相続した家の売却は現況か解体か?判断基準と進め方を解説

空き家買取

遺産相続の文字ブロック(相続・登記に関する記事のイメージ)

相続した家は、建物を残して売るか解体して更地で売るかを先に決めます。判断軸は建物の傷み・家財の残り方・想定する買い手の3点です。税金や手続きから調べ始めると、この一番大きな分岐が後回しになったまま年月だけが過ぎていきます。3つの売り方の選び方と、名義変更から引き渡しまでの進め方をまとめます。

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相続した家を売る方法は?現況・解体・買取の3ルート

建物の傷みと家財の残り方から現況仲介・解体・買取のどれに進むかを分岐させ、現金化まで数日〜数週間など期間差を示した判断フロー図
家の状態と家財の扱いで進めるルートが分かれ、現金化までの期間も変わる(当社が相続物件の査定で使っている判断軸に基づく整理)

相続した家の売り方は、現況のまま仲介で売る・解体して更地で売る・現況のまま買取に出すの3つに整理できます。3つの違いは値段の高低ではなく、建物の傷み具合と家財の残り方によって、どれが現実的に成立するかが変わる点にあります。土地と建物をまとめて受け継いだ場合の全体の段取りは、相続した不動産全体の売却手順で扱っています。

3つのルートを、当社が査定で実際に見ている5つの観点で並べると違いがはっきりします。

観点 現況のまま仲介 解体して更地で売る 現況のまま買取
向く建物の状態 住める状態を保っている 建て替え前提の立地 傷みや傾きがある
家財・残置物 原則として片付けが必要 解体前に処分が必要 残したままでも可
想定される買い手 自分で住む個人 建てたい個人・工務店 再生を手がける事業者
現金化までの期間 数か月〜1年以上 解体期間+売却期間 数日〜数週間
手取りの振れ幅 大きい 解体費の分だけ目減り 小さく読みやすい

現況のまま仲介で売るのはどんな家か

現況のまま仲介に出して成立しやすいのは、雨漏りや大きな傾きがなく、そのまま人が住める状態を保っている家です。買い手が自分の住まいとして選ぶため、内見での印象がそのまま価格に反映されます。

そのぶん、家財の片付け・清掃・簡単な補修といった準備を売主側が負担します。相場に近い価格を狙える一方で、買い手が現れるまでの期間は読みにくく、その間も固定資産税と管理の手間が続きます。遠方に住んでいて定期的に通えない場合、この期間の負担が想定より重くなりやすい点は先に見込んでおきます。

解体して更地で売るのはどんな家か

解体して更地で売る方法が向くのは、建物の価値がほぼ残っておらず、土地そのものに需要がある立地です。買い手が住宅メーカーや工務店に建築を依頼する前提で探しているため、更地のほうが検討に乗りやすくなります。

ただし解体には費用が先に出ていき、しかも一度壊すと元には戻せません。更地にしてから買い手が見つからないと、解体費を払ったうえで土地の維持費だけが残ります。解体そのものにいくらかかるかは、家の解体にかかる料金の目安で扱っています。

現況のまま買取に出すのはどんな家か

買取は、不動産会社が直接買い主になる方法です。傷みや傾きがあって仲介では買い手が付きにくい家でも、再生や活用を前提とする事業者が引き受けるため、建物付きのまま話が進みます。家財が残っていても、そのまま引き渡せる契約にできます。

当社の買取くん(株式会社リアテクス)でも、査定は最短6時間、契約から最短3日での買取に対応しています。仲介のように広く買い手を募らないぶん価格は相場より控えめになりますが、いつ売れるかわからない状態を終わらせられる点が仲介との一番の違いです。

土地の名義変更全体の流れは名義変更(相続登記)の全体手順で解説しています。

相続した家は解体してから売るべき?残すか壊すかの判断基準

解体をためらう理由を割合で示した棒グラフ。解体費用47.3%に加え、使い道がない34.8%・固定資産税28.2%と壊した後の不安が並ぶ
理由の1位は費用だが、2位以降は「壊した後に何が残るか」が占める(出典: 国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」)

解体は元に戻せない選択のため、更地にした後の使い道と税負担の変化まで見てから決めます。国土交通省の調査では、空き家を持ち続ける理由の2位が「解体費用をかけたくない」で47.3%、3位以降にも「さら地にしても使い道がない」34.8%、「取り壊すと固定資産税が高くなる」28.2%が並びます(国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」、2026年8月時点)。

つまり所有者が解体をためらう理由は、費用だけではありません。壊した後に何が残るかが見えないことが、判断を止めています。

解体すると戻せない3つの変化

家を取り壊すと、まず土地の扱いが変わります。住宅が建っている土地には固定資産税の住宅用地としての軽減が適用されますが、更地にするとその前提が外れます(国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」、2026年8月時点)。

次に、更地は「建てるか売るか」以外の使い道がほとんどありません。買い手が見つからないまま持ち続けると、収入を生まない土地の維持費だけが続きます。

3つ目に、税の特例との関係があります。被相続人が住んでいた家を売るときの3,000万円の特別控除は、家屋を取り壊すか耐震基準に適合させることが前提になっており、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であることなどの条件も付きます(国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、2026年8月時点)。適用できるかどうかで解体の損得が変わるため、詳しい条件は空き家の3,000万円特別控除の適用条件で確認してください。解体を先に実行してから条件を満たさないとわかっても、建物は戻せません。

築年数から見た「傷みの出やすさ」の目安

建物がどれくらい傷んでいるかは、築年数からある程度あたりを付けられます。国土交通省の同じ調査では、建築時期が古いほど腐朽・破損の程度が大きくなる傾向が示されています。あわせて、古い家ほど相続で取得された割合が高くなります。

建築時期 構造上の不具合が生じていた 相続で取得した割合 向きやすいルート
1950年以前 39.1% 78.9% 買取または解体
1951〜1970年 25.0% 70.8% 買取または解体
1971〜1980年 16.2% 58.1% 状態次第で3ルートとも
1991〜2000年 6.2% 31.0% 仲介が第一候補

データ出典: 前掲・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」(報告書 図表3-13・3-24)の建築時期別集計を当社が横断整理(2026年8月時点)。右端の推奨ルートは当社の査定基準による評価です。

実際、構造上の不具合が生じていた空き家に限ると、相続で取得したものが64.8%を占めます。当社はこの並びを、相続した家ほど傷みが進んだ状態で受け継がれやすいことの裏づけだと見ています。見た目の印象で決める前に建築年を確認しておくと、どのルートから当たるべきかの見当が早く付きます。

傷んだ家が建物付きで売れた実例

築年数が古いことと、建物付きでは売れないことは同じではありません。当社が東京都北区で買い取った築50年超・傾きのある家は4,400万円、大阪府堺市の相続実家は生活用品が残ったままの状態で1,200万円で買い取っています。

こうした価格を提示できるのは、当社が購入意欲の高い不動産投資家と常時300名以上つながっており、再生して活用する出口を先に見込めるためです。傷んでいる家は解体一択ではなく、建物付きのまま値段が付くかを先に確かめる価値があります。

要点: 解体を決める前に確認するのは、更地にした後の使い道・特例の適用可否・建物付きでの査定額の3つです。この3つを確かめないまま先に壊すと、選択肢だけが減ります。

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解体を決める前に、建物を残したままいくらで売れるかを確かめられます。

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相続した家が空き家のまま売れないのはなぜ?

見回りが月1〜数回なら不具合17.5%、数年に1回では33.3%と倍増し、空き家期間20年以上も全体22.5%に対し不具合ありは38.1%を示す比較グラフ
管理の間隔が空くほど建物の不具合率が上がり、放置年数が長い空き家ほど不具合側に偏る(出典: 国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」)

売れない原因の上位は、立地ではなく建物側にあります。空き家を賃貸または売却する上での課題を尋ねた調査では、「住宅の傷み」43.3%、「借り手・買い手の少なさ」40.3%、「家財などの処理」37.4%、「設備や建具の古さ」34.0%の順に挙がりました(国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」、2026年8月時点)。

売却の壁は「建物起因」と「立地・市場起因」に分けられる

同じ調査結果を、手を入れれば動かせる建物側の課題と、自分では動かしにくい立地・市場側の課題に分けると、優先順位がはっきりします。

分類 課題 該当割合
建物起因 住宅の傷み 43.3%
建物起因 家財などの処理 37.4%
建物起因 設備や建具の古さ 34.0%
建物起因 住宅の耐震性 16.0%
立地・市場起因 借り手・買い手の少なさ 40.3%
立地・市場起因 地域の高齢化や人口減少 21.4%
立地・市場起因 公共交通の便の悪さ 14.3%

データ出典: 前掲・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」(2026年8月時点)。分類は当社の査定基準による整理です。

上位4項目のうち3つが建物起因で、立地に関する項目は市場側の1つを除くと20%前後にとどまります。当社の実務でも、売却が止まる原因の多くは土地の場所ではなく建物の状態にあります。「田舎だから売れない」と結論づける前に、傷み・家財・設備という建物側の3点で買い手が引いていないかを先に確かめてください。

空き家のまま置くほど選べる出口が減る

建物の傷みは、放置した年数と管理の頻度に比例して進みます。前掲の同じ調査では、管理を「月に1〜数回」行っている空き家で構造上の不具合が生じていた割合は17.5%でしたが、「数年に1回」では33.3%まで上がりました。居住する世帯がいない期間が20年以上の空き家は全体の22.5%ですが、構造上の不具合が生じていた空き家に限ると38.1%を占めます。

通える距離かどうかも、管理の間隔を左右します。売却用として持っている空き家では、管理上の課題に「遠方に住んでいるので往訪が困難」を挙げた所有者が30.5%に上りました。しかも相続で空き家を取得した世帯の32.7%は「今後も空き家として所有しておく」と答えており、「売却する」の21.7%を上回ります。

つまり時間が経つほど、仲介で売れる家から買取か解体しか残らない家へと移っていきます。「いつか決めよう」と先送りした年数の分だけ、選べるルートが減っていきます。売る判断そのものに迷いが残る場合は、実家売却で後悔しないための考え方もあわせて確認してください。維持そのものを引き受けたくない場合には、空き家を相続放棄するという選択肢もあります。

要点: 売れない家の多くは、立地ではなく建物の傷み・家財・設備で買い手が離れています。この3点は放置年数に応じて悪化するため、判断を早めるほど手を打てる範囲が広がります。

相続した家を兄弟の共有名義にしてよい?

相続前に対策を講じた世帯は売却意向26.6%・所有23.4%、講じていない世帯は売却20.7%・所有35.3%と出口意向が分かれることを示す比較グラフ
事前に話し合えた世帯ほど売却へ進み、対策なしの世帯は空き家として抱え続ける割合が高い(出典: 国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」)

とりあえず共有名義にすると、その後の売却で共有者全員の同意が必要になります。実際、2人以上で所有する空き家は登記も名義変更も行っていない割合が23.8%と、単独所有の12.5%の約2倍でした(前掲・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」、2026年8月時点)。共有は平等に見えて、手続きが止まりやすい形でもあります。

共有名義の家は手続きが止まりやすい

登記または名義変更の状況を所有者の数別に見ると、次のように差が出ます。

所有者の数 名義変更を行った いずれも行っていない
総数 64.2% 14.1%
1人(単独所有) 66.9% 12.5%
2人以上(共有) 48.3% 23.8%

データ出典: 前掲・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」(2026年8月時点)

当社が相談を受ける場面でも、共有では「誰が動くか」が決まらないまま手続きが止まりがちです。共有にする前に、売却まで進めるのか保有を続けるのかを相続人の間で決めておくと、後の手戻りを避けられます。共有をすでに解消したい場合の方法は、共有持分の解消方法で扱っています。

相続前に話しておけたかどうかで出口が変わる

相続で空き家を取得した世帯のうち、相続前に何らかの対策を講じていたのは23.0%で、残りの77.0%は特に対策を講じていませんでした。講じた内容で最も多かったのは「被相続人との話し合い」の16.7%です。

この違いはその後の出口に表れます。相続前に対策を講じた世帯は「売却する」意向が26.6%、「空き家として所有しておく」が23.4%でした。一方、対策を講じていない世帯は「売却する」が20.7%にとどまり、「空き家として所有しておく」が35.3%に上ります。事前に話ができていた家ほど、出口の合意が早く付いていると読み取れます。すでに相続が起きている場合でも、まず相続人の間で「売るのか持ち続けるのか」の一点だけを先に合わせておくと動きやすくなります。

共有のまま数年放置すると、次の相続で共有者がさらに増え、全員の同意を取ること自体が難しくなります。

相続した家の売却はどう進める?名義変更から引き渡しまで

進め方は、名義変更を済ませる・家財の扱いを決める・売却ルートを決めて査定を取る、の3段階です。建物の扱いを先に決めておくと、査定を比べるときの基準がそろい、判断が早くなります。

ステップ やること つまずきやすい点
1 相続登記(名義変更)を済ませる 相続人の確定と書類集めに時間がかかる
2 家財・残置物の扱いを決める 片付けの負担で手が止まる
3 ルートを決めて査定を取る 条件を揃えずに金額だけ比べてしまう

相続登記(名義変更)を先に済ませる

亡くなった方の名義のままでは、買主への所有権移転ができないため売買契約を実行できません。売却を考えるなら、名義変更が最初のステップになります。

相続登記は2024年4月から申請が義務化されており、必要書類や申請の流れは前の章で挙げた名義変更(相続登記)の全体手順でまとめています。登録免許税や司法書士へ支払う報酬の内訳は、家の名義変更にかかる費用の内訳で確認できます。

家財・残置物をどこまで片付けるか

前掲の国土交通省の調査で、売却時の課題の3位が「家財などの処理」37.4%だったとおり、片付けは実務上の大きな山になります。仲介で個人の買い手に売る場合は、内見の印象に直結するため原則として片付けを求められます。

一方、買取なら家財を残したまま引き渡す契約にできます。当社が堺市で買い取った相続実家も、思い出の品だけをご家族に回収していただき、残りは生活用品ごと引き受けました。片付けの段取りが付かないことが理由で売却が止まっているなら、先に現況のまま査定を取ってから決めても遅くはありません。

売却ルートを決めてから査定を取る

査定を複数取るときは、同じ条件で比べます。現況のまま売る前提の金額と、解体して更地にする前提の金額を混ぜて比べると、解体費や期間の差が見えないまま数字だけが並びます。

一般には、建物が傷んでいるほど査定の依頼先を絞られていきます。当社はこれを、傷みを減点材料ではなく専門で扱う領分だと考えており、訳あり条件の物件でも価格を先に提示する運用にしています。査定は最短6時間で結果をお伝えし、仲介手数料はいただきません。売るかどうかを決める前に、現況の価格だけ知っておくという使い方でも構いません。

税金や特例は売却方法が決まってから確認する

売り方によって使える特例が変わるため、税の確認は建物の扱いを決めた後に回します。先に税額の計算から入ると、そもそも成立しない売り方を前提に検討してしまうことがあります。

譲渡所得税の計算方法や、相続税を取得費に加算する特例の期限については、空き家を売却したときの税金で扱っています。税額や登記の可否は個々の事情で結論が変わりますので、個別の事情は税理士・司法書士にご相談ください

ここまでの流れを土地の権利関係の側から確認したい場合は、土地の名義変更の基礎に立ち返って整理すると全体像がつながります。

よくある質問

相続した家に家財が残ったままでも売却できますか?

買取であれば、家財を残したまま引き渡す契約にできます。当社が大阪府堺市で買い取った相続実家は、生活用品が残った状態のまま1,200万円で買い取りました。仲介で個人の買い手を探す場合は、内見の印象に影響するため片付けを求められるのが一般的です。実際、空き家の売却時の課題として「家財などの処理」を挙げた所有者は37.4%に上ります(前掲・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」、2026年8月時点)。

兄弟の1人が住んでいる相続した家も売却できますか?

売却できますが、条件は2つあります。1つは共有名義なら共有者全員の同意が必要になること、もう1つは住んでいる方の退去時期を契約前に決めておくことです。人が住んだままの状態では買い手が投資用として検討する前提になり、自分で住みたい個人の買い手は付きにくくなります。持分だけを切り離して整理したい場合の進め方は、前の章で触れた共有持分の解消方法をご覧ください。

相続した家を、名義変更をしないまま解体することはできますか?

建物の取り壊しと登記は別の手続きですが、相続人が複数いる建物を1人の判断で壊すと、後から他の相続人との間で問題になります。売却まで進める前提なら、名義変更を先に済ませてから解体の可否を判断するほうが安全です。名義変更を済ませたうえで、建物を残すか壊すかを判断してください。

まとめ

相続した家の売却は、建物を残すか壊すかを決めるところから始まります。売れない原因の上位は立地ではなく傷み・家財・設備という建物側にあり、放置した年数の分だけ選べるルートが減っていきます。名義変更を済ませ、家財の扱いを決め、同じ条件で査定を比べる。この順番で進めれば、実家の前を通るたびに気が重くなる状態から抜け出し、次の暮らしのことだけを考えられるようになります。

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この記事の監修者

株式会社リアテクス 執行役員 鶴野博之

鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)

宅地建物取引士/賃貸経営管理士/FP2級

一棟投資物件専門の仲介会社で不動産業界に参入後、前職では「訳あり・瑕疵物件」に特化したコンサルティングプログラム責任者として600名以上の投資家の購入から売却までに携わる。自身も再建築不可物件を中心に訳あり物件へ投資し、転売売買から保有物件まで数々の実績を持つ。

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