、時効取得が認められるかどうかは、年数よりも、その土地を使い始めた経緯と使い方で決まります(最高裁 昭和58年3月24日判決)。認められる条件と固定資産税の扱いに加えて、名義を移す登記の進め方までお伝えしますね。
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時効取得はどれくらい難しい?自分の物として20年使い続けた土地なら認められる

4つの条件と、使い始めた時点の認識で10年か20年かが分かれる仕組みを整理(出典: 民法162条・145条・164条を基に当社作成)
時効取得は、自分の物として使い始めた土地を20年使い続け、時効を使うと相手に伝えれば認められます(民法162条・145条)。使い始めたときに自分の土地だと信じ、そう信じたことに落ち度がなければ、10年で足ります。反対に、借りて使い始めた土地は、借りている関係が続く限り何年たっても認められません。
取得時効(時効取得)とは、他人の物を一定の期間、自分の物として使い続けた人に、その所有権を認める制度です。
時効取得が認められる4つの条件
条文では、土地を実際に使っていることを「占有」と呼びます。次の4つがそろうと、時効取得が認められます。
- 所有の意思をもって使う:自分の物として使う意思のことです。
- 平穏・公然と使う:力ずくで奪ったり、隠れて使ったりしていないことです。
- 20年(善意・無過失なら10年)続けて使う:自分から使うのをやめると、期間は途切れます(民法164条)。
- 時効を援用する:時効の利益を受けると相手に伝えることです。年数が満ちても、名義は自動では移りません。
所有の意思はいったん「ある」と推定され(民法186条1項)、争いでは名義人の側が、貸していただけといった事情でこの推定を崩しにくるんです。
10年で足りる人と20年かかる人の違い
10年か20年かは、使い始めた時点で自分の土地だと信じていたかで分かれます。これが、善意(自分の物だと信じていたこと)・無過失(そう信じたことに落ち度がないこと)という考え方です。
たとえば親戚から口約束で土地を買い、代金も払って名義を移さずに使い始めたなら、落ち度がなければ10年の余地があります。他人の土地だと分かったうえで、自分の物として使い始めた場合は20年です。あとから他人名義だと気づいても、使い始めの時点で決まった側は変わりません。
⇒ 使い始めたころの売買のメモや領収書が、年数を決める手がかりになります。
時効取得が認められにくいのはなぜ?所有の意思の証明が壁になる

買った・相続した・借りた・共有の4つの経緯から、自分の見込みと集める記録をたどれる(出典: 民法185条〜187条・最高裁 昭和58年3月24日判決・平成8年11月12日判決などを基に当社作成)
認められにくい理由は、自分の物として使ってきたことを、使い始めた経緯や使い方の記録で示す必要があるからです。最高裁は、借りて使い始めた事実などが証明されれば、所有の意思の推定は覆ると示しています(最高裁 昭和58年3月24日判決)。
この判決は、所有の意思を「外形的客観的に」見て判断するとしています。つまり、自分の物だと思っていたという本人の気持ちは、決め手にならないんです。当社は、使い始めたときの書類と使ってきた記録を、まず集めるようおすすめしています。
借りて使い始めた土地は年数を重ねても所有の意思が認められにくい
民法185条は、借りて使うなど、使い始めた根拠(権原)の性質から所有の意思がないとされる使い方は、何年たっても性質が変わらないと定めています。この使い方を、他主占有(借りている人として使うこと)といいます。
典型は、賃借権(地代を払って借りる権利)、使用貸借(お金を払わずに借りること)、管理を任されての使用です。たとえば、親の了解を得て、地代を払わずに家を建てた土地を考えてみましょう。無償で借りている土地の扱いでいう使用貸借にあたる場合、そのままでは所有権の時効取得は認められません。貸してくれた相手に自分の物として使うとはっきり示すか、買い取るなど新しい根拠で使い始めない限り、性質は変わりません。
所有者なら当然とる行動が欠けていると所有の意思が否定される
昭和58年の判決は、所有者なら当然とる行動に出なかった事情も、所有の意思を否定する材料になると示しています。平成7年の最高裁判決では、名義の変更を求めず、固定資産税も払っていなかったことが、これに当たるかが争われました。ただ最高裁は、兄弟という名義人との関係も含めて見て、否定する理由として十分でないとしたんです。一つの行動だけでなく、使い方の全体で判断されます。
自分はどれに当たる?使い始めた経緯別の見込み
使い始めた経緯ごとに、条文と判例の原則を表にまとめました。自分に近い行を探し、右端の書類から集め始めてください。
| 使い始めた経緯 | 所有の意思の扱い | 年数の目安 | 次に確かめる書類 |
|---|---|---|---|
| 買った・もらったが名義を移していない | 自分の物として使う意思があるとされやすい | 20年(使い始めに善意・無過失なら10年) | 売買の念書・代金の領収書・贈与の書面 |
| 親が自分の物として使っていた土地を相続した | 親の使い方を引き継げる | 親の期間と合わせて20年(10年) | 親が使い始めたときの書類・税の支払い記録 |
| 親が借りていた・管理を任されていた土地を相続した | 相続人自身の使い方で示す必要がある | 相続したときからの自分の期間で数える | 登記済証(権利証)・税の支払い記録 |
| 地代を払って借りている | 借りている関係が続く限り認められない | 所有権は対象外(借りる権利なら10年・20年) | 賃貸借の契約書・地代の領収書 |
| お金を払わずに借りている | 借りている関係が続く限り認められない | 所有権は対象外 | 借りた経緯が分かる手紙やメモ |
| 共有名義の土地を1人で使ってきた | 共有と知っての使用になりやすい | 自分の持分以外は認められにくい | 登記事項証明書の共有者の欄 |
※ 表は横にスクロールできます。
※ 条文と判例の原則を当社が整理したもので、個別の成否は専門家が判断します。データ出典: 民法185条〜187条・最高裁 平成8年11月12日判決などを基に当社作成
隣地との境界をまたいで使ってきた部分は、隣地の所有者と覚書を交わして扱いを決める方法もあり、越境の覚書の作成手順で書く項目を確かめられます。時効取得を主張する場合の見方は、表のほかの行と同じです。
所有権が難しくても通路や借地の権利なら時効取得の余地がある
所有権としては難しくても、土地を使う権利なら時効で得られることがあります(民法163条)。どの権利が付いているかは、土地を使う権利の見分け方で一覧にしています。どの権利でも、年数は所有権と同じく10年・20年です。
長年通ってきた通路なら、通行地役権(他人の土地を通路として通る権利)を時効で得られる場合があります。ただし、続けて使われ、外から見て分かる通路に限られます(民法283条)。契約で確かにしたいなら、通行地役権の設定と登記で残す方法もあります。
借りてきた土地でも、借りる意思が客観的に表れていれば、賃借権を時効で得られるとした判例があります(最高裁 昭和43年10月8日判決)。得られるのは借りる権利で、所有権は名義人に残ります。
固定資産税を払っていないと時効取得できない?

払っていない場合と払ってきた場合の判例を並べ、税の支払いが判断材料の一つにとどまることを示す(出典: 地方税法343条・最高裁 平成7年12月15日判決・平成8年11月12日判決を基に当社作成)
固定資産税を払っていなくても、それだけで時効取得が否定されるわけではありません。固定資産税は、登記簿に所有者として載っている人(登記名義人)にかかる税金です(地方税法343条)。名義が他人のままなら、納税通知は名義人に届くのがふつうなんです。
最高裁 平成7年12月15日判決の事例では、分家した弟が、本家の兄の名義の土地に家を建てて住んでいました。弟は名義の変更を求めず、固定資産税も払っていませんでしたが、最高裁は兄弟の関係などから、所有の意思を否定する理由として十分でないとしています。
⇒ 払っていないことより、名義人との関係の中でどう使ってきたかが見られます(個別の事例の判断です)。
反対に、払ってきたことは所有者として振る舞った事情の一つです。ただし平成8年の最高裁判決でも、登記済証(権利証)を持っていたことなどと合わせて判断されています。名義人に代わって払ってきたなら、領収書や振込の記録を残しておきましょう。
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使い始めた経緯や税の記録をもとに、名義を移す登記から売るまでの順番を同じ窓口で相談できます。売買の登記は提携の司法書士が担当します。
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相続した土地は親が使っていた期間も合わせて主張できる?
相続した土地は、親が使っていた期間を足して主張できますが、親が借りていた事情も引き継ぎます。親が借りていた土地なら、相続人が自分自身の所有の意思を示す事情を証明する必要があります(最高裁 平成8年11月12日判決)。
前の人の使い方を受け継ぐことを、占有の承継といいます。民法187条では、自分の期間だけで主張するか、親の期間と合わせるかを選べるんです。
平成8年の判決では、管理を任されていた子の死後、その子が生前に贈与を受けていたと信じた妻子が使い続けました。妻子は登記済証を持ち、固定資産税を払い、名義人の側も異議を述べておらず、最高裁は時効取得を認めています。
⇒ 相続しただけでは所有の意思は生まれず、相続したあとの使い方が問われます。
兄弟の共有名義の実家を1人で使ってきた場合は、共有と分かったうえでの使用になりやすく、ほかの兄弟の持分まで時効取得することは難しくなります。共有をやめる方法は、共有持分の権利とトラブルにまとめています。
時効取得の登記はどう進める?名義人が応じないときと費用

売るなら時効取得の登記が先になる順番と、名義人の状況別の進め方、価額500万円・時価1,000万円での費用の計算例(出典: 不動産登記法・民法896条・裁判所「不在者財産管理人選任」・登録免許税法 別表第一・国税庁 No.1493を基に当社作成)
時効取得の登記は、時効を援用したうえで、名義人と一緒に所有権移転登記を申請します。名義人が応じなければ、裁判で登記を命じる判決を得て、自分だけで申請します(不動産登記法60条・63条)。所有権移転登記とは、土地の持ち主の名義を移す登記のことです。
援用してから名義人と一緒に登記を申請する
年数が満ちたら、名義人に時効の援用を伝え、時効取得を原因とする所有権移転登記を共同で申請します。登記で不利益を受ける名義人を登記義務者といい、権利の登記はこの登記義務者と一緒に申請するのが原則です。
売るときの順番にも注意が必要です。土地を売るときも、買主へ名義を移す登記は登記名義人がします。名義が他人のままでは、売買の登記ができないんです。
⇒ 売るつもりなら、時効取得の登記を先に済ませます。
名義人が亡くなっている・応じない・行方が分からないとき
不在者財産管理人とは、行方の分からない人に代わって財産を管理する人で、家庭裁判所が選びます。
| 名義人の状況 | 登記の申請方法 | 登記に協力が要る人 | 必要になる手続き |
|---|---|---|---|
| 存命で登記に応じる | 名義人と一緒に申請(共同申請) | 名義人本人 | 援用を伝え、申請を一緒に行う |
| 亡くなっていて相続人が応じる | 相続人と一緒に申請 | 名義人の相続人全員(民法896条・不動産登記法62条) | 相続人全員に援用を伝え、協力を頼む |
| 登記に応じない | 判決を得て自分だけで申請(単独申請) | 確定判決があれば協力は不要(不動産登記法63条1項) | 訴えを起こし、登記手続を命じる判決を得る |
| 行方が分からない | 管理人が選ばれてから進め方を決める | 家庭裁判所が選ぶ不在者財産管理人 | 家庭裁判所に選任を申し立てる(収入印紙800円分と郵便切手。予納金が要ることもある) |
※ 表は横にスクロールできます。
データ出典: 不動産登記法(e-Gov法令検索)・裁判所「不在者財産管理人選任」・民法896条を基に当社作成
訴える場合の弁護士費用は、依頼前に見積もりを取って確かめましょう。
登記と税金にかかる費用の目安
時効取得で名義を移す登記には、登録免許税(登記のときに国へ納める税金)がかかります。税率は不動産の価額の2%で、相続による移転の0.4%より高くなります(登録免許税法 別表第一)。価額500万円の土地なら、10万円です。
もう1つが所得税です。時効取得した土地の時価は、一時所得(仕事の報酬や物を売ったお金以外で、一時的に得た所得)として課税されます(国税庁 No.1493)。「時価−時効取得のために直接かかった費用−特別控除(最高50万円)」の2分の1が、課税の対象です。たとえば時価1,000万円で直接の費用がなければ、課税の対象は475万円です。
税額はほかの所得と合わせて決まるため、税理士に確認してください。不動産取得税の有無は、都道府県の税事務所で確かめられます。
時効取得についてよくある質問
時効取得にかかる税金は?
所得税と登録免許税がかかります。所得税は、時効が完成した年や登記した年ではなく、時効を援用した年の一時所得として扱われます(国税庁 No.1493)。登録免許税は、登記を申請するときに納める税金です。
取得時効と時効取得は何が違う?
同じ制度を指しています。民法上の制度の名前が「取得時効」で、この制度で権利を得ることを一般に「時効取得」と呼びます。
時効が完成したあとに名義人が土地を売ってしまったら?
時効が完成したあとに名義人から買い、先に登記した人に対しては、原則として登記がなければ時効取得を主張できません(最高裁 昭和33年8月28日判決)。一方、時効が完成する前に買って登記した人には、登記がなくても主張できます(最高裁 昭和41年11月22日判決)。年数が満ちたら、早めに登記まで進めましょう。
買取くん(株式会社リアテクス)では、時効取得を考えている名義が他人のままの土地も相談できる?
相談できます。必要に応じて、提携する弁護士・司法書士・土地家屋調査士がサポートします。まずは、使い始めた経緯と登記簿の名義をお聞かせください。
名義が他人のままの土地は買取くんに相談できる?登記から売却までの進め方
名義が他人のままの土地は、時効取得の登記から売却までの順番を、当社の買取くんに相談できます。名義を移したあとの売買の所有権移転登記は、提携司法書士の担当です。時効が成立するかどうかは、事実関係を見た専門家が判断します。
手放すつもりなら、売れる時期と手元に残るお金を左右する次の3点で進め方を決めます。
- 名義を移せる見込み:使い始めた経緯・年数・名義人が登記に応じるか
- 時間と費用:裁判になるか、登録免許税と一時所得の税金
- 登記のあと:住み続けるのか、手放すのか
仲介でも買取でも、買主へ名義を移す登記は登記名義人がします。そのため名義が他人のままの土地は、先に時効取得の登記で名義を移してから売ります(不動産登記法)。登記と売却を別々の窓口で進めると、判決や登記の見通しと売り出す時期を、自分で突き合わせることになります。当社は、売ると決めた土地なら、登記の見通しと売る時期を最初に並べて決めるほうがよいと考えています。
買取くんは、共有持分を含む訳あり物件を買い取ってきました。必要に応じて提携の弁護士・司法書士・土地家屋調査士がサポートし、登記の段階から売却まで同じ窓口で相談できます(買取くん)。
親や祖父の名義のまま使ってきた土地を、名義を自分に移したうえで手放したい人や、登記と売る時期を並べて決めたい人に向いています。名義を移して住み続けたいなら、先に弁護士・司法書士へ相談するほうが早いです。
まとめ
時効取得が難しいと言われるのは、年数よりも、自分の物として使い始めたかどうかが問われるからです。自分の物として使い始めた土地なら固定資産税を払っていなくても余地があり、借りて使い始めた土地は借りている限り認められません。まずは、使い始めたときの書類と使ってきた記録を集めましょう。
当社の買取くんの査定は無料です。名義を移したあとに手放す土地の値段を、先に知っておきたい人に向いています。
ほかの権利も含めて、地上権や賃借権が付いた土地の売り方を見ておくと、次に誰へ連絡するかを決めやすくなります。地上権は、建物などを建てて持つために、他人の土地を使う権利です。
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