「売れなかった空き家、タダでいいから市に受け取ってもらえないかな」 「でも、空き家の寄付ってどこに言えばいいんだろう……」
空き家の寄付を考えている方は、このような疑問をお持ちではないでしょうか。空き家を受け取る自治体はありますが、対象は市が古い家を壊して跡地を使える場合か、次の住み手へ渡せる場合だけです。受け付けない市もあるので、制度のある市の条件と申し出の流れ、断られたときの次の当たり先を順にお伝えします。
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空き家の寄付を自治体が受け取るのは、壊して跡地を使うときか次の住み手へ渡せるとき
空き家の寄付を受け付ける自治体はありますが、受け取るのは、古い家を市が壊して跡地を使える場合か、次の住み手へ渡せる場合に限られます。どちらにも当てはまらない空き家は、制度のある市でも対象から外れやすくなります。
寄付を受け付ける市と、受け付けていない市の違い
北九州市は、「市に寄付したいが引き取ってもらえるのか」という市民の問いに答えています。答えは「現在、市ではご相談のケースを含めて寄付は受け付けていません」でした(北九州市。令和3年7月に受け付けた質問への回答記録です)。一方、兵庫県尼崎市は「空家等寄付受け事業」で、古くなった空き家と土地の寄付を受け入れて、市で処分しています(尼崎市)。
市によって答えが正反対なんです。⇒ 分かれ目は、その市が寄付を受ける制度を持っているかどうかです。
尼崎市・岩出市は壊すため、能美市・東白川村は次の住み手のため
制度を持つ自治体が空き家を受け取る目的は、2つに分かれます。
- 壊して跡地を使う:尼崎市、和歌山県岩出市、福岡県大牟田市は、老朽化した空き家を市が壊し、跡地を活用・売却します
- 次の住み手へ渡す:石川県能美市は「市が第三者に流通させる」と書き、岐阜県東白川村は空き家バンクと同じ窓口で、空き家を農地・山林とセットで受け取ります
タダで渡すかどうかより、市がその家や跡地を使えるかどうかで受け取りが決まります。
寄付を受け付ける自治体が受け取るのは、建物と土地をまとめて渡せて権利の制限がない空き家

建物と土地を同時に渡せることが土台で、その上で家の状態によって当たる自治体が変わる(出典: 尼崎市・能美市・岩出市・泉佐野市・大牟田市・東白川村の公表ページを基に当社作成)
寄付を受け付けている自治体は、建物と土地をまとめて渡せて、ローンの担保などの権利が残っていない空き家を受け取っています。そのうえで、市が壊す前提の自治体は古く危ない家を、次の住み手へ渡す前提の自治体は住める状態の家を対象にしています。
6自治体の公表ページを読み比べ、同じ項目に並べ直したのが次の表です。表にある特定空家とは、倒壊のおそれや衛生上の問題があるとして、市町村が空家等対策特別措置法にもとづいて指定した空き家のことです。
| 自治体 | 受け取る目的 | 対象になる空き家 | 主な条件 | 家財の扱い | 申し出る側への助成 |
|---|---|---|---|---|---|
| 尼崎市 | 壊して処分 | 特定空家等か、昭和56年5月31日以前建築で耐震改修なしの木造等 | 境界確定/接道/権利の制限なし | 記載なし | 記載なし |
| 能美市 | 次の買い手へ流通 | ごみ等の放置がない家 | 165平方メートル以下は不可/接道 | 放置がないこと | 相続登記・測量・分筆の費用 |
| 岩出市 | 壊して活用か売却 | 取り壊しが困難でない建物 | 建物と敷地を同時に/権利の制限なし | 記載なし | 記載なし |
| 泉佐野市 | 壊す | 特定空家で、解体費の資力がない家 | 土地と建物を同時に/権利の制限なし | 誓約書で市が処分 | 記載なし |
| 大牟田市 | 壊してまちなかを再生 | 中心市街地の対象エリア内の老朽家屋 | 建物と土地を同時に/市税滞納なし | 動産処分の誓約書 | 記載なし |
| 東白川村 | 次の住み手へ渡す | 空き家(農地・山林とセット可) | 記載なし | 役場職員が無料で処分 | 記載なし |
この表の作り方
- 対象: 空き家(建物)と土地の寄付受けを公式ページで公表している市町村
- N数: 6自治体
- 期間: 各自治体が現在公開しているページ(泉佐野市は2018年の更新から変わっていないページ)
- 集計方法: 目的・対象・要件・家財(動産)の扱い・費用の助成の記載を抜き出し、記載がない項目は「記載なし」としています
- データ出典: 尼崎市/能美市/岩出市/泉佐野市/大牟田市/東白川村
建物と土地を同時に渡すこと、権利の制限がないことは、どちらも4自治体が条件にしています。境界の確定を条件に挙げているのは尼崎市、接道を挙げているのは尼崎市と能美市です。自分の家が合うかは「対象になる空き家」の列で見当が付きます。
費用の助成を公表しているのは能美市だけで、ほかの5市はページに記載がありません。家財の扱いも尼崎市と岩出市は公表ページに書かれていないので、この2市は窓口で確かめてください。
老朽化した空き家を壊すために受け取る市
尼崎市は、特定空家に加えて昭和56年5月31日以前に建てて耐震改修をしていない木造などの空き家も対象にしています。昭和50年に建てた木造一戸建ての実家で耐震工事をしていなければ、建物の条件には当てはまります。
大牟田市は令和7年5月1日に始めた事業で、中心市街地の対象エリアに限っています。泉佐野市の公表されている要綱は解体費を払う資力がない所有者に限っていますが、更新が2018年のままなので現行の条件は市に確かめてください。⇒ このタイプでは、まだ住める家ほど外れ、古くて危ない家ほど対象に入ります。
次の住み手や買い手へ渡すために受け取る自治体
能美市は、土地が狭小地(面積は165平方メートル以下)でないことや、「建物の中にごみ等の放置がないこと」を求めています。165平方メートルはおよそ50坪なので、敷地が50坪に届かない家は要件の上では外れます。壊すための制度とは、求める家が逆なんです。
自分の市町村に寄付の制度があるかの調べ方
市町村名に「空き家 寄付」「寄付受け」「寄附受け」を付けて検索し、見つからなければ空き家を担当する課(住宅・建築・都市計画系)に聞きます。北九州市のように、土地の寄付とは窓口の課が別の市もあるからです。尼崎市は事前調査の段階で、公図(法務局にある、土地の位置と形を示した図面)や地積測量図(測量にもとづいて面積と境界を記した図面)を求めています。手元にあるか先に探しておくと話が早く進みます。
空き家の寄付が断られやすいのは、市に使い道がなく管理だけが残るとき
市に使い道がなく、受け取ったあとの解体や管理だけが市に残る空き家は断られやすくなります。受け取れば、取り壊しの費用も草刈りの手間も市の負担に変わるからです。
受け取ったあとの解体と管理は市が引き受ける
岩出市は、寄附を受けた建物を必要に応じて取り壊し、公共的な目的で活用するか売却します。そして「どちらにも適さない場合は、将来的な利活用に備え、市が適正に管理」すると書いています(岩出市)。使い道も買い手もない空き家は、市が持ち続けるだけの負担になるわけです。
断られやすい空き家に多い条件
各市が出している要件を裏返すと、次のような空き家は外れやすくなります:
- 建物と土地を同時に渡せない、共有者全員の同意がない
- 抵当権など第三者の権利が残っている
- 隣の土地との境界が確定していない(境界の確定を挙げているのは尼崎市)
- 道路にきちんと接していない、災害のおそれがある場所にある(接道を挙げているのは尼崎市と能美市)
抵当権とは、借金の担保として土地や建物に付ける権利で、ローンを払い終えても抹消の登記をしなければ登記簿に残ります。境界の確定とは、隣の所有者と立ち会って境界の位置をお互いに認めた状態のこと。ただ能美市は「要件を満たしていなくても寄附を受け付ける場合があります」とも書いていて、一部が欠けていても問い合わせる価値はあります。
解体して更地にすれば受け取ってもらえるのか
建物をなくしても、受け取られるかは、土地として市に使い道があるかで決まります。解体費を先に払えば通る、という話ではないんです。土地だけになったとき自治体が何を見るのかは、各地の公表基準を並べたいらない土地の寄付ができる条件で確かめられます。照らし合わせてから解体するかを決めても遅くありません。
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空き家の寄付は、事前調査の申込みから始まり寄付の申出へ進む

測量と片付けは、事前調査の通知と自分の市の要綱を確かめてから始めると費用の無駄が出にくい(出典: 尼崎市・能美市・岩出市・泉佐野市・大牟田市・東白川村の手続き案内を基に当社作成)
空き家の寄付は、市に事前調査を申し込み、対象と認められてから寄付を申し出るという順番で進みます。境界をはっきりさせる測量や書類の取り寄せは、申し出る側が用意する前提です。
| 段階 | 申し出る側が出すもの | 市がすること |
|---|---|---|
| ①事前調査の申込み | 調査申込書、位置図、建物の写真、公図・地積測量図、登記事項証明書など | 現地を調べ、寄付を受けられるかを通知する |
| ②寄付の申出 | 寄付申出書、印鑑証明書、登記識別情報、登記承諾書、登記原因証明情報など | 所有権移転登記をし、必要に応じて建物を壊して活用か売却をする |
尼崎市・能美市・岩出市の手続きをもとに当社で整理しました。様式名は違っても、2段階はどの市も共通です。
事前調査の結果が届いたら、寄付の申出には期限がある
寄付の申出で出す登記原因証明情報とは、所有権がどんな理由で移ったか(ここでは寄付)を示す書面で、市が名義を移す登記に使います。岩出市では、調査結果の通知を受けてから30日以内に寄附の申込みが必要です。9月1日に通知が届いたなら、10月1日ごろが期限。共有名義なら全員の印鑑証明書をそろえる時間が要るので、調査を申し込む前に家族の合意を取っておくのが安全です。
申し出る側が用意するものと、市が費用を助成する例
尼崎市の添付書類は、境界協定書や地積測量図がそろっている前提で組まれていて、境界が決まっていない空き家なら寄付より先に測量の費用が出ていきます。逆に能美市は「寄附する建物及び土地の相続登記や測量、分筆等の費用を助成します」としています。ただし対象は、事前調査の結果が通知されたあとに頼んだものだけ。先に測量を頼むと助成から外れるので、事前調査を先に申し込むほうが得なんです。
なお固定資産税は1月1日時点の所有者にかかるため(総務省)、名義の移転が年をまたぐと翌年度分も元の持ち主に届きます。
家財が残ったままでも寄付できるかは自治体で分かれる
残置物とは、家の中に残された家具・家電・生活用品などの動産のことです。この扱いは自治体で正反対に分かれます。
- 残したままでも手続きがある:泉佐野市は「残す場合は誓約書により市で処分」、大牟田市は動産処分の誓約書を用意。東白川村は残家財の処分を役場職員が無料で行っています
- 片付けが前提:能美市は「建物の中にごみ等の放置がないこと」を要件にしています
業者に頼んだときの費用は残置物の処分費用と撤去の要否で目安をつかめます。ただ、片付けたあとで残したままでよい市だったと分かっても、払った費用は戻ってきません。片付けの前に、自分の市の要綱で家財の扱いを確かめてください。
市に断られた空き家は支援法人に相談でき、法人に渡すと譲渡所得の課税対象になる

法人に渡すと渡す側が時価で売ったとみなされ、個人に譲ると受け取る側に贈与税がかかる(出典: 国税庁・横須賀市・長崎市の公表情報を基に当社作成)
市に断られた空き家は、市が指定した空家等管理活用支援法人に相談できます。国や自治体への寄付に所得税はかかりませんが、法人に渡すと時価で売ったものとみなされ、譲渡所得(土地や建物を手放して得た利益)として税金がかかります。
市が指定する空家等管理活用支援法人に相談する
空家等管理活用支援法人とは、令和5年12月13日に始まった改正空家等対策特別措置法でできた仕組みです(横須賀市)。市町村がNPO法人や一般社団法人、会社などを指定し、空き家の相談や管理・活用を担ってもらいます。長崎市はその役割を「空家対策に取り組む地方公共団体の補完的な役割」と説明しています(長崎市)。空き家を引き取る先ではなく、寄付以外の道を一緒に探す相談先です。
地域の団体や法人に渡すと、譲渡所得の課税が問題になる
たとえば、地域のNPO法人が空き家を集会所に使いたいと申し出た場合です。国税庁は、個人が土地や建物を法人に寄附すると「寄附時の時価により譲渡があったものとみなされて所得税(譲渡所得)が課税されます」としています(国税庁)。譲渡所得とは、土地や建物を売って得た利益にかかる所得のことで、代金を受け取らなくても売ったのと同じ扱いになります。
国や地方公共団体への寄附は「特に要件はなく何らの手続きも必要ありません」とされ、この課税は起きません。法人へ渡すときのみなし譲渡の扱いは法人へ無償で渡したときの課税でもう一歩詳しく確かめられます。個別の事情で結論が変わるので、話が具体的になったら税理士へ相談してください。
個人に無償で譲る道
近所の人や移住希望者など、個人に無償で譲る道もあります。この場合、税がかかるのは受け取る側です。個人に無償で譲ったときにかかる贈与税を相手と一緒に確かめてから話を進めると、あとで揉めずに済みます。
口約束のまま鍵を渡さず、無償譲渡の手続きと契約書の流れで契約書を交わしてから名義を移してください。
寄付が決まらない空き家は、解体する前に家のままの行き先を確かめる
寄付が決まらない空き家は、解体して国に申請する前に、家のままで値段が付くかを確かめると持ち出しを抑えられます。国の制度は建物があると申請できず、解体費が先に出ていくからです。
国に引き取ってもらうには、建物を壊すことが前提
相続土地国庫帰属制度とは、相続などで取得した土地を、要件を満たせば国に引き取ってもらえる制度です。法務省は、申請できないケースの筆頭に「建物がある土地」を挙げています(法務省)。空き家のままでは申請できず、取り壊す費用は所有者の負担です。解体費と補助金の目安は家の解体費用の相場と補助金で見当を付けられます。
国に返す・寄付する・売るを、かかるお金と期間で比べたくなったら、いらない土地を国に返す方法と条件に比較表があります。建物があって国の制度に乗らない土地の出口も、そちらで整理しています。
自治体の買取や空き家バンクという選択肢
行政に買い取ってもらう道や、空き家バンクで買い手を探す道もあります。ただ、自治体が空き家の買取に応じる場面は限られます。どんなときに買い取るのか、民間の買取と何が違うのかは、自治体の空き家買取に期待できるかを読んでから窓口へ行くと話が早いです。空き家バンクは、東白川村のように寄付と同じ窓口で相談を受ける自治体もあります。
家財を残したまま値段が付くかを確かめる
手放し方には、お金を払って引き取ってもらう有料引き取りと、代金を受け取って売る買取があり、お金の向きが逆です。不動産の有料引き取りサービスの比較で業者を探す前に、家のままで買い手が付くかを確かめておく価値があります。
現況買取とは、片付けや解体をせず、今の状態のまま買い取ることです。当社は家財を残したままの現況買取に対応しています。当社買取実績の1件として、大阪府堺市では、生活用品が残ったままの相続実家を、家具だけ回収して残りはそのまま1,200万円で買い取りました。寄付は持ち出しを重ねて無償で渡す手続きですが、買取なら代金を受け取る側に回ります。
空き家の寄付についてよくある質問
空き家の寄付を受け付けている自治体は、どうやって調べればよいですか?
市町村名に「空き家 寄付」「寄付受け」を付けて検索し、見つからなければ空き家を担当する課に制度の有無を聞いてください。
売れない空き家でも、寄付なら引き取ってもらえますか?
売れないことは、受け取ってもらえる理由になりません。跡地を市が使えるか、売れる見込みがあるかで判断されます。
建物が残ったままでも、国に引き取ってもらえますか?
引き取ってもらえません。相続土地国庫帰属制度は、建物がある土地を申請できないケースに挙げています。解体してから申し込むときの条件と進め方は、国に返すときの要件と申請の手順で確かめられます。
家財が残ったままでも、空き家を寄付できますか?
自治体によって分かれます。泉佐野市は誓約書を出せば残した家財を市が処分し、大牟田市も動産処分の誓約書を用意しています。一方、能美市は片付けを要件にしています。
買取くんは、家財が残ったままの空き家でも買い取れますか?
買い取れます。当社は残置物や生活用品を残したままの現況買取に対応していて、他社で断られた物件も全国で査定しています。
まとめ
空き家の寄付は、寄付受けの制度を持つ自治体なら、市が壊して跡地を使えるか、次の住み手へ渡せる空き家に限って受け取ってもらえます。制度のない自治体や、建物と土地を別々にしか渡せない・権利が残っている空き家は受け取られにくく、建物が残ったままでは国の制度も使えません。まずは市町村のページで寄付受けの制度と家財の扱いを確かめ、見つからなければ空き家担当課か支援法人に相談してみてください。
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