不動産買取の基礎知識

農地は売却できる?農地のまま売る条件と転用して売る流れ

遠くに海が見える広大なキャベツ畑

「農地って、農家さんにしか売れないんじゃないの」 「相続したけど、うちの田んぼは売りようがないのかな」

農地の売却は、農地のまま農業をする人へ売るか、宅地などへ転用して売るかの2つに分かれます。買主の条件、転用の可否、許可までの期間、売れないときの出口まで、順に見ていきましょう。

土地の売り方や費用は土地売却の全体像をまとめたガイドで確認できます。

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農地の売り方は「農地のまま」と「転用して」の2つ

買主が農業を続ける人かどうかと市街化区域の内外で、3条の許可・5条の届出・5条の許可に分かれる判定フロー図

農地のままなら3条の許可、転用は5条で、市街化区域内だけが届出で済む(出典: e-Gov法令検索の農地法と、京都市が公表する標準事務処理期間をもとに当社作成)

どちらのルートになるかは、買主がその土地で農業を続ける人かどうかで決まります。農業を続ける人へ売るなら農地のまま、住宅や駐車場にしたい人へ売るなら転用してから、です。どちらも勝手には売れず、農地法にもとづく許可か届出がいります(e-Gov法令検索 農地法)。

売り方手続きと許可・届出の相手買主の条件処理期間の例
農地のまま売る3条の許可・農業委員会自分で農業を続ける人30日(京都市)
市街化区域で転用して売る5条の届出・農業委員会農業をしない人でも可2週間(京都市)
市街化区域以外で転用して売る5条の許可・許可は都道府県知事等農業をしない人でも可市町村の農業委員会が公表
相続で取得したとき3条の3の届出・農業委員会売買ではなく取得の報告2週間(京都市)

データ出典: 京都市 農業委員会の標準事務処理期間。処理期間は自治体ごとの運用値で、全国共通ではありません。

農業委員会とは、市町村に置かれて農地の売買や転用を審査する行政委員会です。許可を出すのが農業委員会か都道府県知事等かで、待ち時間も必要書類も変わります。書類はどちらも農業委員会に出します。⇒まず確かめたいのは、その農地が市街化区域(都市計画で市街地にしていくと定めた区域)の中にあるか。中にあれば届出だけで済みます。

宅地や古家が市街化調整区域(市街化を抑える区域)にある場合は、都市計画法の規制が中心になります。売り方は市街化調整区域にある不動産の売却で解説しています。

1. 農地のまま売るときは農業委員会の許可がいる

農地のまま売るときは、売主と買主が農地のある市町村の農業委員会から許可を受けます(農地法3条1項)。農地かどうかは登記簿の地目ではなく、耕作に使われているかで決まります(同法2条1項)。

厳しいのは効力の扱いで、許可を受けないでした売買は効力を生じません(e-Gov法令検索 農地法 3条6項)。代金を払っても、許可がなければ所有権は移りません。だから契約は、許可を条件にした形で結びます。

2. 転用して売るときは都道府県知事等の許可、市街化区域は届出

買主が農業をしない人なら、宅地などに変える転用とセットで売ります。転用を目的に所有権を移す場合の許可を出すのは、農業委員会ではなく都道府県知事等です(農地法5条1項。農林水産省 農地転用許可制度)。

例外は市街化区域内の農地で、あらかじめ農業委員会へ届け出れば許可はいりません(前掲の4条1項7号・5条1項6号)。市街化区域かどうかで、許可と届出という別の手続きに分かれます。無許可の転用には工事の停止や原状回復の命令、罰則があります(前掲の51条・64条)。

農地のまま売るとき、買主になれるのはどんな人か

常時従事の基準である年150日以上と、週末だけ通う場合の年100日ほどを並べ3要件を添えた棒グラフ

年150日は週3日前後で、ここに届くかどうかが買い手を探せる範囲を決める(出典: 農林水産省「個人が農業に参入する場合の要件」を基に当社作成)

農地のまま買えるのは、その農地を全部使って自分で農作業をし、原則として年150日以上そこに関わる人です。農業委員会は、この常時従事などの要件をすべて満たす場合に限り3条の許可を出します(農林水産省「個人が農業に参入する場合の要件」)。買い手を探せる範囲は、ここで絞られます。

要件は3つ。このうち最初の関門になるのが常時従事です。年150日は週に3日前後で、片手間では届きません。⇒買い手は、周りで実際に耕している農業者や農業法人から当たってください。

農業委員会が見る3つの要件

許可の判断で見られるのは、次の3点です。

  • 農地のすべてを効率的に利用すること:機械や労働力を適切に使う営農計画があること
  • 必要な農作業に常時従事すること:取得する人が原則として年間150日以上従事すること
  • 周辺の農地利用に支障がないこと:水利調整に参加しないなどの行為をしないこと

3つとも満たして初めて許可が出ます(前掲の農林水産省資料)。相手がこの3点を説明できるかが、話を進めてよいかの目安です。

農業をしていない人や法人が買いたいと言ってきた場合

たとえば、平日は会社勤めで週末だけ畑に来られる人が買いたいと言ってきたとします。引っかかるのは常時従事で、週末だけでは年間100日ほどにとどまり、150日に届きません。家庭菜園に使いたい場合も同じ壁です。

法人には別の要件があります(農林水産省 法人が農地を取得する場合の要件)。農業をしない相手に売りたいなら、次の転用ルートを検討します。

転用して売れるかは農地の区分と区域で決まる

令和5年の農地転用を許可63,581件と届出53,783件で比べ、届出が件数の約46%を占めることを示した棒グラフ

件数の半分近くは市街化区域内の届出ルートで、1件あたりおよそ590平方メートル(出典: 農林水産省「許可、届出等別農地転用の推移」の公表値をもとに当社換算)

宅地などに変えて売れるかは、その農地が市街地寄りにあるかどうかで決まります。農林水産省は農地を5つに区分し、第3種農地は原則許可、農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地は原則不許可としています(農林水産省「農地転用許可制度の概要」)。

農地区分どんな農地か転用の許可方針
農用地区域内農地市町村が農用地区域と定めた区域内の農地原則不許可
甲種農地市街化調整区域内の優良農地原則不許可
第1種農地10ヘクタール以上の集団農地や公共投資の対象農地原則不許可
第2種農地生産力の低い小集団の農地など第3種に立地困難な場合などに許可
第3種農地都市的な整備がされた区域や市街地にある農地原則許可

データ出典: 農林水産省「農地転用許可制度の概要」

農地区分で「原則許可」か「原則不許可」かが決まる

この区分による判断を立地基準といい、原則不許可の区分にも例外はあります。当てはまるかは買主の計画しだいです。転用の確実性が認められない場合は、区分にかかわらず不許可です。

自分の農地の区分は手元の書類だけでは分かりません。農用地区域なのか、市街化区域なのかは、農地のある市町村の農業委員会に問い合わせて確認してください。

市街化区域なら届出、それ以外は許可

令和5年に動いた転用は、許可と市街化区域内の届出でほぼ半々です。

令和5年の農地転用件数面積1件あたり面積
許可(都道府県知事等)63,581件6,650ha約0.105ha
届出(市街化区域内)53,783件3,164ha約0.059ha

1件あたり面積は農林水産省の公表値をもとに当社が算出しました(原表に記載はありません)。データ出典: 農林水産省「許可、届出等別農地転用の推移」

件数のうち届出が占めるのは約46%(同じく当社の算出)。1件あたりは届出のほうが小さく、およそ590平方メートルです。つまり、実際に動いている転用の半分近くは、市街化区域内の小さな農地なんです。⇒区分より先に、市街化区域の内か外かを確かめてください。

転用が難しいと分かったら、買い手が付かない理由を切り分けます。土地が売れない原因の切り分け方が役に立ちます。

農地売却の流れと、許可が下りるまでの期間

毎月15日までの提出と16日の提出で結論が約1か月ずれることと、買主探しから登記までの5ステップを示した図

締切を1日過ぎると起点が翌月に回り、結論は約1か月後ろへずれる(出典: 京都市と可児市が公表する標準事務処理期間・許可事務の流れをもとに当社作成)

農地の売却は、買主を探して仮の契約を結び、農業委員会の許可が出てから代金の受け取りと登記へ進みます。この仮の契約は、許可を条件にした停止条件付売買契約という形にします。相続で取得した農地では、買主探しの前に農業委員会への届出と名義変更を先に済ませます(可児市 農地法第3条許可事務の流れ)。

この2つは後半の「相続した農地は届出と名義変更を先に済ませる」で扱います。なお書類の提出先は農業委員会ですが、買主探しや価格の相談は不動産会社、書類の作成は行政書士にも頼めます。役割の違いは土地売却の相談先の選び方が詳しいです。

買主探しから登記までの5ステップ

可児市が公表する申請から許可までの流れに、売買契約と登記を前後に置くと、段取りはこうなります。

  1. 買主を探す
  2. 許可を条件にした売買契約(停止条件付売買契約)を結ぶ
  3. 農業委員会へ申請書と必要書類を提出する
  4. 審査と現地調査を経て、総会で許可・不許可が決まる
  5. 許可書の交付を受けてから決済し、所有権移転登記を行う

転用して売る場合は、5番目に地目変更登記(登記簿の用途を畑から宅地などへ書き換える手続き)が加わります。可児市は、記入漏れや書類の不足があると許可まで時間がかかったり不許可になったりする、と注意しています(可児市 農地法第3条許可事務の流れ)。つまり書類の不備が、いちばん現実的なつまずきどころなんです。⇒提出の前に、窓口で書類一式を見てもらってください。

待つ期間は受付締切日と標準処理期間から逆算する

標準処理期間とは、役所が申請から結論までにかかる日数の目安です。京都市は3条の許可申請を受付締切日(毎月15日)から起算して30日、3条の3の届出と市街化区域内の転用届出を各2週間としています(京都市 農業委員会の標準事務処理期間)。

効いてくるのが締切日です。15日までに持ち込めばその月の審査に乗りますが、16日だと起点が翌月の締切日になり、結論は1か月ほど後ろへずれます。可児市も3条許可は30日です。

日数は自治体ごとの運用値ですが、月1回の総会に乗るかどうかで1か月ずれる構造は共通です。⇒引き渡し時期を約束する前に、締切日と総会の日程を聞いて逆算してください。宅地の場合の段取りは土地売却の流れと期間の目安、税金は土地売却でかかる税金の内訳で扱っています。

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許可の申請に進む前に、古家や家財を残したまま手放す場合の条件と比べられます。

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買主が見つからないときに残っている出口

買い手が見つからないときは、まず農業委員会に相談し、次に農地バンクへの貸付、最後に現況のままの買取という順に当たります。相談の場では、農地として再生できない状態かどうかの確認も同じ窓口で聞けます。

まず農業委員会に相談する

農林水産省は、相続したものの地元を離れていて管理ができない場合には、農業委員会が管理の相談や借り手探しを手伝うと案内しています(農林水産省 農地を相続したら)。不動産会社だけに任せて止まっているなら、先にこの窓口を使ってみてください。

同じ窓口で確かめられるのが非農地判断です。すでに森林の様相を呈しているなど農地として再生できないと農業委員会が判断した場合は、耕作されないまま放置された農地(遊休農地)としての勧告も行われません(農林水産省 遊休農地の課税の強化)。農地としての扱いが続くかどうかで進め方も変わりますので、早めに聞いてください。

農地バンクは「売る」ではなく「貸す」仕組み

農地中間管理機構、通称・農地バンクは、都道府県や市町村、農業団体等が出資し、知事が県にひとつだけ指定する法人です。所有者等から借り受け、担い手へ貸し付けています(農林水産省 農地中間管理機構)。

大事なのは、これが借受けと貸付けの仕組みだという点です。当社は、貸せば所有権は残るため、手放したい方の答えにはならない場面があると見ています。貸付けで耕作放棄は止まりますが、固定資産税は払い続けます。⇒手放したいのか、持ったまま荒らさずにおきたいのか。決めてから窓口を選んでください。

現況のまま買い取ってもらう

農地のまま第三者へ所有権を移すには、3条の許可が前提になります。そのため当社の買取くんでお受けするのは、転用して宅地などとして売れる土地か、すでに宅地・古家付き土地として扱える土地です。ご相談は現況と農地区分の確認から入ります。全国に対応し、家具や生活用品が残ったまま(残置物あり)でも買い取ります。

太陽光発電の用地として売る道は売れない土地で検討できる活用と出口で説明しています。相続土地国庫帰属制度(相続した土地を国に引き取ってもらう制度のこと)は相続土地国庫帰属制度の要件と費用をご覧ください。

相続した農地は届出と名義変更を先に済ませる

相続した農地で先に済ませるのは、農業委員会への届出と相続登記の2つです。届出の期限は相続からおおむね10か月以内、相続登記は3年以内で、怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります(農林水産省 農地を相続したら)。

農業委員会への届出(相続からおおむね10か月以内)

届出が必要なのは、相続や遺産分割などで農地の権利を取得した方です。届出先は農地のある市町村の農業委員会で、農地法3条の3にもとづきます。許可ではなく、権利を取得したことを知らせる報告です。

気をつけたいのは、この届出が法務局への相続登記とは別に必要な手続きだという点です(前掲の農林水産省の案内)。司法書士に登記を頼んだから終わり、とはなりません。

相続登記(相続を知った日から3年以内)

相続登記は、亡くなった方の名義のままの土地を相続人の名義へ変える手続きです。義務化により相続を知った日から3年以内の登記が必要で、義務化の前に相続した土地も対象(令和9年3月末まで)とされています(農林水産省 農地相続ポータル)。

名義が亡くなった方のままでは、買主が決まっても所有権移転登記へ進めません。必要書類や費用は土地の名義変更の進め方に、期限を見ながら売る場合は相続した土地を3年以内に売却する場合にまとめています。

放置したままにすると何が起きるか

耕作も貸付もしない状態が続くと、農業委員会から利用意向調査を受けます。それにも応じず貸す意思も示さないままだと、機構との協議を勧告される場合があります。こうして耕作されないまま勧告を受けた農業振興地域内の農地(遊休農地)は、固定資産税の評価額を出すときに通常なら掛ける0.55の係数を掛けない扱いになります。結果として評価額は1.8倍です(農林水産省 遊休農地の課税の強化)。

ただし、こうなるのは勧告を受けた場合だけで、適用実績も全国427件・67ヘクタール(令和7年1月1日時点)です(農林水産省 遊休農地の課税強化の適用実績)。調査の段階で貸付けの意思を示せば勧告には至りません。⇒調査の書面が届いたら、まず期限内に返送してください。

農地の売却についてよくある質問

農業をしていない人でも農地を買えますか

農地のままでは難しいです。農地の全部を効率的に利用し、原則として年150日以上農作業に常時従事する人でなければ許可が下りません。農業をしない方へ売るなら、宅地などへの転用とセットで売ります。可否は区分と区域しだいです。

農業委員会の許可が下りなかったときはどうなりますか

許可を受けないでした売買は効力を生じませんので(前掲の農地法3条6項)、売買そのものが成立しません。許可を条件にした停止条件付売買契約にしておけば契約を解消でき、要件を満たす買主を探し直すか、転用へ切り替えられます。

相続税の納税猶予を受けている農地を売るとどうなりますか

納税猶予は、その農地について農業の継続または特定貸付け等を行っている場合に限って認められます(国税庁 No.4147)。売却して農業をやめれば前提が外れますので、進める前に税理士へご確認ください。

耕作放棄地のままでも売却できますか

耕作をやめていても、耕作の目的に供される土地に当たるうちは農地ですので、売買には許可がいります(前掲の農地法2条1項)。森林のような様相を呈して再生できないと農業委員会が非農地と判断した土地は扱いが変わります。まず現況を見てもらってください。

買取くんでは、相続した農地の売却も相談できますか

ご相談いただけます。当社はまず現況と農地区分を確認し、転用して宅地として売れる土地か、すでに宅地・古家付き土地として扱えるのかを整理します。全国どこでも対応し、無料査定は最短6時間、家財が残ったままでも買い取ります。

農地以外も含めて手放す方法と費用を並べたい方は土地の売却方法と費用の比較をご覧ください。

まとめ:農地の売り方は2つのルートのどちらかに決まる

農地の売却は、農地のまま農業を続ける人へ売るか、転用して宅地などとして売るかのどちらかに決まり、どちらでも農業委員会を通します。市街化区域の中なら届出だけで転用できますが、農用地区域内農地や第1種農地は原則として転用できません。売る相手も、自分で農作業を続ける人に限られます。まずは農業委員会に区分と受付締切日を確認して逆算してください。

当社の買取くんは全国に対応し、最短6時間の無料査定を行っています。家財や古家を残したままの現況買取(片づけも解体もせずそのまま引き渡す買い方のこと)にも対応しています。転用して売れる土地か、宅地として手放せる土地かを早く切り分けたい方に向いています。

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監修

株式会社リアテクス 執行役員 鶴野博之

鶴野 博之

株式会社リアテクス 執行役員

宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸経営管理士/FP2級

一棟投資物件専門の仲介会社で不動産業界に参入後、前職では「訳あり・瑕疵物件」に特化したコンサルティングプログラム責任者として600名以上の投資家の購入から売却までに携わる。自身も再建築不可物件を中心に訳あり物件へ投資し、転売売買から保有物件まで数々の実績を持つ。